「っ……ぁ……あぁっ………」
お腹を押さえ、じっとりとした汗をかき、おぼつかない足取りで歩くエルフ。
傍から見ればかなり具合が悪いようにも見える。
だが、それでも彼女は足を止めない。
彼女の名はミーナ。
不運にも、街を歩いている最中に強力な腹痛、否、便意に襲われた。
(どうしようっ…この辺おトイレ無いのに………)
ぷるぷる震える足を必死に前に出す。
今にも崩れ落ち、気を抜こうものならこの場でぶちまけてしまう。
いや、むしろ全部出せればどれほど楽か。
トイレは……この辺りには無い。
そして家までも、まだ遠い。
その絶望的な状況を悟って尚歩く彼女は、決壊の時を少しづつ先延ばしにしているに過ぎない。
―――ぐるるるっ
「――――!!」
便意の高波が、また彼女を襲う。
びくん、びくん、と彼女の体が揺れ動く。
「あ、うぅっ…はっ、はぁっ……!」
必死に、尻穴に力を込める。
肛門を内側から叩く大便を、なんとか抑え込む。
(もう…これ以上は………!)
幸い、今は周りに人はいない。
草木も無い道の隅で、出してしまおうか。
けど、誰かに見られたら?知らない人に?それとも知ってる人?
その恐怖と便意が、せめぎあう。
(…………あ。)
彼女の脳裏に、一つの案が浮かぶ。
(そうだ、おトイレ、借りれば……っ)
なぜこんな簡単な事に気がつかなかったのだろう。
そしてもう一つ、浮かぶ。
(あのお兄さんの家の、おトイレ……。)
前に一度、姉と二人で上がりこみ、トイレを借りた。
(…ごめんなさいお兄さん、もう一回、もう一回だけ………!)
希望を見つけた彼女は、便意と戦いながら、両手でお尻を押さえて早足で彼の家に向かう。