○月×日

今日は珍しく“お屋敷の見学”という話しです。
しかし、行き先は地下室でした。
このお屋敷の地下には、この前のオムツ洗濯室といい、
大概ロクなものがありません。
どうもイヤな予感がよぎります。

その部屋の扉には、物々しく
【DIC −関係者以外立ち入り厳禁−】
とプレートが掲げられています。

「今日は許可を取っているから大丈夫よ。」
香澄先輩はドアを開けると、中に入りました。
部屋の中は薄暗く、おおきなモニターが幾つもあって、
何人かのメイドさんが、それらを監視して、
何か忙しそうに操作したり、インカムで指示を出したりしています。
一体、何をやっているのでしょうか?

画面には、番号の一覧表と時間らしきものが、画面一杯に並んでいます。

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|   :
| ○No.078 --:--
| ●No.079 05:38
| ◎No.080 10:23
|   :
+--------------------------

各行の先頭には、色付きアイコンが付いています。
赤、青、黄色…信号機と同じ種類の色がありました。
番号の後には、何か時間を刻んでいる行もあります。
そうでない行もあります。
表示している時間は全て違う時間なので、
今の時刻ではないようです。
何がなんだか、全然わかりません。

私はまるで映画のような部屋の様子に、
ただただ、あっけに取られて見ていると、
先輩が解説を始めてくれました。

「ここの正式名称は“Diaper Information Center”、通称DIS、
 平たく言うと、“オムツの集中監視室”、ってとこね。
 バブル時代に、二条院財閥が介護や医療業界向けに開発したシロモノで、
 運用テストも兼ねてこのお屋敷で使い始めたの。
 システムとしての結果は上々だったのだけど、
 でも、実際は“人権がどうたら”、とか言って何処にも
 売れなくてね。
 まったくマーケティング部は何をやっていたのかしら。」

(オムツの集中監視って……何?
 しかも私たちの人権はいいの…??)