少女は自身の存在と、この森の中に至るまでの事を少しずつ思い出していた。
(多分ここは「現実」ではない)
矛盾する話だった。もしも「夢」だというのなら、痛みこそ確かな現実いる証拠、証となるもののハズなのに。
(…「何か」に自分は「恐怖」を感じている。それが分からない…)
追跡してくる者の姿はなく。
たどり着くべき先の確かなビジョンもない。
ただ、その場所に立ち止まる事だけを本能が否定していた―
気がつけば。
森の葉っぱや木々は、その集まりではなく、本来の形をなさない不気味な「何か」へと変貌し、
走る少女の心な不安を嘲笑うかの如く、風のざわめきにのせて不快な声の塊を届けていた。
(……私は、…)
そして、得体の知れないその声の正体は何かの「嘆き」だと理解できてしまった。
(……)
いっそのこと、その「声」に身を任せてしまえば楽にな――
夢から覚めた。
「――あれ?」
そこは、どこかの病院の病室。そのベッドの上。
水原暦は何故か今、大山に自分の手を握られていた。
「ま、まさ……」
「…起きたか。良かった」
「わ、私なんで―」
「記憶、ないか?どうしてこうなったのか?」
暦はそう言われてしばし思案し、やはり分からないと小さく首を振った。
「正直、話すべきか迷うんだが…こうなったら素直に言う」
「う、うん」
「自殺しかけていたんだよ、お前は」