「今すぐには私も、次の出せないから……こうするの。それに一緒に入った方が、カノさんも嬉しいんじゃないかなって……」
「……そりゃ、嬉しい。もちろん。死ぬほど嬉しいぞ。こんなかわいい女の子と、うんこ風呂で混浴なんてな……」
深い深い、歓呼の息をつく。
感慨もひとしおだ。
そして、量も量なら、彼女のうんこは……ニオイも格別だった。
その刺激臭に、もうとっくに鼻神経はいかれて、正確な状態はわからないが……。
実際、酒の匂いなど、とうに感じなくなっている。
彼女も慣れたもの、なのだろう。24時間換気も含め、きちんと換気扇は切ってあった。
「……てか、あれ? 富士谷さん……涙!? 泣いてるのか!? なんで!?」
「生まれて初めて、私の体質が誰かの役に立ったから。毎日毎日こんなたくさんのうんち……ずっと、ずっと嫌だった。でもカノさん、もっと欲しいって言ってくれた。私のこと認めてくれた。天使だって……。そんな事言われたら、泣いちゃうよ……」
「……そうか。あんたも、苦労してたんだな……」
この世で最も汚いモノが溜まった、バスタブの中で。
水晶のように美しい粒がいくつも生まれ、彼女の頬を流れ落ちていく。
嬉しさと感激の結晶があふれ、ぽろぽろと……。
中学、高校、大学。
そして社会に出てからも。
友達にも、親にも相談できずに、一人で茨の道を歩んできたこと。
ハンデを背負いながらも、負けるもんかと反骨心で自分自身を鍛え、これ以上はまず望めないと言うほどの企業に入って……そして女だてらに実績を上げ、ここまで頑張ってきたこと。
だが、一人ではもう背負い切れなくなってきたこと……。
涙で声まで曇る中、彼女は今まで、この「毎回、常識はずれの大量便を産み出してしまう体質」のせいでどれだけ苦労してきたか、端的に語るのだった。