ハクイのイシャ #04
「・・・それでは、終礼を終わります。明日は午前診療のみとなりますがよろしくお願いします。本日もお疲れさまでした。」

働いてくれているスタッフたちとの終礼を終えて一度診察室に戻り、ふうと息を吐いて椅子に座る。
スタッフはポツポツと帰り始めたようで、待合室の向こう側にある出入口の方からは「オツカレサマでしたー」と無機質なトーンの声が聞こえてくる。
次第にクリニックから人の気配が消えていく。

オツカレサマな俺は少しボーッとしながら「吉岡、桜・・・」となんとなく彼女の名前を呟いた。
雑務をいくつか片づけて机の周りを整理してPCの電源を切る。

明日は土曜日、午前診療だけだし心身ともに余裕が持てそうだ。
軽く飯でも食って深夜になるのを待った後にC1を流しに行こうか。
通勤の足車にしているエリーゼのキーを手に取って席を立とうとした矢先、トゥーットゥットゥッというリズムがスマホを震わせた。

「いまからひま?」

酒豪と飲みに行く気分ではなかったので「多忙」とだけ返そうとしたが、俺のプライベートを大体知っているこいつに嘘をついたところでまた小言を言われそうなことに気づいた。
すぐさまバックスペースを二度タップした後「飯?どこ?」とだけ書いて送信。一秒とたたずに既読がついた。

「いつものと濃さ来飲んでる」

・・・いつもの所で先に飲んでいると言いたいんだろう。この感じ、すでに結構飲んでいるようだ。
今日も会計は俺持ち、運転代行利用コースか・・・。