……本題に戻る。
 彼と別れた後、色々考えて、もうこんなこと止めなきゃって思った。
 けど、止められなかった。
 だってうんちをしないわけにはいかないし。
 でも、せめて、トイレ以外でするのは止めなきゃって思う。
 だから今、この日記を書いてる。
 決心したことは、紙に書いておくと気持ちがぶれないって聞いたから。


 今、気になってる男の人がいるんだ。
 その人の彼女になれたらいいなって思う人。
 だから、普通になる。変なうんちの仕方はもうしない。
 しちゃだめだからね、私。

 それじゃ、今日はもう寝ます。 おやすみ。






「はぁ……」

 ぱたん、と小さな日記帳を閉じる音。
 力無いため息に続いて、彼女――西嶋絵美里はごろんと自室のリビングに転がった。
 それ以外には、外から響いてくる風くらいしか部屋に音は無かった。

(結局この後、彼氏は出来るんだけどやっぱり自重できなくて、ばれてドン引きされて失恋ってパターンを繰り返すんだよね……)

 暇つぶしに読んでいたのは、はるか昔、学生時代の日記。
 関谷と巡り合うことなど、夢にも想像できない頃の記憶だ。
 当時の「気になっている人」が誰だったのか、それすらおぼろげな、古い話である。