一方アクバルはまた戻ると言い残し長い間城の近くをブラブラしていた。
20人程客がいる酒場に行くと、早くも皇女のスーツの話を自慢げに切り出した。
様々な年齢の男達が目を輝かせて話に聞き入った。女達は苦笑いしたり、眼前の男達に不快感を示したりして正に十人十色だった。

「……というわけなんだ、すげえだろ!?」


「まじですげえ、ボウズ、いいもん見たな!」

「こぉの、幸福者ぉ!」

しかし、中には無法者もいた……
スキンヘッドの男は王宮の警備員として相当の強者だったが飲酒や暴力などの素行不良でクビになって荒れた生活をしていた。
逆恨みで何をするかわからない……!
彼は近付いてくると、好色な顔をズイッと寄せた。

「おい、姫様は今でも城にいるか?何なら今からでも会いに行きてえと思ってな。」


悪い予感がしたアクバルは自分の軽率さを悔いながら首を横に振った。

「いや、今はもういないと思う。……他に用事があるらしいから……」

「どうだろうな。まあ行ってみるさ……」

(この荒くれたやつ、マリナ様になにするかわからない。今大事な時だし……!
絶対に会わせちゃいけない!!)

「やめなよ!今姫様は大変なんだ!国の未来がかかってんだ!……あんたも国の一員なんだからわかるだろ?」

少年にとって精一杯の説得だった。しかし、元々血の気が多くて最近はそれが酷くなった男は聞くわけがなくアクバルの胸ぐらを掴む。
酒場の店員や他の客は何もできずじっとしていた。

「ガキが何言ってやがる!こっちはクビになってから毎日悲惨なんだ!一泡吹かせなきゃ腹の虫が収まらねえ!!」

「こいつ……!!」