「凝ってるな…」
「ワンマン店長にこき使われてますから」
「はいはい」
普通の会話、普通のマッサージ…でも、凛太郎の大きな手のぬくもりや、耳の近くで感じる息づかいに、カラダが熱を帯びてくる。
「も、もういい」
「えっ?もう?警戒してんのか?こんな場所で襲ったりしないから、心配すんな」
「もう大丈夫…」
「そうか。じゃ、片付けよろしく」
凛太郎がバックヤードへ去り、桜はため息をついた。
「はぁ…」(ドキドキさせないでよ…。さっさと片付けて、先に帰ろ)
ところが、凛太郎のほうが先に帰り支度をして、桜を待っていた。
仕方なく、並んで歩く帰り道、2人きりのエレベーター…
桜が必死に話しをふったり、冗談を言っても、凛太郎は「あぁ」とか「ふーん」とかつまらなそうに相槌を打つだけだ。
(何怒ってんの?変なやつ…)
桜が部屋の鍵を差そうとすると、上からガシッと掴まれた。
「ぎゃっ!」
「…なんでそんなに鈍感なんだよ。今日は…おまえが帰る部屋は…そっちじゃない」
凛太郎は桜の腰をそっと抱き寄せた。
「嫌なのか?」
「…嫌じゃない…と思います」
凛太郎は優しく笑って、自分の部屋に導いた。
「言っとくけど、俺もう、我慢の限界だから」