「・・・私、ちょっとトイレ行ってくる」
騒いでいたのに少しの間無口になったと思うと、頬を赤らめてトートバッグを片手に足早にトイレに向かっていった。
席を立ちあがるときカサカサという音が聞こえたので、まあそういうことなのだろう。
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マモルと知り合ってもう6年になる。きっかけはTwitterだった。
俺は当時医学生。友達も多い方だったが、家に帰ればいくつになってもおむつが外れないABDL。
自分ながらこのギャップに息苦しさを感じていたし、ABDLであることに後ろめたさを覚えていた。
リアルの友達にABDLであることを隠し続けているせいで、常に嘘をついているような気持ちだったのだ。
そんなこんなで、おむつを履くごとに安心感と虚無感を同時に覚えた。
俺の全てを知って仲良くしてくれる友達なんて一人も居なかった。
ある時俺は思った。
何も隠さず、ありのままで居られる場所と人間関係がほしいと。
俺はTwitter始めた。
俺は課題に追われている中時間を作って、当時好きだったアーティストのライブに行った。
会場の建物の写真をTwitterに上げたのだが、マモルもどうやらそのアーティストが好きだったらしくリプライが飛んできた。
しばらくタイムライン上でやり取りをしたあと、DMを重ねた。
マモルはTwitterに着画をアップすることもあるため男性のフォロワーが多く、出会い目的のDMにうんざりしていたところだったらしいが
ABDLで趣味が共通していて、かつ異性の出会いを求めていない俺のような人間を探していたのだと言っていた。
やり取りをする中で、お互い学生で医療職を志す者同士だということもわかって意気投合した。
LINEを交換してから毎日話しているうちに、お互い好きな画家がいることがわかり一緒に個展に行くことになった。
これがマモルとの出会いだ。
個展で黙々と作品を眺めたあと、そのまま帰るのも味気ないので帰りに近くのレストランに寄ることになったのだが、そこでマモルは酒癖の悪さを発揮。
荒れに荒れて店にも俺にも散々迷惑をかけた翌日、マモルから来たLINEには「ごめん、なんも覚えてないw」と書かれていた。
普通だったら即座に関係を切る程度の出来事があったのだが、
お互いABDL同士ということや、何事も包み隠さず接することができる唯一の友達になれそうだという確信を持てたため
今日の今日までやましいことは全くなく関係は続いている。
それから時が経ち、俺は大学病院に勤める医師となり、マモルは別の大学病院で働く看護師になった。
お互い性癖をこじらせて泌尿器科勤務。底知れぬ好奇心を以て着々と知識と経験を重ねていった。
去年。
泌尿器科のクリニックを開業するから一緒に働かないかと打診をしてみた。
一度はあっさり拒否されたのだが、マモルは優秀でいいやつだと知っていたしどうしてもこいつが欲しかった。
諦めず熱意を伝えつつ、仕事中おむつの着用許可した。
さらにおむつをしたまま働きやすい環境作りをすると約束した。
具体的には、院内のトイレに鍵付きの用具入れを設置すること、
ユニバーサルシートの設置すること、
ゴミシューターを設置すること、
ナース服の改良をすること(おしりのシルエットが目立ちづらい仕様)などなど。
すると「ABDLにこんなにやさしい職場はない」と目を輝かせながら快諾。
こんな感じで、Twitterで知り合っただけの関係だったにも関わらず今や職場の部下として働いてくれている。
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