「私に一泡吹かせたいならその子を離して。」

向かい合う二人が振り向くとそこには当の本人、マリナが白いコートを着て立っていた。
馴染みの少年を脅す男に怒りの炎を燃やす水色の目は、宛ら蒼い炎のようだ。

「マリナ様……」

「アクバル、中々帰ってこないから探してたわ。」

「そっちから来てくれるなんて丁度いい……まずはこれを喰らえ!」

襲いかかる男の猛烈なパンチ。それに動じず腕を掴むとそのまま相手を床に倒してしまう。

「この野郎……」男はタフなのか立ち上がってくる。

「ここでは皆さんの迷惑になるわ。どうしてもと言うなら誰もいない場所で…… アクバル、あなたは早く帰りなさい。」

「ありがとう、マリナ様……」[newpage]
少し離れた空き地に向かい合う二人。

「ファイターになったからって自惚れんじゃねえ!!」

「あなたのような人、クビではなく警察に渡すべきでした。今終わりにします!」

(感情に流されちゃだめ。落ち着いて……今ここには誰もいない、存分に戦えるわ。)

自分に言い聞かせると、原っぱの時のように頭が冴え渡ってくる。
この数日であの冷静さをマスターしつつあった。それでもまだ明鏡止水まではいかないが……

「さっきは油断したがこれで終わりだ!」

男の方も少し落ち着いてきたのだろう。
いくら腕っぷしが人並外れて強いとは言え相手はガンダムファイター。一筋縄ではいかないのを実感していた。