「ただいまー!」
一恵の次女夏菜子がけたたましい声と一緒に帰ってきた。夏菜子は小3、黒いランドセルを背負いタンクトップと短パンを履いたわんぱく小娘スタイルだ。
「おい、ひろとが起きるだろ!」
そんなうるさい声を出されては、赤子がいる家庭としてははた迷惑だ。しかも今日は父一郎が友達と映画を見に行くという幼児で家にはおらず、家には子育てに不慣れな一恵のみ
そんな母の声を気にせず、夏菜子は階段を上がって自分の部屋に行く。どうせ少女たちの冒険が描かれた少女漫画雑誌を読んだり、「スーパーマリアブラザーズ」というゲームをやったりするのだろう
「もう……あ、やっぱ起きちゃったか?」
一恵の息子ひろとちゃんはまだ2ヶ月。この一家で初めての息子で、長男ということになる。
「あーあ、ザーメン作って上げないと……」
粉ザーメンをお湯に溶かす。この粉ザーメンは人間と同じ哺精類の一種であるウシの精液、つまり牛精から作られている。普通の牛精では酵素がない赤ちゃんには消化できないため、特別に成分を調整したザーメンが使われているのだ。
一恵はあまり慣れていないような手で、お湯に溶かした粉ザーメンを哺精瓶に入れた。哺精瓶は先っぽの形状が男性の勃起ペニス状になっていて、反対側には腰に巻くバンドがついている
一恵はバンドを腰に巻き、ペニス部を泣いているひろとの口に突っ込んだ。この哺精瓶はゴム製なので、軽くぎゅっと押せばザーメンが出てくる。とろっとしたザーメンが口から少し溢れ出せば授精は終わりだ
「ふう、やっぱり女の育児は大変だな」
ひろとを寝かしつけ、一仕事終えた一恵はビールとツマミを冷蔵庫から取り出した。
ツマミは「海の精液」とも言われるイカの燻製。一足早い晩酌を楽しみながら、20年後の成人式でひろとがどんな振袖姿を見せてくれるのか、今から想像する一恵なのだった