―目覚めは最悪だった。

なんか頭の中で声がする。
(…う、う〜ん……)
「「ずるい、ズルい…いたい痛いイタイイタイ…くるしい、苦しい苦しい…」」
地獄の釜底でも思わせるような、亡者たちの負の感情の怨念の呻きや悲鳴。その大合唱。

しかし、滝野智には―

(…最近の鶏はずいぶん変わった声で鳴くんだな?外国産?)

で、終わった。

こうして、やたらと動きづらい身体を起こして。

「「……!!」」
まだ耳の奥に木霊する、得体の知れない外国産の鶏の鳴き声を悉く無視し、
箸を握るのにも、服を着替えるのにも以前と比べハードモードだというのに
「さて、日課のちよ助からかいに学校へ登校しますか!あ、後はよみもだ!」
さも当たり前のように振る舞い、普段の日常生活へと回帰していた。

―学校生活(イタズラ)を楽しむ。

智の頭を占める思考はそれだけ。
周囲にとって極めてはた迷惑な、身勝手でかつシンプルなその理由が
今の彼女に時折訪れる、鉄や鉛よりも重鈍な感覚のその身体を、さも当然のように突き動かしていた。

「「…」」
いつしか「鶏たち」も呆れていた。
「「こっちくんな」」と―