今度は上目遣い、鹿屋の顔を覗き込むようにして、富士谷が聞いてきた。
 ここまで来た鹿屋には、今さらの問いだった。
 文字通りに、お互い何も隠さない、裸だ。言いたい事を、全部ぶちまけようと彼は思った。

「なんだ、今さら…… なら言っちまうが、その汚いのが良いんだ。勘違いはして欲しくないが、うんこなら何でも良いって訳じゃないぞ? 君みたいな…かわいい女の子のやつがいい。
きれいな女の子が、滅茶苦茶汚いものを生みだす……そんなのが大好きなんだ。それも大量に。現実には不可能だけど、昔のギャグ漫画みたいな、大量のうんこを産み出すところが見たい。それを直接、浴びたい。バスタブ一杯とか、ドラム缶一本分くらい」
「……ほんとう?」
「ああ、本当だとも。もし現実にそんな女の子が居たら、恋人にしたい。嫁に欲しいよ」
「お嫁さんに?」
「うん。世界一の金持ちになれるか、大量にうんこ出してくれる嫁を貰うか、どっちか選べって言われても俺は迷わない。馬鹿なこと言ってるのは、自分でも分かってる。…でも、だから」

 震える声でそこまで言うと、鹿屋は一度言葉を切った。
 そして、かしずくようにして、中腰の富士谷と視線の高さを合わせる。
 ほんの数秒だけ躊躇ったが、彼は最後まで言い切った。

「もし出来るなら……その……。 君の、富士谷さんの産み出すうんこを浴びたい。実際そんな、大量じゃなくてもいいから。……死ぬ前に、一度でいいから。君のうんこを浴びて、その温もりに包まれたい。あんたのうんこはきっと……最高だ」

「……うれしい。でも、カノさん。死ななくて大丈夫だよ」

 ――嬉しい?
 どういう意味と聞く暇も無く。
 鹿屋は冨士谷に引っ張られ、浴室に入った。
 暗闇と静寂の、深夜2時過ぎ。
 幻か現実か、境目の曖昧なひと時が始まろうとしていた。