早く、早く……!
 あの人が待ってる……!

 玄関の扉が、たったこれだけの距離が、遠く感じられた。
 浣腸液が漏れ出ないようしっかり肛門を締めながら、玄関に向かう。そして扉のチェーンに手をかけた。


「……こんばんは。お届け物です。西嶋さん」

「なおくん……!」


 あの夜と同じ、細かな雪のちらつく夜空を背景に、彼が立っていた。
 もちろん見慣れたジャンパー姿で、配達員の制服ではないが……小脇に何か、包みを抱えて。
 一年前、初めて出会った時と全く同じ時間。
 ずっと帰ってこなかったのは、彼なりのサプライズだったのだ。
 一瞬で理解したえみりの方も、同じシチュエーションで応えた。
 細かな言葉は要らなかった。
 玄関を閉めると、ただお互いの身体を抱きしめる。

「一年、経ったね」
「うん……。奇跡みたいな一年だった」
「ケーキも、画像送ってくれたの見てた。ありがとうって言いたかったけど、我慢してた」
「うん……頑張って作ったよ。いっぱい食べて欲しい。バレンタインのチョコレート……」

 玄関のスポットライトの下、抱きしめあう。
 お互いがお互いの大切さを噛み締めていた。
 そして、えみりが浣腸を我慢しながらこうしていることも、もちろん関谷には分かっていた。

「なおくん……このまま、しばらく抱きしめてて欲しい……」
「分かった。あの日は俺、そう言えば見てないんだよな。いいよ。俺が見ててあげる。バレンタインに相応しく、いっぱい出すんだよ」
「うん…… それから……」
「なに?」