絶え間なく続く、打撃音と金属音。

「ぐあ!…ボっ!…ァがッ!?」
環は、雄二にひたすらボコボコにされていた。
(こ、こんな…ハズ…な…)
AGI(素早さ、敏捷性)の数値が150もある雄二と、それがたった5しかなく、かつ
ATK(攻撃力)の数値は100もある雄二に対し、DEF(守備力)数値は19しかない環の当然の結果ではあった。

「いい加減、もうやめておけよ姉貴?な?」
「…う、うるさい!…だ、誰が…ゆ、雄二なんかに!…」

環の本能に刷り込まれた、実弟へのいつもの侮り対応が、完全に裏目となっていた。
(あの、バカ雄二…の…言いなり、なんて……し、死んだって……お、お断り…よ!)

環の装備している金属の鎧や剣は、もはや今の本人には重しでしかなく、
雄二が素手で繰り出す、鋼弾のような連撃を前に、為す術なく沈む一方だった。

顔面に。
腹に。
肘に。
太股に。

(…あ、ぐ?!……痛い…痛い?……わ、私…鼻血でて…る)

気がつけば、環はアザだらけの顔。
ベコベコにされた鎧と盾。罅が入って曲がった剣を持っていて―

「これな?単に、オレ様が実は残忍な奴だったからだー!じゃなくてだな、
姉貴の方が、手加減のない攻撃しようとしてるから、その反撃が熾烈になってる、
てのもあるんだぜ……」

(…は、反撃…スキル…)

環は、それでも本能があのバカな弟に負けるハズない、と無謀な攻撃に走る。

そして着実に蓄積されていく傷、ダメージはやがて―

(…い、いたい……痛いよ、いたい、いたい、いたい、痛!?…ゆ、ゆうじ………や、やめ…て…)

環の精神を、深く深く傷付けていった。