あの日―
関西方面から来た転校生という事から、あっさりと「大阪」というあだ名がついた彼女と
私たちは始め、当たり障りのない雑談をしながらお昼をとっていた。
と―誰かが。
「…滝野さん、て〜」
(うるさい、やかましい、無謀…)
確かに、言われてみれば彼女の暴走っぷりは、単に元気があるとか
やる気がある、だけでは説明つかないくらいなところがあったし。
気がつけば目の前に。
「何でそこまで言うん?!」
大阪さんの顔があった。いわゆる胸ぐらを捕まれて、の状態で。
いつしか私は周りの声に同調して、滝野さんを相当罵倒していた事に気がつかされた。
(…でも、嘘じゃないし!)
その後、私たち二人は周りの人たちの加勢によって強引に引き離され、
リアルファイトは避けられたが―
(勉強ができるでもないし、運動もずば抜けてるわけじゃない…ルックスだって別に
それほどじゃないし。それなのに!―滝野さんは(いつも)私たちの憧れだった榊さんや、
人気あるゆかり先生たちと(いつもいつでも)一緒にいて、(いつも)「楽しそうで」――!)
見れば、大阪さんの瞳は潤んでいた。
でも。
泣いていたのは果たしてどちらだったか? 自分でもそれはわからなくなっていた。
このケンカに勝ち負けをつけるなら、私は勝った側かもしれないが、
「負け以上の支払い」をする事になるとは、この時はまだ気づけなかった―