「おお…!? 風呂場もでかいし、きれいじゃないか……いいのか?」
「ん〜? いいのいいの。どうせ……。 それに、綺麗に見えてもね、実は私のうんちで、今までも結構汚しちゃってるから。その度に掃除してるけど……」
「ああ……自分でも、そう言う……。一人遊びしてたって事か」

 案内されたそこは、リビングに見劣りせぬ、これまた立派なお風呂だった。
 一人暮らしには少々どころか、過大な気がする。
 壁の一面だけが御影石調になっており、他の壁と、大きなバスタブの白さが映える。
 大人が足を伸ばしてなお、余裕を持って湯に浸かれそうだ。
 脱衣所とはガラス張りの壁で仕切られている。ちょっとした高級ホテル並みだ。
 改めて、一体どれだけ稼いでいるのかと考えてしまう鹿屋であった。

「君みたいな女の子に、最後の最後で出会えるなんてな……。スカトロ趣味の女の子と知り合うなんて、不可能だと思ってた」
「あ〜…、あのねぇ……。別に私、そう言う趣味持ってる訳じゃないし」
「そう、なのか……」
「一応言っとくと、その手のビデオ出たとかでもないよ。そーいう趣味の彼氏もいなかったし。……うんちで汚れたっていうのも“遊び”では無いんだなぁ…。止むに止まれぬ、と言うか。……じゃ、バスタブに寝てもらおうかな。ちょっと冷たいし、硬いけど我慢してね」
「ん、分かった」

 「うんこ風呂」なんて凄まじい単語をさらっと言ってのける上、実際自分でもやったことがあるっぽい発言をしていた彼女。
 しかし、そういう趣味ではないと言う。
 いくらなんでも、ここまで来たら嘘はあるまいが……。
 鹿屋は不思議に思った。

「――ひょっとして富士谷さん、あんたもストレス溜まってた?」
「ん……まぁね。本当はね……私もカノさんみたいに、あの橋で叫びたい気持ちだった。上司のバカヤロー! 会社の女ども死ねー! とかね。……おんなじ。毎日大変で、いっそ死んでやろうかって、時々思ってた」
「おんなじ、か……」

 鹿屋は呟きながら、白いバスタブの底に、言われるまま横たわる。
 湯の無い浴槽に寝転がるのは、そう無い体験だ。
 ほんの少し両足を曲げて……確かに背中と尻が少し痛い。見上げる天井の照明も少し眩しかった。

「それと、ストレスもだけどね……溜まってるのは、こっち。お腹の方もだよ。私、身体小さいけど、凄いたくさん出るからね」
「はは…。期待してるよ。それに男を捕まえて部屋に連れ込んで、うんこ浴びせようなんて思うくらいだから、富士谷さんのストレスも相当だな」

 富士谷はそれには答えず、がばっと、大股を開いてバスタブに乗っかった。
 バスタブ両脇の細い部分に、器用に両足を載せる。
 ちょうど、巨大な和式便器に跨るように。
 騎乗位でセックスするのに似た態勢になって上と下、高低差90センチで鹿屋と彼女は向き合った。