本当は、二人どころでは無い。
 両手で足りない位に、罵りたい人間はいる。
 だが……それでもやはり、呪詛を吐くべきではなかった。
 せっかく、すっきりした顔で水に入る所だったのに、気持ちを乱されてしまった。

「はぁ……。あ〜あ……全く俺ってやつは……。 ん?  いや……まだ、あったか……」

 片足を欄干に乗っけようとして……彼はまた思いとどまった。
 歩道の砂粒が、靴下に少し痛い。
 どうせ叫ぶなら……と、もう一つ。
 先程よりも更に大きく息を吸い込み、そして……彼は雄たけびを上げる。


「一度でいいから! かわいい女の子の…うんこに全身埋もれてみたかった! どうせ死ぬんなら、大量の…女の子のうんこ風呂で溺れて死にたかったよ!」


 まさしく、咆哮であった。
 ……だが誰かに聞かれていたら、とんでもないことになる叫びである。
 人生の最後の最後に、今までずっと胸に秘めていた想いを、彼は叫んだ。
 彼に恋人ができない、出来ても長続きしない理由でもあった。
 
 彼は、いわゆるスカトロ趣味の持ち主なのだが……その中でも更に特殊で、常識的にありえない量、物理法則を無視するような大量のうんこをひり出す女性が好みなのだった。
 普通の便器では毎回詰まって、うんこするだけで日々苦労するような……そんな女の子に興奮してしまう。
 ネットで見た、同好の士のイラストがきっかけだった。
 巨大な便意の苦悶に身をよじり、己の体質を恥じらいながら、自分でもどうしようもない排泄欲に駆られて……便器を溢れさせるどころか、チョコソフトの如く山を築き上てしまう。
 一回に、ポリバケツいっぱい排泄してしまうような。
 そんな女の子が大好きなのだった。
 もちろん現実にそんなの居るはず無いが、思い浮かべただけで、体の一部分が固くなってしまう。
 そして当たり前だが、誰にも言えない。
 ネットの世界に同好の士は割りと居て、色んな画像を集めたりしているが、現実に誰かと、この思いを共有することは無い。

 ――今から、その現実を離れるのである。

 ならばせめて、最後に叫ぼう。
 そう思ったのだった。
 そして、神社に参って願掛けでもするかのように、彼は手を合せた。