(…え?)
自分達が載っているその飛行機に「本来は乗り合わせるべきでない客」の存在に―
「(――、!?――――!!)」
「(―!……―――)」
(こ、この会話って?……ま、待って!そんなっ!?……)
彼女にとっての不幸は二つ。
あまりに天才すぎる故、外国の言葉がすんなり理解できた、できてしまった事。
それに対して、如何に頭が良いとはいえ、精神的にはまだ小学生並みな事。
そして全ては遅きに失した。
本来は「普通に」ハイジャックされ、何処かの空港に着陸する予定だった、
ちよ達が載っていた飛行機は、ハイジャック犯グループたちが自分達の要望を誰彼に伝える前に
その制御を失い―
やがて飛行機はさる外海上にその機体を叩きつけ、単に「よくある墜落事故として処理」される運びとなった。
「やっぱり…」
「あの時の「アレ」、偶然の事故、ちゃうんやったんやな?」
薄暗い虚空に、問いかけの声が響く。
「その…知らない方が、分からないままでいた方が、きっと「幸せ」だと、思った」
硬質な、それでいてどこか、不安げな女性の声が、その問いかけに答えた。
「…相変わらずやな「榊さん」。図星つかれて、喋り下手の地がまんま出てんで?」
「ぐッ!?…そ、そういう大…春日さんも!変に底意地が悪い所は相変わらずみたいじゃないか」
「あはは!確かにな。それに、別に無理せんと普通に「大阪」でええよ?」
「今や私も「お役人」だ。旧知の間であるからと、気安いあだ名呼びは体裁が悪い…」
「さっすが、今や「警察庁長官」様やもんね〜」
「「成り行き」みたいなものさ。実感はあまりないけどな」