それは、一粒の小さな玉のようなものだった。
まばらに立つ真新しい家々と、荒れた農地が混在する開発が始まった地方都市の一角。
まだ、手のつけられていない雑草が生い茂る土地の真ん中に小さな玉がポツンと生じる。
それを探せと言われれば、誰も手のつけようのない絶望に追いやられそうな途方もない作業に
なるだろうくらい、目立たなく小さな小さな玉のようなものの発現。
玉のようなモノは、フルフルとその場で震え、ぽわ〜ンと鈍い輝きを放ちだす。
シュン
地球上のどんなものでも測り得ない薄い膜状の物がその玉から発生し、驚くことにその薄膜が
地球全体を瞬時に包み、そして、玉に一瞬で収縮される。
薄い膜は、原子の隙間からどんなものの中にでもほんの僅かの間に入り込み、すぐに玉に戻った。
それに気がつくことは、生き物であれ、物体であれ絶対にない。
何億年という中で生じる0コンマ1秒を探るに等しい速さ。
それで十分なのだ。
玉が、現状を知るには・・・・。
玉のようなものは、その場で動かなくなり、地面の上で静かに静止する。
だが、この瞬間に人類の破滅への扉が開かれたのだった。