「…嫌…!!」

――あれ、息ができる。
見慣れた天井。
心臓がうるさく鳴っている。

「…はぁ…嫌な夢だった」
「どんな夢だ」

聞き慣れた声に視線を巡らす。
勝手にお茶を煎れてくつろいでいる大きな男。

「上田さん…?何勝手に上がり込んでるんですか」
「廊下に君が倒れてたから運んでやったんだよ。おそらく熱中症だな」

そういえば玄関を開けた記憶がない。
枕元に置かれた水やタオル。
頭の痛みに顔をしかめると、額の汗を上田がタオルで拭ってくれた。

「ところでyouはこんな話を知ってるか」

上田は団扇でこちらに風を送りながら、うさん臭い霊能力のことを語り始める。
どうせならお前が独り占めしている扇風機を向けろ。
でもそれが上田。ずっとずっと前から。

「…すき焼きおごってくれるなら、謎解き付き合ってあげます」

微笑みかけたら、上田はちょっと動揺してる。
それでいいんですよ。
余計なこと考えずに、私のこと好きでいてください。
ずっとずっと。