「僕の部屋って、それ、俺の部屋だから・・・」
「ちがうでしょ、千秋ちゃんの部屋は、子供部屋でしょ。さ、こっちで一緒に遊びましょ」
「えー」
俺は口では抵抗したものの、力関係で叶うわけもなく、まみの子供部屋へ連れて行かれた。
「さぁて、じゃあ、何しよっか。お姉ちゃんが絵本読んであげようか?」
「いいよー、自分でも読めんもん」
頭の中が幼くなった俺でも、まだひらがな・カタカナは余裕で読めたので、絵本は自分でも読めた。
「でも、お姉ちゃんが読んであげたほうが絶対、楽しくなるかな。ね。」
結局、お姉ちゃんの母性には対抗できず、絵本を読み聞かせてもらうことになった。
始まる前は、何が面白いんだろうと思っていたけど、気づくとお姉ちゃんの読み聞かせる絵本に夢中になってしまっていた。
「よし、おしまい。千秋、楽しかった?」
「うん!あっ・・・」
絵本の感想を聞かされて、思わずそう答えてしまった。
しかし、次の瞬間、本当は自分は中学2年生なのにという気持ちが出てきて、恥ずかしくなってきてしまった。
そんな俺の気持ちを察したのか、お姉ちゃんはこう語りかけてくれた
「恥ずかしがらなくて大丈夫。今の千秋は3歳の女の子なの。これくらいの女の子なら、絵本に夢中になるのもおかしくないから、楽しんでも大丈夫なのよ」
「でも、俺、本当は・・・」
「でもじゃないの。今はそうなんだから。今を楽しまなくちゃ、ね。」
「今を・・・。うん!」
そう言われると、せっかくだし楽しまなくちゃという気がしてきた。
「じゃあ、次何しようか」
「じゃあね、じゃあね、次はこの本!」
せっかくなので、ここぞとばかりに、まみがお気に入りの絵本を取ってきて、お姉ちゃんの前に持ってきた。
「あらあら、わかったわよ」
そう言って、お姉ちゃんは、楽しい読み聞かせをしてくれた。

「じゃあ、次は、って、千秋、そろそろ眠い?」
「うん、そうかも・・・」
まだお昼だけど、何だか眠なってきてしまった。
「まみは、いつも、この時間帯、お昼寝しているもんね。千秋ちゃんも、お昼寝しよっか。」
「ふわぁぁ。うん、そうするー」
眠気でまぶたが落ちそうな俺を、お姉ちゃんは抱え、まみのベッドまで運んでくれた。
「おやすみ〜、むにゃむにゃ」
小さな女の子の精神では布団の魔力に抗うことはできず、俺はすぐに夢の中へと落ちていってしまった。

「わー、気持ちいいな―」
夢の中で、俺は海に浮かんでいた。
暖かい南国の海で、俺はプカプカと浮き輪につかまり浮かんでいた。
「あれ、何だかおかしいかも」
暖かい海で気持ちよく浮かんでいたはずなのに、急に海が冷たくなってきて、気持ち悪くなってきた。
「うー、何でだろう、何でだろう・・・もしかして!」
そこで、俺は目が覚めた。

目が覚めて、まず、俺はいつものように、オムツを確認した。
「うー、ぐちょぐちょだよ〜。。」
オムツの中はグチョグチョになっていて、気持ち悪くなってしまっていた。
「おねーちゃーん。おむつかえてー」
おねしょをしてしまったことは恥ずかしかったけど、それよりも、おねしょ後の冷えたおむつの感覚が気持ち悪くて、思わずお姉ちゃんを呼んでしまった。
「あらあら、起きたのね。はいはい、おむつ替えてあげるわよ」
「うん、おねがい。。。」
俺はちょっと恥ずかしかったけど、でも、何だか、お姉ちゃんに甘えられるのがちょっと嬉しくなってきていた。
「それにしても、千秋、おねしょしたのに嬉しそうね」
「そ、そんなこと、ないよ。。。たぶん。」
「あらあら」
そんな俺の心は姉ちゃんにはどうやらお見通しだったようだった。