人間の体積は、体重50kgならおおよそ0.05立方メートル程度。
 つまり5リットルである。
 彼女の排便量は、とっくの昔に5リットルを超えている。

「あふっ… んうぅ……! ま…まだまだ、出るからね……!」

 軽く直径5センチはありそうな柔らかな一本糞が、白いバスタブをカレー鍋に変えていく。
 壊れた水道の蛇口、いやスイッチの戻らなくなったソフトクリームマシーンのように排便しっぱなしの彼女は、その肛門からの刺激を受け、断続的に喘ぎ声を漏らす。
 おしりの直下で積もった軟便が、自重でどんどん周りに広がっていく。
 段々と、うんこ風呂が完成に近づいていく。
 それほど体格が良いわけではない鹿屋の身体は、もうほとんど覆いつくされてしまっていた。

(なんだ、これ……)

 確かに望んだ。確かに、気持ちいい。
 彼女の大便の、ねちょっとした感触に、温かさに溜息が出る。最高に気持ちいい。
 しかし、ここがあの世でないとしたら、これは一体何なのか……?
 日本昔話のような……。
 さっきの馬鹿な考えが再び頭をよぎる。

(人間じゃ、ない……?)


 バケモノなんて言わないで……。
 彼女はそう言った。

 バケモノかも知れないよ。
 彼女は、自分でもそう言った。

 自殺しようとしたから? この世にあらぬもの……死人と化した自分が、類を呼んだ……そうなのか?