「人間50年……。あと50年は生きるぞ、俺は……彼女と……」

 運命なんてものは無い。
 あの映画はそう言って終わった。
 だが、これが運命でないとしたら一体何だ……?

 ギラつく程に活力が溢れる瞳で、鹿屋は決意した。
 いつまで今の職場に居続けるかは分からない。
 だが、戦い続けなければならない。
 彼女に相応しい男にならなければ……。

「……よし。行くか」

 ちらっと腕時計を見た。
 今は帰宅ラッシュの真っ最中だ。乗用車やトラック、頑張る大人の車が鹿屋の横を数多く流れていく。学校帰りの学生なども、何人も歩いていた。
 鹿屋と同じように自転車にまたがった人もいる。
 彼らも家族の待つ家に帰るのか、それともまだ学習塾で頑張るのか。
 子供達の姿を横目に、徐々にオレンジ色に変わっていく河の流れを見つめ、深呼吸を一回。
 そして今夜の彼女との待ち合わせ場所へと、再び駆けだす。 

 スーツの裾を風に翻し、人生を終えるはずだった場所を離れた。
 戦う男となった彼の背中が、そこにあった。