・・・ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・
音とも声とも思えない不気味な空気の振動がレーコの耳に届く。
「な、なに、、、」
・・・ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・
奇妙なその空気の震えは次第に明瞭になり、レーコの脳裏に深く刻み込まれる。
そして、レーコは何者かに導かれるように足を勧め、空き地の真ん中あたりまで来ると、突然
着衣を脱ぎ捨て両手を高く上に伸ばす。
・・・ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・選ばれしモノ。ハヤカワレーコ。間違いはあるまいか?・・・
「はい、わたしはハヤカワレーコ。呆裸に選ばれし者でございます」
・・・ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・よろしい、人類というものが増えすぎた。これは太古よりの
約定と秩序の理によって汝はこれより呆裸となるのだ。ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・
「仰せのままに、ワタシは、これより呆裸の始祖となり、人類を支配し呆裸の望む世界へと
導いてまいります」
・・・・ボォぉ〜〜ラァ〜〜・・・・それでは、呆裸を授ける。身も心も魂までも全てを
捧げ、呆裸に染まるが良い。始祖として相応しく己が望む呆裸になるのだ・・・・
「ボォラァ。かしこまりました。ワタシは呆裸。地上を破滅させ人類を邪淫と悦悪で支配する呆裸の世界への始祖として魔淫転生いたします。ボォラァ!」
レーコの発した声はどこに届いたのか?
スーッとレーコの周囲は夕闇が嘘のように明るくなり眩すぎる光の滝の中に立たされたようになる。
レーコは首を折り、上を向くと大きく目を見開いて顎が外れそうなほど大口を開く。
頭上から一筋の黒い闇がツツツーッとレーコの口元めがけて落ちてくる。
人間が持つエゴや悪心、そして自然界が発する瘴気などが凝縮された闇に、人類が知り得ない
未知の細胞が混じり、レーコの口内に向かって落ちていくのだ。