無口な女の子とやっちゃうエロSS 十言目
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001名無しさん@ピンキー2012/04/16(月) 09:04:29.47ID:qbOy24S7
無口な女の子をみんなで愛でるスレです。

前スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 九言目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1294555443/

過去スレ
無口な女の子とやっちゃうエロSS 八言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1248348530/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 七言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1228989525/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 六言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1218597343/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 五言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1203346690/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198426697/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191228499/
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/
【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/

保管庫
ttp://wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage

・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・
・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
0208旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:28:12.58ID:yY2ZY74F
変わるものがある一方、変わらないものもある。
こいつは、本当に、変わらないものの代表例みたいなやつだった。
「おーい、伊綾。こっちこっち」
駅前の待ち合わせ場所に時間ピッタリ足を運ぶと、先に到着していた男が、俺を見るやぶんぶんと右手を振って俺に呼び掛ける。
ジーパンに珍妙なプリントがされたTシャツ姿。
左腕にギプスを巻いて吊り下げているのが目に付く。
「相変わらずだな、渡辺」
「おう、相変わらず元気してるぜ。
伊綾は――――ちょっとやせたか?」
目の前の男、渡辺綱は小学校から高校まで、同じ学校で同級生だった。
当時はそれなりに親しく、今でもこうして時折会うことがある。
「大した問題じゃない。それより……」
俺の視線に気付いた綱は、これ? と訊きながら左腕を持ち上げた。
「ま、立ち話もなんだし、どっか茶店でも寄るか。
伊綾、時間あるんだろ」
「まあ、構わんが……」
男二人で連れ立って、長居して駄弁るのにちょうど良い店を探す。
結局、コーヒーはまずいものの、安さと完全分煙に定評のあるチェーン店に落ち着く。
早速チョコレートパフェ(大)を注文しながら、綱は怪我の経緯を白状した。
「ブチハイエナに噛まれた」
何かの比喩なのだろうかと一瞬疑う。
「いやー。エチオピアでフィールドワークに熱中してたらうっかり襲い掛かられて。
人間襲うのは珍しいんだけど、そいつどうも悪い病気もってたみたいでな。変なよだれたらしてたし。
なんとかやっつけたはいいけど、それから1週間、原因不明の高熱にうなされるハメになった」
「やっつけたのかよ……」
綱は今では考古学者として、採掘や調査に世界各地を飛び回っているらしい。
どちらかと言うと地味で、根気のいる仕事のはずだが、機嫌よくこなしているようだ。
俺は薄いコーヒーをすすりながら、三途の川の向こう岸が見えたぜ、などと呑気に笑う綱を見やった。
0209旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:29:49.86ID:yY2ZY74F
最初見たときは変わっていない、と思ったが、高校時代より、身長は少し伸び、肌は日焼けして、体格も更にがっしりして見える。
一方の俺は、身長こそ僅かに伸びたかも知れないが、日がな研究室に籠りきりでは日焼けしそうもなく、肉も落ちた。
昔は目の前の男とこのもやし男が、取っ組み合いの喧嘩をしていたなどと、誰が信じられるだろうか。
「……お前は」
「うん?」
大盛りのパフェをひしひしとたいらげていた綱は、口の端にクリームを付けたまま顔を上げた。
「変わらないな」
「そっかなー?」
口を拭け、と言いたいのをこらえる。
「ああ、馬鹿な所とか」
「それ言うなら、伊綾も変わってねえじゃん。
口悪いとことか」
うっかり学生時代のノリで喋っていたことに気付く。
「TPOくらいわきまえるさ」
すまし顔でカップを傾ける俺を見て、綱は笑った。
「伊綾も、元気そうで安心したぜ。
絵麻ちゃんがいなくなった時とか、心配したんだけどさ」
「情けない姿をさらすようでは、合わせる顔がない」
「親父さんも元気か?」
「相変わらずだ」
訊き難い事でもさらっと聞いてくるあたり、こいつらしいと言うか。
「お前の方こそ、妹は元気か」
「おう、仕事の方も頑張っとるみたいだ。
この間はこの怪我の件でめっちゃ叱られたし、元気も有り余っとるよ。
こないだ実家帰った時なんてさ――――」
ああ、本当に、10年前もこんな奴だったな、などと思いながら。
つきもせぬ長話を聞き流しつつ、俺は冷め切ったコーヒーを喉に流し込んだ。

0210旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:31:42.07ID:yY2ZY74F
ふと窓の外を見ると、辺りは暗くなりかけていた。
随分と話し込んでいたことになる。
俺はレシートを持って席を立った。
「さて、俺はそろそろ帰らせてもらう」
「あれ? 伊綾予定あんの?」
「荷物の受け取りがある。
明日からは仕事の引継ぎと、"解凍"の確認」
「あ、いよいよか」
スプーンを咥えたまま、綱は腕組みして感慨深そうに呟いた。
「頑張れよ。
俺らも手伝えることはやってやるから」
「お前は、いつ位までこっちに滞在する予定なんだ?」
「だいたい1か月くらいかなあ。
あと、結もしばらくは急な休みも取れそうだってさ。
"解凍"には間に合う予定」
頭の中でカレンダーを確認する。
日程は流動的で、1か月では間に合わない可能性がある。
「無理して付き合う必要はないぞ」
「俺らにとっても大事なことだ」
社会人にもなって、個人的な事に巻き込むのに抵抗はあったが、その言葉は素直にありがたかった。
「まあ、予定が決まり次第連絡する」
「頼むわ」
勘定を済ませ、店を出る。
雨はまだ降り続いていた。

0211旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:33:20.15ID:yY2ZY74F
天気はなかなか戻らず、長梅雨の様相を呈していた。
本格的に降ることは滅多になく、ぐずぐずと落ち着かない空模様が続く。
久しぶりの休日に訪れた霊園は、天気のせいか閑散としていた。
伊綾家代々之墓、と彫られた、幾分小さめの墓石に傘を差し掛ける。
訪れる人がいなくなってずいぶん経つその墓所は、管理も行き届いていないのか、随分と汚れていた。
小雨に濡れながらも、黙々と掃除していく。
一通り清掃を終え、雨で消えないかひやひやしながら線香に火をともして合掌し、しばし黙祷。
「何と言うか」
自然と、墓の向こうの誰かに語り掛けていた。
「悪いな、なかなか来れなくて」
墓石は黙りこくったまま、何も答えない。当たり前だ。
「親父は、相変わらずだ。
でも、機嫌よく毎日を過ごしている。
心配いらない。
俺も元気でやっているよ」
元気ではある。けれど。
「……一人は、いつまで経っても慣れないよ」
突然、胸ポケットに振動を感じる。
俺は携帯端末を取り出して、かけてきた相手を確認する。
そのまま通話ボタンをONに。
「もしもし…………何?」
俺は思わず傘を取り落した。
動悸が激しい。
深呼吸して何とか冷静を保つ。
「判った。すぐそっちに向かう」
俺は通話を切ると、急いで借りてきた掃除道具を取りまとめた。
最後に、墓の方に振り向いて一礼する。
「せわしなくて悪いな。
また来るよ。
今度は、きっと――――――」
俺は駆け足で霊園を後にした。

0212旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:35:07.97ID:yY2ZY74F
バスを待つのももどかしく、タクシーを捕まえたは良いものの、渋滞に巻き込まれ、途中下車して徒歩で目的地に急ぐ。
目的地に着くころには、シャツは雨と汗でぐっしょりと濡れていた。
某総合医科学研究所、と書かれた門をくぐり、実験棟に入る。
パスを見せ関係者以外立ち入り禁止のゲートを通り、エレベータで地下3階に。
「伊綾!」
複雑な廊下を進んでいくと、数週間前に顔を合わせたばかりの綱に呼び止められた。
その隣で、久しぶりに見る穏やかな風貌の女がこちらに向けて会釈している。
兄と同様、外見は殆ど変っていないため、直ぐに誰かわかった。
「すまない……おそく、なって……」
俺は彼らのもとにたどり着くと、膝に手を当てて荒い呼吸を落ち着かせる。
と、頭に綺麗なタオルが被せられた。
「大丈夫だから、まずは頭拭けよ」
俺は礼を言って、大分乱れてしまった身だしなみを整えた。
「預かります」
聞きなれない声にびっくりする。
綱の隣にいる女、彼の妹の結は、構音障害を負っていたはずだ。
ブラウスの胸ポケットにごく小さなマイクが見える。
そこから声を出しているようだ。
俺は戸惑いながらもタオルを彼女に返す。今気にするべきことはそこじゃない。
「経過を説明するな」
綱がA4位の紙の束を手に喋り出す。
「2日前マイクロマシン治療が大方終わったのは知ってるだろ」
当然だ。
仕事先の研究所に無理を言って、色々な規制をゴリ押しし、研究途上だった医療用マイクロマシンの臨床試験を押し通したのだ。
彼女の体内に巣食うウィルスを駆除するには、それしかなかった。
実用化を待つ間、ウィルスの助けを借りつつ、常人では不可能な"冬眠"、仮死状態でとどめておく。
危険な賭けではあったが、ウィルスのせいでがんを発症するリスクよりは大分歩が良かった。
9年前、彼女は周囲と話し合って、賭けに乗った。
0213旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:36:20.35ID:yY2ZY74F
「本来1週間かけてゆっくり"解凍"していく予定だったんだけど。
5時間前、突然被験者の心拍を確認。
再度冬眠させるのはリスクが高いと判断して、"解凍"を前倒しで行うことが決定。
体温摂氏10度の状態から、徐々に全身の加温を開始。
予想以上に速く代謝が進んで、4時間20分後30.0プラスマイナス1度まで上昇。
自力で呼吸を開始したため、一般病室に移して現在まで回復を観察中。
ついさっき意識が戻ったそうだ」
意識が、戻った。
俺は安心のあまり、その場に倒れ込みかける。
とっさに、結が後ろに回って支えてくれた。
「っつーわけだから」
綱は書類から目を離すと、一歩横にずれて道を作った。
そっと背中を押される感覚。
「行ってこい!
やっぱり面会者第一号はダンナさまじゃないとさ」
にっと笑いながら、綱が俺の背中を叩く。
「きっと、彼女も貴方を待っています」
後ろの結も、微笑んで頷いて見せた。
「お前ら……」
俺は言うべき言葉が見つからなかった。
本当に、何から何まで、世話になりっぱなしだ。
「ありがとう」
俺は一礼して、彼女のいる病室へと向かった。

0214旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:38:01.00ID:yY2ZY74F
真っ白な部屋だった。
ベッドと、計器と、電話くらいしかない。
リノウム張りの床は綺麗に磨かれている。
鼻をつく薬品の匂い。
明るい照明が目に痛い。
ベッドの上には、彼女がいた。
一時期長かった髪をショートボブまでざっくりと切り、白い検査衣を身に着けて。
飾り気と言えば左手の薬指にはめた銀の指輪くらい。
最後に見た時と寸分違わない姿で。
「絵麻」
彼女に歩き寄る。
一歩ずつ、近付いて行く。
「エマ」
彼女が振り向く。
黒目がちな瞳が、俺を映す。
「えま」
最初に、何を言うべきか、ずっと考えていた。
でも、何一つ言葉にならない。
俺は馬鹿みたいに繰り返し彼女の名を呼びながら、ベッドの傍までたどり着いた。
痩せこけた躯、青白い血色、弱弱しい呼吸。
でも、生きている。生きて俺の目の前にいる。
彼女は、上体を起こして、微かに笑った。
「やすみ」
掠れた声。
次の瞬間、俺は彼女に覆いかぶさっていた。
まだ体温の戻りきらない、儚いいぬくもり。
でも、微かな鼓動は、彼女が生きている確かな証拠だった。
小さな頭をかき抱く。
彼女の顔をもっとよく見たかったが、どうせ目はぐずぐずに濡れていて、使い物にならない。
0215旅立ち / 再会  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:39:26.11ID:yY2ZY74F
「馬鹿。一体どれだけ待たせる気だ」
やっと出てきたのは、そんな言葉。
「お前が寝ている間に、俺はこんなおっさんになっちまったぞ」
胸の中で彼女が首を振る感覚。
「……かっこよく、なったよ」
「んなわけ、あるか」
かつて、彼女と共に過ごした日々が。
彼女がいなくなってから起きた様々な事が、胸中を渦巻いていた。
ゆっくりと、時間をかけて、少し落ち着いてから体を離す。
宝石の様な瞳が、目の前にあった。
彼女が口を開く。
「ヤスミの話、ききたい」

聞かせて、なにがあった?
一つ一つ、離れ離れになっていた9年間を、言葉で埋めていきたい。
また、いっしょに歩くために。

「ああ、いろいろ、あったんだ。
本当に、いろいろ」

さて、何から話そうか。
話したい事は幾らでもあった。
これから一緒にやりたいことも、沢山あった。
同時に、なさなければならない事も沢山あった。
どうにもならない事は山積みだった。
けれど、まずはこの言葉で始めよう。
本当は、最初に言っておくべきだった言葉を。
0217ファントム・ペイン最終話  ◆MZ/3G8QnIE 2014/06/30(月) 23:45:47.98ID:yY2ZY74F
投下終了です。
こんな長ったらしい上にエロも薄い作品にお付き合いくださり、ありがとうございました。
以下のアップローダにあとがきにすらなっていないチラシの裏書きを投げておきましたので、気が向かれた方は読んでやってください。
http://kie.nu/1-Ym
0218名無しさん@ピンキー2014/07/01(火) 07:22:54.03ID:QBhBozUM
乙です!
今まで毎話楽しく読ませていただきました
ありがとうございました
0219名無しさん@ピンキー2014/07/02(水) 09:09:48.63ID:diFiAX1j
お疲れ様です。
最後に目が潤んでしまいました。
良いお話を読ませていただきありがとうございました。
0220名無しさん@ピンキー2014/07/03(木) 00:28:55.25ID:hPLY2MeJ
完結おめでとうございます!
長い間楽しませていただきました。
双子のお話もいつかまた読みたいです。
それにしてもヤスミくんずいぶん丸くなっちゃって……エマちゃんはいつもあざとかわいくて素敵でした。
二人の未来に幸あれ、です。おつかれさまでした。
0222名無しさん@ピンキー2014/08/29(金) 01:02:36.33ID:ZbU7jnC8
目線だけで饒舌に意思疎通できる幼馴染の男女
0223名無しさん@ピンキー2014/09/26(金) 15:20:52.09ID:DacALdId
「なんとなく」意思疎通できる程度が良い
0224スッポン2014/11/29(土) 01:35:18.43ID:ttrMYGjm
 投下いたします。
特殊な世界観を含んでおり、文中に説明が入っています。
4回ほどの投下で完結予定ですが、今回はえっちなしです。
0225スッポン1/52014/11/29(土) 01:36:15.83ID:ttrMYGjm
 朝の6時。カーテンを開けると窓から入ってくる空色が爽やかだった。
 身体全体を伸ばすことでまだ覚醒しきっていない頭をすっきりさせてから寝
間着を脱ぎ、制服に着替えるとタイミングを見計らったようにノックの音が聞
こえた。
「秀祐ぼっちゃん」
「はい?」
 部屋の外からの呼びかけに返事をすると遠慮がちに扉が開かれ、声の主であ
る里中さんが顔を覗かせた。もしも僕がまだ着替えの最中なら、という気配り
らしい。
 僕の制服姿を確認次第、扉を大開きにして部屋に入ってきた里中さんのメイ
ド服姿は背筋がピンと伸びていて、毎日見ても格好良い。
「おはようございます。お召し物を預かりに参りました」
 里中さんは丁寧に一礼してから僕に挨拶すると、今度はずかずかと部屋に踏
み混んで寝間着やベッドのシーツ、掛け布団のカバーを手際良く回収して部屋
から出て行った。

 ――里中さんは亡くなった母さんの代わりに家事や僕の家庭教育をするため
に父さんが連れてきたらしい。御歳36になるというにもかかわらず年齢を感
じさせない顔付きをしていて、僕が物心ついた頃から家の世話をしてもらって
いるはずなのにその外見は全く変わっていないように見える。ある意味不思議
な人だ。
 
 僕は里中さんの後ろについて洗面所へ向かうと洗顔、歯磨きをしながら横目
で里中さんの姿を追った。目が回りそうな程によく動く里中さんは、あっと言
う間に洗濯の準備を済ませてしまった。
「それでは朝食の準備をしておきますので」
 歯ブラシをくわえたままの僕に言い残して洗面所を出て行く里中さんを見届
けると、入れ違うように鈴の音が聞こえてきた。
 急いで口の中を濯いで振り返ると目の前にセイがいた。物言わぬ彼女の代わ
りに、首輪に付けた鈴が存在を主張するのだ。
「セイ、おはよう」
 黒い髪を撫でてやると身を擦り寄せてくる。そんな姿を愛らしく思いながら、
朝食のためにセイを連れてダイニングへと向かった。
0226スッポン2/52014/11/29(土) 01:37:09.46ID:ttrMYGjm
「またセイを連れてきたのか。一緒には食べられんと言うのに」
「里中さん、セイのご飯もお願いします」
 指定の席で既に朝食を始めている父さんの小言をよそに、キッチンにいる里
中さんにセイの朝ご飯をお願いした。父さんのセイを邪険に扱う言葉も毎日続
いているので無視の仕方を覚えてしまった。
「セイ、また後でね」
 セイをキッチンへ行くよう促してから、朝食をとるために嫌々ながら父さん
の正面の席についた。今日はベーコンエッグにしっかり焼いたトースト、それ
に生野菜のサラダだ。口に入れると奏でる軽やかな食感を楽しんでいると、朝
食を終えた父さんが朝刊を広げ始めた。
 既に読み終えたらしい1面の記事がこちら側に向けられて見出しが目に入っ
た。“増え続けるヒト。5000万人到達か”などと書かれている。
 見出しでニュースの内容を想像すると、気持ちの良くない内容ばかり浮かん
でしまって里中さんの美味しい料理が台無しになってしまう。
「お先に」
 父さんに一言告げて、食べ終えた朝食の器をキッチンにいる里中さんに渡し
た。同じタイミングで朝食を終えたらしいセイが僕に歩み寄った。
「お片付けは私がしますのに」
 僕はセイをキッチンに迎えに行くついでに食器を運んでいるだけであって、
それを里中さんも知っているはずだ。それでも仕事が減ることは不満らしい。
「いつも助かってますから」
「いえ、そのようなことは……」
 ただ、この一言で里中さんは照れてしまうので、その隙にセイを連れて自室
に戻るようにしている。

 自室の時計を見ると針は7時ちょうどを指していた。通学するにはまだ早い
この時間を使って僕はセイとコミュニケーションをとるようにしている。
「セイ、今日の朝ご飯は何だった?」
「……レタスとトマト。あと、卵とパン」
「よく言えたね。朝ご飯は僕と一緒だったんだね」
 少し詰まりながらセイが話すのを聞いて、頭を撫でて褒めてあげる。くすぐ
ったそうにしながら首輪の鈴を鳴らしている。
「昨日はよく眠れた?」
 今度は僕の問い掛けに対して首を前に倒すことで答える。
「よしよし」
 よくできましたと背中に腕を回してハグをする。女の子の膨らみと人肌の温
もりを感じながら安らぎを得る。
「セイは人間と変わらないのに」とそんなことを考えながら。
0227スッポン3/52014/11/29(土) 01:37:57.83ID:ttrMYGjm
    ◆

 人口増加。それは現在この国にとって恐れられている事象だ。頻度の高まる
地震、四季が崩れて不安定になった気候、国の代表たちによるお世辞にも上手
いと言えない政治活動。これらの悪条件が今まで文化大国を名乗っていた我が
国にもたらしたのは食料不足という最悪の事態だった。国産米の保護すら碌に
行わなかったお陰で全ての食料は物価が上昇した。
 そこで政府はこれ以上の人口増加を避けるために、1つの政策を立てた。そ
れはとある国が昔に考えた「子どもは一家に1人にしよう」という政策では比
較にならない程劣悪なものだった。
「子ども税を導入します」
 政府が発表したその言葉は国中の茶の間を震撼させた。名前もさることなが
ら、その内容が
「新生児1人出生に対して10万円を国に納付すること」
「各世帯主は扶養する未成年者1人につき月5万円を国に納付すること」
「税を納付されなかった未成年者に対して国は国民と認めない」
などという、常識を疑うようなものだったからだ。
 以降この国では「子どもは収入のある家庭にしか存在しない」「収入の少ない
家庭に生まれた子どもは奴隷として扱われる」という認識が常識となった。

 子ども税の導入から50年が過ぎても「首都圏が都会」という認識は変わら
なかった。しかし首都圏以外はスラムと化し、仕事が無い者、食料を買えない
者、学を受けられない者といった貧困層の吹き溜まりとなっていった。
 セイはそのスラムから連れてきた少女だ。
 厳密に言えば「ヒト」であり、スラムにいる者たちは世間では人間として扱
われることの無い存在とされている。
 彼らは首都圏に入ること、衣類を身に付けることを許されず、人間の居住区
に入る場合には首に堅牢な鍵の付いた首輪を付けられる。この首輪によって居
場所の確認や、掟を守らなかった場合の処分がなされるのだけど人間の預かり
知らない所でもヒトは生まれ、死んでゆくので完全な管理というのも難しいら
しい。
0228スッポン4/52014/11/29(土) 01:38:57.54ID:ttrMYGjm
 僕が10歳になった誕生日に父さんが考えたプレゼントはヒトの子だった。
ヒトだけでは首都圏に入ることは出来ないが、家長の一任によりヒトをペット
として扱う事が出来る。決められているのは暴力などにより故意に死なせては
いけないという事だけで、家に連れて行く行為がどういう目的であっても良い
そうだ。
 母さんを早くに亡くし、兄弟がいなかった僕には家族が増えることが単純に
嬉しかったことを覚えている。
 父さんが連れてきた日に名前を付けた。物静かな様子や色素の薄い肌のイメ
ージから「静」と名付けた。しかし父さんには
「ヒトに漢字をなど勿体ない。カタカナで十分だ」
と言われてしまった。その当時の僕には父さんに反論する勇気も強さもなかっ
たので、そのまま従ってしまった。
 セイが静かだという印象を持ったのは、父さんが連れてきた時点で言葉を知
らなかった事が理由で、きっと性格などでは無いのだろう。現にセイは僕が教
えた言葉を使ってコミュニケーションを取っている。

 しかし、父さんがセイを連れてきた本当の理由は僕を喜ばせるためなどでは
なく、家内に身分の違う存在を置くことで上下社会を教え込もうとしていたの
だということを僕は知っている。優しすぎる僕の性格を父さんは疎ましく感じ、
人を踏み台にしてでも高い地位に登らせることを望んでいるようだ。「この国で
成り上がれ」なんて言葉もよく口にする。
 僕は人間として平和に暮らしていれば満足で、欲を言えば教師になりたいと
いう夢がある。その練習として父さんや里中さんに内緒でセイに教育を施して
いるという訳だけど。

 父さんの意に反して僕は家族同様のご飯を食べさせ、衣服を与え、内緒で教
育をしたり、セイを人間たらしめるための世話をしているということだ。でも
正直に言えば、性徴が始まっている女の子が何もわからないまま家の中を裸で
徘徊している方が嫌だと僕は思うんだけど……。
0229スッポン5/52014/11/29(土) 01:39:32.85ID:ttrMYGjm
 セイが家に来て7年。細い四肢と色素の薄い肌は変わらない。強いて言えば、
しっかり食事をとる事が出来るので体つきが少しは健康的になったように思え
る。その上で言葉や知識も身についたのだから、もはや人間と違いは無い。あ
るとすれば――
「秀祐。時間……」
 首に付いた鈴を鳴らしながらセイが話しかけた。どうやら考え事をしすぎた
らしく、時計は7時半を指している。
「え? あ、ありがとう、セイ。行ってくるね。くれぐれも言葉は出さないよ
うにね?」
「……うん」
 学校に向かわなくてはいけない僕のいない時間を案じて、忠告をする。

 鈴の付いている首輪が、セイをヒトたらしめている唯一の壁。それを打ち破
るべく、僕は不本意ながら父さんに従うことでセイを庇護しながら、夢に向か
って進むしか無いと実感するのだ。
 いつか、僕自身が家長となって安定した生活を送ることが出来るようになれ
ば、その時は本当の家族になれるだろうか……。
0231名無しさん@ピンキー2015/01/23(金) 11:14:32.74ID:w0z7ALYm
乙です
0233名無しさん@ピンキー2015/05/19(火) 07:32:44.68ID:+0uhufmI
あげ
0236名無しさん@ピンキー2016/05/07(土) 23:49:12.97ID:Z2wWLuQs
無口っ子の手を急に握りしめたい
0237名無しさん@ピンキー2016/08/08(月) 09:31:23.25ID:ZFcUO7V+
ビクッとなるのか、それとも「……何?」みたいにクールに返されるのか
0238名無しさん@ピンキー2016/09/17(土) 20:36:56.77ID:tZ79JfWC
無口というかもう完全にアスぺの子が中学時代にいたな。
俺から見たら普通にかわいい子だったのに、男ども全員からなぜかひどい暴言をあびせられてた。
まあオレも似たような境遇(ADHDアトピー)だったからその子のなにが変なのか気付かなかっただけかもしれないが。
ただ女子からはかばわれてたんだよね。
まあそれはともかく、いくらガイジでも可愛けりゃ目をつけるやつもいるわけで(俺)。
どういうきっかけがあったか忘れたけど、オレがそのガイジ女子の家に同行することになったんだ(たしか担任の指示で)。
ま、ぶっちゃけ同類だったからな・・・
他者から見りゃ五十歩百歩だったかもわからんが、たぶんその女子のほうがガイジ度は高かったとおもう。
時刻は4時ごろだったかね、たしか何かの課題を二人でやれとかなんとか・・・まあそれはおいといて。
おれはもう唐突に率直に言ってやったね。

「お、おお、おおまええろいのすすスすぅ〜…すすきかっ」

・・・どこが率直になのかって? しょうがないだろ吃音でもあったんだから。
で、おれのバカみたいな告白(?)になんとっ、彼女はにやけながら首を縦にこくこくふったんだ!
(彼女のデフォ表情がにやけ顔。ニヤニヤが八割以上)
おれはもう興奮の極致に達して、「じゃじゃじゃぁぁあぁえぇえエッチすゥーー…――るぞッ!!」
またもやうなずく彼女。
「じゃあ座ろうか!」
↑本来はどもりまくりだが面倒だから省略。
彼女はとにかく柔順だった。
名前? カナでいい?
おれはカナをすわらせてまずセーラー服を脱がせようとするが、チャックがうまくはずれない。


中略(おい)


まあ結論からいうと前戯はしたが本番はできなかった。
乳首を舐めた舌の感触や音、意外と剛毛だった秘処のながめ、目を閉じて口を開けて喘いでた彼女のかわいい顔。
たくさんおれのオナネタになった。
ただ、性知識に乏しかったオレは愚かにも本番しようとして、挿入二歩手前くらいで興奮しすぎて射精しちまった。
以後も卒業するまで関係はつづいたけど、結局本番はできなかったな。
ただ指マンでだんだん感じるようになって音がエロくなってきたのにはそうとう興奮した。
しかも何もいわずともオレに手淫を見せつけるようになってきたけど、それに関してはむしろ危険をおぼえたな・・・
あと、顔射しちゃったのににっこり笑ってくれたのもカナだけだな・・・
0239名無しさん@ピンキー2016/10/23(日) 00:48:35.78ID:Z+gG932w
無口っ子に唐突にトリックオアトリート仕掛けるとどうなるの
0240名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 08:02:33.19ID:lHq9l1qm
>>239
ドヤ顔で手持ちの飴を差し出してくるも、10秒後くらいに「あれ、もしかして持ってないふりしてたら手を出してくれた?」って気付いて落ち込むよ
0241トリセツの人 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/24(火) 23:34:15.33ID:HieD7eXO
お久しぶりです。
何年振りかになりますが、2人のお話を書きたくなって来ました。
3レスほど、お借りします。
0242フクヘイ1/3 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/24(火) 23:36:00.97ID:HieD7eXO
――――――――

「――また、か……」
 目が覚めて、先ほどまでの光景が夢であった事に安心しながら呟く。ここ最近、同じ様
な夢を見る事が多い。
 母親同士が仲の良い事から小さい頃から面識があり、幼なじみであった茉莉と彼氏彼女
の関係になった俺は、悩んだ末に一歩先の関係へと進んだ。
 悩んだと言ってもお互いが望んでの事だったのでそれは良かったのだが。よほど嬉しか
ったのだろうか、頻繁に茉莉の淫らな姿を夢で見るようになってしまった。
 目覚めた時に身体の一部が緊張しているのは生理現象として理解出来よう。しかし夢の
内容が問題だ。
 何故か夢の中での茉莉は誰だか解らない男と行為をしていて、普段は言わない言葉遣い
や、しないような行動を取る。俺はそれをビデオカメラ越しの映像として客観的に見てい
るだけ……。
もちろん、茉莉と他の男をさせようという気持ちも、それを見たいだなんて欲求は無い。
ただ、夢の中で見る“卑猥な言葉を小さな唇から放つ茉莉”に興奮してしまった勢いで、
初めて夢に見た日の朝にSMのような事をしてみようか、という提案はした。俺が急に変
な事を言ったもんだから茉莉は顔を赤くして返事に窮したけれど肯定の頷きはもらう事が
出来た。
 興味があったと言われるのも微妙な所だが、いろいろ試してみるのも悪くは無いと思う。
「せっちゃん、おはよ」
「ん、おはよ」
 俺の頭の中と違って現実の茉莉は今日も晴れやかな面持ちでいて、いやらしい言葉など
話しそうにない可憐さだ。
「どう、したの?」
「今日も可愛いな」
 真っ直ぐ見つめ過ぎている俺を怪訝な顔で見返す茉莉に言うと、瞬時に赤くなった顔で
「ありがと……」と返してくれる。これが彼女の正しい姿だ。そう考えてほっこりした気
分で学校へ向かう。
0243フクヘイ2/3 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/24(火) 23:37:16.26ID:HieD7eXO
   ○

「急なんだが、今日から1人クラスメイトが増える。入ってこい」
 朝のホームルームで担任の沢井が転校生の来訪を説明する。こういうのは前もって連絡
があるんじゃないかと考えると、よほど急な事情なのだろう。
 教室の前の扉から、見慣れない制服を着た男が入ってくる。
 ざわめくクラスメイトの声を無視する様に、整髪料で髪を尖らせた男は黒板に自らの名
前を書いてゆく。
「勢多勇貴です。昨日までは関西にいてました。よろしくお願いします」
 聞き慣れないイントネーションで話し始める転校生はなんだか人懐っこい……悪く言え
ば馴れ馴れしい感じがする。声も少し媚びを売っている風にも思えた。
「趣味は歌うこと。あ、ニコ動で歌い手もやってるんで、応援したってください!」
 ……何やらエキセントリックな奴が転校して来た、という事はよくわかった。周りの表
情を見ても唖然としている人、ちょっと引いてる人が大半で、先ほどまでは十二分にあっ
た転校生への興味が半減したように思えた。
「あ、先生。僕目ぇ悪いんで前の席にしてもらえます? あ、この可愛い女の子の横が見
やすいです」
「そ、そうか。じゃあこの列は1つずつ下がってやれ」
 転校生が見せる脅威のマイペース具合に、頑固者で通っている沢井がたじろいだ。
それを見て吹き出す生徒が何人かいたのだが、俺は笑ってはいられなかった。何せ転校
生が指定した席の隣の女子――もとい、勢多が可愛いと言ったその女子が茉莉だったから
だ。

   ○  ○

「びっくりしたねー。あれ」
「おお」
 休み時間が始まってすぐに俺の席に来たのは神田だった。先ほどの爆弾発言があったと
は言え、やはりみんな転校生に興味はあるのか勢多の周りに人だかりが出来ている。
「神田は興味無いのか?」
「あーいうのはチャラ過ぎて無理」
 手をひらひらさせて言葉を返す神田に、以外だ。というのは失礼だろうか。
「やっぱり誠実さがあって、一途に1人を見つめるような男が良いよ」
 などと言いながら送ってくる妙な目線に気付いて、神田に目を合わせる。
0244フクヘイ3/3 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/24(火) 23:38:36.18ID:HieD7eXO
「茉莉と話しに行けば良いのに。隣にあんなのが来て不安じゃない?」
 心配しているのか茶化しているのか、どうやら俺が茉莉の席の方へ目線を向けていたこ
とは気付かれていたらしい。見透かされている様で何だか恥ずかしくなる。
「大丈夫だ。俺と茉莉の関係はずっと築いてきたもんだ。今更覆らない」
「うわー、ノロケるねー」
 長い付き合いで培った関係を信じるのは、経験則から見ても問題は無いはずだ。それに、
口外はしないが男の嫉妬は格好悪いとも思っている。
「でも慢心は良くないな。うん、良くない」
 充。急に現れて心の声に相槌を入れるな。
「あれ、充君じゃん。この時間に珍しいね」
「いやあ。作者のご都合主義で関西からやってきた自意識過剰男子を見てやろうと思って
ね」
 突然の充の声に神田が反応する。だから作者とか言うな。
「紗織ちゃんは人だかりに入らないの?」
「チャラい男に興味は無いの」
「しかし鼎ちゃん、随分と彼のこと見てるね」
「あいつ、自分からあの席を指定したのよね。茉莉に気があるのかもって話してたの」
 既視感を覚えるような会話が繰り広げられる中、聞き捨てならない言葉が耳に入った。
茉莉の方を見る。隣の席に人集りが出来た事で、自分の席を立つことが出来ないことへ
の不満気な視線を勢多の方に目を向けているのがわかった。
 自分からクラスメイトに話しだせない茉莉の事、転校生には尚更だろう。助けてやるか。
 そう思い立って茉莉に近付く。が、それより早く勢多が動いた。
「君もこっちにおいでや。僕と話したいんやろ?」
 自分の席から少し腰を上げて茉莉に手を差し伸べている。おいおい。言うに事欠いて茉
莉がお前と話したいだと? 自意識過剰にも程があるぞ。
「茉莉、神田や充もいる。向こうに行こう」
 自らの為に出来た人集りに無理やり連れ込もうとする勢多の行為に戸惑う茉莉の、反対
の手を引く事で横槍を入れる。
「せっちゃん……」
 俺が近くに来た事で茉莉が安心した顔になる。
「そんなん、会った初日でせっちゃんやなんて照れますわぁ」
 しかし、何故か勢多が反応した。その上、余りの事に言葉を出せない俺たちに「え? せ
っちゃんの『せ』は勢多の『せ』でしょ?」等と抜かす。自意識過剰、ここに極まれり。
0245 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/24(火) 23:39:47.69ID:HieD7eXO
今日は以上です。
続きはなるべく早く、頑張りたいと思います。
0246 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:51:58.48ID:roEA7Pce
続き行きます。

5レスお借りしまして、そのまま帰ります。
続きはまた後日。
0247フクヘイ2 1/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:53:02.86ID:roEA7Pce
   ○  ○  ○

「で? それからも止まない転校生からのラブコールに辟易した鼎ちゃんを守るために普
段は自分から誘うことなんて全くない俺のクラスに昼食を取りに来た。と」
 昼休みが始まって隣のクラスに行くと、俺の後ろに控える茉莉と神田を見て全てを察し
た充に皮肉を言われた。
「人聞きの悪い事を言うな。まあ、いつもは来てくれて助かってるよ」
 俺が感謝の意を表すと充はふてくされた表情をしていたのを崩した。のだが……
「でも、隣のクラスに避難ってのは余りにも凡庸な手だね」
 そのまま俺たちの後ろを見ながら「だって一緒に来ちゃってるし」と続ける。釣られて
視線を向けると、充の言う様に奴がいた。
「いやぁ、茉莉ちゃんは隣のクラスの友達も僕に紹介してくれるなんて。さすがは僕の未
来のお嫁さんですわぁ」
 馴れ馴れしく肩に手を置こうとする勢多から茉莉の身体を引き寄せる。誰が誰の嫁だ。
「高校に入って1年間、ずーっと一緒にいたのを見てた俺たちなら雪と鼎ちゃんの事はわ
かるけど、転校生なら仕方ないからね。きちんと説明してあげれば?」
 充が俺の行動を見て、諫める様に囁く。そうするのが一番手っ取り早いのかも知れない。
「そうや! これからもっとお近づきになる為にデートしません? 遊園地とか、水族館
とか。近場なら今日この後でも行けるでしょ?」
 悩める俺をよそに勢多が茉莉をデートに誘い始める。……勢多が俺のことを意識した上
で会話をした形跡は、おそらく今日1日の内でまだ1度も無いのだがそれはこの際置いて
おく。
「……え?」
 突然の事に固まってしまう茉莉。そして優しい性格から断り方を知らない為、言葉に詰
まってしまう。
 こんな相手に気を使う必要は無い。断れ。断ってしまえ!
「じゃーさ、勢多君と茉莉、私とトリセツでダブルデートにしよう」
 俺が必死の思いで念力を送っていると、横から明後日の方角を向いた言葉が飛んでくる。
「な、神田?!」
「ナイスアイデアやね。突然2人きりなんて無理やもんね。茉莉ちゃん、他のカップルも
いてるならよろしいでしょ?」
 俺の神田へのツッコミに返答は無い。整理の付かない頭のまま充の方を見てみると、奴
もまた、唖然とした表情をしていた。
 強く押されると引けない性格が災いしたか、それとも俺や神田が一緒にいるならと安心
したのか、茉莉はたどたどしく頭を垂れてしまった。
0248フクヘイ2 2/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:55:24.91ID:roEA7Pce
   ○   ○   ○   ○

学校帰りに都心部に出た俺たちは、簡単な遊園地に来ている。俺の横には神田がいて、
前に茉莉、その横に勢多……。どうしてこうなったのか、いくら考えてみても纏まらない。
 直接的な理由なんてのはもちろん、神田が「ダブルデートにすれば良い」だなんて言い
出した事に違いないけれど、そんな事を言い出す理由が皆目見当付かないのが問題だ。
 例えば、俺と茉莉の間に神田が混じり始めた進路調査の件だって一緒に考えて、いつの
間にか仲良くなって勉強を教える間柄になった訳だ。
 その後に俺と茉莉が一歩進んだ関係になる時だって、充と一緒に切欠をくれた。それ以
降も俺と茉莉に頻繁に接していたはずだ。それなのにどうして勢多の横槍に荷担するよう
な真似を……。
「あのさー、私と隣がそんなに不満なワケ?」
 考え事に浸る俺に神田が文句を垂れた。
「いや、そういう訳じゃ……」
 絶叫マシン、ゴーカート、シューティングゲーム、ある程度のアトラクションをこなし
たが、その全ては神田とペアになる様に勢多が仕組んだ。茉莉と2人で楽しめたなら、と
までは行かないが多分、やはり勢多がいる事が不満の大きな要因だ。
 神田への疑問は積み重なるが、仲の良い友達として楽しくない訳が無い。ただ人数の都
合上あと1人、例えば充がいると安心この上無かったが。
 その旨を神田に伝えると「ふーん」などと冷たく鼻を鳴らされてしまった。あれ? 何
かまずい事を言っただろうか。
「そろそろ5時も過ぎたしさー、最後にアレ乗ろうよ」
 戸惑う俺を置いて、神田が前を行く茉莉と勢多に提案をする。「アレ」と言いながら指が
差している方向に有るのは観覧車だった。
 あれに乗るのか? この4人で? 居たたまれないぞ?
 そんな俺の思いをよそに「良いなぁ」とはしゃぐ勢多に、神田が言うのなら、とぎこち
なく頷く茉莉。茉莉は今日、この行事を楽しんでいるのだろうか……。終始2列行動にな
っていて表情を見られていないことと、考え込むことが多くて確認できないでいた。今、
渋い表情をしている理由が俺と同じであれば良い、なんて考えるのは良くない事だろうか。
 乗り場に付いて列に並ぶ。ゴンドラが1つ帰って、また昇って行くそれに乗るために待
つ姿は黄泉の河を渡る船を待つ姿に似ているんじゃないか、などと考えているのは今の俺
の心境だからだろう。
 ゴンドラの目の前まで来て、また1つゴンドラが上がっていく。俺たちの番になって、
神田が少し先行して勢多と茉莉に乗り込む様促すと、係員に「行って下さい」と宣った。
「お、おい、待てよ!」
 俺の言葉が早かったか、茉莉の吃驚する顔が早かったか扉は閉められて上がっていく。
 どういう事かと問い詰めたい俺に向かって、神田は何時になくしかめた顔付きで「乗り
なさい」と言いながら次のゴンドラへと俺を促した。
0249フクヘイ2 3/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:56:28.68ID:roEA7Pce
 ……近すぎるゴンドラ同士と言うのは中の様子が見えづらい。こちらが下で目的側が上
とすれば尚更だ。しかし、俺はそちらだけを構ってはいられないらしい。
「どういう事だよ。今日1日、おかしいぞお前」
 ふてくされた顔で真正面に座る神田に問い掛ける。ちょうどこの際俺の考え事を消費し
てやる。
「どういう事も何も、前にも言ったよね? 今トリセツと話してるのは私なんだ、って」
 そう言えば、と思い出す。俺たちが話すようになった切欠の日にも、俺は神田を蔑ろに
していた。
「あんたはさ、もっと周りを見るべきなんだよ。最近だってずっと茉莉と2人の事ばっか
考えてるでしょ」
 詰めるように話されると反論が出ない。事実、最近の俺は如何に茉莉と2人で楽しく過
ごすかを考えている事が多い。
「でも、それに関しては神田も後押ししただろう? 充のアイデアに乗って、2人で勉強
をするようにって」
「そりゃ、大切な友達が望んでるならね」
 短く鼻を鳴らすと、如何にも機嫌が悪いという顔をする。
「じゃあ……今、この状態を茉莉が望んだってのか?」
「さぁ? あの子喋らないからわかんないもん」
「俺が、この状態を望んでるって言うのか?」
「あれ? トリセツって私の友達だったんだ?」
 ああ言えばこう言うといった具合に悪態をつく神田に苛々する。
「お前は、高校に入ってからほとんど初めて、茉莉が仲良くなった俺以外の生徒なんだよ……。
それは俺も嬉しかったし、一緒に仲良く出来ればって思ったんだ」
 これは事実だ。普段、俺の考えが至らずに蔑ろにしてしまう事はあれども、茉莉の成長
に関わっている相手ともすれば感謝の気持ちはもちろんある。茉莉が「伝えたい事は話す」
と決めた事にも絡んでいるのだと本人から聞いた事もある。
「それが、お前……」
 考えが纏まらず言葉に詰まる。普段から考えないようにしている、相手を責める言葉と
いうのは身に付かないのが常だろう。
「……はーぁ」
 俺の言葉に満足しなかったのか神田が長い溜め息を吐いて、狭苦しいゴンドラの中で立
ち上がった。何をするのかと考えたその時、視界に握り拳が飛び込んできた。
0250フクヘイ2 4/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:57:22.41ID:roEA7Pce
「ぐ……ぁ」
 唐突に食らわされる腹部へのパンチに目が飛び出そうになる。
「顔は後でわかっちゃうからね。そこで我慢するわ」
 痛みに身悶えする俺を見下しながら、神田は言葉を続けていく。
「私だってね、充君からいろいろ聞いてあんたらが依存してるのをやめようとしてるのく
らい知ってるよ。でもね、人は簡単に変わらないでしょ? 茉莉は少しずつ他の子と話せ
る様になっても全部を伝えられる訳じゃ無いし。あんただって茉莉の手助けをやめようと
しててもやっちゃうでしょ? じゃあ素直になれば良いじゃない。他人の行為を拒める程
に茉莉はまだ強くないなんて、私でも知ってるわよ。昔っから仲の良いあんたらだからお
似合いだって言われてるのに、トリセツがトリセツやめたら違和感も出るでしょうよ」
 最早、殴られた腹が痛いのか、言葉の雨が痛いのか、わからなくなってきた。
「正直ね、私は茉莉に尽くすトリセツは好きだったよ。でも今みたいに慢心してる鳥井雪
にはなんの興味も無いわ。茉莉もね、儚い系女の子で可愛いってのは私も思うけど、嫌な
事を嫌って言えないのは周りが迷惑するし、男に好かれて喜んでるように見えて嫌な気分
になるよ。そんなんだったら私がトリセツを奪ってやるって思っても、こんなポンコツな
らいらないし、どうしようも無いじゃない」
 ただ、やはり神田は茉莉や俺の事を大切な友達だと思って、何が必要かを考えてくれて
いるんだと実感する。
「私はどうしようもない落第生だけどね、私の友達は凄いんだって言わせてよ」
 現に、今まで辛い言葉を出してきた神田の声は涙で震えている。
「……神田、ありがとう。目ぇ覚めたわ」
 鞄からタオルを取り出して神田に渡してやる。涙と同時に鼻水を拭う音がしたのは気の
せいという事にしよう。
「全く……こんな事すんの1回だけだからね」
 少し顔の晴れた神田が言うのに対して、俺もそう願いたいと腹を撫でた。

 俺と神田が一段落付いた頃にはゴンドラはとっくに下り始めていて、角度から偶然、茉
莉の姿が少し見えた。隣に座る勢多に肩を抱かれている姿が……。
0251フクヘイ2 5/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/27(金) 23:58:30.71ID:roEA7Pce
   ○   ○   ○   ○   ○

 嫌な予感を巡らせながら、早く着けと乗り場への時間を過ごす。5分程すると前のゴン
ドラが着き、勢多に肩を抱かれた茉莉が覚束無い足取りで降りていく。何かされたのかと
苛立ちが募る中、少しして俺たちのゴンドラが着いた。とっとと降りて文句の1つでも、
と思った瞬間には神田が飛び出して勢多の首もとを締め上げていた。
「やめ……くび……しぬ……」
 一足遅れて降りた俺の耳に、今にも息絶えそうな勢多の声と共に「紗織ちゃんのばかぁ……」
という茉莉の声も聞こえた。
「……とりあえず、ここは邪魔になるから場所を変えよう」
 周りがヒートアップし過ぎて冷静になれた俺の一言で、休憩所にあるベンチへと移動す
る。道中、女子高生に首を引きずられる男と、泣いている女子高生を宥める俺の姿はさぞ
かし異様に見えただろう。

「……あのですね? 茉莉ちゃんは観覧車に乗ってすぐ泣いてしもたんであって、僕は何
もしてないんです」
 勢多の言葉を確認する為に茉莉の言葉を待つが、「紗織ちゃんのばかぁ……」と先ほどの
言葉を繰り返すのみである。
「茉莉、俺が悪かったな。俺が早く『茉莉は俺の彼女だ』って言えば良かったな」
 茉莉の片手を繋ぎ、頭を撫でてやる。端から見ればバカップルと思われるかも知れない
が、茉莉を落ち着かせるにはこれが一番だ。
「え!? なんなんそれ! もっと早よ言うてや……」
 茉莉への囁きに絶望する勢多。でもお前、今日ずっと俺の言葉を無視してただろう、と
いうのはこれ以上話を拗らせない為に言わない方が良いのだろう。
「紗織ちゃんが、せっちゃんと一緒って、言ったから来たのに……」
 落ち着きを取り戻し始めた茉莉が心情を吐き出し始める。
「わたし、安心したのに……急に2人にされて……」
「うん、ごめんね」
 俺の反対側にいる神田が茉莉を抱き締めるのに従って、頭を撫でていた腕を下ろす。
「紗織ちゃんも、せっちゃんも、一緒が良かった……」
「そうだね。私も」
「でも、わたし、嫌って、言えなかった……」
「大丈夫。私も、トリセツもわかってるから。それに、これからはちゃんと嫌なことは嫌
って言うんだよ?」
「うん……」
「トリセツにお説教したからね。大切にするならちゃんと言うんだよ」
「わかった」
 2人で話を進める女子に放置される男2人。勢多と顔を見合わせるのも難なので茉莉を
見つめていると、心なしか穏やかな表情に戻っていることに気付く。
 神田もそれを悟ったのか、茉莉の身体から手を離して立ち上がる。
「よし、じゃあ2人で仲直りエッチでもしなさい! 私たちは帰る!」
 そんな事を言い放ちながら勢多を引っ張って帰って行く。いや、こんな所でそういう事
を言うな!
「なんだよそれ! しねぇよ!」
 大声で言われたのが恥ずかしくなって、視界で小さくなっていく神田に反論をする。し
かし、隣に座る茉莉に「……しないの?」等と聞かれてしまっては「……するけど」と答
えるしかなかった。
02521/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:18:17.05ID:xlhn8VlB
「茉莉……」
「ん、せっちゃん……」
 日曜日の、しかもまだ日の明るい時間からお互いの名前を呼びながら唇を啄み合ってい
た。重ねる唇が離れる度に漏れるお互いの名前の間に、2人の吐息や唾液が舌で運ばれる
音が混じっているのが聞こえて更に興奮が高まっていく。
 母さんが父さんと出掛ける予定のある今日を見計らって恋人同士の交わりの為に茉莉を
部屋に呼んだ。
 いつも通りの2人での登校時間に「次の日曜日、親が遅くまで帰らないらしくて」なん
て誘い文句を言うと茉莉は瞬く間に顔を赤くして、首をコクコクと素早く縦に振った。き
っと俺の言いたい事を悟ったのだろうと思うと嬉しくなった。
「ん……」
 名前を呼び合う事を辞めた俺たちは唇を重ねたまま、その隙間から挿し入れた舌を絡め
合う。息継ぎに混じって出てくる鼻にかかった声がいやらしい。
 お互いが背中に腕を回して抱き合う形で密着しているにも関わらず、まだ足りないと言
わんばかりに身体を擦り付け合う。茉莉の柔らかくも控えめな胸の膨らみが押し付けられ
てくるのを楽しみながら、ジーンズの下で膨らんでくる俺の物を押し付けてみる。自らの
腿に当たる硬い違和感に気付いたらしく、茉莉は身体全体でぴくりと反応してから今度は
腰を押し付け返してくれる。
 なんだか今日の茉莉は積極的だ。俺の部屋に入った時にもすぐに正面から抱擁を求めて
来た事からわかっていたが、これは俺の予想以上だと思う。

ふと、ここ最近頻繁に見る『茉莉の淫らな姿の夢』を思い出しては後悔する。
 夢の中での茉莉は誰だか解らない男と行為を致していて、その上普段はしない卑猥な言
動行動を取る。
ただ、夢の中での茉莉の可愛らしい小さな唇から卑猥な言葉が放たれているその光景に
興奮しなかったと言えば嘘になる。現段階で俺は茉莉にそんな言葉を使うように教えた
事は無いから実際にはあり得ない。あり得ない事だからこそ、興奮するのかも知れない。
「どう、したの?」
考え込んでいる俺を不審に思ったのか茉莉が問いかけてくる。いつもと同じ、いやらし
い言葉など言いそうに無い可憐な彼女の表情に安心する。
「茉莉、愛してる」
「せっちゃ……わたしも、あいして、る」
 頬や額、唇を啄み、舌を絡めながら愛を囁く。愛情は穏やかな感情だと聞くのにどんど
んと気持ちは昂っていくことを不思議に思う。
02532/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:19:24.63ID:xlhn8VlB
 茉莉が着ている白いブラウスの下から背中に右手を潜らせて下着のホックをずらす。身
体への締め付けが減ったことで気が緩んだのか、力の抜けた茉莉の右手を導いて俺の息子
に触れさせる。硬い布地の上からではあるが柔らかい掌の感触がわかる。
「せっちゃん、今日、すごい……」
 顔を火照らせながら囁く茉莉が腕を動かし、掌を擦り付けてくる。その手つきはさなが
ら電車で痴漢を働く手つきにも似ている気がした。
「茉莉……それ、良い」
 絶妙な力加減に思わず声が出る。それを聞いた茉莉が満足気に「そう?」と薄く笑んで
擦り続ける。
「痛く、ない?」
「……ちょっと」
 衣類の下から誇張する俺の息子を気にかける茉莉に答えると、ジーンズの前ボタンを外
し器用にジッパーを下ろした。思い通りに脱がせられないジーンズを無理やりずらすと、
ボクサーパンツの前にある重なった布地を両脇に開いて俺の下半身を露呈させる。
「ねぇ、せっちゃん。すごく硬いよ?……もう、舐めても良い?」
 愛撫に続けて、茉莉は言葉でも積極的に迫ってくる。まるで俺が見た夢の様に。もちろ
ん今この身に起きている感覚は事実の筈で、決して夢を見ている訳ではない。
 どうして、突然この様な言い方、触り方が出来るようになったのか……。
「……んっ」
 考え事をしている間に茉莉は俺の足下に跪き、息子を口唇でくわえ込んでいた。柔らか
く暖かな感覚に思考がとろけそうになっているのを知っているのかいないのか、唇を窄め、
頬を凹ませ、頭を前後に動かす事で俺を更に喜ばせようとする茉莉の淫靡な表情に気を取
り直す。
「茉莉……」
 いつもと確実に様子の違う彼女の姿に疑惑を抱く。もしかして俺の知らない間に変な男
に調教されているんじゃないか、と。
「ん……せっちゃんの、もっと大きくなった」
 息子の様子を唇で、舌で感じた茉莉が顔を離す。もはや茉莉の奉仕で興奮したのか、茉
莉が別の男にヤられている姿の妄想で興奮したのか、自分でもわからない。ただ、そのま
ま立ち上がった茉莉が俺の耳元で「せっちゃんの、ちょうだい……」と囁いた時点で俺の
理性はぷつりと切れた。
02543/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:20:20.66ID:xlhn8VlB
   ○

「あっ、せっちゃ……いいっ」
 ベッドに向けて茉莉を押し倒して、後ろから息子を挿入した。身に付けていた黒のスカ
ートは腰まで捲り上げ、初めて見る水色の下着は履かせたまま横にずらした。コンドーム
は……していない。
 いつもより荒々しく腰を動かしながら、茉莉の弱点を突くことは忘れない。
「茉莉、何が良いのか言ってみろよ」
 きっと、俺の求めている答えを知っている。そう確信しながら問い掛ける。
「せっ、せっちゃんの……」
「俺の?」
「お……ちん、ちん。きもちい……」
 激しいピストンを受けて息を切らせながら、期待通りの言葉を返して来る。いや、厳密
に言えば少し惜しい。
「俺のちんぽ、好きなのか?」
 言葉の違いでサイズの差を感じてしまうのはつまらないプライドだろうか。そんな事を
考えながら確認をする。
「うんっ。せっ、ちゃんの……お、ちんぽっ、すきぃ」
 肉の薄い茉莉の尻と俺の腰が当たって生じる乾いた音が続いている中、俺と同じ方向に
顔を向けていて表情の見えない茉莉の言葉が返ってくる。
 堪えている様な情景に嗜虐心が沸き、濡れそぼって色の濃くなった水色の下着の上端を
捲って、尻の真ん中に親指を当てる。
「やっ、そこ、違う……」
 もしかしたらもう開通しているかも知れない、まだ見ぬ道を進むべく両手の指で穴を左
右に開いていく。
「お、おしり、だめぇ……」
 指を少し進ませると、ただでさえ狭い秘裂が更に締まっていく。どうやらここも茉莉の
「当たり」らしい。呻くような喘ぎ声を出しながら身体を震わせ、俺の息子を締め上げて
くる。
「今、生でやってんだぞ。そんなに締め付けたら中に出ちまう」
 指と腰を止めずに、一応の確認をする。もちろん抜くつもりは無く、完全に俺は茉莉を
孕ませるつもりで行為に至っていた。
「あっ、んっ……いいっ、よ」
 否、少しだけ拒否される事を期待していた。その方がまだ清純な茉莉を感じられるし、
そんな茉莉を汚す事で俺の嗜虐心も満たされたかもしれない。
 俺の前で四つん這いの姿勢で腰を振る彼女は依然として、顔を下に向けたままだった。
02554/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:22:33.17ID:xlhn8VlB
「ははっ、茉莉は淫乱な彼女だな」
 表情が見えない事に不満を感じ、左手で茉莉の尻を叩いた。茉莉は少し顔を上げながら
「あぅ」という短い悲鳴を喘ぎ声に混ぜる。
「ごめっ、なさい」
 こういう場面で謝られると火に油を注ぐ事になる。2度、3度と左手を茉莉の尻にぶつ
けるとその度に喘ぎ声が揺れる。
 先ほどから続けている尻穴への攻撃も相俟ってか、依然として茉莉の秘裂は潤いを増し
ながら締め付けてくる。こうなったら快感に興奮しているのか、痛みに興奮しているのか
どうかもわからないし、もしかしたらわざと俺に尻を打たせる様な態度をしているのかも
知れない。
「茉莉、もう出そうだ」
 ラストスパートとばかりに息子の先端を茉莉の奥へと擦り付けながらピストンを早める
と、茉莉の声も早く、高くなる。
「あっ、あん! せっ、ちゃ……」
「ん?」
 もう少し。もう少しで茉莉を孕ませられる。競り上がる快感を味わいながら、強引にさ
れても尚俺の名前を呼ぶ茉莉の声に耳を貸す。
「せっちゃんの、おちん……だいっ、すき!」
 茉莉が顔を上げながら叫んだ。ようやく見えたその表情はいつもの恥ずかしがり屋の茉
莉の顔で、卑猥な行為や言葉どころか自分の気持ちを伝えることも苦手なのに、それでも
愛情を伝えたいが為に話す時の紅潮した顔付きだった。
 それを見た俺は瞬間的に茉莉の秘裂から息子を抜き出した。ただ、黒いスカートを大き
く汚す様に精液を吐き出してしまった。……中にも少し、出てしまったかも知れない。

   ○  ○

「はぁっ、はぁ……びっくり、したぁ……」
 息も整わないままに茉莉が姿勢を崩して突っ伏した。その声には心なしか喜びの感情が
混じっている様にも思える。
「大丈夫……か?」
「腰、抜けちゃった……」
 彼女に乱暴をした罪悪感から心配をする俺に、茉莉は照れ笑いをしながら答えた。
「悪い……。ひとまず、拭くよ」
 楽な姿勢を自由に取れる様に、俺の劣情がこれ以上茉莉の衣類を汚さない様に、脱がせ
ながらティッシュで拭うと「ありがと」とくすぐったそうに笑って俺を見た。
「やりすぎ、ちゃったね……」
「あぁ……」
 悪意を咎められる子どもの「反省のポーズ」と捉えられかねないが、頭を垂れて茉莉の
目線に合わせる。
02565/5 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:23:32.87ID:xlhn8VlB
「ごめん、ね?」
 ベッドに身を預けたまま、茉莉が謝罪を言葉にする。姿勢は横になった状態ではあるが、
茉莉の表情から「本当に申し訳ない」という感情が読み取れる。
「どうして茉莉が謝るんだよ。謝るのは俺だろう?」
「わたしが、せっちゃんを焚き付けたから……」
 俺の反論はすぐに却下された。どうやら俺の理性が切れた原因は把握されているらしい。
「内緒にしてたんだけど……」
 嫌だ。聞きたくない。嫌な予感しかしない。
 以前の行為よりも上手くなったオーラルセックスも、躊躇いなく出て来る卑猥な言葉も。
その理由を話されるのだろう。万が一、他の男に汚されたと言うなら俺はもう……。
「せっちゃんの部屋のDVD、見ちゃった」
照れ笑いである「えへ」という言葉が続いている中、俺の思考が止まる。
「は?」
「あの、ね? この前せっちゃんの部屋に来た時に、お母さんから隠し場所を……」
「はぁぁ?!」
 一気に情報が入ってきて、理解出来なくなる。俺の部屋のDVD? もしかして「淫語
エッチ」とか「痴女モノ」のあれを? 母さんが知ってた? それを茉莉が見た?
「せっちゃん……?!」
 余りの事に気が抜けて、その場に足から崩れ込んだ。茉莉が心配してくれているが身体
はまだ動かないらしく、精一杯伸ばした掌で俺の頭を撫でてくれた。
「せっちゃんの、強引なのも……きもちよかったよ?」
「避妊せずにっていうのは決して褒められた行為では無いんだが」
「大丈夫。無い方がきもちよかった」
「そういう問題じゃない!」
 反論しながら、アフターピルの処方をしてくれる医者はどこにあるんだろう、と考える。
「せっちゃん」
「ん?」
「せっちゃんになら、何でも……してあげるからね?」
 汗をかいた満面の笑みで放たれる言葉に、俺は安心した。勿論、いつもの純粋な茉莉を
感じた事と、俺だけの茉莉なのだという事の2つの意味で。

○  ○  ○

「ちょっと雪、こっちに来なさい」
 俺が茉莉に乱暴を働いた翌日の話。学校から帰ったばかりの俺を居間にいる母さんが呼
び止めた。
「なんだよ。買い物か何か?」
 いつもの手伝い要求だろうとタカを括って返事をするのだが、神妙な面持ちをしている
所を見ると、嫌な予感がした。
「雪。これを見なさい」
 言うや否や、テーブルにプラスチックのケースを並べていく。ほら……嫌な予感が当た
った。
「これはあなたが隠し持っていたエロDVDです。母さんは悲しいです。どうしてあなた
はお父さんと同じ痴女モノを持っておきながら、言葉攻めには反目するのか……」
「知るか!」

 了
0257 ◆A3nDeVYc6Y 2017/01/31(火) 01:25:55.95ID:xlhn8VlB
ひとしきり書き終わりまして、他の方とバッティングすることもなさそうなので、
駆け抜けました。
途中、sageミスしてしまってごめんなさい。

どなたかの夜のお供になりましたら幸いです。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況