「お、おい!里奈!?そんなにひっつくなって!いくらなんでも動きにくいっての!」
「何よ!公認カップルがコレくらいもひっつかないでどうするのよ!だらしないわよ夏彦?」
牧村里奈と夏彦と呼ばれた男はお互いに腕を組み、ギクシャクした足取りで
とある遊園地内を遊び回っていた―
(ま、浮かれた気持ちになるのは痛いほど分かるがな…)
かつてのセントラルアイランド大地震の悲劇から、すでに2年が経過していた。
だから。
油断していた―
「里奈……?」
その悲鳴は、間違いなく彼女の声だった。
いつでも「それ」は牙をむき出しにして、自分達を翻弄するものであり。
「うわああああぁぁぁああああッ!!?」
決して絶対的な安全地帯など、この世のどこにもない、と言う当たり前な事を忘れて―
「命に別状は無いようです」
「そ、そうですか…」
夏彦は、とりあえず運び込まれた先の病院で里奈の命の無事を知り安堵した。
「しかし…」
「?」
だが、付き添いで来た者が患者とはどんな関係かを計りかね、医者が
何か言い淀む様子を見て夏彦は少し照れ臭そうにしながらも、言った。
「俺は彼女の彼氏です。もし何かあるなら是非聞かせてください」
「そ、そうか。なら仕方ないな。どうか落ち着いて聞いてくれ」
夏彦はその後の医者の言葉、話を聞いて愕然とした。
「恐らく頭部に強い衝撃を受けた事が原因、その影響と思われる―」
「記憶、喪失…」