矢部謙三は、上田と奈緒子を巻き込みながら今回もあっさり事件を解決。
温泉を満喫して東京に帰還した。

「いらっしゃい…あっ矢部さん、いいところに!」
「まーたあいつが来とんのか」

ニヤつく店主を押し退ける。
見慣れた小さな人影。

「あ、矢部くん!」
「…おー、お前か」
「久しぶり。この本、忘れてたから取りに来たの。じゃあね」

呆気ない再会。
駆けていく背中を見送っていると、未来がふと立ち止まって振り返る。

「…矢部くん、貧乳のお姉さんとは仲良くしてる?」
「は?」
「ここで二人でお話してたって。小さい店主さんが言ってたから」

矢部はヘラヘラしている店主を睨むと、未来に近づく。
未来は膨れた顔で矢部を見上げた。

「あ。お前、嫉妬してんのか」
「矢部くん。からかわないで」
「はいはい、ワシの大事なスパイはお前だけやで」
「…ごまかした」
「…あのなあ。あの女は上田先生のもんやぞ。読んだことあるやろ」

未来の手にした本を奪い、上田の連載のページを突き付けた。
貧乳の助手のことが長々と書いてある回。

「えっ。これがあのお姉さん?…アハハハハ!アハハハハハハハ」
「笑いすぎや」
「ねえ。私は矢部くんのものだよね!」
「はぁ?」
「矢部くんが言ったんだよ、私は矢部くんのスパイだって」
「あーはいはい」

矢部は呆れ顔で未来の頭を軽く撫でた。
未来が満足げに笑う。

「じゃあ、またね」
「気ぃつけて帰れよ」
「ありがとう。秋葉くーん、うちまで乗せてってー!」
「ま、またバレてた…」