それから。

「美浜ちよ」の警察組織内の階級をひたすらかけ上がる出世街道快進撃が幕を上げた。
まさに「天才的」なまでな勢いで―
「ただ最初はまず体を治す事が急務でした。しかし全ては上手くいかず、左手だけは義手になってしまいましたし」

「…あ!だからあの時、一時的に日本を離れた?」
大阪の問いに頷きの仕草でちよは答えた。
「まだまだこうした保険適用外的手術は、海外の方に分がありましたから。
そして、体を治した後、私は警察に入る為に、美浜財閥が(その際)に得た治療ノウハウを
警察に提供したであろう事を父にそれとなく打診し、裏の繋がりを確信し―」

榊がそこから話を引き継ぎ。
「その情報を出世する切り札にして、普段は真面目に階段を登り、地盤固めをして
私を含む、幾人かの古い知りあいを仲間にしていったんだ」

「私は?」
大阪は自分を指差す。

「「秘密事、苦手でしょう?」」
「ひど?!ってハモりよった?!」
「ま、まあまあ。でもあの高校にいた皆さんには、早い段階で色々打ち明けたかったのは本音ですよ?」
冷や汗をかいた苦笑い顔のちよちゃんが言う。

「ほんまやわ!ちよちゃんがこんな大人な女になっとるやなんて、もっと早う知りたかったわ!」

それに呼応するように榊がくっくと小さく笑い、意地悪い笑顔で言う。
「それには私も同感だ。海外から帰ってきてからのちよちゃんに、初めてあった時は、私も別人かと思ったからな」
(まあ「別人」と感じたのは、もっと別な理由もあっての事なんだが…)