ガンダムヒロインズMARK ]Y [無断転載禁止]©bbspink.com
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
語るも良し!エロパロ書くも良し!
ガンダムの娘ッ子どもで妄想が膨らむ奴は集え!
ガンダム以外の富野作品やGジェネ、ガンダムの世界観を使った二次創作もとりあえず可!
で、SSは随時絶賛募集中!
■前スレ
ガンダムヒロインズ MARK ]X
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1385961055/
■関連スレ
ガンダムビルドファイターズでエロパロ
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1381888018/ 「俺を、助けようとして戦いになったから気になって……お前、やめろよ!」
「ほお、ガキがいい度胸だな、まずはお前からだ!」
アクバルに襲いかかる男。
咄嗟に少年の前に出るマリナ。
勢いで放ったキックが相手を吹っ飛ばすが、体力の消耗は誤魔化せず、フラフラしている。細い肩を揺らして息をする。
疲労を現すように何滴もの汗が大地に滴り落ちる。
「はぁ、はぁ、負けるわけには……」
(これではアクバルを守りきれない。もっと冷静に……
明鏡止水は……)
疲労と焦燥を無視し、あの原っぱでの戦いを思い出し、再び頭が冴え渡る皇女。
全身に意識を集中させ、頭に幸せな思い出を浮かべる。
今は亡き家族との日々、シーリン達友人との思い出、ファイターに合格した日、喜んでくれる国民の顔。
その全てが彼女を落ち着かせ、穏やかにしてくれる。
そして、身軽さのためにコートを脱ぎ捨てたその体は少しだけ淡い色に輝いていた。
日の光に照らされた麦のような薄い金色……
銀色だったビキニまでも同じ色に変わり輝きを放つ。
「お前……一体……?」
「マリナ、様……?」
他の二人はただ驚き目を見張るしかない。 「この、早く倒れろ!」
飛んでくる拳を俊敏な鳥のように軽々と避けて、腹に凄まじいパンチをぶつける。
「うわぁぁぁ!!」
そしてよろめく相手の肩を掴み、大地に投げ飛ばす。
その音に木々に止まっていた鳥達は逃げ出す。見守るアクバルは茫然とする。
男は強かに打ち付けて気絶してしまった。
「あの、マリナ様!!ついにやったね!!」
「……アクバル。」
駆けて寄ったアクバルが手を伸ばした時、マリナの全身から光は消えて、力なく少年の上に倒れていった。
「うわ、マリナ様!ちょっと……!!」
金属のビキニに包まれた肢体は汗を大量に流しながら少年の真上で眠りについた。
どこか苦しみを見せる表情で…… EP7
「マ、マリナ様……」
いきなりのことに驚くアクバル。
彼より背が高いとは言えマリナは軽かった。重みは感じない。
(な、なんか前にコクピットに入った時も思ったけど、肌柔らかいな……
でも体型は締まってるし……
元々いい匂いがするし、今は汗かいてるけど嫌な感じはしないし。ドキドキする……)
「いけね、なに考えてんだ俺は。」
不謹慎さに気付いて首を横に振ると、彼女を肩に担いでさっきの酒場に入り、そこの電話で王宮と警察署に報告した。これで敵の男は逮捕され、気絶したマリナはアクバルと共に王宮に運ばれた。
王宮の医務室にあるベッドに横たえられるマリナ。
シーリンは解除用リキッドがなくなったのを医師達に告げると、メタルスーツを開発推進した大臣達を電話で呼んだ。
その間、念の為医師はメタルのスーツを外そうとするが
「取れないっ……並大抵の人間の力では無理か……ファイターでなければ。
……もしかして、皇女の疲労はこれが原因なのでは?」
心配するアクバルの隣にいたシーリンは不穏な表情で頷く。
程なくして、スーツ装着テストにマリナを読んだ大臣とメカニック達を連れてくるシーリン。
彼女は疑惑と嫌悪に満ちた目を彼らに向けていた。 中心的な大臣は普段の落ち着いたムードを崩さないながらも申し訳なさそうに
「いや、このようなことになるとは。
メタルスーツの開発は完璧だった筈ですが……
危険性に気付かず我が皇女にこんな苦しみを……
本当に面目ない。」
彼の目配せでメカニックがマリナのビキニ部分に液体を垂らした。
皮膚を傷付けずに少しずつ溶けていく液体。いざという時のスーツ解除用のリキッドだった。
「マリナの部屋にあった解除リキッドがなくなっていたんですよ。
心当たりありません?」
それとなく尋ねるシーリンを見て首を横に振る大臣達。
「皇女を初めとした皆さんに御迷惑を御掛けしました。私達は一旦引き上げます。」
帰っていく一同をシーリンは厳しい目で見つめていたが、直属の部下に目配せする。彼は大臣達とは距離を取りながら後を着けていった。
部屋の内側と廊下にはボディーガードを数名付けてある。
そしてシーリンは医師からマリナの着替えを受け取ると、静かな声でアクバルに
「あなたも一旦借りている部屋に戻って。」
「うん……」
脱力したように戻るアクバル。
やがて全て溶けて消えてしまうと、一糸纏わぬ姿になったマリナの汗を冷たいタオルで拭き服を丁寧に着せた。
「ごめんね、マリナ……」
横たわる彼女の手に自分の額を重ねた。その目には雫が…… 「シーリンさん、わかりました。やはりあいつら仕組んでいました!」
一時間程してシーリンの部下がRCレコーダーを持って戻ってきた。
いつになくガタッと立ち上がるシーリン。マリナを起こしたかと思い、まだ寝ている彼女を見て安心すると部下に向き直ると、ボディーガード達にその場を任せて部屋を後にした。
「そう、それでは私の部屋に行きましょう。」
二人は録音を真剣に聞いていた。
あの大臣達とメカニックの声が聞こえてくる。
彼女は部下に命じて、彼らの仕事部屋のドアに盗聴機を付けさせた。
例え外側に付けても部屋の内側の音声を録音できる性能だった。
『極度の感情の昂りにより疲労を与える金属。メカニックさんは目の付け所が違いますな。』
『しかし、上手くいきましたな。皇女の汗のかきよう。あのスーツかなりのものですね。
目の保養にもなりますし。メカニックのあなた方のお陰ですよ。』
『お褒めに預り光栄です。それにしてもあなた達はそんなに女性の王様がお嫌いなのですね。
私は報酬をもらえば良いですし、男女どちらでも気にしないのですが。』
『ええ、ずっとアザディスタンは男が強い力を持っていた。それをあの娘が皇女になっただけでなく、ガンダムファイターにも……
男の立つ瀬がないと思いましてな。あのシーリン達の一派からは保守派などと言われ嫌われてますがね、ハハ。』
『まあ、そのお陰で新しいスーツの研究費も頂きましたしウィンウィンですがね。
そう言えば、彼女が次のファイトに負けても新しい男性のファイターを用意していると聞きましたが、その時は是非とも私を頼ってください。
私が彼に新しい装備を作りますから。』
『お願いします。』
シーリンは腕を震わせた。国のためにずっと歯を食い縛ってきたのに、男のプライドの為に国の足を引っ張るばかりかマリナを苦しめたのだ。 「こいつら……本当に……」
部下はその様子を見守っていたが、そこにもう一人部下が現れUSBメモリを出した。
「ここには、あのスーツのハッキングデータがあります。保守派大臣の差し金でしょうが、とんでもないカラクリがありました。」
「……どんな?」
PCに接続すると、詳細データが表示された。
「……シーリンさん、落ち着いて聞いてください。
このスーツはユーザーの極度の闘争心を関知すると、その体力を減少させるスチール効果があるのです。
……だからその、冷静さや明鏡止水の状態になっても闘う意思が強過ぎれば危険なことになります。
訓練では問題なくても、いざ実戦になるとスチール効果が発動するというものです。」
「……あいつら、よくも……」
ガタッ……!
その時、ドアの向こうに音がした。用心深く開けると……
「誰……マリナ?」
服を着た皇女がボディーガード数名と共にそこにいた。
まだ疲労は完全に取れたわけではないが、顔色は少し良くなっている。
彼女の顔は悲しさと悔しさで溢れていた。
「シーリン……全部聞いたわ……あの人達、私を陥れようと……」
「シーリンさん、マリナ様がどうしても言うので……」
「ええ、私も大臣達が怪しいと思って、シーリン達が調べてくれていると聞いて、無理を言ってボディーガードの人達に連れてきてもらったの。」
シーリンは全員を部屋にいれると、旧友をそっと抱き締める。 「……今回のことはスーツテストを止められなかった私にも責任があるわ。
ごめんなさい。」
「いいのよ……私も気付かなかったし……あなたはいつも通りでいて、お願い。」
そのやさしい声に鉄の女と一部から噂されたシーリンは唇を噛み締めて、重く頷いた。
涙が流れるのを止められず顔を反らす。
泣いているのを見られるのに慣れていないのだ。
マリナは旧友のブルネットを優しく撫でて頭に顎をそっと乗せていたが、やがて上げた顔は「指導者」のそれになっていた。
シーリンも雰囲気の僅かな変化を察知してマリナを見つめる。
「皆さん、お願いがあります。録音テープにあった新しいファイターの存在、もしかしたら新型のMFも用意されているかも知れません。
だから……」
その願いを否定するものはいなかった。 EP8
マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。
その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。
「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」
メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて
「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」
トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。
「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」
ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。
背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると
「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。
明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。
但し、ガンダムは使うな。今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」 「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」
「まあ、君の父上のことは残念だった……」
トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。
「事情は全て聞かせてもらったわ。」
もう一つの声はシーリンだった。彼女と数人のボディーガードは銃を構えてこちらを睨んでいる。
彼女はRCレコーダーを再生させると、先程の会話が流れていく。
リーダーの大臣は悔しげに拳を握る。
「調べられていたか……」
次の瞬間、マリナはしなやかな動きで大臣の腕を掴み、一瞬の内に地面に叩き伏せた。
「ぐわぁ!!」
皇女の水色の瞳は落ち着きと共にどこか哀しげに見つめる。
「残念でした……みんなの力で国をされない発展させてきたのに……
あなた達が歓迎してくれないなんて……」
「当然だ、ずっと男が国をまとめてきたんだ。最近現れた小娘に……ぐぅぅ……」
マリナは冷然とした態度で腕を捻った。
「私は国のみんなが好きです。
それに、女性も含めて社会で活躍できるようになった現在(いま)も……
でも、このように邪魔をする人達には断固戦います……ファイターである前に皇女として。
」
「ほう、いいねえ。その気合い。何も恐れてない瞳。倒し甲斐があるぜ。」
前に出てきたのはワインレッドの髪をした青年だった。 「……あなたですね、新しくファイターになるのは。」
「ああ……ギルガメッシュ・サムーンだ。覚えておけ。」
両者の間に冷たい熱気のようなものが走った。
次の瞬間、二人の拳がぶつかり合う。
そして、猛スピードで戦いを始める二人。
ギルガメッシュのパンチが飛んでくるが、マリナはそれを受け流し投げ飛ばす。
次の瞬間、ギルのキックが目にめ止まらぬ速さでマリナを蹴る。
技の応酬だった。
一方、こっそり逃げようとする他のメカニックや大臣達。
「逃がさないわ。」
シーリンは敵のボディーガードの銃弾を素早く避けて、急所を避けつつ射撃をして攻撃。
大臣達に素早い動きで追い付くと、彼らを合気道の投げで叩き伏せていく。
「ぐわぁっ」
「……マリナの痛みはこんなものではないわ。しっかり感じなさい……」
更に腕を捻り上げると、ギルガメッシュのトレーナーが襲いかかる。
しかし、その動きを避けて倉庫の壁に向かって投げ飛ばす。
「このっ、女に負けるとは……」
「女を甘く見るからでしょう。私も一応トレーナーよ……!」
そして、マリナを見つめるシーリン。
(きっとあなたなら勝てるわ……!私たちの希望だもの…… そして、マリナとギルガメッシュは互いに力をぶつけ合い少し息が荒くなっていた。
「中々だな。でもあんた、昨日もっと疲れてたんだろ?回復が早いなんて恐れ入るぜ。」
「……ええ、あれくらい簡単に復活できなければファイターの資格はないわ。
あなたも相当タフね……」
男は演技ががった喋り方で挑発的に続けた。
「疲労が溜まるビキニスーツならもっといやらしい息づかいが聞けただろうな。おしいぜ。」
一瞬怒りが湧きそうになるが瞬時に冷静になり、キックを繰り出す。よろめいて後方に下がるギルガメッシュ。
「……っ、あのシステムは外したわ。」
「そうかい、それじゃあ皇女がいつもの調子に戻った祝いに始めるとしよう。メインディッシュをな。」
ギルガメッシュが携帯型起動スイッチを押すと、自動的に倉庫から飛んできたガンダムオーレス。
「ええ、終わらせるわ。」
マリナもガンダムファーラに乗り込む。[newpage]
身に付けていたものを全て脱ぎ、全裸になるマリナ。
(シーリンも、みんなも私のために力を尽くしてくれている。
国がまた男性中心になれば、誰もが輝ける社会ではなくなってしまう……
絶対に、あんな人達に負けない……)
ってところ次の瞬間、心を落ち着かせ目を閉じる。今胸の内にあるのは闘いだけ。それ故に冴え渡る心。
胸に手を添えて、ほんのりと脚を開いてコクピット中央に立つ。
「モビルトレースシステム起動。」
布が凄まじい勢いを伴い降ってくる。 肩から腕、胸、脚……ありとあらゆる場所を瞬時に覆い尽くす巨大な布。
冷静な顔は圧迫に対し悩ましいものになり、豊かな黒髪を柳の葉のように揺らす。
「キィ、キツイ……でも、みんなのためを思えば……」
亡き家族、守るべき国民達、慕ってくれるアクバル、支えてくれるシーリンと家臣達……
みんなのことを思い浮かべると自然と身体に力が入り、両腕を鶴のように広げる。
「う、うぐっ……このぉぉ……!」
布を千切り纏わせる。
「はぁぁぁぁ!」
身体を反らし、まるで空気椅子でもしているかのように腰と膝を曲げて力を込める。
「いやぁぁぁ!!」
尻を突きだしアナルにグイッと遠慮なく入っていく布。
「はぁぁぁぁ……!!」
膣にも入り込む布。前後からぐいぐいと刺激されるが、下半身に力を集中させ、
目をカッと見開くと両足を股が割けると思わせるほど、交互にハイキックをして布を千切る。
こうしてスーツなら装着を完成させた。
「さあ、いきましょう。国のために絶対に負けないわ。」
「いいね、楽しませてくれよ。皇女さん。」
装着を終えた二人は機体越しに睨み合う。
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 「ハアァァッ!」
槍で襲いかかるマリナのファーラ。それを太い棍棒で受け止めるギルガメッシュのオーレス。
「甘い!!」
ギルの操作で棍棒のスイッチを押すと先端から斧の刃の形をしたビームが発生し、槍の先端を焦がす。
瞬時に後ろに下がるマリナ。
「斧……それがあなたの武器なのね。」
「そうだ、幾多のファイターに勝利するため。そしてお前に勝つためにな!!」
凄まじいギルの猛攻にも動じずに敵の刃を避け、槍と合気道の投げ技・捻り技を駆使して反撃するマリナ。
一連の体捌きに何とかついていけるギルの反射神経とスピード。
正に競り合いといった光景だった。
「やるじゃねえか!大臣達が見せてくれた映像で知ってたが、実物ともなると違うな!」
その声にどこか好戦と憎しみを感じずにはいられないマリナ。
「どうしてあなたはそこまで戦いを……
あなたのような人にはこの国を代表する資格は感じられない……」
「資格、あるさ。男であることと、力と目的があること。それだけで十分だ!!」
想像していた通りの言葉に嫌悪を感じながらも淡々と、しかし真剣に返すマリナ。
「男も女も関係ないわ。大切なのは国の未来よ。」
「関係ない、か……あるんだよ。おれにも、親父にも……」
「……?」
苦虫を噛み潰すような物言いに違和感を覚えながらも素早く槍でオーレスの腕、脚、時には後ろに回って背中を攻撃するマリナ。
「ぐはっ!……この……舐めるなよ!」 頭に血が登ったような物言いをすると、オーレスの肩、腕、胸、脛、それらの各部からミサイルが発射されファーラの全身を狙う。
「きゃぁぁぁ!!」
体にミサイルの与えた衝撃と熱さを禁じるマリナ。
「はぁ、はぁ、……危険だわ。距離を取らなきゃ……」
弓矢でオーレスに激しい攻撃を加えてから一旦一キロ程離れるマリナ。
心を落ち着かせ目を閉じる。冴え渡っていく感覚。
頭が澄んで白くなるようなあの状態になり弓を構える。
「この射撃武装にはこんな機能もある。もっと食らえ。」
再び発射される複数のミサイル。しかし今回は一つ一つが異なったベクトルに舵を切りながら向かっていく。
まるで群れを離れて巣立っていく鳥達のようだ。
あるものはマリナの右に、あるものは左に、背中や斜め上に移動して飛んでいくものもあった。
「囲むつもりね……」
あらゆるベクトルから狙う戦法。遠距離戦としてかなりの効果を持つものだ。
それでもマリナは表情一つ変えない。
寧ろ獲物を狙うハンターのように弓を携えたまま。
「ホーミング、タップリ味わえ、センパイ……」
目と鼻の先にあるミサイル達。
それらを素早く撃ち抜くマリナ。時に撃ち損ねるが、武器を持ったまま肘で払い落とした衝撃で破壊した。
合気道の訓練の傍ら、学んだ戦法だった。
「やるな……だが……」 ギルは猛スピードで斧を振りかぶり突進する。荒々しいだけではなく、マリナの微細な動きを観察し予測している。
「……させない……」
すっと目を閉じて集中力を高めるマリナ。
心の底から真っ白に、クリアになると槍を脚目掛けて突き出そうとする。
「この!」
ギルがキックをする直前、マリナはすっとガゼルのようにジャンプして重火器が入った肩を槍の先端で突き刺した。
「ぐ、おのれ……!!」
そのまま敵の肩を勢い良くキックして頭上に飛ぶ。
「よくも、踏み台に……!!」
「覚悟しなさい!」
雨のようなアローの嵐。それを幾つかが降りかかるが傷付いたのは肩と腕大半。
失格を避けるためか他国以上に頑丈に作られた頭はほぼ無事だった。
そして、斧を回転させ矢の幾つかを弾き返すギルのオーレス。
パワフルさと繊細で柔軟なモーションが合わさった見事な斧捌き。
「きゃぁぁぁ!!」
ダメージ受けつつも体勢を立て直し弓を槍にチェンジさせ突撃するマリナ。
斧で受けとめるオーレス。互いに一歩も引かない鋼の攻防。
「なぜだ、お前はそこまでして闘う?女であるのに……!」
「関係ないわ。私は皇女として皆に幸せになって欲しくて……」
「その言葉、鼻につくな。俺には、国よりも、負けていった男の方が大事だ……!」 「負けていった男……」
次の瞬間、マリナは戦場の空気が一瞬で変わったのに気付いた。
何か鬼気迫るものが張り詰めて自分を捕らえるような気がした。
金縛りではないが、敵の男にはそれを感じる。
ギルの息は上がり、声はまるで地の底から出すような低いものになって……
「俺の親父は、ファイターの選考で女に負けた……
アザディスタンはずっと男が英雄視される国だったのに……!
怨みは俺が晴らす……!!」
「…………」
何も言えずに黙っているマリナ。
アザディスタンでのファイター選考は、国の発展のため女性の活躍を目指す改革派の力も大きかったので、候補者には女性も数人いた。
彼女は元々性別に拘らなかったので、男だけが持て囃される状況が哀しかった。
だからギルの言葉にも哀しみと呆れを覚えていた。
「はぁぁ!!」
「!?」
次の瞬間、一糸乱れぬ速さで猛禽類のように襲いかかるオーレス。
彼の言葉によって反応が遅れたマリナはギリギリで斧を受けとめるも、パワー不足が祟って押し返される。
「親父は、あれからも格闘家を続けながらも落ち込んだまま、だから俺が、屈辱を晴らす……!」
「……ずっと、そういう気持ちで戦ってきたのね……。でも、苦しいだけだわ……」
マリナは意識を集中させると目を閉じた。 (私が選考で勝ってきたファイター達も同じ気持ちだったのかしら……
悔しがっていたのは目にしたけど、ここまでだったなんて……
それなら私は絶対に……)
「終わりだ!!」
ギルの猛攻に身動ぎしないマリナの身体は少しずつ白金色に輝きを増して、ガンダムファーラも同じ色になっていく。
「何だ、これは!!」
突然の事態に驚くギルに構わず、凄まじいスピードで向かうファーラ。
地上で見守るシーリンも叫ばずにいられない。
「あれは、明鏡止水……!マリナ、貴女って人は……!」
「はぁぁぁ……」
「うぐっ!」
槍の攻撃に押され圧倒されるギル。
パワーもスピードも、精度も段違いだ。
「ギル、眠りなさい……」
どこか優しさを含んだ声で告げるマリナ。
槍はガンダムオーレスの頭部を貫き、その機体は誰もいない地上に落下していく。
「ぐわぁぁぁ!!」
悲鳴を上げるギル。遂に激痛と衝撃で意識を失う。
それを察知するとマリナとファーラから輝きは消え、元の状態に戻った。
ギルとそのトレーナーを含む保守派の大臣達は反逆罪で逮捕された。
こうしてマリナ達のファイトを邪魔する者はいなくなった。 「貴女、ああいう風になれるのね。マリナ。教えた側の私も驚いたわ。」
「……ギルガメッシュの気持ちを知った時、ああなったの。
シーリン、私明日もこれからも勝ち抜くわ。そうすれば皆が男女問わず前に進めるようになるわ、きっと……」
マリナの目元は穏やかだった。 EP10
決戦の日、砂漠で向かい合う二人。
眼帯をしたレザーはボキボキと拳を鳴らしているが、対するマリナは落ち着いた佇まいで相手を見ている。
「姉ちゃん、あれから疼くんだよ。あんたにやられたこの片目が。」
「……あなたをそうしたのは私です。しかし勝たなければいけません。」
二人ともガンダムを呼び出すとコクピットに入った。
レザーはニヤニヤと笑っている。
「あの姉ちゃん、今頃目茶苦茶驚いてるだろうな……」
一方マリナは素早く全裸になると、コクピット中央に立った。……その瞬間……
「きゃあっ!!」
真空刃のようなものがマリナを襲った。
程好く引き締まった腹から血が流れる……
不幸中の幸いか、ギリギリで頭への攻撃は避けられたが、傷付いたそこを押さえて見つめた先には細身の黒装束を身に付けた男が立っていた。
手には彼女の鮮血に染まった刃物が握られている。
「あなたは……」
「俺はエジプトの殺し屋。レザーに雇われたエジプシャン忍術の使い手
しかし美味しい仕事だ。皇女様の、それも素肌を拝めるなんてな……」
「殺し屋……どこまでも卑劣ね……」
卑劣という言葉の意味には勿論、自分の産まれたままの姿を見られた恥辱も含まれていた。
胸と股間を隠し、白い肌を赤に染めて唇を噛んでいる。 「と言っても殺しはしない。レザーにもファイターとして止めを刺したいプライドがあるからな。
少しでも弱らせて欲しいって話だ。」
「そんなもの、プライドではないわ!」
珍しく語気を強める自分に気付き頭を冷やすマリナ。
(いけない……ここで怒っては相手の思う壺だわ……
私と、みんなの努力が水の泡になってしまう。)
少しずつ赤みが引いていく皇女の柔肌。
向かってくる相手の動きをかわして肘にチョップしてから投げ飛ばす。
「ぐはっ!」
衝撃で気絶する殺し屋。
「闘いを汚さないで……」
そのまま合気道の要領で相手を砂漠に放り投げると、完全にハッチを閉めた。
「……忘れなきゃ。モビルトレースシステム起動!」
凄まじいリングが下りてくる。
全身を覆うように張り付いていくスーツ。これがマリナの羞恥を忘れさせてくれる気がした。
しかし性的なことには潔癖で繊細な彼女。
見知らぬ暗殺者の視線に照らされた体はスーツの与えるいつものプレッシャーに一層ナイーブに反応してしまう。
控え目な美乳を布でホールドされて、小刻みにピクピク動く華奢な全身。
「い、いやぁぁぁ!!」
乳首は自ずと激しく主張するのを自覚して頬を赤らめる。 「キ、キツイィィィ……!でも、負けない……!!」
既にいない暗殺者を殴るつもりで、握り拳を宙に振り上げて布を千切る。
「いたい、このぉぉ…………!!」
切られた腹部から出血が滲み、蒼系スーツと混ざり合い、赤みの強い紫色になる。
それでも耐え胴体を激しく動かし、布を上半身に定着させた。
見られた羞恥は未だ僅かに残り、スーツに股間とアナルを締められれば、脳と下腹部から熱が込み上げるような感覚を禁じ得ない。
「ここも、見られたのよねぇ…………!
でも、切り替えなきゃ……
ハッ……!」
グイグイと食い込み摩擦を無遠慮に与えるスーツ。
僅かに汁が漏れて、スーツを濡らしたのを知るが構っておれず両足を強かにスイングして布を千切る。
「ふぅ、何とか終わったわ……!
正直お腹の傷が少し気になるけどあの時に比べればどうということはないわ……」
彼女の頭を過ったのは、あのビキニスーツで苦しんだ記憶。
ファイターとしてあんなことになるとは思っても見なかったが、あれ程の疲労を思えば今のダメージをあれこれ言ってはいられない。
「さあ、いきましょう。」
二人の声が重なる……
「ガンダムファイト、レディゴー!!」 EP11
時は少し遡り、マリナが砂漠に出撃した少し後……
アザディスタンの少年アクバルはマリナの王宮にある小さな部屋でパソコンを開いていた。
彼はマリナと会った以降プログラムやカメラ機能の勉強を少ししていた。
(皇女のスーツ装着を目の当たりにしてから……というのが正確だが。)
それを活かしてやはり個人的にファイトのサポートをしようとしていた……はずだった。
「俺もマリナ様の力になるからな。」
少年らしくエッチに笑う彼。
実はマリナの乗ってきた小型飛行船とガンダムファーラに小型発信器と小型カメラを付けており、いつでもパソコンを通して彼女の様子を見れていた。
「一国民としてマリナ様の様子を見守らなきゃな。……とその前に……」
言い訳のように言うと、キーを操作してもう一人の女性ファイターの姿を拝み始めた。
実はマリナの機体だけでなく、彼女のものにも同じ装置を付けていたのだ。
「あの人のことだからマリナ様を気遣ってるはずだし。
それに……皇女様と甲乙着けがたいスタイルだからな。」
件の彼女は純白のイナクトに乗っていた。
それもモビルトレースシステムを搭載したタイプ。
「さて、行きましょうか。」
(今のマリナならきっと……
だけど敵はあの男……卑劣な罠があるに違いないわ……!)
マリナの秘書・シーリンはワイヤーで登っていった。
鋭く冷静な目にはマリナへの友情と心配の念が込められていた。 いつもは滅多にその思いを口にすることはないが、今回の一連の出来事があったのだ。今回のような影のサポートに及ぶのも無理はない。
……で、それを知りつつも男子特有のエッチな気持ちに駈られて彼女の様子をパソコンで盗み見るアクバル。
「許してくれよシーリン。俺は皇女様のサポーターだから、秘書のサポートも必要だからさ。
……どれどれ?シーリンさんの勇姿は、と。何だこれ?」
アングルやズームを巧みに使いながら、画面に食い入るように迫る少年。
しかし彼女が持った薄いケースに首をかしげる。
「まあいいや。それはともかく始まった♪」
普段着ているグリーンのスーツ、白い下着をアッサリ脱ぐと、スマートな肢体が姿を見せた。
ファイターのマリナ程ではないが、僅かに引き締まった体。
モデルのような細いボディー。
軽いスポーツを嗜む女性といったスタイルだった。
「おお、流石シーリン♪抜群のスタイルだよな〜眼福眼福。
皇女様より胸大きくて背が高いから迫力あるな〜」
昂り始めるアクバル。アソコも大きくなりピクピクしている。
然程筋肉がないこと以外は、マリナよりいくらか迫力のあるボディーをしている。
(外交相手の政治家とは違った意味で)王宮と多少の縁を持ったことは年頃の少年にはかなりのメリットだろう。
そして例のケースから取り出したのは半透明の布二枚。
MFとトレースシステムに明るくない彼は不思議がる。
「あれは一体……?」
「デミモビルトレースシステム起動!」 コクピット中央に立つと凛とした低い声と共に布の一枚をその豊満な胸に貼り付けた。
それは見る見る内に面積を拡大し、彼女の腹、腕に広がっていく。
「う、いやぁぁぁ……」
「な、どうしたんだ。呻いちゃって。
いつもはあんなにしっかりしてるのに。
……それにしても、あれがスーツ?」
広がるだけでなく、キュウキュウと彼女の上半身を締め付けながら纏われていく布。
下腹部を覆えば当然の如く女性器にも伸びて入り込んでいく。
デミモビルトレースシステムとは、いざという時の為に、ガンダムファイターに準ずる力を持つ者や装着に不馴れな軍人に用意されたシステム。
小型布製パッドにより、あまり大きな負担をかけずに纏えるものだ。
スーツはファイターの性器を守るため、そこに徹底して密着する必要がある。
しかしそれが偶然にも、苦しみと同時にある種の喜びを与えてもいるのは否めない。
「い、いやぁぁぁぁ!……ううう……!」
思わず内股になりワナワナと震える才女を見て、アクバルは興奮を禁じ得ない。
我慢の証がズボンにシミを作る。
そして思わず股間に手が延びる少年。
「あの冷静なシーリンがあんなに興奮してる……
シ、シーリン……俺もやばいよ……!」
今の彼女をガードするのは、両腕と胴体、女性の秘所。
素肌を晒している背中や下半身は心なしか震えている。
これからのことを思い羞恥しているのか期待しているのか…… 負担の少ないスーツの性質上、すぐに苦しみは消えるともう一つのパッドを見つめるシーリン。
「はあ、はあ……!あとはこれね……」
それをゆっくりとアナルに嵌め込むと、キュウウウと音を立てて谷間に吸い込まれていく。
「き、きゃぁぁぁ!」
いつも動じない彼女の悲鳴に益々エキサイトするアクバル。
「す、すげえ。マリナ様も凄かったけど、シーリンも凄い……」
アナルにピッタリ張り付いたそれは勝手に尻全体を覆い、しまいには背中と両脚に延びていく。
美しい肩甲骨も、スラリとした脚も覆われて装着を終えた。苦しみもなくなり汗を拭うと……
「アクバル、見てるんでしょ?」
「え、何でわかったのさ!?」
いきなり焦り出すのを尻目に彼女は淡々と続けて。
「小型のメカがあったから。あんなの簡単にわかるわよ。」
怒るでもなくクスッと笑う彼女にはマリナにはない余裕が見てとれた。
それがまたアクバルをこそばゆい気持ちにさせて頬を赤らめさせる。
「さあ、今から行くわ。」
既に表情を切り替えて勢い良く出撃するシーリン。
そこにはまだ見ぬ敵を探し求めるハンターの色があった。 EP12
シーリンはイナクトのコクピット内のモニターからマリナの様子を見守っていた。
アクバルのサポートの下、ハッキリとした解像度だった。
ファイトの場所を目指す飛行船内のマリナの姿が見てとれた。
それはいつもの健気さだけでなく、今までのファイトに裏打ちされた自信が感じ取れて旧友としてフフッと笑みを漏らした。
そこには生来の淑やかさだけではない強さがあった。
「こんなに強くなって……」
「おっ、シーリンもそういう顔するんだね。」
アクバルの言葉に一瞬顔を強張らせて、どこか凄みのある笑顔を作ると……
「アクバル、ありがとう。あなたのお陰で助かるわ。
でも、彼女にあなたの覗きを知らせるら……」
「わ、わかったよ。」
黙り込むアクバル。
(スーツ装着を見られてもビクともしなかったのに、笑顔見られただけでこれだもんな……
よくわからないや……)
一見冷徹に見えるシーリンは自分の役目だけでなく、友人を助けるのにも全力を尽くし集中力を傾ける。
だからこそ、スーツ装着を見られても動じないのだが、普段の自分とは違うギャップを見られるのが恥ずかしいのだろう。
マリナを乗せた小型飛行船と並んで飛行する自動操縦モードのガンダムファーラ。
しかし、何か細いワイヤーがどこからともなくガンダムの胴体にマウントされると、細い人影がスルスルと内部に入っていった。
「あれは一体……? マリナ、聞こえる!?今あなたの……
…………何? 通信がジャックされてる……」 急いで通信で声をかけようとするが、シーリン側の画面は砂嵐。一向に繋がらない。
マリナのガンダムコクピットにも通信しようとするがやはり繋がらない。
「どうしよ、シーリン……」
「落ち着きなさい、アクバル。今国の自衛隊に救援信号を送ったわ。」
(あの敵パイロット、やはり卑劣ね。
スパイを送ったのね……)
少し時は流れてマリナはエジプトのファイター、レザー・クルスームが駆るガンダムグレイブと対戦していた。
「どうだ!」
レザーが放つ大型の砲弾。
それを時に交わし、時に手で払うマリナ。勿論弓矢で貫くのも忘れてはいない。
素早く近付き、ランスモードに変形させた武器を向ける。
(暗殺者にやられたお腹は痛むけど、今は大事になってないわ……)
傷付いた腹部に意識をある程度傾けながら闘うマリナ。
「この、噂には聞いていたがこの短期間に新しい武術をマスターするとは!」
「覚悟!」
「この!」
回転させた槍で突撃するが、交わされる。
「そんな!」
「強くなったのはお前だけじゃねえ!俺もお前にやられた片目を補うために動きを見切るテクを覚えたのさ!」
そして砂漠用のホバー機能を活かしてマリナの機体に突き進むレザーのガンダム。
ライトブラウンの砂塵をマリナに吹き掛けながら迫り行く鋼の巨人。 しかしマリナも負けてはいない。
この一週間に身に付けた冷静さを発揮し、ホバーの駆動音から正確に位置を割り出し槍を突く。
だが、ダメージは少しだけ。固い装甲に手こずり中々決定打を与えられない。
防御力もアップしたのだろう。
短期間にあらゆる面をアップさせるのは至難。
パワーやスピードよりも優先事項だったようだ。
「手応えが違う……なら、速さの源を!」
後退し距離を取ると、アローを放つ。
鋼の鳥のようにホバーの至る箇所に見える機械同士のジョイント部を撃ち抜くマリナ。
しかし、弾き飛ばされた無数のアローがマリナの元に飛んでいく。
「やはり全てタフなのね。」
手捌きで凪ぎ払った瞬間……
「喰らえ!」
「きゃあ!」
レザーのラリアットがマリナの腹部に決まった。
暗殺者にやられた腹部は少し開いて血が少しずつ流れていく。
「こんな時に……!」
しかし経験は裏切らない。すぐに頭をクリアにすると、迫るグレイブの腕を掴んで見事に投げ飛ばす。
「ぐわあ!!」
ホバー時とは比較にならない程の砂塵を四方に飛ばしながら熱砂に倒れるレザーのグレイブ。
「この……!」 何とか立ち上がり殴りかかるレザー。そこには最初に見せた見切りのテクはない。
更に腕を掴んでは投げ、倒れる直前にまた投げるマリナ。
砂漠に点在する岩場に当たった傷も手伝って、グレイブのホバー部分は破壊されていた。
脆くなったホバーを弓で跡形もなく撃ち抜くマリナ。
「もうすぐね……うっ、……」
弓を落としてしまうマリナ。
暗殺者にやられた傷はやはりファイトの妨害になっていた。
「あいつを雇って良かったぜ……」
ニヤリとするレザー。そして、巨大な鋼のケースを吊り下げたジエットがレザーの隣に降り立った。
「さて、換装型の本領発揮といくか……」 EP13
突如現れた箱に驚くマリナ。
「これは一体……?」
得意気に語るレザー。
「これはな、新しい戦場だよ。いや、あんたにお披露目するステージだ。」
「新しい?まさか……」
マリナは思い出した。レザーは初対戦で語った、ガンダムグレイブは様々なエリアでパーツを換装する特徴があるのを。
ホバーを破壊されたなら、それに替わる装備で対抗するということを悟った。
そして巨大な鋼のケースは砂漠の中にあって、砂漠ではない「ドコカ」……
レザーはグレイブの砂漠ホバーをパージすると、ファーラに掴みかかり怪力でケースに落としてしまった。
「きゃあ!ここは……水?」
ケースの底にはぶつからなかった。寧ろ冷たい水の中でプカプカ浮いている自分と機体。
「水中戦ね……」
「その通り、そしてこれがマリンタイプだ!」
ケースを運んだジェット機から射出されたパーツを装備したグレイブ。
背中にはエネルギータンクを内蔵したパックパック。
砂漠用に替わるパーツとして、水中用軽量エンジンを秘めた新たな手足。
薄いマリンブルーのモードだ。
勢い良く水中にダイブしてタックルするグレイブ。 「きゃぁぁぁ!!」
(何て突進力なの!それに水中は初めて……)
生身では泳げるがガンダムを用いた水中行動は未経験。
地上や空中とは違い、水がスムーズな動きを妨げている。
腹の傷も痛む。
吹き飛ばされた勢いを利用して壁際を蹴り飛ばし、水中で体勢を建て直す。
(冷静に……)
頭をクリアにして冷静になるが、初めてのシチュエーション。パーフェクトな冷静さではなく、明鏡止水には遠い。
(もっとメンタルトレーニングが必要ね……)
(このままでは外にある弓を拾えことも難しいわね。合気道だけでなんとかしないと……)
「あんた水中は慣れねえみたいだな。これがデビューにしてラストだ!」
「そうはいかないわ。ハッ!」
猛スピードで繰り出される砲弾をいなし、時にチョップやキックで破壊しながら接近するマリナ。
そして、腕を掴んで数回投げる。
「うわっ……!!」
と言っても壁や大地のある他のフィールドとは違い、ただ投げるだけでは意味がない。
できるだけ腕の捻りとベクトルを意識してケースの壁や床に叩きつける。
レザーとしては、ケースという鋼で囲われたフィールドを選んだのが裏目に出た。
マリナの技とケースの硬さが与える衝撃によりグレイブは所々傷付き、機体のシルエットは歪んでいく。
砲弾の発射口も幾つか破壊されていた。
「流石合気道をマスターしただけのことはあるな……!だが切り札があるぜ!」 グレイブが腰にマウントしていたライフルを構えると、放たれたのはビームでも砲弾でもなく、「水」だった。
今までの攻撃とは比較にならないスピードで鮫のように狙ってくる「水」。
「きゃぁぁぁ!」
ファーラの腹部にヒットすると、自身の腹の傷に応えて悲鳴を上げるマリナ。
「これは、一体……!!」
息を強めてフラッとする皇女。決して傷が広がったわけではないが、モビルトレースシステムは機体のダメージがファイターにも伝わる仕組み。
腹を押さえて傾けるしなやかな体。
「これはな、ウォーターガンだ。圧縮した海水を高速で打ち出す為のな。
皇女様にはキツいだろ。」
「本当に、卑怯ね……!」
沸き上がる怒りを押さえて何とか頭をクリアにしようとするマリナ。
一方シーリンのイナクトは確実に近付いていた。 EP14
暗殺者がマリナに倒されても、彼が仕掛けた通信妨害は解除されずに残っていた。
不安を抱えたままイナクトで飛んできたシーリン。
「マリナ!
レザー、相変わらず卑劣ね……!」
敵のやり口に怒りを燃やす彼女の近くに何体かのイナクトが現れた。
エジプト政府が雇った、ファイト開始以前に軍事や格闘に携わった者達が操る機体のグループ。
勿論、シーリン同様デミトレースシステムを使っている。
「やはりサポートがいたのね。来て正解だったわ。
しかし、ファイトに他人の手出しは御法度。
私はただ、レザーが用意しそうな邪魔物を倒してマリナを勝利に導きたいだけ。」
「あんたと皇女の関係は調べがついてる。
親しい間柄らしいからな、サポートに来ると思ってたぜ。
レザーのやり方は好きじゃないがこっちにも生活があるんでな。
サポーター同士のファイト、勝たせてもらう!」
「その言葉、そのまま返すわ。」
凄まじいスピードと合気道の洗練された技量で敵を倒していくシーリン。
鋼のオアシスに目を向ければマリナは苦しみながらも闘っている。
気付けば硬く手を握っている自分がいた。
(ファイターには手を貸すのはルール違反。でもあなたはきっと……!) 腹部に受けた海水の痛みに耐えている時、親友の機体を偶然目にするマリナ。
「シーリン!私のために……負けていられないわ!」
既に冷静さを意識し始めていた彼女のメンタルはポジティブさを増し、少しずつ生まれる余裕……
クールさを取り戻し、痛みを堪えてジャンプ!
咄嗟にグレイブの背後に回り、ウォーターガンを手刀で叩き落とす!
素早く構えるマリナにレザーは焦る。
「しまった!アジな真似を……!」
「お返しよ!」
「ぐわあぁぁぁ!」
弓と銃では僅かに勝手が違うが、普段のファイトで射撃はお手の物。
手足のパーツを装甲と手足に設置された銃口が破壊され、グレイブのモーションは鈍くなっていた。
マリナのような傷はないとは言え、圧縮・高速の海水に痛みと戸惑いを隠せないレザー。
「よくも……」
「エネルギー切れ?、仕方ないわ。」
心をクリアにしたとは言え偽れぬ息切れ。それでも力を振り絞り水槽の壁を蹴ってジャンプ。
それを背後から追うグレイブ。
「逃がすか……!!」
外に落ちた弓矢を拾うと水槽ごとグレイブを高速で撃ち抜いていった。
「ぎゃぁぁぁ!」 当たり一面金属と爆炎、そして水満たされた砂漠。
「はあ、はあ……!勝ったのかしら……明鏡止水になれなかったのが残念だわ。
……!」
爆炎からゆっくり立ち上がるグレイブ。
「まだまだだぜ。俺は終わっちゃいねえ……」
更に新たな飛行船がやってくる。
そこから射出されたのは、豪腕と両脚。
中破した水中装備をパージすると、新たなそれらを瞬時に装備したグレイブ。
その姿は最初の砂漠用装備とほぼ変わらない形状。
脚にホバーは付いているが、色はホワイトなので少し軽量なイメージを受ける。
「また同じ……」
「いや、一味違うぜ。野性動物の如く鋭いセンサーを備えたモードだ。
お前の明鏡止水とやらに対抗するためにな。」
「……いいわ。続けましょう。(ここまで来たらお腹の傷なんて気にしていられないわ。)」
ゆっくり立ち上がり、今までの幸せな出来事を走馬灯のように素早く思い返すと、次第に黒い髪は黄金色に、肌とスーツは薄い金色……所謂プラチナブロンドに染まっていた。
腹の痛みはあってないようなもの。 互いに迫っていく二体。
それを見つめるシーリン。
「マリナ、遂にやったわね……
あら?アクバル。通信接続直してくれたの?
ありがとう……助かったわ。」
シーリンのコクピットの右側スクリーンに映るアクバルの顔。
「ああ、俺もこれでもメカを多少は知ってるからね。あ、シーリンやばいよ!」
その声に反応すると、また数台のイナクトが飛んできた。
エジプトからの援軍だ。
「また何体も……いいわ、来なさい。ここはマリナの正念場なのだから。」
果敢に向かっていくシーリンの機体。 EP15
「邪魔はさせないわ!」
華麗な合気道と射撃で敵を撃破しようとするシーリンのイナクト。
しかし、敵のモーションはかなり繊細かつ正確。
しかも、機体のパワーも少し以前のものより上がっている。
「きゃあ!」
「今度の敵は更にファイト慣れしてるわね。エジプトの代表候補だった格闘家達かしら……」
腹部を殴られて砂漠に落ちるシーリンの機体。
ファイターほどの筋力はないので痛みはかなりのものだ。
落ち着いた美貌を歪ませつつ救援信号を送るシーリン。
いざという時の二段構えだ。
その間、砂漠の地面に射撃して、砂塵を飛ばし敵を翻弄するシーリン。
当たりを逃げつつサポートが来るのを待って一分もしない内にもう一機のイナクトが来た。
「何だ。たったの一体じゃねえか。」
「その一体が侮れないわ。」
瞬時に今の機体を捨て、新たなイナクトに乗り込むシーリン。
自動操縦させた状態で遠くに飛ぶ新型イナクト。それを敵も追う。
アクバルは通信でその一部始終を息を飲んで見守った。
(シーリン、また……)
突如今まで来ていたスーツを破り生まれたままの姿になるシーリン。
先の戦闘で美しい華奢な身体は汗に濡れて、少年を一層興奮させた。
「き、今日は何て日だよ……」 一方少しふらつきながらコクピット中央に立つと凛とした声で……
「モビルトレースシステム起動!」[newpage]降りてきたのはスーツの布ではなく、銀色の無機質な物体……リキッドメタルスーツだった。
マリナが以前付けたそれをイナクトに装備したものだ。
より自分のモーションを機体に反映させる、謂わば切り札。
但し、感情が昂る程ファイターの体力が減少してしまう諸刃の剣。
マリナの苦しみを目にした彼女は覚悟を決めながら臨んだ。
(マリナが明鏡止水を会得した今、私も感情に振り回される訳にはいかない……
いつも通りに闘って、素早く勝つ。)
「うぐっ……!」
冷たい金属はシーリンの胸に張り付き、肩甲骨までその面積を拡大していく。
より良いフィットを実現するため、正規のスーツ同様圧迫が凄いのだが、これはシーリンの為にかなりマイルドな強度に設定されている。
従って傷や骨折の心配はないが、今まで素人や準ファイター用のデミスーツしか着ていない彼女にはやはり負担だった。
「ひ、冷える……それにキ、キツイ……!!」
歯を食い縛るシーリン。苦しさゆえに少しずつ赤みを差す肌。
金属特有の冷たさにより一時的にできる鳥肌。
胸を覆うと、シーリンは膝に手を着いて息切れしていた。
「だ、大丈夫か、シーリン!!」
「ええ、何てことはないわ……」
思わず声を出すアクバル。それに苦し気に微笑んで応えるシーリン。
そして第二波が来た。新たなリキッドがシーリンの会陰にフィットした。 「あああぁぁぁ……!」
その冷たさにナイーブなそこはピクンとして、霰もない声を上げる。
会陰をセンターにして、膣とアナルに延びるそれに女特有の高揚を隠せないシーリン。
爪先を伸ばし、尻を突きだし下半身全体を震わせる。
「ぐぐっ、ぐ、やはり、キツイ……
でも、マリナの苦しみに比べれば……」
下腹部と尻を覆って装着は完了した。[newpage]振り替えって追ってくる敵を滑らかなモーションで翻弄し、時に投げ飛ばし、時に撃ち抜くシーリン。
「……流石ね、このスーツ。かなりの反映だわ。作った大臣達は酷い連中だったけど。」
残り三体になった敵。
彼等は相手のコクピット内をモニターで見ると目を輝かせた。
「うひょー、めっちゃ別嬪じゃねえか!」
「しかもあのスーツ、戦闘用とは思えねえ!」
「これは色々使えそうだな。」
口々に交わされる言葉を通信で聞いたシーリンは「やっぱり」という態度で呆れていた。
「終わらせるわ!」
しかし、今の敵は何れも熟練。ファイターの候補の中でも特に強いのだろう。
シーリンの攻撃を何度か受けつつも、基本的に隙のない攻撃で追い詰めていく。
「きゃぁぁぁ!」
ライフルによる射撃、パンチやキックを受け次第に消耗するシーリン。
凡そそれが10分程続くと、さしものクールな彼女も冷静さを欠いてくる。
「はあ、はあ……手強いわね。敵が送り込んだだけはあるわ。」 やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。 やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……
通信で語りかけるアクバル。
「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」
「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」
咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。
「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」
スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。
疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。
「後はこれを……」
液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。
いざという時の為に持ってきた服だが……
次の瞬間、イナクトはビームを受けてよろめいた。
「うぐっ……敵襲……?」
倒れるシーリンの前にコクピットハッチが轟音と共に歪んで破られていく。
疲労に包まれた彼女は抵抗できない。
そして入ってくる敵の男達。
「どうする、この女。ここで……」
「いや、お楽しみはちゃんと人質として利用してからだ。」
それが意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった。 EPファイナル
いくつもの矢をグレイブに放つマリナ。
明鏡止水故のエネルギーにより、鋼のそれらは熱い光に包まれ凄まじいスピードを伴い遅い来る。
対する相手は持ち前の高精度センサーを活かして回避するが、半分は命中しダメージを負っていた。
それでもタフさがウリの名うてのファイターと、防御に長けた機体。
簡単には折れずにいた。
「明鏡止水……なんつうもんをマスターしやがった……」
機体をセンサーモードにしたことで明鏡止水状態のマリナに対応し、五分五分のファイトができるレザー。
しかし、彼本人は会得しておらず、感覚もマリナ程クリアではない。
よって機体とファイターのバランスが取れているのはマリナの方。どうしても疲れが出てしまう。
「はあ!」
「……はっ!」
いくつものミサイルを機体から発射するが、それらを槍で破壊しながら進むマリナ。
グレイブの腹に膝蹴りを食らわせ、よろめいたところを投げる。
「うわぁぁぁ!!」
砂の中に倒れ込みながらも起き上がるレザー。
(前よりもパワーが上がっている……!
明鏡止水が身体能力をアップさせるのは聞いていたが、非力なマリナをここまで強くするたあ……)
「ここでケリをつけるわ。シーリンを探さなきゃいけないし。
……この音は?」
上を向くと三体のエジプト用イナクトが飛んできた。 モニター操作でアップにすると黄金の皇女は我が目を疑った。
「シーリン……!!」
一体のイナクトの肩に設置された木製の十字架。そこに縛られているのは一糸纏わぬ姿のシーリンだった。[newpage]しかも先程の戦いで疲労して気絶しており、クールで知的な顔には苦しみが見える。
更にこの熱い砂漠によって大量の発汗、更に上空で飛んでいる機体に捕らわれている。
熱で体力を奪われているシーリンは危険な状態だ。
「あなた達、シーリンに何を……!?」
シーリンを捕まえているパイロットがモニター通信に顔を見せた。
「この女には人質になってもらったのさ。
お優しい皇女様には親友を無視できねえだろ?
それともファイト優先するか?」
「……どこまで卑劣なの……!」
今まで見せたことのない怒りの表情……空色の穏やかな瞳は宛ら青い炎のようにユラユラと……
マリナとファーラの黄金色は光をなくし元の色に戻っていく。
ファーラが握った弓を思わず壊しそうな程力を込める拳。
不自然に熱い汗が頬を、喉を、胸元を伝えば己の思いに気付く。
「…………」
(ここで感情に任せればシーリンは犠牲になってしまう……ならば私にできることは……)
汗に濡れながらも鎮める心、そこに浮かべるのは今シーリンと共に過ごした数えきれない日々。
二人で微笑んだこと、そして厳しい言葉をかけられながらも支えてくれたこと。
ずっと一緒だった時間…… 「…………」
再び輝く彼女と機体。
さっきよりも眩しく、淡い金色に包まれると、レザー達の視界から一瞬姿を消した。
「……どうなって……!?」
全ての敵が驚いた次の瞬間、ファーラはイナクトの腕を優しく捻りシーリンは零れそうになる。[newpage]…………しかし、すぐに彼女を鋼の掌で掬い光のような速さで何処かに飛んでいった。
同時に凄まじい閃光がレザー達を襲い、それが治まった時には再び皇女は姿を消していた。
「……何だ、一体何が起きた!?」
あまりの早さにグレイブのセンサーも反応できなかった。
一方ここはある岩場。
マリナはそこに隠れると、シーリンを丁寧にコクピットまで運んだ。
悲しそうに、慈しむように親友の顔を撫でるマリナ。
「シーリン……私のために……ここまで傷付いて……
今、終わらせるからね。
そこで見守っていて……」
熱と疲労に包まれたその裸体に布をかけ、コクピットに設置された安全ベルトで固定した。
「漸く見つけたぜ!覚悟しろ、皇女。」
上空にいるのはレザー達。
相手を見据え飛んでいくマリナ。
「ハッ……」 呟いて放った矢によって打ち砕かれるイナクト達。
瞬時に落下して見えなくなる。
それらの内、シーリンを人質にしていた男が機体から投げ出されると、ファーラの手がスッとその体を叩いた。
「うわぁぁぁ!!」
男は凄まじい絶叫を上げて砂漠に激突した。
仇討ちとは言え、人殺しを望まないマリナは手加減を心得ている。
しかし、大きなダメージだ。
「この……やってくれるじゃねえか!!」
接近するレザー。しかし、内心後悔していた。
ガンダムグレイブをセンサーモードに切り替えたとは言え、自分の予想を上回るマリナは驚異。
明鏡止水を会得しないで、ほぼ機体性能に頼ったことを悔いるが後の祭。
(しかし、ここで俺も相手を見極めなきゃいけねえ!)
瞬時に冷静になり殴りかかるが、マリナは何食わぬ顔でその豪腕を受け止め、捻って投げる。
「ぐわぁぁぁ……!!」
青空に昇る大男の悲鳴。
しかし、上空からいくつもの矢が雨のように降り注ぐ。
敢えなくボロボロになるグレイブの装甲。
「ぎゃぁぁぁ!!」
光のような速さで降り立つファーラ。
「シーリンの痛みはこんなものではないわ……!」
更に投げ飛ばすと、あまりの衝撃にグレイブの頭部は歪んでいき、その動きを止めた。 「…………?……マリナ……?」
ゆっくりと開かれていくシーリンの視界。
そこには見慣れた華奢なシルエット、しかし見たことのない輝きを放つ友がいた。
ゆっくりと振り向いたその顔はいつもより柔らかく、喜びに満ちていた。
「シーリン……良かった、気が付いたのね……」
「マリナ、あなた、その姿……」
「みんなが、そしてあなたがいてくれたから勝てたのよ。
ありがとう、一緒に戻りましょう、シーリン……」
金色の皇女は友を優しく抱いた。 《P−04》。
それはルウム戦役で放棄された全長数キロメートル級の資源衛星を刳り貫き、新サイド4暗礁宙域に築かれた地球連邦軍の要塞基地である。
だが要塞基地とはいえ、連邦宇宙軍最大の拠点であるルナツーは言うに及ばず、一年戦争末期における最大の戦場となった旧ソロモンや旧ア・バオア・クーに比べても、その規模は遙かに小さい。
もっともP−04には、それら数十キロメートル級にも達する名だたる大要塞に対して、明らかに異彩を放つ特徴があった。
衛星の岩肌から伸びた数本の支柱と、その各支柱の間を結ぶ円環軌条へ多数が連なって各個に回転し続ける、半径300メートルほどの円筒状構造物――農工業用プラント群の存在である。
ルウム戦役で破壊された各コロニーのプラント群を修復整備して回収、資源衛星から延びる軌条に移設することで、要塞基地と一体化させつつ再稼働させているのだ。
その巨大な生産規模は、通常型スペースコロニーのゆうに数基分にも匹敵する。軍民一体の拠点であった。
とはいえ宇宙における要塞基地の要塞たる所以とは、何よりもまず、厚い岩盤によっていかなる砲火にも悠然と耐える堅固な防御力である。
だが剥き出しになって広がるプラント群は当然ながら、その恩恵など受けられない。もしメガ粒子砲やミサイルの攻撃による砲火を受けてしまえば、要塞本体はまだしも、無防備なプラント群などひとたまりもないだろう。
結合しても無益、通常であれば遠く離して配置されていてしかるべきとも思われる両者であったが、このP−04にあっては、一見すれば奇妙なその組み合わせが自然なものとなっているのだった。
そしてプラント群に囲まれた要塞基地の厚い岩盤の最奥に、P−04の管制司令室は位置していた。
張り巡らされた多数のモニターに映し出されているのは、暗礁宙域内の各地を睨む監視カメラの映像と、そして各種センサー類が捕捉した軍民のMSや作業ポッド、艦船を模式化した航路図だ。
今その両者には、進入軌道に入った艦隊と船団がそれぞれ一つずつ捉えられている。そのいずれにも、すでにP−04を発した防空MS隊が接触していた。
ひとつはこのP−04に連なる多数の農業プラントで生産した食料を積み出し、他サイドへと輸出してきた帰路の農協船団。
そしてもうひとつが地球連邦宇宙軍新サイド4駐留艦隊所属――そうでありながら拠点を宙域外に移されていた、第223戦隊である。
「――久しいな、トラキア」
顔面の半ばまでをも覆うような巨大な古傷で、右の眼窩と義眼を大きく露出させた将官が静かに笑う。
筋骨隆々たる偉丈夫は、その凶相に懐かしげな表情を浮かべながら、第223戦隊の先陣を切る巡洋艦の望遠映像を見つめていた。
一年戦争緒戦、地球連邦軍が大敗したルウム戦役。瀕死の重傷を負ってルナツーへ後退し、同地で就役したばかりのサラミス級巡洋艦を受領した日のことを、彼は昨日のように思い出す。
大手術から奇跡的に復活したばかりの彼が、新型兵器MSを擁する圧倒的に優勢なジオン公国軍に対抗するために自ら提唱した、宇宙ゲリラ戦術。
旧来の連邦軍部隊では成し得なかったその戦術を実現するため、彼はルウム難民志願兵を主体に兵を集め、にわか仕込みの戦闘団を編成した。
未曽有の大損害に硬直しきっていた地球連邦軍の人事制度が狂乱する中で、彼が拾った艦長候補は新品少尉の若者だった。
トラキア。あの艦こそが、すべての始まりだった。
「副司令。昔を懐かしまれるのは結構ですが」
鋭い女の声が追想を断つ。
ゆっくりと振り返ると、若いアフリカ系の女性佐官が長いブルネットを靡かせながら、鋭く挑むような瞳で彼を見ていた。 「トラキア艦長への聴取には、私も同席させていただきます」
「フム。久々の古巣に、おかしなことを吹き込んでくれるな……ということかね?」
彼が笑うと、彼女は無視するように後を続けた。
「『アバリス』襲撃からエゥーゴ艦による接触、そして今回の大規模戦闘に至るまで、トラキアはこの一週間で劇的に進展した一連の事態において、常に第一線にありました。
その報告内容は我が艦隊、ひいては地球連邦軍全体で共有すべき価値があるものと考えます。一部のみで独占されるべきものではありません」
「その通りだ、中佐。我々の肩には、あまりに多くの人命が懸かりすぎている。市民を守ること――8年前のような破滅が決して二度と起こることのないよう回避することが、我々のすべてだ」
8年前。その言葉を発する前後だけ、わずかに言葉と、二人の温度が変わった。だが異相の将官はすぐに元通りの、穏やかな調子で言葉を継いでいく。
「そのためには何事も、決して私物化して抱え込んではならない――ウォレン准将にもお伝え願いたい。我らは危機にある。
同じく地球連邦に奉仕し宇宙市民の安寧を守護する者として、新サイド4、そして地球圏のため、ともに力を合わせて参りましょうと」
「言われるまでもなく。――願わくば副司令ご自身も、そう仰られた通りに努めていただけますよう」
穏やかなまま彼が笑うと、中佐は一礼して踵を返した。
人は変わる。立場も変わる。
かつて腹心の部下であった女性士官の後ろ姿を背中で送りながら、ソギルは再び望遠映像のトラキアを見つめた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています