戦火の中犯される娘達12 [無断転載禁止]©bbspink.com
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0001名無しさん@ピンキー2018/08/27(月) 03:18:06.22ID:0Y4/fYqv
被虐の姿ここに極まれり!
戦争などで無惨にも犯される少女達…
のスレッドです。

兵士や盗賊、モンスターなどの襲撃で犯される村娘
捕虜になって慰み者にされる女性兵士などなど
舞台は現代・ファンタジー・時代モノ問わずで行きましょう。
基本は何でもありですが
出血など、グロ要素の有るものは警告をお願いします。

前スレ
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1434277046/
0113名無しさん@ピンキー2021/09/26(日) 03:54:42.31ID:y+oqORGJ
咲耶は背嚢を下ろし、鉄帽を脱ぎ捨て、空を仰いだ。うっそうと茂る木々の隙間から、かすかな青空が見えた。
(そういえば、みんなそろってるのかしら?)
 誰か、足りない気がする、誰だろう ――
(あっ)
 咲耶は起き上がった。すこし貧血を起こし、頭がふらついた。
「花穂ちゃん。衛ちゃんはどこ? 様子を見てくるわ」
「――― 咲耶ちゃん」
 花穂が、前方を睨みつけたまま言った。咲耶はその口調と態度にぞっとするものを感じた。
「衛ちゃんは、夜明け前に ――――」
「・・・・・・・・」
「だから花穂は誓ったの。必ず、仇を討つって」
 咲耶は、ようやく花穂の怒りの理由を理解した。頭痛がしてきたので、しばらく目を閉じた。
(可憐ちゃん、春歌ちゃん・・・・・)
 咲耶の脳裏に、目の前で散っていった妹たちの顔が浮かんでは消えた。ふつふつと、自分の中で怒りがわいてきた。
(よくも、私の妹を・・・・っ!)
 咲耶は、近くにあった軽機関銃を掴むと二脚を土嚢の上に載せた。激戦を物語るかのように、銃身には傷と泥がついていた。
「咲耶ちゃん・・・」
 後ろから、おずおずと白雪に声を掛けられた。聞きなれた声にかすかに救われた思いがした。
「衛ちゃんと鈴凛ちゃんは、すぐそこに寝ていますの。みんなが帰ってきたら、お別れしようと思って・・・・・・」
「ありがとう」
 咲耶はそれだけ言った。見にいく気力は残っていなかった。
 白雪はポケットを探ると、飴玉を一つ取り出した。遠慮がちに咲耶に差し出す。
「咲耶ちゃん、とりあえずこれを食べるですの。もうすぐご飯もできるけど・・・・」
「ありがとう」
 咲耶はまた座りこむと、小さな飴を口に入れた。ほのかな甘みが口の中に広がった瞬間、熱いものが胸からこみ上げてきた。
「咲耶ちゃん・・・・」
 白雪が咲耶の顔をそっと抱き寄せた。咲耶は唇を噛み締めて嗚咽をこらえながら、ぽろぽろと涙をこぼした。
(衛ちゃん、鈴凛ちゃん、みんな・・・・・)
 もう、一緒に朝を迎えることはできない。全部で14脚があったあのテーブルを埋めることは、もうできない。みんなどこかに行ってしまった。
0114名無しさん@ピンキー2021/09/26(日) 03:55:15.93ID:y+oqORGJ
 航が報告を終えて戻ってきたのと、白雪の作った食事が出来上がったのがほぼ同時だった。姉妹は陣地の中で円陣を組んだ。
「とりあえず、現在の陣地を維持せよとのことだった」
 航は妹たちを見渡した。花穂、咲耶、雛子、鞠絵、白雪、亞里亞。サッカーチームすら作れると自慢だった妹たちは、あっというまに野球すらできない人数にまでなってしまった。
「お兄様、今は嫌なことを考えるのはやめましょう。全ては、戦争に勝ってから考えればいいわ」
 咲耶の瞳は、落ち着いていた。平和だったころのきらきらした瞳は、どこにも見出せなかった。
「そうですの。今はご飯を食べて、元気を出すですの」
 白雪が無理に笑顔を作ると、飯盒を一人ずつ配った。雛子はうとうとしていたが、匂いに釣られたかのように目を覚ました。しばらく呆然としていたが、やがてきらきらした目で飯盒を見つめた。
「ヒナ、お腹空いた〜!」
 航と咲耶は顔を見合わせると、ようやく微笑を交わしあった。


「白雪ちゃん、これ、おいし〜い!」
 雛子が無邪気な声を上げた。航は口の回りについた米粒をとってあげた。
「本当だ。ありがとう、白雪ちゃん」
 炊いた米の上に、牛の大和煮と乾燥野菜を載せただけだったが、胃袋が鳴るほどのうまさだった。航は一口食べると空を仰いでため息をつき、ようやく人心地を取り戻した。
 航は、肩の傷が急にうずきだしたのに気づいた。ようやく自分のことを考える余裕が出たようだった。
(あとで野戦病院に行こう)
 今は、やるべきことがある。
0115名無しさん@ピンキー2021/09/26(日) 03:55:53.74ID:y+oqORGJ
苦労して掘った穴に、衛と鈴凛を安置した。
「みんな・・・・・・」
 少しずつ、現実感がわいてきた。航の喉がからからに渇き、かたかたと手足は震えた。
「戦争が終わったら、必ずここに戻ろう。必ず、全員を連れてあの島に帰るからっ」
 航は鉄帽を持つと、痛む腕で少しずつ土を被せた。生き残った妹たちは一列に整列し、ただ敬礼をしていた。
 一時間とかからずに、妹たちは見えなくなった。航は設営隊からもらってきた木の杭を刺すと、衛の鉄帽を目印代わりにかぶせた。
 航は立ち上がり、空に向かって怒鳴った。
「捧げ〜銃!」
 六人の妹が、一糸乱れぬ動作で動いた。全員の目に涙が光っていた。
「解散っ!」


 航たちは陣地に戻った。重機関銃が一丁、軽機関銃が一丁、あとは各自の小銃だけが与えられた兵器だった。
「重機は花穂にやらせて」
 花穂は重機関銃を抱え込むと、敵陣へと向けた。亞里亞がその脇についた。
 航は軽機関銃を掴んだ。白雪が弾薬箱を持って横に座った。
 バラバラバラバラ、と聞きなれない爆音がした。上を見上げても何も見えないが、どうやら敵の軽飛行機が上空を飛んでいるらしい。
「飛行場を使い出したのね」
 咲耶が青い顔をして言った。不安と戦意が入り混じった表情だった。航は黙ってうなずいた。
(まだまだ、この島の戦いはこれからだ)
 航は、自分の中の戦意と恐怖をどうコントロールしたらいいのか、よくわからなかった。
0116名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:09:16.83ID:U9nhMuIW
「右七十度、マーチンかしらっ!」
 金糸雀の声に反応し、JUMは双眼鏡を言われた方向に向けた。
(哨戒機だな)
 低めに垂れ込める雲の下を縫うように、ダークグリーンの飛行艇が旋回していた。明らかに味方ではない。
「蒼星石。主砲発射用意」
「わかった」
 蒼星石はインタホンを掴んだ。
「砲撃用意。一式弾装填。目標、敵飛行艇。一斉射のみ」
 三門の12cm砲が、ぐぐっと生き物のように頭をもたげた。ゆっくりと横へ、次いで上へと動く。
「方位盤よ〜し!」
 伝声管越しに声が飛び込んできた。蒼星石はJUMと視線を合わせると、頷いた。
「主砲、砲撃はじめ!」
 短いサイレンが三回聞こえ、皆一様に目を閉じた。直後、轟音と共に主砲弾が飛び出した。蒼星石は懐から懐中時計を取り出し、時間を確認した。
「弾着・・・・・・今!」
 敵機から遥か下方の空に、赤い炎の花が開いた。その赤はすぐに煙に染まり、黒とのまだらになった。敵機はそれを意に介した様子もなく、つかず離れずの位置を維持していた。
「JUMくん。遠すぎて主砲じゃ当たらないよ」
「そうだな」
 JUMはため息をつくと、双眼鏡を下ろした。
 すぐ傍らにいた真紅が、紅茶のカップを下ろした。かすかにカチリと受け皿が鳴った。
「JUM。どうするの?このままの進路なら、まともに敵の空襲を受けるわ」
0117名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:10:02.08ID:U9nhMuIW
二日前。ラバウルでつかの間の休憩をしていた『薔薇』に、第八艦隊司令部から電文が届いた。
「食料、弾薬、医薬品を急遽積み込み、ガダルカナル島へ補給を実施せよ?」
 JUMは通信文を半信半疑の面持ちで眺めた。
「駆逐艦に輸送をさせるなんて、ずいぶん変なものね」
 横から真紅が覗きこんできた。黙って電信文を手渡すと、真紅は憮然とした面持ちで視線を紙の一番下まで走らせた。
「まあ、しょうがないわ。命令なんだから。物資を積み込みましょう」
 予備の魚雷は全て下ろされ、あらゆる空いた空間に米や弾丸を詰め込んだドラム缶が所狭し並んだ。ついでとばかりに旧式の対空機銃は下ろされ、25ミリ連装機関砲が一門だけ甲板に固定された。
「これ、もし敵弾が当たったらちょっと危ないですぅ」
 主砲塔のすぐ脇に置かれたドラム缶を見て、翠星石が口を尖らせた。そこには白いチョークで乱暴に「三八式野砲 榴弾」と記されていた。
「うん。でももし危なくなったら海中に投棄するから、大丈夫だよ」
 蒼星石は言いながら空を見上げた。よく晴れていた。
「それに、僕達に呼応してラバウルから大規模な空襲をかけてくれるっていうし、敵機は大丈夫だと思うよ」
「それなら、直衛の二、三機でもよこせですぅ」
 何を言われても、翠星石は浮かない顔だった。
0118名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:10:35.11ID:U9nhMuIW
「JUM。積み込みは完了したわ。行きましょう」
 真紅は、艦橋のお気に入りの場所に腰掛けた。一息つくと腰の水筒から濃い色の茶を茶碗に注ぎ、ゆっくりとあおった。すぐに顔をしかめる。
「それにしても、南方にはまともなお茶はないのかしら?これじゃただの濁ったお湯ね」
「戦場でそんな無茶を言うなよ」
 JUMは苦笑すると、ぐるりと艦橋を見回した。いるべき要員はすべて定位置にいて、命令を待っていた。
「よし。抜錨。機関微速前進」
 ゆるゆると艦は動き出した。大慌てでの出発のため、見送る人もいなければタグボートの一隻もない。魚をとっているらしき原住民のカヌーが一つだけぽつんと浮かんでいた。
 金糸雀は後ろに消えていく花吹山を見送りながら、上機嫌で鼻歌を歌っていた。
0119名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:11:09.16ID:U9nhMuIW
「右七十度、来たかしらっ!」
 金糸雀が、こわばった表情で唇を噛み締めた。
「ドーントレス爆撃機五機、突っ込んでくるかしら!」
「前進全速!対空戦闘!」
 JUMはためらわず命じた。艦内からぱらぱらと兵士が飛び出し、弾薬を機関砲のわきに積み上げた。
「JUMくん。ボクが機銃の指揮をとるよ」
 蒼星石はシルクハットの上に無理やり鉄帽をかぶると、JUMに敬礼を送ってから走り出した。翠星石はその姿を見送ると、視線をJUMに向けた。
「チビ人間。翠星石は蒼星石のそばに行くです!」
 そう言い残すと、返事も待たずに後を追っていった。ハッチが音を立てて乱暴に閉められ、真紅はかすかに顔をしかめた。
「いいの?水雷戦の指揮官がいなくなったわ」
「あいつに何を言っても無駄さ。空襲中には魚雷戦は起こらないだろうし、いざとなったら真紅、お前が指揮をとってくれ」
「わかったわ」
 真紅はぴょこんと椅子から降りると、外を眺めた。
「たった五機とは、舐められたものね」
「来るわよぉ。たぶんこれから続々と、ねぇ」
 水銀燈は気だるそうに言った。真紅は諦めたような顔でため息をついた。
0120名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:11:50.85ID:U9nhMuIW
たった二本の砲身に、がっちりと弾倉がはめ込まれた。
「右70度、仰角70度」
 敵機を振り仰いだ蒼星石が、ハンドルを回しながら翠星石にすばやく耳打ちした。
「りょーかいです!」
 翠星石はぐるぐるレバーを回すと、砲身を言われた通りの仰角で止めた。
「人間ごときが、翠星石たちに勝とうなんて百年早いです!」
 ただの黒点だったものが、徐々に飛行機の形を成してきた。翠星石はちらっと背後の蒼星石を見た。
「まだですか?」
「まだ。遠い」
 蒼星石は冷静に言った。敵機の胴体下に黒々とした爆弾が吊られているのを見て、翠星石の額に冷や汗が一筋流れた。
 先頭を行く敵機が、ぱらっと機銃を発射した。遠いので命中はしないが、薄気味が悪かった。
「けったいなことしやがるですぅ」
「何かの合図かもね」
 やや甲高いエンジン音がはっきり聞こえてくる。翠星石は引き金のレバーを軽く踏み込んだ。
「蒼星石。もう待てないですぅ!」
「よし、撃ち方はじめっ!」
 間髪いれず、翠星石はレバーを力いっぱい踏み込んだ。とたんに、小気味よい振動と共に銃弾が空へと飛んだ。
「翠星石、もっと仰角を!」
「了解です!」
 銃撃音がやかましく、すぐ脇にいても怒鳴り声が必要だった。敵機はこちらの銃弾に反応することなく直線飛行を続けていた。
 機銃は数秒で沈黙した。翠星石は素早く振り返った。
「弾を早く!」
 空の弾倉は投げ捨てられ、たっぷりと弾丸を詰め込んだ新たな弾倉が押し込められた。
「はい。はい。わかったわ」
 傍らで艦橋と連絡をとっていた巴は、インタホンを戻すと機銃に駆け寄った。
「取り舵をいっぱいにかけるから、注意しろって!」
0121名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:13:00.50ID:U9nhMuIW
蒼星石の耳元で大声で言う。蒼星石はかすかに頷いた。
「仰角八十度、右九十度!」
「任せろですぅ!」
 ぐるぐるとレバーを手前に回した。それとほぼ同時に艦は一気に右に傾き、翠星石は危うく前方に投げ出されそうになった。
「撃つんだ翠星石!」
 機銃にしがみつきながら蒼星石が言った。限界以上に積荷を積み込んだ船体は、大きく右側に傾いていた。
 翠星石は返事のかわりに、叩きつけるように引き金を踏みつけた。震えながら吐き出される銃弾は、大きくゆがんだ機動を描いて飛んだ。敵機はそれをまたぎ越えるように飛び越え、翼をひねった。
「来るなら来やがれですっ!」
 翠星石は敵機を睨みながらレバーを踏み続けた。敵の一番機がまっすぐに突っ込んでくる。機銃が沈黙した。
「次弾っ!」
 二つの人形の手が、空っぽの弾倉を投げ飛ばした。巴は両手に弾倉を掴むと、体重をかけて二つ同時に押し込んだ。
「右よし、左よし!」
「人間、ほめてやるですっ!」
 銃弾を放ったのとほぼ同時に、敵から爆弾がいっせいに離れた。敵は大きく腹を見せて上昇し、爆弾だけが迫ってくる。
「くっ!」
 蒼星石は左舷に飛び去った敵を無視し、爆弾に向けて銃弾を送った。翠星石も小刻みにレバーを調整し、爆弾を狙う。しかし命中するものではない。
 五発の爆弾は続けざまに右舷に落下し、次々に爆発した。硝煙臭く熱い海水が艦橋よりも高くから落下し、無数の断片が艦に突き刺さって甲高い音を立てた。
「ぶはっ!」
 翠星石は機銃に抱きつくようにして海水に耐えた。全身はぐっしょりと濡れ、不愉快な匂いが鼻を刺激した。
「翠星石、仰角を!」
 すばやく自分を取り戻した蒼星石が、ハンドルを回して機銃を逃げる敵機に向けた。翠星石も仰角を定めると、発射レバーを踏んだ。次々と弾丸が飛び出し、最後尾の一機がうっすらと黒煙を曳き出した。命中したらしい。
 敵機は機銃の射程外にまで飛び去ると、編隊を組んで大きく旋回した。機首はガダルカナルを向いた。「第一波は、終了です」
「どうやらそうみたいだね」
 二つの人形は顔を見合わせると、疲れた笑顔で頷きあった。巴は弾倉を新たなものに取り替えた。
「ちょっと傾斜してるですか?」
「・・・・そうかも」
 艦はすでに進路を取り直し、敵機の飛び去った方向へ進んでいる。しかし、その船体は軽く右に傾斜していた。
0122名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:13:35.92ID:U9nhMuIW
「木栓を早くっ!」
 真紅は押し寄せる海水に逆らい、小さなコルクを必死に破口に押し付けようとした。
「真紅!ヒナが打つのっ!」
 真紅が両手で押さえ、雛苺がハンマーを力いっぱい叩きつけた。二回、三回と打撃が繰り返されるにつれ、吹き出す水は徐々に細くなった。
 薄暗い船底の機関室で、必死の防水作業が行われていた。至近弾の破片は容赦なく薄い鉄板を破り、数え切れない破口を作っていた。
「JUM。聞こえる?」
 真紅はインタホンを掴むと、いらだたしげに言った。
「もっと人員を回して頂戴。それと、排水ポンプを全開にかけるわ。かなり水が入ってしまったの」
 それだけ言うと、返事も待たずに電話を叩き切った。真紅は足元を見て、重油やビルジでにごった水に膝までつかっているのに気づいてため息をついた。
「次に洗濯ができるのは、いつかしら?」
「うーん、ラバウルに帰るまでちょっと難しいかしら・・・・」
 のりの真正直な返答に真紅は苦笑した。
「でも、よかったの〜」
 二人の間に、ひょっこりと雛苺が顔を出した。
「もし爆弾が当たってたら、きっと沈ぼ――んぐっ」
 真紅は雛苺の口を押さえると同時に、頭を叩いた。
「めったなことを言うものじゃないわ。雛苺」
0123名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:14:21.29ID:U9nhMuIW
コツコツとラッタルを叩く靴の音が聞こえ、やがてぐっしょりと濡れた真紅が艦橋に姿を現した。
「浸水は停止したわ。排水も順調よ」
「うん、わかった」
 真紅は椅子に腰掛けると、ヘッドドレスを重そうに外した。
「第二波はまだ来ないの?」
「今の所、見当たらないかしら」
 外を見張っていた金糸雀が、視線を動かすことなく答えた。
「ねえ、JUM」
 スコーン代わりの乾麺包を口にしながら、真紅が言った。
「進路をこのまま維持するの?いったん西に退避してもいいんじゃない?」
「いや、逃げてる時間はないよ。ここで時間を浪費すると、夜明けまでに揚陸を終わらせられない」
「そう・・・・わかったわ」
 真紅は納得すると、背もたれに体を預けて目を閉じた。
「右舷後方120度、戦爆連合10機、突っ込んでくるかしらっ!」
 金糸雀の焦った声が、真紅の耳朶を打った。真紅は片目だけを開き、少し首をひねって言われた方向を見た。
「まったく、休む暇もないわね」
0124名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:15:13.94ID:U9nhMuIW
「右110度、仰角20度!」
「まかせろですぅっ!」
 機銃は低く首を下げ、雷撃を迎え撃つ体勢になった。
「戦爆雷と、一通りそろえて来たです」
 さまざまな顔つきの敵機が、ばらばらに突っ込んできた。白い腹を見せながら艦爆は高度をとり、艦攻は高度を下げはじめた。敵戦闘機はぐるりと横を向くと、艦尾方向に回った。
「蒼星石、どれを攻撃するです!?」
「う〜ん」
 蒼星石は冷静に周囲を見回すと、雷撃機を指差した。
「あのアベンジャーにしよう。魚雷が一番危ない。仰角そのまま」
「わかったですぅ!」
 蒼星石は視線だけを動かして敵機の様子を探った。敵艦爆は太陽の方向に回りこみ、すぐには攻撃しそうにない。ただ、戦闘機がまっすぐ首尾線を艦に合わせているのが不気味だった。
「蒼星石。敵機の奴、機銃掃射をする気です」
「たぶんね」
 蒼星石も右を向き、敵戦闘機の様子を見た。あと数十秒で射程に入る。
「おじじ」
「なんだね、翠星石?」
 翠星石は後ろを振り向くと、弾倉を重そうに抱えている一葉の顔を見た。
「艦内に退避するです。ここにいたら、全員一時にやられるです」
「・・・・わかった」
 討論する時間がないことを悟ったのか、一葉は文句を言うことなく走り去った。
「そこの人間!貴様もですぅ!」
 翠星石は巴にも怒鳴りつけたが、巴は静かに首を横に振った。
「だめ。私がいなくなったら、弾切れの時に対処できない」
 巴は弾倉を二つ抱くと、その場に膝をついて座った。翠星石は一瞬苛立った表情を向けたが、やがてぷいと前を向いた。
「好きにすればいいです、人間」
「ええ」
 翠星石は三機並んで突っ込んでくる敵雷撃機を睨み付けた。軽くレバーを前に回して仰角を下げる。
「よし、撃つんだ!」
「まかせろですうっ!」
 射撃をはじめると同時に、敵機の腹部から板が二枚、ぱっと垂れ下がった。
「爆弾庫を開いた!」
 敵機から何かがぼとんと水面に落ち、機体はすばやく翼をひねって逃げだした。やがて海面に真っ白な泡が湧き上がり、まっしぐらに突っ込んできた。
0125名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:18:09.20ID:U9nhMuIW
「右舷後方より魚雷かしら!」
「面舵一杯!」
 間髪いれずに命令が出た。『薔薇』は左に傾きながら、頭を振った。
(かわせる、このタイミングなら、かしら・・・・・・)
 双眼鏡を握る金糸雀の手が、じっと汗ばんだ。敵の魚雷は二本、ほとんど平行に迫ってくる。
 ようやく舵が効き出したのか、艦尾がぐーっと大きく振れた。数秒後、敵の魚雷は白線を残しながら艦尾の横数メートルを通過した。
「ふーっ」
 金糸雀はため息をついて全身を落ち着かせると、再び双眼鏡を覗きこんだ。
「後方に敵戦闘機!」
 突然、真紅が叫んだ。金糸雀は後ろを向くと、敵戦闘機が低空から迫っているのを確認した。
「翠星石、蒼星石、伏せなさい!」
 艦橋から身を乗り出した真紅は、届かないとは知りつつも甲板に叫んだ。
 敵機は頭を少し下げると、翼を光らせた。艦尾に次々と火花が散り、砕けた甲板の破片が飛んだ。蒼星石が敵の方向を向くと、慌てて機銃を回そうとした。
(間に合わないっ)
 一瞬の出来事だった。機銃の周りにいた三つの人影が、まるで風に吹き飛ばされる紙細工のようになぎ倒された。巴は不用意に蓋を開けたサイダーの瓶のように派手に血しぶきを飛ばしながら倒れ、蒼星石は席から弾き飛ばされ、がっくりと崩れ落ちた。
 艦内から兵士が一人飛び出した。蒼星石の肩をつかむと、艦内へ引っ張って行こうとする。だが一瞬後、その兵士も弾丸を喰らい倒れた。真紅が顔を上げると、二機目の戦闘機が勝ち誇ったように艦橋をかすめて飛んでいった。
「くっ・・・・・」
 真紅は手すりを掴み、唇を噛み締めた。艦の傾斜は最高潮に達し、巴の体はずるずると甲板をすべり、海の中へ消えた。
 突如、艦尾からバーンと爆発音が聞こえた。真紅がはっとしてそちらを見ると、巨大な爆竹のような塊が燃え盛っている。
「ねえ真紅ぅ。あれ、爆雷ね」
 いつの間にか水銀燈がすぐそばに寄っていた。爆雷は次々と誘爆を起こし、甲板の後部はあっという間に火炎に包まれた。艦橋もぐらぐらと揺れた。
「どうしたんだ!」
 JUMは焦った声を出し、艦尾の惨状を見て息を呑んだ。
「真紅、JUM、熱いのーっ!」
 悲鳴のような雛苺の声が、艦橋に響き渡った。真紅は伝声管に駆け寄った。
「雛苺、どうしたの!?」
「機関室が火事なの!我慢できないの〜!」
「待ってて、すぐ行くわ!」
 真紅はハッチを蹴り開けると、後ろを振り返りもせずに駆け下りていった。
「ねえ、どうするのぉ?」
 真紅が遠ざかるのを待って、水銀燈がJUMに話しかけた。
「これは、沈むわねぇ」
 火災はさらに広がり、三番主砲も炎に包まれようとしていた。兵士が懸命に消火に当たっているが、効果は薄い。艦尾に水が入りだしたのか、『薔薇』は徐々に後傾を強めていった。
「敵機、艦橋を狙っているかしらっ!」
 金糸雀の絶叫が聞こえた。水銀燈とJUMの二人が顔を上げると、グラマンの丸っこい顔が真正面にせまっていた。
(少し、車輪が飛び出て見えるんだな)
 JUMはどうでもいいことを考えた。そして次の瞬間、弾丸が続けざまに体に突き刺さった。
0126名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:18:45.31ID:U9nhMuIW
「蒼星石!おじじ!しっかりするですっ!」
 翠星石は仲間をゆすぶって起こそうとしたが、返事をするものは誰もいなかった。
「そんな・・・・・ひどすぎるですぅ・・・・・」
 翠星石は傷ついた足の痛みを無視して、大きく空を仰いだ。
 艦は大きく後ろに傾き、煙突からは断末魔の悲鳴のように大音響と共に蒸気が吹き出した。後部からは主砲弾でも誘爆しているのか、爆発音が断続的に聞こえた。
「よくも、よくもっ・・・・!」
 翠星石は機銃のレバーを力任せに踏み込んだが、弾は出なかった。
「ああもう、いらつくですっ!」
 翠星石は機銃を拳でがんがん叩いたが、発射されない。どうやらどこかが弾丸で破壊されているのというのを悟り、翠星石は舌打ちした。
「っ!」
 翠星石の背中に、何かがどしんとつき当たった。うるさそうに振り向くと、横倒しになったドラム缶がぶちあたったようだった。どうやら傾斜のせいで転がってきたらしい。
 翠星石は何気なくそこに書かれている文字を覗きこんだ。数秒の間、目をぱちくりさせていたが、やがて口の端をゆがめてにやりと笑った。
「たまにはしゃれた物を入れてやがるですぅ」
 力任せに蓋を開けると、九九式軽機関銃が一丁、大量の弾丸と共にドラム缶の中に突っ込まれていた。翠星石は包装を引きちぎると、軽機を掴んだ。新品らしく、うっすらと塗られた油が手にべたついて不快だった。
 またエンジン音が聞こえてきた。振り仰ぐと、敵戦闘機が三機、再び舞い戻ってきていた。
「蒼星石の仇が、わざわざ戻ってきてくれるとは手間が省けますぅ」
 傾斜がさらにひどくなってきた。翠星石は近くにあったロープで軽機を機銃に縛り付けた。ついでに脇に予備の弾丸を山と置いた。
「右九十度、仰角七十度・・・・」
 独り言を言いながら、狙いをつけた。
「撃ち方はじめっ!」
 翠星石は、静かに引き金を絞った。軽い反動と共に、銃弾が空へと飛んでいった。曳航弾が含まれていないのか、火線がほとんど見えなかった。
「・・・・ちっ」
 引きっぱなしで撃つと、弾はすぐ切れた。翠星石は次の弾倉をはめている間に、敵は艦橋に向かい機銃を発射した。甲高い命中音が響き、砕かれた防弾ガラスの破片がきらきらと落下した。
「JUM・・・・・」
 翠星石は機銃を握りしめ、心配そうな顔で艦橋を振り仰いだ。
0127名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:19:37.48ID:U9nhMuIW
「総員退去なのっ!ヒナが許可するのっ!」
 喫水線下の破口からは海水が、頭上からは溶けた鉄や炎が降り注ぎ、機関室は地獄の様相を呈してきた。通路のそこここに倒れた機関員が転がり、火葬されるのを待っていた。
 浸水のせいで罐の炎は全て消え、吹き出す焼けた蒸気が生きている兵士を苦しめた。雛苺は自分の配置に立ったまま、皮膚をただれさせた機関員が脱出するのを見送った。汗がだらだらと流れ、髪が額に張り付いた。
(ひどいの・・・・)
 生存者は去り、機関室にはいくつかの死体と雛苺だけが残された。浸水は徐々にその勢いを増し、流れ出た重油と交じり合って水位を増した。
 艦尾近くのタービンは爆雷の誘爆のせいで見る影もなく破壊され、焼けてぎらぎらと光を反射する鉄塊になっていた。スクリューは停止し、盛る炎と浸入してきた水がせめぎあっていた。
「とにかく、排水をするの・・・・」
 雛苺は重油の入り混じった海水をかき分け、ボイラーの脇にある排水ポンプにしがみついた。ボイラーの破口からは断続的に蒸気が吹き出て、気温を上げると共に雛苺の恐怖感をあおった。
 精一杯腕を伸ばし、電源を入れる。しかし、期待していた電動機の音は聞こえず、ポンプは沈黙したままだった。
「・・・・・・・・」
 雛苺は表情を暗くした。しかしそれでもあきらめず、隣の手動ポンプに手を伸ばし漕いでみた。すると、確かな手ごたえがあった。
(すごい。まだこのポンプは機能が生きてるのっ!)
 ぱっと明るい顔をした瞬間、音を立てて頭上のパイプが破れた。熱くたぎった冷却水が、滝のように雛苺に降り注いだ。
「うううぅあああああっ!」
 雛苺は絶叫を上げながらも、渾身の力でポンプにしがみついた。降り注ぐ熱湯で上半身が逆に寒気を感じ、同時に火傷の鈍い痛みが徐々に強まった。
「ヒナは、トゥモエを、JUMを、守るのっ!」
 機関室の浸水はどんどん増し、最下層に立つ雛苺の首筋まで迫っていた。雛苺は顔を上に向け必死で呼吸を確保し、ポンプを漕ごうとしたが、水没したポンプは非力な腕力ではほとんど動かなかった。
「ヒナは、ヒ、ナは・・・・・・・」
 積み重なった疲労と苦痛に耐えかね、雛苺の視界がすーっと暗くなった。ゆっくりと手がポンプから離れ、雛苺の体は水流のなすがままに艦尾方向へ流れていった。
「雛苺!いるんでしょ!開けなさい!」
 ほとんど意識を失った頭に、がんがんとハッチを蹴り飛ばす音がかすかに聞こえた。すぐにその音はどんどんと何かがぶつかる音に変わり、やがて焼けて歪んだハッチを無理やり肩で押し開きながら、真紅が姿を現した。
「真紅・・・・・・・」
 雛苺はうつろな視線を、姉である人形に向けた。
0128名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:20:28.90ID:U9nhMuIW
「あら、生きてたのぉ?」
 ヤクルトを飲み干しながら、水銀燈は意外そうな顔でJUMを見た。
「状、況は・・・・・?」
 13ミリ弾で全身にいくつも穴が空き、眼鏡は砕けて遠くに飛んでいた。JUMは全身の力を振り絞って声を出していた。
「駄目ね。沈むわ」
「そうか・・・・」
 水銀燈は投げやりな口調で言った。JUMはぶるぶると震える手で水銀燈の肩をつかんだ。
「総員、退艦。真紅に指揮をとるよう言ってくれ・・・・・」
 それだけ言うと、JUMはばったりとその場に倒れた。水銀燈はつま先でJUMの頭をこんこんと蹴った。
「ねえ、なんならこの私がとどめを刺してあげましょうかぁ?」
 JUMの返事はなかった。水銀燈はもうJUMが事切れているのに気づき、かすかに顔をこわばらせた。
「ふんっ」
 水銀燈はつまらなさそうに鼻を鳴らすと、伝声管に口を寄せた。
「総員退艦よ。はやく逃げなさぁい」
0129名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:21:38.86ID:U9nhMuIW
「雛苺、何をしているの?早く逃げなさい!」
 肌がただれるほどの熱気に臆することなく、真紅は機関室の中に入ってきた。すでに蒸気や炎はかなり引いていたが、流れ込む水流はどこまでも勢いを増していた。真紅は胸元まで迫る水をかき分けて雛苺のもとへ迫った。
「さあ、早くっ!」
 雛苺はボイラーのそばの手すりに、ぼろきれのように引っかかっていた。真紅は雛苺の肩をつかむと、水流に逆らってハッチに向けて引っ張った。雛苺はうつろな視線を真紅に向けた。
「でも、ヒナは、ヒナはここを守らないと・・・・・・・」
「雛苺・・・・・」
 真紅は力を振り絞り、雛苺の体をハッチのすぐそばにまで持っていった。雛苺の意識はもうろうとしていたが、やがて真紅の体を支えにしてゆっくりと立ち上がった。疲労し、よどんだ視線を真紅に向ける。
「ヒナは、みんなを守りたいの・・・」
 雛苺の言葉に重なるように、真紅の足元から不気味な唸りが聞こえてきた。ギギギッと嫌な音を立てて床がきしむ。雛苺ははっと顔を上げた。
「真紅、ハッチをっ!」
 突如、大音響と共に竜骨が折れた。真紅の足元が大きく割れ、猛烈な水柱が立ち昇った。真紅は後ろに跳んで辛うじてそれを避けたが、雛苺はまともにそれを受け、冗談のように大きく吹き飛ばされた。
「雛苺っ!」
 すさまじい水流に押され、真紅は機関室から押し出されそうになった。手近な手すりにつかまり、必死で体を支えた。
「真紅ぅっ!」
 雛苺はあっというまに最後方のタービンにまで吹き飛ばされ、溺れた。圧倒的な水圧で壁に押し付けられ、呼吸を確保することもできない。
「雛苺!すぐ行くわ!待っていなさい!」
 真紅は後方に行こうともがいたが、怒涛のような水を相手に全く動けなかった。全身で突っ張り、現在位置を維持するので精一杯だった。
「真、紅っ!」
 水面に見え隠れしながら、雛苺が浸水音に負けじと大声を出した。
「脱出して、ハッチを閉めるのっ!早くっ!」
「雛苺・・・」
 真紅は後方を振り返った。先ほど自分が開けたハッチは水圧で完全に開かれ、遠慮なしに浸水を前方へと送り出していた。真紅は自分のうかつさを呪った。
「雛苺、何を言っているの!?あなたを助けるのが先よ!」
「真紅、時間がないの、早くするのっ!」
 真紅は歯噛みした。『薔薇』は浸水により急速に後傾を強め、喫水線も落ち込んでいた。すぐにハッチを閉めて浸水を減らさないと、たちまち沈んでしまう。
「真紅。トゥモエやJUMを、頼むの!」
 雛苺は、小さな手をひらひらと振ると、にごった海水の中に消えた。真紅は呆然とそれを見ていたが、やがて自分を取り戻した。
「雛苺・・・・・ごめんなさいっ!」
 真紅は両手を離した。たちまち小さな体は水流に押されてハッチまで吹っ飛んだ。真紅は懸命に手を伸ばし、ハッチのレバーを握った。
「この、たかが水の分際でっ!」
 真紅は壁に両足をつけて踏ん張ると、全身の力をかけてハッチを閉めようとした。重い扉が動くにつれて、流れ込む水の量が少しずつ減っていった。
「くっ!」
 真紅は扉を閉めると、レバーを下ろしてハッチを固定した。真紅は浸水の止まったのを確認すると、がっくりとハッチの前に崩れ落ちた。
「雛、苺・・・・・」
0130名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:26:40.65ID:U9nhMuIW
翠星石は、小刻みに震える手で弾倉を交換した。
「はぁ、はぁっ」
 弾薬がたっぷりあるのはありがたいが、撃ちすぎた。重すぎる銃のせいで腕の疲労は限界に達し、発射音のせいで耳ががんがん鳴った。
「畜生め、ですぅ」
 翠星石は、ちらっと横目で周囲の様子を眺めた。わらわらと生き残った人員が艦内から飛び出し、ボートや短艇に乗り込もうとしている。そこに時折敵機が嫌がらせのように機銃掃射を加え、そのたびに幾人かが血を吹きながら倒れた。
「いい加減に、しやがれですぅっ!」
 翠星石は体をのけぞらせて仰角をとると、上空を旋回する敵機に向かって軽機を発射した。度重なる発射で、軽機全体が赤く焼けてきていた。
「あああああああっ!」
 翠星石の手は熱に焼かれ、ぶすぶすと煙を上げた。翠星石は苦痛のあまり軽機を放り出すと、その場に座りこんだ。軽機が機関砲とぶつかり、耳障りな金属音をたてた。
「どうして、どうして蒼星石と一緒に殺してくれなかったですか・・・・?」
 翠星石は敵に恨み言をつぶやくと、がっくりと両手を甲板についた。そこで初めて、甲板が海水で洗われていることに気づいた。
(そんな・・・・)
 『薔薇』の上甲板はすでにほとんど海面に接し、艦尾の方はすでに水没していた。艦首にまだ浮力が残っているのか辛うじて沈没を免れているが、やがて沈む事は明らかだった。
「ひどい、です・・・・」
 海水は重油に黒く染まり、手のやけどにひりひりと染みる。周囲の海面に、乗員の死体がいくつも波にもまれて漂っていた。中身が軽かったのか、積荷のドラム缶がいくつかぷかぷかとのんきに浮いていた。
 翠星石は艦橋を見上げた。爆弾の直撃こそなかったものの、度重なる機銃掃射によって艦橋の表面は異常にささくれ立っていた。ガラスはことごとく砕け、壁の一部は血でまだらに染まっていた。
「よくも、よくも・・・・・」
 翠星石の中に、ふつふつと敵意が涌いてきた。敵機の姿を求めると、艦爆が三機、こちらに向かって真一文字に突っ込んできていた。翠星石はぎっと唇を噛み締めた。
「叩き落としてやるですっ!」
 翠星石はドラム缶の中の弾倉に手を伸ばそうとした。しかし、誰かに手を掴まれはっと我に返った。
「・・・・・真紅?」
「翠星石。総員退去よ。逃げなさい」
 翠星石の背後に、いつの間にか真紅が立っていた。全身はぐっしょりと濡れ、服の一部は焼け焦げてぼろぼろになっている。翠星石はその凄惨さに言葉を失ったが、やがて無理やり真紅の手を振りほどいた。
「真紅たちは逃げればいいですっ!翠星石はここで、蒼星石といっしょに戦うですっ!」
 翠星石は弾倉をはめ込み、機関銃の二脚を掴むと、手の痛みを無視してほとんど真上に発射した。真紅は視線を周囲に回し、大きく破損した蒼星石の体に黙祷を捧げた。
 真上にエンジン音が覆いかぶさるように聞こえてきた。続いて、ヒューっという爆弾が風を切る独特の甲高い音がした。上空を仰げば、敵艦爆はすでに上昇体勢に入っていた。
(しつこいわね。当たるのならば、当たればいいわ・・・・・・)
 エンジンも舵も全損しているので、何も抵抗はできない。真紅はため息をつくだけだった。
 二発の爆弾は大きく外れたが、一発は前部に命中して火炎が吹き上がった。大きく浸水したのか、『薔薇』はぐーっと沈み込んだ。地獄に吸い込まれるような気がして、真紅は恐怖を感じた。
「このっ!このおっ!」
 翠星石は勝ち誇ったように飛び去る敵機を撃ち続けたが、効果はなかった。敵機が視界の外にまで飛び去るのを見届けると、翠星石はがっくりと肩を下ろした。
 甲板は、ほぼ完全に水没した。真紅はすぐ近くに小型のボートがあるのを確認すると、翠星石の肩をつかんだ。
「翠星石。もう十分でしょう?JUMの命令よ。総員退去」
 翠星石は今にも泣き出しそうな顔をして真紅を見つめた。そして、首を横に振った。
「真紅は行くです。翠星石はここで、蒼星石やJUMと運命を共にするですぅ」
 翠星石は、波にさらわれそうになった蒼星石の体をがっしりと抱きしめた。真紅は空を仰いでため息をついた。
「・・・・仕方ないわね」
 真紅は立ち上がった。翠星石は目を伏せたままだった。
 真紅は大きくステッキを振りかざすと、力いっぱい翠星石の頭に叩きつけた。
0131名無しさん@ピンキー2021/11/18(木) 21:28:35.31ID:U9nhMuIW
ぼやける視界の中に、強烈な太陽光が降り注いだ。
「・・・ここは?」
 翠星石は、痛む頭を抑えて吐き気をこらえた。周囲を見回すと、小さなボートに自分を含めて三人だけが乗っていた。
「気がついたの。よかった」
 真紅はオールをこぐ手を休めると、翠星石の顔を覗きこんだ。
「ここ、は?」
 翠星石はむっくりと上半身を起こした。そして、自分が大海原のまっただなかにいるのに気づいた。
「ご覧の通り、海の上よぉ」
 水銀燈が振り返ると、若干疲れた声を出した。翠星石は自分の体にこびりついた硝煙と油の匂いに苛立ちながら、真紅に問いただした。
「『薔薇』はどうしたです?」
「沈んだわ」
「蒼星石は?」
「助けようとしたけど、時間がなかったわ」
「金糸雀や雛苺や、JUMは!?」
 真紅は視線をそらすと、首を横に振った。
「沈没後にも攻撃を受けて、日が沈むころには各ボートがばらばらになってしまったの。誰が生きているのか、状況は誰にもわからないわ 」
「そう、ですか・・・・」
 翠星石は視線を下げ、両手で顔を覆った。やがて、細かいふるえと共に指の隙間からぽたぽたと涙が落ちた。
「どうして、敵の制空権下に駆逐艦を突っ込ませるですか!?それも単艦で!」
 翠星石は運命を呪った。水銀燈はため息をつくと、黙って空を見上げた。
「!」
 水銀燈は突然目を見開くと、真紅の袖を掴んだ。真紅は少し驚いた表情を浮かべて水銀燈を見た。
「あれ、敵機じゃなぁい?」
「どれ?」
 真紅が見上げると、双発の飛行艇が中高度を飛んでいた。真紅は目を細め、それがカタリナであることを確認した。
 敵機はほぼ東南東に飛び去っていった。真紅たちに気づいた様子はなかった。
「真紅、あの野郎は・・・」
 ふいに声がした。翠星石に視線を向けると、その瞳に戦意が湧き上がっていることに気づいて驚いた。
 翠星石はにぃっと笑みを浮かべると同時に、両手を固く握り締めた。もう見えなくなった敵機を睨みつける。
「あの野郎が飛び去った方向には・・・・・」
 ようやく、真紅にも翠星石の言いたいことがわかった。真紅はふっと苦笑した。
「間違いないわね。あの敵機が飛び去った方向に、ガダルカナルがあるわ」
 姉妹は頷きあった。翠星石は水銀燈からオールをひったくると、元気よく敵機の飛び去った方向へと漕ぎ出した。
「進路よーそろです!目的地、ガダルカナルっ!」
「しょうがないわね。他に行くあてがあるわけでなし、がんばってみましょう」
 水銀燈はオールを動かしだした二人を呆れたような視線で眺めると、無気力にボートの上に寝転がった「好きにするがいいわ・・・・・・」


 約二日後、ふらふらになった薔薇乙女達は、ガダルカナル島西岸、タサファロンガ岬に流れ着く――――
0132名無しさん@ピンキー2022/03/05(土) 10:26:14.22ID:l/YtZvGj
ウクライナがガチの戦火になってるな
ウクライナ側はロシア兵による性的暴行が多発とか言ってるわ
0135名無しさん@ピンキー2022/04/12(火) 23:20:10.19ID:hE9665Bb
『ベルリン陥落1945』 アントニー・ビーヴァー(著),川上洸(訳)
ttp://honto.jp/netstore/pd-review_0602465495.html

> 戦争に負けるということ 投稿者:塩津計 2008/02/09
>
> 窓という窓が吹き飛んでいたこともあって、
> 夜毎街中にとどろき渡るソ連兵に強姦されるドイツ女性の悲鳴。
> 何度も何度も輪姦されて精神に異常を来たすドイツの箱入り娘達。自殺した女性も多いという。
> 自分の娘を強姦被害から守るため、隣家の娘達が隠れている場所をわざとソ連兵に教える母親。
> ソ連兵によって同時に祖母、母、娘が強姦される生き地獄。
> 「夫が戦死していたことがせめてもの救い。
> もし夫が生きていたらソ連兵に踊りかかって目の前で撲殺されていたことだろう」。
> 圧倒的な武力を誇るソ連兵の性暴力を目の当たりにして
> 勇敢にも抵抗を試みるドイツの男性はほとんどいなかったという。
> 目の前で隠れ穴からソ連へにより引きずり出され助けを求め泣き叫ぶドイツ女性を前にして
> 「巻き添えを食うのは嫌だから、とっとと彼女をどこかへ連れ去ってくれ」と呟くドイツ人男性。
> 実際、ドイツ女性を強姦しようとするソ連兵に対し決死の抵抗を試みたのは、
> 妻や娘を略奪されそうになった夫か、母親を連れ去られそうになったドイツ少年だったという。
> そして抵抗の代償は、撲殺、射殺。
0136名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:49:31.99ID:htF4jGLg
ザクザクと、地面を掘る音だけが響いていた。
「ふーっ」
 航は円匙を放り出すと、額にじっとりと浮かんだ汗を拭った。左腕に命中した敵弾はすでに摘出に成功していたが、傷はひどく膿んで熱を発していた。航は頭を抑え、こみ上げる吐き気をなんとか押しとどめた。
「あっついわねえ」
 同じく汗を拭う咲耶の顔は泥にまみれ、少し伸ばしていた爪は無残にひび割れていた。昼間でも薄暗いジャングルの中では、顔色まで悪く見えた。
「・・・・・・・」
 花穂は無言で作業を続けていた。流れる汗が腕を伝い、地面へぽたぽたと垂れた。
「雛子ちゃん。様子はどう?」
 咲耶は大きく上を見上げると、高い木の枝に座りこむ雛子に声をかけた。
「敵さんはいないの。だいじょうぶだよ!」
 元気な返事に、咲耶は少しだけ気持ちを明るくした。
(まったく、ジャングルってのは嫌なものね)
 咲耶は敵陣のある方向をじっと眺めたが、あちこちに倒れている倒木や木に絡まるツタのせいで遠くはまるで見えない。暗闇の中からいつ敵の銃弾が飛んでくるかわからず、咲耶は底知れぬ恐怖を感じた。
0137名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:50:06.21ID:htF4jGLg
少し離れたところに、全員の荷物と共に鞠絵が寝ていた。咲耶は枕元にまで歩いていくと、鞠絵の額の汗を手で拭った。鞠絵の呼吸は荒く、顔は真っ赤になっている。呼吸も荒い。
(マラリア?それとも、デング熱かしら)
 鞠絵の銃創はさして深くはなかったものの、体力を大幅に消耗してしまった。そして、撤退と同時に鞠絵は倒れた。手当てをしようにも、医薬品はほとんど皆無だった。数錠だけ勿体をつけて渡されたキニーネも飲みつくした。
「咲耶ちゃん・・・・・」
 人の気配に気づいたのか、鞠絵がゆっくりと目を開けた。その瞳は潤み、視線はうつろだった。
「大丈夫?無理しないで、何か用事があったら遠慮しないで言ってね」
 咲耶は、頭を撫でて優しい言葉をかけることしかできなかった。鞠絵は弱弱しく首を横に振った。
「大丈夫です・・・ありがとうございます・・・・・」
 消え入るような声で言うと、鞠絵は目を閉じた。やがて穏やかな寝息を立てはじめたのを確認し、咲耶は手を鞠絵から離した。
「亞里亞ちゃん」
 咲耶は、鞠絵のすぐそばに座っている亞里亞に声をかけた。亞里亞は銃弾磨きの手を止めると、咲耶を見上げた。
「鞠絵ちゃんに何かあったら私達に言ってね。お願いよ」
 亞里亞は返事をするかわりに、にっこりと笑った。咲耶は亞里亞の頭を一撫ですると、穴掘りの現場にとって返した。
 作業を再開して間もなく、カンカンと何か金属がぶつかる軽やかな音が近づいてきた。
「あ、白雪ちゃんかな?」
 航は顔を上げ、表情をほころばせた。やがて海岸の方から、飯ごうをいくつも持った白雪が姿を現した。風に乗って、食欲のわくいい匂いが漂った。
「お待ちどうさま、ご飯ですの!」
 白雪は飯ごうを地面に下ろすと、ふうと息をついた。白雪の声にようやく花穂も作業を中断し、顔を上げた。
「ずいぶん進んだですの」
 白雪は工事の進捗状況を見て、驚いた表情を浮かべた。土嚢で囲った直径三メートルほどの穴を中心に、大きさもまちまちの蛸壺がいくつか浅く掘られていた。
「いつ攻撃があるかわからないからね。あとはちゃんとした防空壕がほしいね」
 航は服についた土をぱたぱたと払った。しかし、湿った土はなかなかはがれなかった。
「昼からは姫もがんばりますの」
 白雪は、左腕で力こぶを作って強がって見せた。
0138名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:51:55.59ID:htF4jGLg
亞里亞と鞠絵の所に戻り、兄妹は円陣を組んで食事をした。鞠絵も気分がいいらしく、航の助けを借りて上半身を起こすことができた。
 すでに食料事情は悪化がひどく、一食分は片手ですくえるくらいの粥一杯だけになっていた。それこそ一分もかからずに食べ終わる。
「・・・・・・・」
 全員が言葉少なくなる。言いたい事はわかっていた。
「白雪ちゃん。午後は、食料を見つけてきてくれないかな?」
「はいですの」
 白雪はややこわばった面持ちで頷いた。
 妹姫支隊先遣隊は、すでに戦術的な攻撃部隊としての存在をやめていた。攻撃失敗後、先遣隊は撤退してきた兵士を収容し、上陸地点のタイボ岬のすぐ近くまで引き上げた。
 生存者は百五十名を下回り、その半数は負傷していた。重火器はおろか各自の背嚢の移動もままならず、結果として大半の食料と武器を放棄することになった。
 撤退を終えた部隊は全周防御の体勢をとり、来るべき敵の追撃に備えていた。その後、初めから島にいた海軍の設営隊もいつの間にか集まり始め、兵力は若干増大していた。支隊長の妹姫大佐をはじめ将校は軒並み戦死か自決をしており、指揮系統はガタガタになっていた。
「海岸を探して、椰子の実でも探しますの」
「頼んだよ」
 航が空腹を無視して立ち上がった瞬間、西の方から多数の航空機のエンジン音が聞こえてきた。妹達ははっとした表情を浮かべた。
(空襲!)
 咲耶の背中に、さっと冷や汗が流れた。咲耶は飯盒の底に残った米を胃袋に流し込むと、勢いよく立ち上がった。
「お兄様。塹壕へ。平地にいるよりましだわ」
「そうだね」
 咲耶に促されるように、全員は立ち上がった。航は鞠絵を背負うと、ふらつく足で塹壕へと歩いた。
 咲耶は雛子や亞里亞を塹壕の一番深い部分に寝かせ、自分はその上に覆いかぶさるような姿勢をとった。花穂は小銃を持って膝立ちになり、敵の襲撃に備えていた。やがて航と鞠絵がやってきたので、花穂は場所をあけて穴の淵近くに陣取った。
0139名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:52:28.42ID:htF4jGLg
「こんなに密集していいのかしら?」
 咲耶は身の周りを見回し、苦笑を浮かべた。兄が一人に妹が六人、さして広くもない穴の中に身を寄せ合っていた。
「死なばもろともだね、咲耶ちゃん」
 花穂が、ぐっと銃を握りながら言った。咲耶は花穂の口調の冷たさに少し背筋が冷える思いがした。
 エンジン音は轟々と高まり、頭上付近に迫ってきたが、予想していた爆弾の雨は降る気配を見せない。咲耶は不思議そうに空を見上げたが、生い茂る木々に阻まれて何も見えなかった。
「ここじゃなくて、ブーゲンビルにでも空襲をするつもりかしら?」
「どうだろうね」
 航は、咲耶の考えには同調できなかった。それなら、爆音が近づいてくる理由がない。
 空を見上げる航の耳に、バリリリ、バリリリ、という機銃の発射音が聞こえてきた。エンジン音はいくつもの音が入り混じり、急上昇時特有の唸りも聞こえた。
(空戦をしている?)
 航の胸の中に、ふわっと安心感が噴き上がってきた。この島の上空で空中戦が起きているという事は――――
 咲耶はぱっと目を見開くと、航にすがりついた。
「お兄様、味方よ!間違いないわ!」
 続いて敵陣の方で、次々と爆弾が命中する音がした。振動が島を揺らした。
「やったあ!」
 花穂がもろ手を上げて万歳をした。少し離れた別の壕でも、兵士達が立ち騒ぐ声が聞こえてきた。
「お兄様、海岸に行きましょう!」
 咲耶は航の腕を掴むと、引きずるように海岸へと走った。
0140名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:53:30.80ID:htF4jGLg
「お兄様!見て、零戦よ!」
 咲耶は沖合いを指差した。少し離れた低空で、敵味方の戦闘機が空中戦を繰り広げていた。一機は敵のグラマン、もう一機の白い機体は味方の零戦だった。
 二機は低空をもつれ合うように戦っていたが、やがてじりじりと零戦が背後に回りこんだ。翼と胴体が光ったかと思うと、グラマンはたちまち黒煙を引き出した。そのまま敵機は体勢を崩し、海面に激突して爆発した。航は、呆けたような表情でそれを見守っていた。
 零戦は誇らしげにバンクを振ると、高度を取り直しながらラバウルの方向へ飛び去った。
「お兄様・・・・・よかった・・・・・・」
 不意に咲耶が腕を絡ませ、顔を伏せた。航が見下ろすと、咲耶はぽろぽろと涙をこぼしていた。
「私たちは、見捨てられてない。海軍さんも助けに来てくれた・・・・・・」
「咲耶ちゃん・・・」
 航は、咲耶がずっと我慢していたことに初めて気づいた。頼れる年長の妹は軒並み散り、幼い妹達の面倒を一手に引き受け、咲耶は疲れ果てていた。
「咲耶ちゃん。がんばろう。ここががんばりどころだよ」
 咲耶は黙ったままこくりと頷いた。


「じゃ、姫は行ってきますの!」
 妹達は、見事なほど元気を取り戻していた。白雪は空腹も忘れたのか、軽やかな足取りで食料調達へと去っていった。
「それじゃ、私達も作業をしましょう」
 食事の後片付けをすませると、咲耶は近くに偽装しておいた重機関銃をぽんぽんと叩いた。航と花穂は何も言われずとも咲耶のそばに駆け寄り、重機を掴んだ。
「いくわよ、せーのっ!」
 咲耶の合図で、重機を持ち上げる。五十キロ以上ある重機はずっしりと重く、航の左肩の傷が悲鳴を上げた。
 よちよち歩きながらもなんとか塹壕に運び込んだ。先ほどまで自分達が隠れていた場所に、黒々とした機関銃が鎮座した。航は簡単に各部を調べてから、弾丸を装填して押金を押した。重い振動が伝わり、数発の弾丸が空高く飛んだ。
「よし」
 花穂が両手にいっぱい保弾版を抱えてくると、重機の脇に積み上げた。
「お兄ちゃま。これで、かなり戦えるね」
「苦労して運んだかいがあったよ」
0141名無しさん@ピンキー2022/04/19(火) 20:55:55.89ID:htF4jGLg
この重機は本来は機関銃小隊の所持品だったのだが、小隊が一人残らず戦死したため頂戴したのだった。花穂は銃身についた泥を素手で払った。
 その時、西の方から爆音が聞こえてきた。今度は先ほどと違い、正確に敵飛行場の方向から聞こえてきた。白雪を除く妹たちは特に合図なく集まってくると、壕の中に次々と入った。航はまたしても鞠絵を背負いに走った。
 重機を取り囲むように、六人は座りこんだ。花穂の手から誰かの防暑帽が手渡され、航はその上に腰掛けた。湿った土の上よりはましだった。
「爆撃を受けたばっかりなのに・・・・」
 鉄帽を深くかぶりながら、花穂が歯噛みした。
「示威行動よ。こっちの意思を砕こうとしているだけ。負けちゃ駄目よ」
 咲耶は花穂の隣に座ると、肩を抱いた。もともと小柄だった花穂の体はさらに痩せ、びっくりするほど肩は小さかった。
 爆音が頭上に覆いかぶさると共に、爆撃が始まった。ヒューッと爆弾が風を切り、やがて地面で爆発する。初弾は割に近くに命中し、どっと吹き上がった土煙が塹壕の中まで入り込んできた。
「ふうっ」
 どうしようもないので、咲耶はため息をつくしかなかった。どこかで、めりめりと大きな音を立てながら木が倒れた。
 敵機は爆弾を落とし終わると、機銃を盲めっぽうに撃ってきた。弾丸が飛びかい、ガツガツと樹木に当たって獰猛な音を立てた。ほとんど命中はしないが、恐怖感は甚だしい。航は亞里亞と雛子をすぐそばに寄せると、両手で抱え込んだ。
 花穂が咲耶に抱かれながら、横目で重機関銃をちらっと見た。咲耶はそれに気づき、花穂の耳に口を寄せるとそっとささやいた。
「だめ。重機一門じゃ何もできないわ。発射位置を特定されて、爆弾を落とされて終わりよ」
 花穂も冷静さを失ってはおらず、諦め顔を浮かべて座りこんだ。咲耶はほっとした。
 爆撃は、永遠と思える時間に及んだ。数分に一回爆弾が落ち、機銃掃射は絶え間ない。航は敵の物量に舌を巻いた。
(この空襲で、いったい何万発を撃ちこむんだ?)
 航は腕時計を覗いた。短針は一の文字を差していた。
 
0142名無しさん@ピンキー2022/04/29(金) 19:18:27.31ID:yiJCUwai
10歳の少女が膣と直腸を犯されて壊されて殺された遺体画像出てたわ
流石に顔と性器はモザイクだったけど、きれいな身体した遺体がいくつも積み上げられてて
洗浄して冷凍して輸入したかった
0144名無しさん@ピンキー2022/04/30(土) 18:37:45.53ID:PXAkv6MF
>>143
そう、ウクライナ
地下室かどっかに少女の半裸・全裸遺体が積み上げられてた
犯した/殺したロシア兵のスマホにはモザイクなしの御遺体が映ってんだろうな いいな
0145名無しさん@ピンキー2022/05/01(日) 02:33:43.28ID:tkRZBtmx
そんなのモザなしでも見たくねーわ

リアルで実物見たことない童貞かよ
0146名無しさん@ピンキー2022/05/01(日) 20:50:20.11ID:hM6Ae+6a
へっへっへ 素直になれよ兄弟
自分を守ろうとして頭を撃ち抜かれた母親の眼前で未成熟な身体を辱められたあげく、母親のもとに送られる少女の柔肌なんて最高だろ
0147名無しさん@ピンキー2022/05/02(月) 00:07:57.43ID:MfI8qlP8
>>146
ファンタジーとフィクションなら美味しくいただけるけど、現実のは苦手なんだよ兄弟
0148名無しさん@ピンキー2022/05/02(月) 02:05:05.48ID:71xvyIfT
だいたいそんなのモザ無しでみたいとか言うカスはそんな鬼畜露糞と同じだぞ、そこまで落ちぶれたいのか?
0149名無しさん@ピンキー2022/05/03(火) 00:22:25.97ID:J08k/ZPC
やっぱり実物、それも関係者が生きてるうちは辛いということがわかった
senkaは完全な歴史の彼方の話か非実在少女に限る
0152名無しさん@ピンキー2022/05/12(木) 16:27:14.71ID:hdwj1+/4
6歳の少年イワン
イワンは目の前で母親がロシア兵に何度もレイプされ、死んでいくのを見なければならなかった。
イワンの髪の毛は真っ白になり、言葉を発しなくなったという。

母親幾つかなー 30代半ばぐらいだといいなー 息子の目の前で犯されて殺されるとかすげーなー
0153名無しさん@ピンキー2022/06/01(水) 17:14:41.99ID:WRcmcfUN
戦車部隊の衛兵ミハイル・ロマノフ容疑者は3月、キーウ(キエフ)州東部ブロバルイの村で、
民家に押し入って男性を射殺し、他の兵士らと共に男性の妻を繰り返しレイプした。

奥さん生きてるっぽいなー かわいいのかなー
0154名無しさん@ピンキー2022/06/13(月) 14:10:39.98ID:qO4lH6gZ
>>145
あったわ
ttp://file5.ebbs.jp/view.php?guid=on&b=44834&t=31364708&ln=7&l=99535738&num=1&size=240
0155名無しさん@ピンキー2022/06/15(水) 16:47:46.76ID:WbAyGe6y
>>154
よぉ兄弟、朗報だ。 この写真はレイプされて殺された死体じゃないらしい。
良かったな、レイプされて殺されて晒されてるんじゃなかったんだよ、どっちにしろ死んでるけどな!
0159名無しさん@ピンキー2023/10/09(月) 01:07:47.21ID:LYpgN1YJ
Shani Louk

ttps://twitter.com/wallstwolverine/status/1710635935975579948
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ttps://www.instagram.com/shanukkk/
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0160名無しさん@ピンキー2023/10/10(火) 06:49:02.35ID:7Us669xP
ttps://video.twimg.com/ext_tw_video/1711006596594110464/pu/vid/avc1/368x640/zSGg1ji3WZtkhzdw.mp4
( ttp://megalodon.jp/ref/2023-1009-2318-35/dotup.org/uploda/dotup.org3061841.mp4 )

このあと滅茶苦茶犯された
0162名無しさん@ピンキー2024/03/24(日) 21:11:43.37ID:4YrUz/gC
女騎士「くっ…犯せ」オーク「学歴は?」:ぼっち速報
ttp://bottisoku.blog.2nt.com/blog-entry-4815.html
0163名無しさん@ピンキー2024/04/22(月) 11:31:27.76ID:75EB7D5K
https://uk.news.yahoo.com/palestinian-baby-gaza-born-orphan-195533883.html?guccounter=1
母親のサブリーン・アル・サカニさんが妊娠30週目であることを知った。遺体が運ばれたクウェートの病院では、医療従事者が緊急帝王切開を行った。
幼いサブリーン自身も死にかけ、息をしようと必死になっていた。
彼女は生き延びた。


赤ちゃん守れたね、偉いね、天国で赤ちゃん見守ってあげてねって称えながらお母さん抱きたい
お母さんの写真は見当たらないのがもったいない
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