【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ18【総合】
ワードナ率いるヴァンパイア軍団や、ローグ、オークその他のモンスターに凌辱される女冒険者たち。
プリーステス、ウィッチ、サキュバス、獣人などの女モンスターやNPCを凌辱する冒険者たち。
ここはそんな小説を読みたい人、書きたい人のメイルシュトローム。
凌辱・強姦に限らず、だだ甘な和姦や、(警告お断りの上でなら)特殊な属性などもどうぞ。
過去スレその他は、>>2-10辺り。 以上、テンプレ貼り終わりまして。
かつてサッキュバス後続でマイルファックを書いていた13-533です。
最後を締められないままここまで来てしまい今さらなのですがやっと締まったので投下をと思ったら
過去ログ倉庫になってて保守しておけばよかったと後悔しつつ他に投下するところもないので
思い切ってスレ立ててみました。
・FC版3(#2)(メインはマイルフィック×プリーステス・サキュバス、サブでメデューサリザード×セラフ)
・獣姦、乱交、アナル、流血、死亡あり(でもたぶんほのぼの)
・マイルフィックが小人化(3mくらいに)、途中からちょっとギャグっぽいけどこれで精一杯
どれだけの方読んでくださるかわからんけどここで過去作昇華させてもらえるならそれだけで感謝。
以下18カキコ失礼します、よろしければどぞー。 サキュバスは冷ややかな笑みを浮かべ事態を眺めていた。
そばに寄り添うメデューサリザードの頭を優しくなでるも、その動きはやけに機械的で冷たく感じられた。
なでていた手がふと止まる。
まさか、あの破壊神がたかだか人間の女に落ちるなんてね……。
前回夢魔たちと相対した際も、肉棒や尿道口を少しくすぐられただけで彼は達してしまった。
いかに伝説の魔神と怖れられるマイルフィックも、こちらの方面に関してはあまり強くないのだろう。
まさかとは思ったけど、ちょっと想定外だったわ……。
主(しゅ)マイルフィックは顔を上げなかった。
プリーステスは胎内を満たす充足と主の肉体から伝わる温もり、心地よい重みと抱擁に身を委ねていた。
あれほど身の内をひしめいていた激痛は驚くほど薄れていた。
ああ、私の中を主の愛が……主の熱で満たされていく……。
細い腕を力一杯に伸ばして主を抱きしめ、背や腰をなでたり翼やつけ根に触れてみたりする。
主は時折ひくっと反応し、くすぐったそうに肩や翼を動かすが、それでも彼女を抱きしめたまま一向に顔を上げなかった。
否、上げられなかったのである。
屈辱ダ…!!
快楽の余韻と心地よい疲労感の中、主は言葉に言い表せぬほどの怒りと屈辱と後悔と憂鬱にさいなまれていた。
まさかこんなに早く、それも人間の小娘に、大して動かしてもいないのに、イかされるなど誰が思っただろうかいや思うはずがない。
挿入の後、のん気に話などさせず胎内をめちゃくちゃにかき回してやればよかったものを、あまり激しく動かすと自身が先に達しそうだったために自重していたのが裏目に出た。
今もなおいやらしくうごめき物欲しげに吸いついては奥深くへ呑み込もうとする、かといってきついわけでもなくむしろ……イイ。タマラン。
はっきり言ってこの娘の中はまことに具合がいいのである。よすぎるのである。
何というふしだらな娘だ。けしからん。我が肉体をこんなに深くまで誘(いざな)いよって。こんなにも強く締めつけよって……。
ああ、などと考えていたらなおも肉体がおかしくなってきた。ナゼダァ。
先ほどもだ、なぜ突如下半身に快楽が込み上げてきたのか検討もつかない。まったくもって謎である。オノレ……。
狡猾で策謀に長けた頭脳を有する伝説の魔神ですら己が所業を振り返るほどの非常事態、こうした射精後の一時を賢者タイムと呼ぶこととなる所以となったのかどうかは今は別にどうでもいいことである。
少しして、さすがに彼女の肩に延々顔をうずめたままでは体裁が悪いと思ったのか、主はおもむろに顔を上げた。
しばし視線を宙に彷徨わせた後、ちらっと彼女を見やる。彼女は痛みと喜びの入り混じった潤んだ瞳で主を見つめていた。
「オレンジ色の瞳……」
主の瞳をまっすぐに見つめ、彼女は深い感嘆の声を漏らした。
「なんて綺麗……」
「キレイ……?」 今までそんな風に表現した人間など……主は黙り込んだ。
誰もが皆、感情が微塵も存在していない眼だと……禍々しいと……怖いと……
「とても澄んでいて、まるで小鳥さんみたい」
「コ、コト……ッ」
いったい誰を前にしてそんな戯言が吐けるというのか。
突如胎内がきゅっと締まった。あまりに顕著な刺激に主は表情を歪ませる。無意識に腰に力が入った。
いや、もしかしたら自身のモノが再び硬さを取り戻したのかもしれない。
「……ッ」
「本当に小鳥さんみたい……口元はかわいらしい子猫」
プリーステスは潤んだまなざしを向けたまま両手をそっと主の頬に伸ばした。
先ほど主の肉体を締め上げたことには気づいていないようだ。
触れるか触れないかというもどかしい手つきでそっと主の頬をなで下ろす。
「グ……ッ」
こんな……コンナ……
主は口元を歪ませた。あまりに想定外の連続に頭の整理が追いつかない。
コンナ娘ハ 初メテダ。
「ハ…ア…ッ」
マイルフィックは身をかがめた。
「アァッ」
「…?」
「ンゥ…ッ」
「あ……」
主が感じていらっしゃる……?プリーステスは全身に熱いものが込み上げてくるのを感じた。
主が、私の体で感じていらっしゃる……私の体で、中で……?
ああ、なぜかしら、私……もっと……もっと、主に感じてほしい……。感じさせてさしあげたい……。
思わず両腕を主の背に腰に、ぎゅっと回す。 「ッ……」
「あっ……」
主は意識してか無意識か、腰を揺らした。円を描くように接合部をこすりつける。
プリーステスは胎内をかき回される刺激にきゅっと目を閉じる。
あ、あぁ、深い……。私のこんなに奥深くまで主のお体が入っていらっしゃるなんて……。
主の、おからだが……。
私、私今、本当に主と一つに解け合って……ひとつに……。ああ、わたし……っ。
足を大きく広げ、自ら男を受け入れ、逃さないよう足を絡め、腕を回ししがみつく……
その背徳的な行為に自身の体が熱く疼き出したことに気づく。
激痛はとうに失せ、少しずつ心地よさ……快楽に変わってきたようにすら感じる。
「っ……」
「ア…ッ……アァ……」
「あ、主よ…」
「ウルサイ 黙ッテオレ…!」
「……はい」
「ッ……」
ナゼダ……ナゼ、ダ……ア…アァ……
主はますます表情を歪ませ、腰を動かし打ちつける。
気持チイイ…!!
「ア……アグゥ……ッ」
「……」
「貴様ハ、何度 我カラ 搾リ取レバ 気ガ 済ムノダッ」
「あぁ、そ……」
そんなこと……
プリーステスは何度も主を感じさせているという背徳感に全身がさらに熱く疼くのを感じた。
あぁ、体が溶けてしまう……!
「あ、ああ、主よ……」
「ッ……ッ」
マイルフィックは思案した。
もうこの娘をどうにかしようなどとは考えず、今はただ純粋にこの快楽に身を委ねてはどうなのかと。 「主よ……っ」
「……」
この娘は我を受け入れている。肉体だけでなく精神をも、我が存在そのものを受け入れているのだ。
それがあまりに滑稽で愚かしく、心地よい。
仮にこの娘も尖兵同様何か小賢しいことを企んでいたとて、少しくらい騙されてやってもいいかという気になってくる。
どう足掻こうと我が力の前には塵に等しいのだということ、その場になったら知らしめてやればいいだけのこと。
主はつとプリーステスの首元に口づけを落とし、そのまま左肩に顔をうずめた。
「名ヲ 呼ベ……」
びくッと反応するプリーステスをよそに、主は構わず耳元で、しかし今度は小さくささやいた。
「我ガ名ヲ 呼ベ、マイルフィック ト…」
「…………」
プリーステスは主の名を口にする無礼を許されたことに驚きを隠せなかった。
実際のところそれは真名ではなく人間界においてそう称されただけに過ぎないのだが、そんなことを彼女は知る由もない。
歓喜の思いが込み上げ、全身の熱がさらに加速し、涙があふれ出てきた。
「マイルフィック、様…」
「……」
「マイルフィック様、私、私……マイルフィック様……」
何度も何度も主の名を口にする。
「こんな、こんな……こんなの、初めてです……。体がおかしくて……私……マイルフィック様……っ」
「…………」
全身を襲う羞恥と罪悪と鈍痛と背徳感、それでいて歓喜と快楽の波に戸惑う彼女を前に、主はフッと笑った。
それは自嘲気味な笑みにも感じ取れ、プリーステスは主から目が離せなくなった。
「……安心シロ」
主もまた少しだけ顔を上げ彼女を見つめ返し、静かに言葉を続ける。 「我モ 初メテダ……」
「…………」
主は再び彼女の肩に顔をうずめ、互いの体温を確かめ合うかの如く強く抱き寄せ、全身を密着させる。
「……コンナニ 気持チイイノハ、初メテダ」
なんてこと!マイルフィック様の初めてをあんな人間の小娘に奪われるなんて!
サキュバスは動揺を隠せなかった。
それにしても「こんなに気持ちいいのは」とは……そうではないときがあったってこと?えぇー?私のときぃ?
それとも、マイルフィック様はすでに誰かとのご経験があったということかしら。
初々しさは気になったけど、女性の扱い方は初めてにしてはやけに手慣れていたし、とっても上手で紳士だったし。
んー……決めたわ。
マイルフィック様の後ろは私がいただくわ!
ああ、私の生涯などしょせんこんなものか。
かつてセラフの中でも指導的立場にあったこの私が、今やこんな醜悪な薄暗い地下迷宮で魔獣に犯される。
この上ない屈辱……!
かといって、別段抱かれたい相手がいるわけでもない……。
セラフは乾いた笑みを浮かべ、虚空を見つめながら小さくつぶやいた。
「アークデーモン様……」
神は我らをお嫌いになってしまわれた。我らを見捨ててしまわれた……。
今や神に愛されているのは人間と、人間を認め、神の現し身として丁重に保護する天使たち……。
私が完全に闇には堕ちず、未だこの姿でいられるのは、心のどこかでまだ神を信じているからだろうか。
救いを求めているからだろうか……。
あの方は……あのお方は今何を思っていらっしゃるだろう。かのお方には今どんな加護が下りているのだろう。
アークデーモン様……!
「クゥ…?」
「……」
「クゥ……」 魔獣は小さく鳴き、衣越しにセラフの太ももに頬をすり寄せた。上目づかいにじっと見つめている。
「なんだお前……私を心配してくれているのか……?」
「クゥゥ……」
目の前のトカゲは上目づかいのまま顎を膝に乗せおとなしくしている。
「……ふふ、何も知らないくせに……」
セラフは自嘲とも悲哀とも取れる空虚な笑みを浮かべつぶやいた。
「何にも知らないくせに……」
セラフはトカゲをそっと抱き起こすと背に腕を回し、顔を寄せ抱きしめた。
先ほどまでぞっとしていたはずの冷たい肌を自らじかに感じる。
「ん、あ…」
すかさずトカゲも前足をセラフの背に回してきた。受け入れてもらえたと思ったのだろう。
トカゲはゆっくりと重みをかけ、セラフは押されるままに静かに床へ倒れこんだ。
「……したいのだろう?」
セラフは少しずつ淡い緑色の衣をずらし、太ももを露わにしていく。
サキュバスやプリーステスと比べるとやや肉づきに欠ける細身の足だが、白く透き通った肌がかつてこの天使も神々しい存在だったのだろうことを思わせる。
「クゥゥ……」
「ん……」
魔獣は衣の中に鼻先を忍ばせ秘所を軽くつついた。二股に割れた舌先を秘所に滑らせペロペロとなめあげる。
「あっ…んんっ」
セラフはびくっと反応した。思わず腰を浮かせ足を閉じかける。
度重なる情事を目の当たりにしていたためか思考に反して肉体は相当に疼いており、より一層敏感になってしまっていたのだろう。
最初は冷たく感じた魔獣のそれは摩擦によってか次第に熱を帯び、知らぬ間に気にならない温度に変わっていた。 「あ、まっ……もう少し、ゆっくり……っ」
セラフの願いも空しく、魔獣はさらに秘所の割れ目に舌先を強く押しつける。
上部の突起……陰核部を舌先でくすぐり、尿道口や膣口までまんべんなく舌を這わせると細身の肢体が跳ね上がった。
懸命に声を殺すセラフをよそに、魔獣は次第に潤ってきた愛液をからめ、舌先を胎内に挿入した。
「あっ…っ……あぁぁああっ」
声を殺し切れずに漏らし、セラフは下半身から押し寄せてくる耐えがたい快楽に見悶えた。
逃れようにもさらに敏感な箇所をこすりあげられ、動かされ、胎内をかき回される。
度重なる快楽に迫りくる絶頂……思わず体をひねり足を閉じる。それでも舌先は変わらず動き回り、セラフは声なき声を上げた。
全身に力が入り足ががくがくと震える。瞬間頭が真っ白になった。
「はっ……あ…っ……あぁ」
脱力と同時に魔獣はいったん舌先を外した。再び膝の上に顎を乗せる。
セラフは自身の呼吸の乱れと動悸に気づいたが、頭の整理がつけられず混乱していた。
なんだこれ……なにこれぇ……
気持ちいい……きもちいいぃ……からだがおかしい……こんなの知らないぃ……
「アークデーモン様ぁ……」
彼女の視界にはもはや魔獣は映っていなかった。
彼女の脳裏には、闇に身を投じながらも静かにほほ笑む、憧れと尊敬の象徴が映っていた。
あーくでーもんさまぁ……
瞬間セラフはびくっと体を震わせた。振り返ろうにも体が動かない。だが……だが……
「あっ…えっ?ま、待てそっちは違う……!」
「マイルフィック様、どうか私もご一緒させてくださいませっ」
互いに抱きしめ合い熱を感じていた二人……主マイルフィックとプリーステスをよそにねだるような声が響いた。
溜まりかねたサキュバスが主の背に抱きつき、その豊満な乳房をこすりつけてきたのだ。
「何ヲッ」
「大丈夫です。私が致しますからどうかそのままで」
「マイルフィック様……」 プリーステスも小さく主の名を呼んだため、一瞬彼女に視線を移したのが失敗だった。
「ハァッ…ア…アアァッ?!」
「マイルフィック様……?」
「ッ……」
主はとっさに顔を伏せる。それでいてプリーステスに見えない向きでサキュバスを睨みつけた。
「ドコニ 触レテイルッ!」
「マイルフィック様に、もっともっと気持ちよくなっていただきたくて……」
「〜……ッ!」
「……マイルフィック様、気持ち、いいですか……?」
「…………」
プリーステスにまじまじと聞かれ、主は黙り込んだ。
サキュバスは主の背に乳房をすり寄せた後、両手で主の尻をなで回し、自身の愛液でたっぷりと濡らした指を挿入したのである。
正直なところ、その尻から生えている蠍(さそり)の尾に刺される覚悟でいたのだが、主は抵抗を行動には移さなかった。
賭けではあったが、主は性行為にふけっている最中はわざわざ血生臭いことはしないのではないかという読みはどうやら当たったようだ。
サキュバスは痛みを与えないようゆっくりゆっくり挿入し、少しずつ指を腹側へ腹側へと動かしていった。
「ア、アアッ…オ、オオオォォ…ッ」
主の肉体が敏感に反応するのをプリーステスはじかに感じていた。
接合部がまだつながっているためその振動が自身にも伝わり、下半身が再び熱く疼くのを感じる。
ああ、マイルフィック様が感じていらっしゃる……。
プリーステスは得も言われぬ至福と快楽に満たされ、再び主を強く抱きしめた。
腰に手を回すと主はことさらに反応し肉体を震わせる。全身に力が入っているようだ。
「ッ…デ、出ルッ」
「出るのですか?マイルフィック様、どうぞ出して下さい」
「マイルフィック様……」
「違ウ、尿意ガ、便意ガ…ッ」
「?」
「トニカク 離レロ!」
「……?」
「あぁ、おしっこが出るのですか?大丈夫ですよ、そのままで」
「何ガ 大丈夫…!」 おしっこ?プリーステスは瞬間立って排泄している主を想像し、顔が真っ赤になった。
でもでも、このまましていただくと私の中に出していただくことになる。それは、それで……
「どうぞ、そのままで……」
思わず口をついて出た言葉、瞬間主がわずかに反応したのを感じた。
サキュバスも構うことなく挿入した指をそっと腹側に添わせつつ抜き差しし、優しくかき回す。
わずかにくちゅくちゅと水音がし始めた。
「ンァ、オオゥッ…」
「大丈夫ですから」
「〜〜……ッ」
主はプリーステスの肩に顔をうずめたまま声を荒げた。
「性行為ト 排泄行為ハ 別ダ!早ク 抜ケッ!」
「まあ」
「マイルフィック様……」
「マイルフィック様は本当に紳士でいらっしゃるのですね、嬉しいですわ。ですが本当に大丈夫です。今はお体が混乱していらっしゃるのです。出るとしたら精液が出るのですよ。お尻の中もすっきりしていますし、何もご心配いりませんわ」
「ッ…!」
「ナゼ 貴様ガ ソンナコト…ッ」
「大丈夫ですわ」
言いつつさらに指先で主の中をかき回す。
「ア、アァァッ」
「あ……」
都度敏感に反応する主を前に、プリーステスは次第に愛おしさが込み上げてきた。力一杯に主を抱きしめる。
「オゥッ」
「あんもう、マイルフィック様ったら」
「アァッ」
「あっ、マイルフィック様……」
「〜〜……ッ」 後ろに引こうとすればサキュバスにさらに尻の奥をえぐられ、前に逃れようとすればプリーステスが男根をより深く呑み込んでくる。
まったくもって逃げ場なしである。主は抵抗をやめ、代わりにプリーステスを強く抱きしめた。
押し寄せる快楽に懸命に耐えるが如く、強く強く抱きしめた。だが男を知り尽くしているサキュバスの手技により限界は訪れる。
アッー!
「この地上においてもその名を轟かせし伝説の魔神……性に対してこんなに誠実でいらっしゃったなんて」
「……」
「もしやマイルフィック様は、女性とのご経験が何度もおありなのではございませんか?」
「……」
「恋人や奥様など、いらっしゃるのですか?」
「…………」
サキュバスの不意の質問に主は答えなかった。プリーステスに重みをかけないよう脱力した自身を支えるので精一杯にも見えた。
打って変わってプリーステスは次第に青ざめていった。恋人や奥様がいらっしゃるかもしれないお方に私は……っ
「あ、わ、わたし……っ」
「イナイ」
震えるプリーステスをそっと抱き寄せ頭をなで、主は短く切った。
「形ダケダ」
「んっ……」
小声でつけ加えつつプリーステスに口づける。舌を滑り込ませ、発言も息つく暇も与えないほどに長く深い口づけを交わした。
その様をサキュバスは眺めつつ思案する。「いない」「形だけ」って……それってつまりいるってことじゃない!
えぇー?いるのぉ?!奥さんー??!
そんなサキュバスをよそに主はまだプリーステスに口づけている。その発言が事実であれば、今この場はまごうことなき不倫現場である。
「いいわね。マイルフィック様にこんなに愛されて」
サキュバスは二人の接合部に手を滑り込ませプリーステスの陰核部をなぞった。
口づけを交わしていたプリーステスはとっさに声をあげる。
「あ…あぁっ」
「やけに感度がいいじゃない。男としたことはなくても自分でしたことは何度もあるんでしょ?」
「っ……」 頬を染め恍惚の表情で主を仰ぎ見るプリーステス……サキュバスは手でなぞりつつ揺すり、さらに彼女を追いつめる。
接合部が近いためその振動は主にも伝わりほのかな快楽を与えた。
二人のやりとりを見ていた主は何を思ったかサキュバスの体をつかみ、プリーステスの隣に寝転がらせた。
驚くサキュバスをよそにその豊満な胸を揉みしだく。形のよい乳房が手の内で自在に姿を変え、色づいたピンクの突起に触れると彼女は敏感に反応した。
「あ、マイルフィック様……」
だが存分に味わうには爪が邪魔だ。前回も人差し指の爪をもいだが今回も然り。今はすべての爪が邪魔でしかない。
主はここに来て初めて自在にしまえない自身の爪をもどかしく思った。
獅子の顎と腕を持つとはいえ、その腕は活動に適するよう徐々に人化させてきていた。現在の彼の手指には肉球も毛皮もない。
今よりさらに爪を鋭く伸ばすことはできても、これ以上引っ込めることはできないのである。
かといってわざわざ形態変化をする気にもならない。女に触れるに邪魔となる爪をいったんすべてはぎ取ったほうが断然楽である。
いっそここで打ち切りにしてこの呆けている女二人を引き裂いてやってもいいが、まだもう少し楽しみたい気もしている。
「マイルフィック様…っ」
「いけませんわ!マイルフィック様っ」
突如巻き起こした熱風ですべての爪をそぎ落とした主にプリーステスとサキュバスは悲鳴を上げた。
二人は慌てて主の手を取るとサキュバスは指を舐めしゃぶり、プリーステスは手をかざし治癒魔法ディオスをささやく。
流れるような連携である。
その後も二人は主の指を慈しむように舐めしゃぶった。その姿は献身的ながらも淫靡で卑猥な光景に見えた。
主は二人を静止させ、起き上がっていたサキュバスを再びプリーステスの隣に寝かせる。
腰をつかみ少し揺するだけでプリーステスは見悶えた。相変わらず脆い。先ほどサキュバスが触れていた陰核部にも指を伸ばし弄ぶ。
彼女をことさらに悶えさせつつ主はサキュバスにも手を伸ばした。
爪をはいだことで存分に乳房の柔らかさを堪能し、指先を腹から秘所に滑らせる。すでにそこは濡れそぼり容易に指を受け入れた。
「あん、マイルフィック様ぁ」
「っ…マイルフィック様……っ」
二人は潤ったまなざしで懇願するように主を見上げていた。主は再びぞくぞくと全身に興奮と愉悦が走る。
腰を動かしプリーステスを狂わせながら手指でサキュバスの胎内をかき回し徐々に追いつめる。
サキュバスは刺激に慣れている分ほぐれ次第指を二本、三本と増やしていった。
主の指は常人より長かったのかサキュバスは腰をくねらせ嬌声を上げる。どうやら奥のいいところまで届いてしまっているようだ。
淫らに腰をよじらせ艶めかしい喘ぎ声を上げる美女二人……そこには恐怖の欠片もなく完全に自身に陶酔し身を委ねている姿があった。
四肢を引き裂き恐怖と絶望に変貌する様を楽しむのもいいが、もう少しこのまま快楽に溺れさせ喘がせようか。
何より自身が気持ちいい。下半身が溶けそうなほどに心地よい。それは戦闘では味わえないだろう甘美なひと時であった。 「ああん、マイルフィック様のおちんちんが欲しいのにぃ…っ!!」
サキュバスの願いも空しく、胎内をめちゃくちゃにかき回され彼女はあっけなく果ててしまった。
主の持つ蠍の尾で足を開かされていたのも手伝っていたのだろう、膝をがくがくと震わせ全身に力が入り、髪を振り乱して顔を隠した。
主もまた興奮が高まっていたのか腰の動きを速め、動かす度に悶え狂うプリーステスと共に三度目の絶頂を迎えた。
「グ……ッ……」
「あ……」
恍惚の表情で自身を見つめるプリーステスをしばし眺めた後、主は名残惜し気に自身を引き抜いた。
ドロッとした白濁液と大量の出血がしたたり落ちる。それを気にも留めず、主は二人を両腕に抱き寄せあお向けに寝転んだ。
4枚の大きな翼で二人を包み込む。プリーステスはされるがままに主の胸元に顔をうずめた。
「マイルフィック様ぁ、私もあなた様と一つになりとうございますわ」
「……」
ねだるサキュバスを一瞥すると主は視線を宙に投げた。ゆっくり目を閉じる。
「……少シ」
「?」
「休マセロ……」
「…………」
なにこのかわいい破壊神、どういうこと?これほどまでにマイルフィック様をかわいいと思うなんて…!
サキュバスはますます主と交わりたい欲求に駆られた。
「ではせめて触れさせていただけませんか?」
「ンゥ…ッ」
言うが早いか触れるが早いか、サキュバスは主のたわわになった男根に手を伸ばしていた。
「マイルフィック様のおちんちんに触れているととても安心するのです」
「ッ……!」
「マイルフィック様、わ、私も……」 プリーステスも顔を上げ慌てて名乗りを上げる。
「私もマイルフィック様の……その……お…ちん……ち……んに……」
「〜……ッ」
なんというふしだらな小娘共だ。
マイルフィックはこれ以上の表現は見当たらなかった。
「見クビルナ」
「「?」」
ベキッピキッと鈍い音が聞こえた。
先ほどまで男根だったはずのモノは尿道口から徐々に亀裂が走り、さながら口を開けたかのように割れていった。
それまで肉棒だと思っていた部位は奇妙にくねり、まるで意志を持った生命体の如く二人を威嚇してきたのである。
シャァアアッ!
気づいたときにはそれは両眼を見開き、割れた口の中に幾重もの牙を携え、こちらを睨んでいた。
「え?」
「まあ」
突然の男根の変貌に驚きを隠せないサキュバスと感嘆の声を上げるプリーステス。
「何てかわいらしい蛇さん」
「!」
予想外の発言に唖然とする主をよそにプリーステスは目を輝かせてそれを見つめ、そのまま手を伸ばす。
蛇は大きく口を開け勢いよく噛みついた。
「つっ」
プリーステスは瞬間顔をしかめるが、すぐに慈しむような表情に変わり、蛇をじっと見つめる。
「かわいい蛇さん」 噛まれたこともよそに、プリーステスは蛇に顔を寄せ頭部に口づける。
瞬間蛇は口を放し首をもたげた。プリーステスは噛み痕から血が滲むのを気にも留めず、再び蛇に手を伸ばす。
頭をなでられ喉をくすぐられ、最初の威嚇はどこへやら、蛇はされるがままにおとなしくなった。
「……」
「……」
主はその一部始終を黙って見ていた。呆れて物も言えないといった風にも見受けられた。
その様も含めサキュバスもまた一連のやり取りをじっと静観していた。
もしあのとき、初めて主と相対したとき現れたのがこの蛇だったら、あのまま喰われていたかもしれない。
もしあのとき、主と相対したのがこのプリーステスだったら、それでも喜んで喰われたのだろうか。
やはり先ほど自身が蠍の尾で刺されなかったのはほんの主の気まぐれ……奇跡だったのかもしれない。
「ああん、ずるいわプリーステス、私も」
甘くねだるような声を上げ、サキュバスも蛇に手を伸ばしベタベタと触れ始めた。蛇はますます委縮する。
手が白濁液と血にまみれるのを気にもせず美女二人は取り合うように蛇に触れ、上から下までなでまくっていた。
「〜〜……」
なんという酔狂な小娘共だ。
主はそれ以上の表現は見当たらなかった。
「あっあっ、ちがっ……そっち……っ」
セラフは突然のできごとにただただ声を上げることしかできなかった。無意識に足を閉じるも魔獣の動きは止まらない。
本来排泄するための器官に異物が挿入される違和感……魔獣はセラフの膣口ではなく尻穴に自身のモノを挿入したのである。
それは滑らかとは言いがたく少しごつごつとした感覚だったが、粘液で濡れており痛みはやや半減された。
最初は温度差のあったそれも次第に適応してきたのか、直腸に近い体温となり気にならなくなってきた。
とはいえ不快な違和感が続く中、時折動かされることによって子宮口やその奥にも当たり徐々に妙な感覚に変わってくる。
「お前っなんでっ……排泄口とは別なのに、なんでわざわざそっちっ……お前が汚されっ」
セラフは未知の感覚に呼吸を乱しながらも声を荒げた。
背中から前足を回され抱きしめられていることに得も言われぬ感覚に陥る。安堵とはとても言いがたい。
だが慌てる自身に反してゆったりと背に寄り添い翼に顔をうずめている魔獣の存在を肌で感じ、次第に落ち着き……
いやいや、セラフはぶるぶると首を横に振った。
「お前のこの体は、本来私などに使うのではないんだからなっ」 後でちゃんと消毒しろっ!
セラフは次第に違和感が快感に変わっていく意識の中で必死に叫んでいた。かのお方の幻影はとうに消え去っていた。
ふと視界の先に神と悪魔と人間が寄り添っている姿が飛び込んできた。人間……人間!?
……ちりっ
神だけでは飽き足らず、悪魔とも懇意にしているなど……内に芽生える嫉妬の念に気づき、セラフは少しだけ動揺した。
そんな動揺を吹き飛ばすかの如く魔獣がひと際強く腰を動かす。不意の動きにセラフは見悶えるも、魔獣はさらに動きを速めていった。
突かれる場所が違えども奥に当たるもどかしさが快感となりつつあり、先ほどと同じく次第に込み上げてくる絶頂への予感……
「あっあっあっ……あぁぁああっ…っ」
ヤるならちゃんとヤれぇぇっ
何かが体の奥にじわりと注ぎ込まれる感覚……セラフは声なき声を上げ、全身をがくがくと震わせ二度目の絶頂を迎えた。
「マイルフィック様はいつ地上に上がられるのですか?」
結局一度は蛇に変貌させるも物の見事に手なずけられ、再び男根に姿を戻したそれを美女二人になでられつつ、主は心地よさとこそばゆさの最中にいた。
二人を両腕と大きな翼で包み込み、ゆったりと目を閉じ、余計な力は抜き、思うまま感じるままに口を滑らせる。
「我ハ今 トアル契約ノ下 コノ次元ニ 存在シテイル。自由ハ マダ ナイ」
「……」
「コノ迷宮カラ、否、コノ階層カラスラ 離レルコトハ デキヌ」
「そう、ですか……」
「忌々シキ 封印ヨ……」
プリーステスは静かに言葉を紡ぐ主をじっと見つめていた。
私たち人類が生まれるずっとずっと遠い昔から生きていらっしゃるお方……
「主のことを、もっと知りとうございます」
「……」
「マイルフィック様は、どうして地上の神々に戦いを挑まれたのですか?」
「…………」
「……神ハ」
そこまで言いかけ主は少し間を置いた。それは次の言葉を言いかねているようにも感じられた。
二人は静かに次の言葉を待つ。主は少しだけ薄目を開けるが、少しして再び閉じる。 「神ハ……絶対ダト 思ウカ?」
「もちろんでございます。だからこそ誰もが皆神に祈りを捧げるのではありませんか」
間髪入れず何を当然のことをと言わんばかりのプリーステスに、主はフッと小さく笑った。
「否」
「え…?」
「神トテ 絶対デハナイ」
「…………」
ぽつりとつぶやく主のそれは、自嘲気味な笑みにも見えた。
「カツテ地上ハ 光ト闇ガ 共存シテイタ。互イニ 争ワズ、主張セズ、尊ビ合イ、助ケ合イ、調和ヲ 保ッテイタノダ」
「光と、闇が…」
「昼ト夜ガ 交互ニ等シク 訪レルノハ ソノ名残……。元来 アラユル生命体ハ 光ダケデハ 生キテハユケヌ」
「ん……」
「ダガ ソノ調和ヲ 乱シ、万物ノ 真理ヲ、自然ノ 理(コトワリ)ヲ……本質ヲ 歪メタノハ……」
「……」
「娘」
「…………」
返事が途切れたのを感じ、主はプリーステスを呼んだ。だが彼女から返事はなかった。
「娘?」
「プリーステス」
サキュバスも彼女を呼ぶが返事がない。
「…………」
頭をなでてみるもやはり反応がない。疲労で眠ってしまったのだろうか、心なしか彼女の体が冷えてきたように感じる。
脆弱な人間のこと、闇に侵されぬよう守ってやらねば、主は腕の中の小さな女性を優しく抱きしめ直し、翼で包み込み、そして知った。
彼女はほほ笑んだまま事切れていたのである。あまりに唐突のできごとに、主はその丸い眼球をさらに丸くした。
エナジードレインはしていない。まだしていない。主はサキュバスを放し体を起こす。
蛇に噛ませたのもほんの威嚇であり戯れ程度だ、麻痺毒は注入させていないし致命傷にも至らせてはいなかったはず。
ならば胎内を強く突きすぎたか?この身から生じた体液に、魔素にやられたか?
わからない。わからない。ワカラナイ……。ただわかることは、彼女はもう二度と動かナイというコトダケ……
それは今まで感じ得たことのない喪失感だった。 「我ガ 忠実ナル シモベ プリーステスヨ。汝ガ望ム 楽園ハ 生カ 死カ…?」
主は彼女に問いかけた。だが聖母のような慈悲深い笑みをたたえた女性はもう答えない。
「……コノ次元ハ、アマリニ 愚カナ人間共デ 溢レ返ッテイルトハ 思ワンカ……?」
「マイルフィック様……」
主の声は心なしか震えているように感じられた。だが彼女は答えない。
すでに死んでいる彼女にいくら問いかけたところで答えなど返ってくるはずがないのだ。
ぽつりぽつりと死者の前で独り言を繰り返す主はあまりに幼く愚かに見えた。
つと、彼女の頬にぽたっと一雫の液体が落ちた。それは彼女の頬を伝い流れ落ちていく。さながら涙を流しているようだった。
それは自身の流したもの、主は自身こそが涙を流しているのだということに気がついた。小さく嗚咽が漏れる。
「グゥゥゥ…!!」
があああああああああ…!!!!
突如陽炎が発生し空間に歪みが生じた。そこから青白い鱗のような硬い皮膚に鋭い尾や角、蝙蝠の翼を持った巨体が現れる。
グレーターデーモンである。
「カノ者共ニ 背キシ 堕天使ヲ……アークデーモンヲ 捜セ」
「……御意」
「アークデーモン様…!?」
突如紡ぎ出された馴染みのある名にセラフは反応した。
マイルフィックはグレーターデーモンを遣いにやらせた後、プリーステスに衣服をかけ、そっと頬に口づけた。
さながら大事なものを扱うかの如くそっと腕の中に抱き寄せ肩に顔をうずめる。
しばらくそのままでいたが、ふと顔を上げると彼女を抱き寄せたまま4枚の翼を大きく広げ立ち上がった。
サキュバスやセラフを気にも留めず宙を仰ぎ見る。わずかにちりっと妖気が走った。
我を召喚せし魔人ダバルプスよ、仮初の迷宮主デーモンロードよ、かの老いぼれ魔術師の意を継ぎし不死王よ、今はまだ貴様らに主導権を握らせてやる。
だが最後に嗤うのは我、マイルフィックだ。
バサァッ!
「あーんマイルフィック様行っちゃったー」
「ふふ、最後に段取りが狂いましたね」
「相方にどんな顔して会えっていうのよー。決死の覚悟で別れたのにっ」
「そちらの事情はよくわかりませんが、こちらとしてはなかなか見物でしたよ」
「うるさーいっ」 後には泣き叫ぶサキュバスと淡々とツッコミを入れるセラフ、2匹の魔獣が残された。
「でも後ろは私が先にいただいたし絶頂に導いたのも私が先だし、私のほうが優位よね」
「そういう問題なのか」
立ち直りが早いのはサキュバスの取りえかもしれない。
「アークデーモン様を捜してどうするつもりなのかしらね」
「蘇生させるんじゃないですか?あの人間を」
「まさか。彼女は人間よ?」
「ええ。しょせんは人間、されど人間です。彼らは身の内に光と闇を等しく宿せし存在。その不完全さがあの方のお心を震わせたのでしょう」
いつの世も混沌と奇跡を巻き起こすのは人間ですからね。
セラフは淡々と言葉を紡ぐ。
「そう、いつもいつも、人間なんですよ……!!」
「…………」
「なーによカッコつけちゃって。リザードちゃんと仲良く寝てる姿、似合ってるわよ」
「なっ」
「まだ追いかけるつもりか?」
「当然!」
「ならば私も行く」
「なに、あなたもマイルフィック様を狙ってるの?」
「ちがうっ」
セラフはすかさずツッコミを入れた。
「あの方はアークデーモン様を捜しに行かれたのだ。うまくすればアークデーモン様にお会いできるかもしれない」
「なにあなた、アークデーモン様とセックスしたいの?」
「なぜそーなる!」
「あーあなた、まだ後ろしかしてもらってないものねー、前はアークデーモン様で満たしたいってことよねー」
「ちっちがうっ」
「次こそは私がマイルフィック様とセックスするんだからっ。よし、次の供え物はニワトリに決めたわ」 迷宮内皆穴兄弟、自分のSS内だと確かにありえるかも。さっきゅんは絡めそうなら誰にでも手出しそうです。
内容的には続編がありそうな終わらせ方をしてしまっているのですが「奇跡」としてはこれで完結です。
今のところ続編の投下予定もなさげですすみません、読んでくださった方の中で続いていただけたら幸い……
脳内で構想したら勝手に文字化してくれるAIとかないかなあ。。。
マイルフィックの元ネタの魔神パズズには魔の女神ラマシュトゥという配偶者がいるらしいのですが(子どもはいなさそう)、
そもそもマイルフィック=パズズ説はFC版だけの解釈ぽいのでそこらへんはなんかもう適当でいいかなあとか思ったり思ったり。
#5では滅びた扱いになってしまっててちょっとしょんぼりです(実体化できないだけで滅びてはないと勝手に思ってます)。
スレ立てしてしまった手前たまに来ますが最近のwizは全然知らないのでちょっと出直してきます。スマホの宣伝が今一番気になってる。
ともあれなんとか投下できてよかったです、過去作昇華させてくださりありがとうございました。 セラフなど天使は本来性別がないのですね。
ここでは俗世に堕ちたことで人間界で活動・実体化するにあたり個々の性質が具現化された、みたいな適当に補完いただけるとありがたいです。
エンジェルもセラフもアークエンジェルもなんとなく雰囲気が女性的なイメージです。 今までサキュバスだったりサッキュバスだったりごちゃ混ぜにしてましたけどゲームではサッキュバスでしたね、なんで「ッ」抜かしちゃってたんだろ メモ帳を整理していたら「駆け引き」(フラック×サッキュバス)の後日譚らしきものがありまして。
エロパートまでは書いてなかったので残念なのですが、他に載せるものもないので載せときます。 かの大魔術師ワードナの復活。
「99年以内ですか……何とまあ曖昧な。待ち切れませんな」
片足立ちでポーズを取りながらつぶやくフラック。
背後にたたずむ不死王ことバンパイアロードはかねてより苦にしていた言葉を投げかけた。
「もう私と同行する義務はないのだぞ」
「……」
フラックは静かに足を下ろすと、背を向けたまま少しだけ宙を仰ぎ見た。
「一度必要とされることに慣れてしまうと、そうではない生き方をひどく退屈に感じるときがあるのですよ」
「……」
「ああ……」
バンパイアロードは感嘆の声を漏らすと少しだけ目を細めた。
――それはわかる――
フラックはサッキュバスの群れに囲まれた!
「仲間から聞いたのよ」
「女性にとっても優しい紳士なんですってね」
「は、ははは……。世の中にはとんでもないホラ吹きがいたものですな」
「だから私たちもあなたとの舞台を楽しみたくって」
「……」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。もう一度冷静に、いや常識的に考えなさい。あなた方のお目当てが」
フラックはバンパイアロードとアークデーモンを指した。
「このお二方というのならわかる。大いにわかる。だがしかし、なぜ、なぜこの私なのか」
サッキュバスたちは顔を見合わせふふっと笑った。 「あなたは私たちが瞬きする間に首をはねることさえできる」
「いつ殺されても構わない覚悟で来ているのよ」
「あなたとの舞台を楽しむということは、そういうことだと思ってるから」
「…………」
「……フッ、彼女たちにも必要とされているようだな」
「皮肉が過ぎますぞ、不死王……」
「「「フラック……」」」
サッキュバスの群れが襲いかかってきた!(性的な意味で)
「あ、ああ、あ……だ、だめだ……」
だ、だから私は、この手の方面はあまり強くな……
フラックは,サッキュバスたちを やさしくたたいた.
そして,いっかいずつあたり それぞれに 1のダメージ.
サッキュバスたち はしびれて,うごけなくなった.
「……ふう」
「あーん動けなくなっちゃったぁ」
「フラックぅ」
「でも優しい好きぃ」
「観客がいる場での裏舞台はご遠慮いただこうか」
「あぁん」
「やっぱり紳士ぃ」
「好きぃ」
「……ずいぶんと人気者のようだ」
「ご冗談を。私を前座にしてあなた方と本番を迎える算段ですよ」
いかがですかな?彼女たちのお相手は。
「……興味はない」
「そうたやすく私に触れられるとは思わないでほしいですね」
冷たく突き放すバンパイアロードとやんわり断るアークデーモン。
果たしてサッキュバスたちの誘惑は成功するのか……! モンスター×モンスターって需要どうだったのかな。許容はしてもらってた記憶。
サッキュバス(というかえろい女の子)が好きなのでここからしばらくはサッキュバスのターンになりそう。
ハイマスターとレーバーロードの後続が100%サッキュバスなのでまずはそこらへんから。 ハイマスター2種類いるけどサッキュバス後続のハイマスターは出現数が必ず1体だけのほうだった。
サッキュバスは1〜4体で出るから途端にハーレムだね。
レーバーロードも「タイプ:動物系」で「人語は解せずただ低く悲しげなうなり声をあげるだけ」ってのが
サッキュバスたちの度重なるアレによって野生化させられちゃったからって解釈すると途端にえろいね 今さらだけど20カキコ目(奇跡4 17/18)のグレーターデーモンの説明微妙に変えたい。
そこから爬虫類を思わせる青白い皮膚に巨大なねじれた角や鋭い爪、蝙蝠の翼を持った巨体が現れる。 ○
そこから青白い鱗のような硬い皮膚に鋭い尾や角、蝙蝠の翼を持った巨体が現れる。 ×
こういうどうでもいいとこにこだわるから肝心のエロが書けないのかなあ。 レーバーロード見てたらFC版1は鎧着てるのにACが10だった
どこかの記事で呪いの装備だからだとかあったけど、呪いだったら脱げないじゃん
って思ってたら3(正伝#2)ではACが0だった、装備し直したんかな
脱げるんなら元聖識者だしサッキュバスが群れるのもわからなくないよね ウィザードリィダフネ、Xちょっと見てみたけどサキュバスのバレンタインキャンペーンてのが
サキュバスバリバリ服着てたしタトゥーみたいなのもすごかった、でも動きはやっぱりえろいね 5のさっきゅんは後続にメインとカルキドリ……いまいち色気がないように感じる、護衛か?
しかもインキュの後続で出ることがあるって、男連れてるなよ、二人でヤッてろよと言いたくなってしまう 女からしてもインキュに女連れてるなよってなるんかな
インキュの魅力がいまいちわからんちん インキュは竿役、汁男優だったっけ?
(サキュが奪ってきた精液をインキュが女にぶちまける) 人来てくれたぁ!!ありがとうありがとう
インキュはそんな感じだね、ちょと今「5のすべて」紛失中で(部屋が倉庫すぎて)うろ覚えだけど、サキュが男性から搾り取った精液はインキュに渡され乙女に注ぎ込まれるみたいな表記だったと思う
二人同時に出現することもあるからタチ悪いみたいな表記もあったような プリーステスとかウィッチみたいに性別表記は無いけれど
「レベル○〜〜」とかの中にも女性はいるんだろうかなー
(不確定名が〜〜を着た男になってるけど) 忍者で言えば外伝4に「くのいち」って敵も出てくるから不確定名が男なら男なのかなって思うけど、男のように見えて男のように振る舞ってるけど実はつるペタな女だったとかさらし巻いた女だったとかあってもいいとは思ってる
4の小説でのホークウインドも確か男みたいな女だったような? ホークウインドは女で、
『女』にされたディンクが唯一の弱点だっけ? 外伝4はピンクシェイドとドリームシェイドにハァハァしたな 過去スレの過疎具合からここも最低1年は自分のターンかなと覚悟してたから正直感激してる、ありがとう
ホークウインドを女にさせつつ男みたいに鍛えさせたのは確かどっかの司教だか司祭だかで、ディンクは実の父親だった気が……ごめん4の小説も倉庫部屋で紛失中、すぐ見つからんかった 外伝4は男の敵と女の敵がはっきりしてるよね
そんな中でピンクとドリームだけは自分の中で確実に女確定してた、あれは女だよね 所作のきれいな単独のハイマスターを発見していいカモ見つけたと近づいて、なんやかんやあってやっと襲える段階になったら実は女だったことに気づいてショックを受けるけど悔しいからそのままレズっちゃうさっきゅん あらすじ並べとけばテンション上がって書けるとき来るかなと思って思いつく限り並べとく
聖職者発見してきゃーって近づいたらレーバーロードで、ぎゃーって逃げようと思ったけどあれ素顔じゃなくてかぶとよね、外したらどんな顔かしらと徒党を組んで襲いかかってみるさっきゅんたち
最初は抵抗するけど散々誘惑されたらなんかスイッチ入っちゃってさっきゅんたちが「もう許してぇ……」ってなるほど激しくなるレーバーロード(動物)とか 5の忍者は不確定名が「かげぼうし」「かすかなかぜ」だから男でも女でもいけそう
インキュに襲われる女の子を考えようと思ったけどうまく浮かばなかったから出直してくる >レイパー
【審議中】
,、_,、 ,、_,、
,、_('・ω)(ω・`)、_,、
('・ω)u゚ ゚uu(ω・`)
゙uu゚( '・) (・` )uu'
゚uu゚ ゚uJ゚ 誰がうまいことを言えとw
後続で必ずサッキュバスが1〜4体ついてくるから同じレイパーでもずっと付き従いたくなるような絶倫レイパーに違いないw FC版1だとレイバーロードだけど3(#2)だとレーバーロードて伸びてて微妙に違和感
レイバーのほうが馴染みあるから普段はそっちにするかな サキュバスもインキュバスもやっぱり迷宮の中でしか性活できないのかな?
冒険者を操って地上に痴情に出てきたりするのかな? 微妙に当て字とか韻を踏むとか乙いねw
もともと人々の睡眠中に襲って夢の中で性活してるのが(別名夢魔だし)、ここでは迷宮にも堂々現れるから厄介みたいな解説だから、本来は地上での夜の性活が主なんじゃないかな 冒険者を操れるかはどうかなあ、精神乗っ取りみたいな感じ?
映画「エクソシスト」ではマイルフィックの元ネタのパズズが女の子や神父の精神乗っ取って操ってたけど
夢の中に出るってのがすでに脳内に入り込んでるわけだし、できなくはないかもね 清楚なシスターに乗り移ったさっきゅんが夜な夜な迷える子羊(男)や神父を手駒にしていくとこまで想像してみた
いや、乗り移るの大変そうだしバレて除霊みたいのされそうか ウィザードリィダフネのモンスター一覧にサッキュバスがいない……!
まだ登場段階には至っていないということか……
個人的に獣人盗賊が割とイケる、こう、ラインとか 冒険者なりたての頃は貧相だったけど(いろいろな意味で)
冒険してレベルアップしていくと段々肉付きが良くなったり
エッチな体型になったりするんだろうか…(飯がちゃんと食えるようになるし足腰鍛えてるし) 訓練場登録時が14〜16歳からだし(外伝だと13歳もあった気が)いろいろ成長期だからきっとムチムチになったりボンッキュッボンッになったりするはず……! レズは自分の中で未知の園すぎてやめといた
代わりにインキュバス×アサシン(女)のあらすじ考えてみた
正式名称はアサッシンだけどめんどいからアサシンで マスターニンジャとアサシンが冒険者と戦闘中、アサシン1体だけになったところでインキュバスが加勢、ドレインしたところで冒険者には逃げられる(神業で)。
「……ん?あなた、もしかして」
「……」
「女性ですか?」
「……!」
アサシンは後続でしか戦闘に加わっておらず、女性ということもあり地下7階では力不足のため、いったん5階までインキュバスに護送されることになる。
仮眠や休憩をとる度に恐怖でカタカタ震える女アサシンを見るに見かね、インキュバスはそっと抱きしめたり慰めたりするうちになんかそういう雰囲気になってみたらどうだろうか! 北のヴァルキリー、南のアマズール
ヴァルキリー
・武器は槍
・鎧キッチリ
・性的に厳格(体はオーディン様のモノ)
アマズール
・武器は槍
・軽装を好む
・性的に奔放(ヤった後はゾンビにするけど) 酒場の名はギルガメッシュという。砂漠の城塞都市の中心部にあって、
昔日には店の名は交易路を行き交う旅人達の集う場として知られたが、
昨今、都市の荒廃とともに旅商の足も途絶えると、代わりに流入する流れ者の現在は溜まり場のようになっている。
店に出入りする客は帯剣し、胸甲具足を鎧ったままの者も多い。
「冒険者」とは彼ら自身の言うところの称ではあるが、出身種族も身分を示す風体もまちまち。
酔っては一様に語気荒く、各地の方言、卑言をまじえてテーブル越しに殺気をまき散らす流れ者どものありさまは、
あたら老舗も野盗か、ごろつきの群れに占め切られてしまったよう。
だが、ギルガメッシュの酒場とは元からこうであった、とする説もある。本来、殺伐であるべきとの。
この夜、酒場の奥のテーブルには、四人の冒険者が早くから飲んでいた。
薄暗い照明に当てられ、各々に沈鬱な表情を突き合わせていた。
中肉中背、無骨な髭面の男。子供に見える小柄な少年。金髪の若い娘。黒髪の東洋人。
雑踏する店内をよそに、そこだけ雰囲気も重苦しく、時刻はいまだ宵の口ながら、
テーブル上にはすでにかなりの数の酒瓶が空いて並んでいた。
城塞都市アルマールの郊外に、領主ウディーンの命のもと続けられていた古代遺跡の発掘は、
悪夢のごとき崩落事故ののち、全市を恐怖に突き落とす事態へと進んだ。
発見されたプレートに刻まれていたのは遅すぎた警告。いわく、これは墓所なり。
かつて闇の力と結び地上に帝国を築きし魔道皇帝ハルギスここに眠る。墓所の封印に振るることなかれと。
――案の定、ハルギスの亡霊は復活し、死者達は立ち上がり、墓穴からは瘴気と呪詛とが溢れて城塞都市に迫ったが、
また同時に、ハルギスの墓所に挑み、数千年のいにしえより蘇りしかの悪党討伐をもくろむ勇者達も、
領主の布令する高札と褒賞の噂に釣られて悪疫のごとく押し寄せた。これまでの数か月の経緯である。
ぐはーっと下品に息を吐くとホビットは盃を叩きつけ、ぎしっと椅子の背にもたれて天井を仰いだ。
裸足の両足をテーブルに載せてそっくり返る、まるで体格は子供にしか見えないが、やることと口ぶりは大人並みである。
「まさかによ、ラスタスの爺さんがくたばっちまうと思わなかったぜ! 殺しても死にそうにねえ爺いだった」
「土に根の張ったノームとて不死身ではないのじゃな」
ドワーフの髭面が分別げにうごめいている。愛飲するのは北方種族の故郷のエールだが、
テーブル上に空け並べている酒の数はそれ限りでない。砂漠のオアシスの地酒は椰子酒で、
アルコールの強さは引けをとらぬ濁酒。地中海のワインもあり、東の草原の馬乳酒もある。
髭のドワーフの言うようでは、カント教団の儀式手数料は妥当だとの説もこれある。いずれにせよ、
もしも蘇生に成功していればその時は被術者自身の生命力と幸運に依るところであって神に感謝などしないのだから、
あえて坊主をとがめるほどの我々でもあるまい。運命よ、運命。
今はただ別れの盃を酌み交わし、去りゆく友を称えよう。当節にまこと稀なる有徳の士であったラスタス、
われわれのラスタス翁、滅びゆく英雄の魂よ。 てまあな、今日びそこらに有徳はともかく癒しの業に長けた聖僧なんざすぐさま代わりも調達できねえってのに
――僧侶なんて死ぬときぁ簡単におっ死んじまいやがる――といってこの際僧侶なしで迷宮に潜れる命知らずはいないぜ。
迷宮探索も皇帝討伐も今や競争段階の折から、今ごろ訓練所に問い合わせてみにゃあならんか?
できればどっかから引き抜くか。どこからそんな契約金――
「今そんな話、やめてよ。ラスタスが可哀想だよお」
金切り声を上げる少女は、肩を怒らせて立っても華奢な細身が哀れを誘った。
この店の無法者同然の冒険者にしては、ひどく脆くみえる、綺麗な娘で、可愛らしい顔立ちに大きな瞳を潤ませている。
目の端はこれまでにもうひとしきり涙に腫らしていて、今もまた訴える端から頬を赤くしていた。
一行を束ねた聖僧ラスタス師を亡くし、今はパーティの残員が、何らなすこともなく飲んだくれるざまを晒す。
地下迷宮にて死亡し、遺体として運ばれたラスタス師の蘇生を試みたカント僧院は、
蘇生失敗の後には不手際を詫びもせず高額の儀式手数料だけを収めて引き上げていった。
悪坊主どもが……に始まり、これからどうするの、そもそも此度の敗戦の反省はと蒸し返し始めると、
同じ話をまた誰もが、誰が悪い、誰のせいだと喧々諤々に、きゃんきゃんを混じえて罵り、わめいた。
ドワーフ、ホビットと、エルフ娘の、いずれも享楽的な種族柄ゆえ、まるで頭が物事を深く考えるようにできていない。
考えなしの悪態が飛び交い、とりとめない談義のループするテーブルを挟んでひきもきらず酒瓶が回った。
この場の残りの一名、この場でただ一人ともいえる、通夜の席らしい沈思に耽る黒髪の青年は、
その容姿服装は武士階級に属するとも見え、異種族混成の仲間達とも一線を画してむしろ孤狼とも言うべき、
寡黙のうちに盃を傾けている。彼だけは仲間を気にかける以前に、端から自分ひとりの物思いに沈みきっている。
(シュゼン……)
今も、心はさまよっている。
仇の名を忘れる日はなかった。
遠い日の記憶、燃え落ちる城郭、血に染まった故郷。卑劣な裏切りに遭って父と兄が死に、
彼は独り敵を追って海を渡った。それから幾年、異なる大陸をさすらった。
いつか遥かシルクロードを越え、この城塞都市に至る彼の遍歴の目的は、
砂漠の迷宮にひそむ皇帝の亡霊を打ち払うため、あるいは、その討伐に約束された莫大な賞金ではない。 彼、東方人の青年ザンガのここにいる理由は、シュゼンなる名の、その男を討つためであり、
ここで迷宮探検者の集団に混じっているのも、地下迷宮で聞かれるという噂、
近頃それらしき特徴の鎧武者についてのあるともないとも頼りない情報を追ってのことにすぎない。
恩賞はおろか、墓所には山と秘蔵されるという副葬品の財物にも無関心に、地下迷宮にただ強敵のみを求め、
一途に武芸にのみ専心する彼の姿勢はギルガメッシュ一般の冒険者たちとはあまりに異質なだけに、
この地でたまたま行を共にすることとなった現在の仲間達との絆も、いくらか長い付き合いの今も希薄に思えた。
羊肉のシチューが運ばれ、三人の妖精族は酒盃と交互しつつがつがつと食らった。
肉を食する、異風の生活にもいつしか慣れたが、ただ、この弔いの席には彼のみ肉食は控えている。
人間族の士族の自分がこの場では場違いに思いながら、ミステリアスに仲間達を眺める。
東洋の侍は故国の伝統をしたがえ、彼なりに東洋的正義感を有する、熱血漢でもあった。
むしろ無教養で常にちゃらんぽらんな連中に対しては異邦の倫理観から時に辛辣な皮肉も呟いたが、
そんな仲間達を自分が率先してまとめてゆく質でもない。
戦友の死を悼み、静かにその魂を送るのは武士の礼と思う。
若くして多くの死をみとってきた彼の、風のような心に根づくただ一つの規範はそれだったかもしれない。
あの日から、国々を移り歩いては剣を頼みに生きてきた。
絶えず続く戦いと、戦いの後に生き残った者の責務を思うこと。
この地アルマールでの、聖僧ラスタス師との短い交誼と、彼から得た教えには恩義を感じてもいた。
だからこそ、ラスタスに先に去られてしまってはやるせない思いがあった。
この俺と、彼らとは違う。ザンガは冒険者達を見ながら思う。
士族たる彼と、家柄も主君ももたない漂泊の浮浪者に近い冒険者達とはもとより身分がちがうのだが、
異国の地で一時の戦友を得たことが、今また心の傷を深めている。
ドワーフのガズ、盗人ジャック、エルフのファン。仲間達の輪に、彼は居たたまれなかった。
(何かを得てもまた失うばかりだ。なぜいつも救えず、守れないのか)
今日の収入は今日中に飲んでしまい、いつも貧困と背中合わせのような彼らだ。
博徒と冒険者稼業に明日はなく、粛として身を慎しむなどという概念は彼らにない。
きっとラスタス師がこの一座におれば彼自身が笑い飛ばしただろう。 ファンが間近に見上げている。彼はふと目をやり、その目のやり場にも悩ましいものをおぼえた。
彼女の普段、服装は、魔法使いのローブといっても学者やスーフィーの粗衣のようでは全然なく、今夜のそれも、
色こそ喪に合わせて着替えてきたらしいが、やはり彼女好みのお洒落を凝らした衣装。肩の出た、
裾が透けそうな軽羅を重ねたブラウスにスカーフ、スカートは通りの劇場に出演中の俳優でも通りそうに思える。
豊かな金髪には銀の細工。ネックレスの鎖は首すじに流れて胸元に落ち、
その大粒のエメラルドには薄暗い通夜の席にも目を引いて自重するところがなかった。
加えて持ち前のサファイアの瞳の美少女に涙目で見つめられ、ザンガはわずかに当惑して眉をひそめた。
とはいうものの、とはいって彼女になんら慰め言を与えるでもなく、それきり目を逸らし手元の盃に目を落とした。
静かに盃を傾ける東洋の謎めいた横顔には取り付く島もなくて、無視されたエルフ娘の頬にぼろっと大粒の涙がこぼれた。
ぐすっと鼻をすする。
「それにルーリエも」
「あいつこそ、死んだのか」
「わからん。あれで生きとると思えんがの」
迷宮での、最後の戦闘の光景を思い浮かべ、さしもの無法天の仲間達もぶるっと身震い。
「生きてるなら救けに行かないと。行くんでしょ?」
「誰が」
三人の視線は侍に集まったが、あいかわらず侍は思いを盃に浸すように、
そのじつ何も考えていないのではと見える黙想を続けるのみ。
今宵の通夜を飲み明かしたら現在の彼らの懐も寒貧なのだから、酒代も宿代も明日はや危うく、
早急の入用のため次の迷宮行に挑むことにはつべこべもないのであるが――
その時だった。酒場の喧騒が急に失われた。
店の戸口に立つ男がおり、それが原因だった。店中の冒険者達が、奥の四人も、不審に振り返り、それを見た。
その男の美貌。それはなんという髪の色か。黄金と漆黒とが合い混じり、闇の中の炎とも見える。
その肌の色はなんという白か。そして瞳は――
衆人環視を一身に集めながら、人間族の男は戸口近くのテーブルに歩み寄り、持っていた皮袋の中身をそこにぶちまけた。
無造作に、山と積まれたのは全てが金貨。大量の、法外の金額に、ギルガメッシュの冒険者の誰もが唾を飲む。
「仲間を求めている」容姿に劣らぬ美しい声音で男は言った。
男の麗容、美声と、ともに噂にたがわぬ。いずれその名を知らぬ者もおらぬ。
ヴァル、と。
魔術師ヴァル。アルマールの迷宮界隈では新顔ながら、絶大な魔力と深甚な知識でもってあっという間に深層に到達。
いまやヴァルの組といえば、皇帝ハルギス討伐に最有力と目される強豪と語られる。
そのヴァルが、新たな仲間を? それも、これほどの報酬を眼前に示されれば――
「戦士と盗賊だ。腕利きならば種族は問わぬ。人間、ドワーフ、ノーム、ホビット、そのどれでも。だが――」
美貌の男は金貨を積んだテーブルの席に腰を下ろし、そして最後にこう付け加えた。
「エルフは俺に近づくな」 隣合わせの灰と青春をエロくするなら⋯
ヴァンパイアロードに拷問されてるカディを女戦士にする
サラが飲み過ぎると魔法をぶっ放す他脱ぎ癖がある
あとは⋯⋯ ちょっと旅に出てた
>>59
ヴァルキリーを見て真っ先にくっころシーンが浮かんだ
アマズールはヤられる前にヤるしかないな
>>60-64
なんか始まった!ついに始まったー!て思ったら
続きは!続きはないのかー!続き希望 ワードナの逆襲は無駄にエロかった記憶がある
確かみんな死んじゃうけど(ノД`)シクシク >>67
ワードナの逆襲的な感じで
悪の魔術師とかが復活して力を取り戻すために
「女は犯せー男は殺せー」みたいな感じでってのもあり得そうなんだけど
そういう事しそうな悪いヤツって誰かいるかな アマズールはASPHYXIATIONとかDEEP FREEZEあたりで一掃するのがキレイに残るしいいよね
まあNOXIOUS FUMESとかITCHING SKINでジワらせるのもいいけど
というかWiz6の魔法って結構残酷よねぇ(ま、攻撃魔法の時点で残酷なんだけど) >>68
ソーンあたりにやられたい、逆レモノになるけど…
女冒険者は部下にくれてやる(好きにしていいぞ)のか…それとも百合ハーレムPTを組むべく邁進するのか >>59の考察の続き
ヴァルキリー
・はいてない(一部の司祭級ははいている)
・無毛
アマズール
・はいている(一部の司祭級ははいてない)
・ボーボー >>70
SMTif...の女主人公みたく、降伏した女悪魔にナニして「お姉様とお呼びしてよろしいか……?」する系のキャラになりそう 公式・非公式、ライセンス有るか無しかは別として
・オンラインゲーム
ウィザードリィダフネ
・ゲーム
外伝 五つの試練(SWITCH)
・漫画
魔境斬刻録 隣り合わせの灰と青春(コミックボーダー)
ブレイド&バスタード(コミックDRE)
・小説
ブレイド&バスタード小説版(DREノベルズ)
迷宮くそたわけ(カクヨム)
あたりが今動いてる環境か(元ゲーのクローンとかもあるけど)
補足あったらヨロシク こんばんは。
大昔こちらのスレに続き物の話を投下させていただいた者です。
色々あって時間がかかってしまいました。
誰も覚えてないでしょうが、話の続きを落とさせてください。
NGワードは鑑定士、またはトリップでお願いいたします。
エロは薄めです。
専ブラが携帯版に対応してるかわからないのでNGワードが設定できないかもしれません。
申し訳ありませんが、手動で数レスから数十レス飛ばして下さい。
それでは投下させていただきます。 “ここで重要なお知らせです。
ミニチュアホースに続きシェトランドポニーが
媚薬と“スパム”の過剰摂取で人事不省に陥り、発走除外。
繰り返します。シェトランドポニーが出走の取り消しを表明いたしました!
さあ、日も暮れてまいりました。
レッドターフが映えるこのロイヤルスイートグラウンド、
第“17”レース、オージー特別はサラブレッドの一頭立てという
豪華な顔ぶれでいよいよ出走です!”
* * *
偶発的な現象の連続は、しばしば芝居がかった奇蹟を起こす。あたかも、
最初から仕組まれていたのではないだろうかというほどに。しかし、その事象は、
あくまで偶然であり、人知を超えた力を持つ神が、たおやかにその御手を脆弱なる
人に差し出したもう結果なのだ。
―――――こいつが神サマの仕業なら神なんてウンコ食らえだ!!
* * *
よう、俺だ。残念ながらまだくたばっていないんだ。この通りピンピンしてるぜ。
なんだ、不服か?なに、あれからたった6レースしか走ってないのかって?
ハハハッ、そうじゃないさ。『あれから』16レースを完走したんだぜ!
ゴールに着いた思いきや、すぐさま次のスタートラインという強行軍的地獄の
スケジュールだ。われながら素晴らしいスタミナだよ。新米ジョッキーのこの俺が、
こんな耐久力を示せたのも、ひとえに良馬のおかげだな。
ただし、下になるのは俺のほうだ。手綱を握っているのは俺だが、
俺の手綱も彼女たちの腰のあたりに結び付けられている。
ああ、どっちがジョッキーだかわかったもんじゃない。
――なんだよ、え?こいつはポニープレイじゃなくてパピィプレイだって?
はっはー! 細かいことは気にするなよ!
もうオツムが破裂間近でイカレちまったんだからな!
イカレついでにこの際言っておこうか。ああまったく、実に素晴らしい乗り物だったよ!
一つとして同じ“乗られ心地”じゃないんだからなあ! ボンデージプレイでの最大の利点は、なんといっても、こちらに選択権がないことだ。
何が起こっても、自分のせいにしなくていいんだからな。いや、まったく、14レースを除き、
11レースから16レースまでの試合は酷いもんだった。10レースの終わりごろから、
初めての試合で小人どもに散々虐められた妹さんが、仕返しを始めてなあ!
パーティ内での喧嘩に部外者を巻き込まないで欲しいよ、まったくハハハッ……
“そう落ち込みなさんな!あれだって、フローレンス女史の御尽力あってのもんだったぜ!”
あー、ありがとうペニス君。君だけが俺の友達だよ。責任とってくたばってくれ。
確かに妹さんは“優秀”だったよ。彼女には素質がある。
迷宮とは大違いの実に見事な連携だった。が、それもさっきのでおしまいだ。
今は個人競技の時間だ。邪魔者がいなくなって清々したと思ったが、いなくなって見ると
少し寂しいもんだな。ハハハッ、俺は何をいってるんだろうな!
順番が逆だが、今さらになって、セックスの意義について深く考えられるようになった
気がするなぁ。種族別の受精確率はどうたったかな?
こんなことなら、もっと真面目に生物学を学んでおくべきだった。
“多種族間での『H』との出生率は概ねアルファベット順”
はっはぁ!こんな時でもちゃんと答えてくれるとはさすが俺の脳味噌だ。
そうだ、アルファベット順だった。他種族が“H”umanと交配したときの出生率は
“D”と“E”が同率、“G”と“H”が接戦で最も低いという並びだ。
あくまで科学的な根拠など一切ない極一部のヒューマンの人類学者が提唱した
俗説だが今こそこの迷信に全力で縋らせてくれ。
“この比率はHumanと婚姻した他種族との比率に比例している。つまりヤッたら
ヤッただけデキた人数をカウントしただけ。本当にただの迷信だ”
土壇場で素敵な事を思い出してくれるなんて、俺の脳味噌は実に素敵な
構造をしているね。
ハハハッ、気休めにもならないよ。ああ畜生、ぶっ殺されてもいい、誰か来てくれ!
THE SPANISH INQUISITIONでもいいから誰か来てくれよ!
頼む、誰か助けてくれ!!
* * * 覗き穴にかじりついている丁稚をどうやってどかそうかと、ホセは思案していた。
肩を叩こうが頭をはたこうが、びくともしない。
「なあもう良いだろ、ここでマスかくのはやめろ。親父に言いつけるぞ」
上気した顔で、Adventurer's Innのルームマンの下っ端の制服を着たホビットは
やっと振り返った。でっぷり太り、蚤をばらまいたようにまだらに禿げた中年男の
ホセの容姿は、ボップの劣情を削ぐのに一役買った。
ホセが紙煙草に火をつけようとすると、ボップは慌てて止めた。
「ここは禁煙ですよ」
「そうだな」
薄暗い部屋の中で、ホセはポケットの中から火種の入った銀ケースを取り出した。
そのまま火をつけ、安煙草の煙をボップに吹きかけた。すくみあがったボップを
覗き穴からどかすと、咥え煙草のまま穴を覗いた。
「勘弁して下さい。壁紙を焦がしたら支配人に殺される」
「わかってるよ、任せとけ」
ホセはポケットから銀細工のケースを取り出すと、蓋を開けて中に灰を落とした。
「痰壺ぐらい置いとけよ。親父にそう言っとけ」
「冗談でしょ」
情けない声ですぐに火を消すよう訴えるボップをよそに、ホセは穴の向こうの
ロイヤルスイートのベッドの様子を伺った。
ここは従業員専用の通用口だ。上等な部屋の壁の隙間には、こうした覗き窓が
いくつも空いている。従業員に金を握らせば、冒険で財を成した成金たちの
私生活が覗ける秘密の部屋だ。
穴の向こうでは、エルフの女が、ヒューマンの男に覆いかぶさり、絡みついていた。
両脇にはぐったりした裸の小人女が二人、それぞれベッドの左右の端でだらしない
痴態をさらして眠り込んでいる。
「ここは禁煙だ」
ホセは突然、肩を捕まれ覗き穴から引き剥がされた。眼の前には、肩に
房のある上等な赤い制服を着込んだ、がっしりした黒髪のドワーフがいた。
「やあ、ホール。久しぶり」
ホセはすぐに銀の灰皿で煙草をもみ消した。ホールは煙草の火が消えると
厳格な顔を崩して笑顔で拳骨を差し出した。
「やあホセ」
ホセも拳骨をつくり、ドワーフのこぶしに軽く打ち合わせた。 「たまには店にも顔を出せよ。さみしいじゃねえか」
「そうしたいところだがね。年末は帳簿の整理で忙しいんだ。
なあ、あんたのところはいつになったらクレジットカードに対応してくれんだ?」
「冗談じゃねえ。現金払いだけだ」
「ボルタックのおやっさんみたいなこと言うねえ。お硬いこって」
「そうさ、悪いか。オヤジは若かった頃に空手形掴まされた。それ以来オヤジは金貨以外は
信用してねえ。おれはそういう風に教わったんだ」
「その話はもう耳にタコができるくらい聞いたよ、おっと」
ホールは床のぬめりに気がつくと、後ろで震えているホビットに恫喝した。
「ボップ! また床を汚したな」
ボップはすくみあがった。
「すみません、すぐに拭きます」
「石灰、おがくず、それから石鹸水と布だ。準備だけして部屋の外で待ってろ。
おれはホセと話がある」
ボップは打たれた犬のような返事をして、音を立てずに通用口に駆け出した。
丁稚が部屋から出るのを見送ったホセは両手を広げて言った。
「すげえなこりゃ、大当たりの部屋じゃないか」
「ああ、この部屋に出入りしてるのはあと二人いるが、どっちも上物だ」
ホールはホセの体をどかして、自分も節穴を覗き込んだ。ホールは舌打ちをした。
「なんだあの男。あんな情けねえ野郎が、あんないっぺんに別嬪とやれるなんてな」
「代わりてえか?」
「あんたの店の薬を使うならごめんだね」
「お前ならどれにする?」
ホセは親しみをこめた笑いとともに言った。
「一人だけか?」
「贅沢だな」
「銀髪と金髪」
「へえ! お目が高い」
「あんたの店に並べたいのはどっちだ?」
「どっちも捨てがたいね。あの銀髪は原石だ。伸びしろは十分、仕込みがいがある。
手つかずのままでもいい。ちょっと鼻につくところがあるじゃじゃ馬で、世間知らず。
あんたみたいな奴はその方がお好きだろ?」
「おれは普段のあのエルフを知ってるんだ」
ホールはニヤつきながら答えた。
「需要は大いにあるね」
ホールは覗き穴を見ながら額に手をかざし、目を細めた。 「できれば二人乗りがいい」
「そりゃ品がないぜ、ホール」
ホセは顎の贅肉を引っ張りながら、首を左右に振った。
「あの金髪を調教したやつの手腕には、正直おれは感動しているよ。
モックチャイルドは巨人に人気の商品だ。あんだけ仕込むにゃ
金も手間暇もかかる。アレが動いているところをあんたに見せて
やりたかったぜ。何もしなくても硝子箱の一等席に上げられる」
「あんたがやるならどっちだい」
「そりゃあ、断然茶髪だね。俺用だ。店になんて上げねえ」
「だろうと思ったよ」
二人は友情を確かめあうように笑いあった。
「それであんたの素晴らしい新商品はいつ売り出すんだい」
「ああ、薬か? ありゃ売りもんじゃねえさ」
ホセは覗き穴を見ながら答えた。
「使い潰したガラクタどもに飲ませる用の試薬だったんだがねえ。
ジッドの旦那のお手製だぜ」
「ほう」
ホールは顔を背けるようにして眉をしかめた。
「効き目はまあまあだな。これなら行けるぜ。オツムはすっかりパアになるが、
最後の稼ぎをさせるにゃ上等だ。それにしてもあんなクソみてえな鑑定屋に
こんな上玉の知り合いがいたとはねえ。あーあ、もったいね」
「あんたが言うなんてよっぽどだな」
少しばかりげんなりした顔でホールは言った。ホセは鋭い舌打ちをして、
覗き穴から離れた。
「くそっ、上物三人も使い潰しやがって、あの畜生野郎が」
* * * 宵の空から太陽が追われ、夕日の残り火も西の彼方に消える頃、城内の戸々では
暖かな火が燈り、窓から色とりどりの明かりが零れ、街は、到来する長い冬の夜への
準備を着々と進めていた。決して上げられることのない跳ね橋では憲兵の簡素な
入城検査を待つ冒険者が列をなし、跳ね橋のすぐ側では、仕事熱心な客引きたちが、
一日の行程を無事終えた冒険者から、彼らの得た幸運の一部を授かろうと躍起に
なっていた。跳ね橋を渡ると、多くの城がそうであるように網目のような複雑な道へ
と出る。迷路のような路地の先には、広大な面積を囲む内堀が出迎える。
普通の城であれば、ここに宮殿や、議会場、寺院など、都市にとって最も重要な
政治の中枢機関があってしかるべきである。だが、この国において、
最も重要な機関というのは、議会でも、寺院でもない。堀の内側にあるのは、
交易都市リルガミンが誇る広大なMarket Place(市場)だ。内堀の中央には
東西にメインストリートが走り、東西いずれの道も、堀の内壁につかないうちに、
大きく二股に分かれ、その四本の道が、巨大な四つのアーチへと繋がっている。
このアーチは、外壁の外にあるTRAINING GROUNDS(訓練場)を除く、
リルガミン“五大施設”の表玄関にもなっている。
城内に無事たどり着いた冒険者たちは、皆、一様にして安堵の息をもらし、
命の尊さを噛みしめ、一日を恙無く過ごせた事を神に感謝し、また、仲間の
機転と自らの武勇を褒め称えながら往来を闊歩する。
マーケットプレイスの入り口では、多くのパーティが、“解散”の儀式を行っている。
生死を共にした兵たちが、隊から個へと還るのだ。
ある者は、仲間と別れた後、寺院の『夕べの集い』へと向かい、ある者は、
自らの命を賭け代にして手に入れた武勇伝を土産に歓楽街へと姿を消し、
またある者は、互いを称え合うために、夜のパーティを組み、酒場へと向かう。
この街を最初に訪れたのならば、まずは“酒場”へ行ってみることだ。
もしも君の運がよければ、そこで永遠の友となり得る仲間を見つけられるだろう。
それだけではない。このGILGAMESH’S TAVERNは、新参者に、
この街のルールを教えるのによい教育の場だ。
この酒場の風景は、この街の風情の縮図そのものなのだ。 他所から初めてこの街に足を踏み入れたものは、この酒場の光景を見て目を
むいてしまうだろう。敵対会派が、共に同じ卓で食事をし、敵国同士を故国に持つ
若者たちが、お国での紛争事もどこ吹く風と親しげに会話を交わす。
訓練場では教えてくれない奇妙な魔術で、酒瓶を浮遊させ、余興を披露する司教の
卓に、新人の魔術師たちが群がりその妙術に目を輝かせて見入っている。その傍らで、
仲間の戦士が胡散臭そうな目を向けてエールを飲み干す。『魔法の世界』ならではの
実に珍妙な光景だ。この酒場でカードをやるには注意をした方がいい。
シーフと金属鎧を着れない輩(スペルユーザー)を相手にすれば、財布の中身を
すっかり抜き取られること請け合いだ。城門を潜り抜けた先で見た光景そのままに、
“最下層民”たちもまた、この酒場に溢れかえっている。ここでは、戸外にいる乞食に
加え、いわゆる冒険者以下乞食以上の、辛うじて“冒険者”と名乗る事を許される者たちが
存在する。訓練場で登録した職業とはまた違った、冒険者の間での
肩書きを持つものたちだ。
夕暮れのGILGAMESH’S TAVERNの厨房は、これから押し寄せる冒険者を
迎え撃つべく準備に忙殺されていた。冒険者にとって、食事は特に重要なイベントだ。
探索から帰ったばかりの冒険者たちは、この酒場で食事を取ることが多い。
この酒場はギルドの集会所もかねているからだ。酒場の食事は、大味で品数も
少ないが、非常につぼを押さえた品揃えだ。一風変わった食生活を営む砂の民や、
砂漠より東の国の出身者の口に合うものは少ないが、西国の者が好むような
脂身の多い料理のレパートリーはそこそこだ。特殊な食事は取り扱っていないが、
一般的な謝肉祭や断食月ぐらいには対応できる。味にこだわらなければ、
我慢できなくはない品質だ。
食事をする客の中には種族ぐるみで偏食家の地族(Gnome)も少なくない。
彼らの大好物であり、街では滅多に手に入らない最も素晴らしい飲み物、
『水』があるからだ。
戦場さながらに立ち回るカウンターの向かいでは、冒険者の帰還後に行われる
点呼を間近に控えた“銀行家”たちが居並んでいる。カウンター席の動く壁たちは、
これより到来する唯一にして最も苦しい仕事――自らが、本来あるべきであった姿を
まざまざと見せ付けられる恐ろしい業務、あるいは、彼らの雇い主の虫の居所が
悪い時に行われる無意味な体罰――を目前にして、運命の女神の冷たさを思い出し、
この先死ぬまで繰り返される静かで暗い拷問に耐えるべく機械に徹するために
絶望的な努力をしている。幾人かの者は、束の間その苦しみから逃れようと気晴らしに
励んでいた。具体的な例を挙げれば、擦り寄ってくる街娼と卓を共にする(“床”では
ない。長年銀行をやっているものほど、娼婦の危険性を承知している)、怪しげな品を
押し付けてくる商人に罵声と唾を浴びせる、主にホビットで構成されている
似非少年少女合唱団に金貨のつぶてを投げつける(もちろん、金貨を受け取るために
帽子を差し出した瞬間を狙い、正確に額目掛けてだ)といったものだ。 ちょっとしたハプニング――
銀行の一人が、飲みすぎてうっかり「なんて惨い仕打ちなんだ! おれがこんなこと
されるいわれは無いのに! これじゃまるで“THE SPANISH INQUISITION”だ!」
と口を滑らせたばかりに、赤服の修道士が乱入した事件――を除けば、
それはいつも通りの冬の夕暮れの光景だった。
「これ、なんだと思います?」
カウンターにほど近いテーブル席にいた褐色の少女が、傍らにいたエルフの女性に
話しかけた。袖口の広い長袖のダルマティカを身に付け、上から短いケープを羽織り、
行儀よく閉じた膝の上にミトラ(司教帽)を置いている少女の格好は、鎧こそ
着ていないが、それを除けば、探索業に向かう司教の装いそのままだ。
正装で酒場にいるということはこれから探索に出かける所か、あるいは
今しがた帰還したばかりか。傍らの女性の装いからして後者だろう。
一見どの種族か迷ってしまう可憐な姿のこの司教は、尊大な山岳部の同族が
最も卑下する砂地のドワーフだ。彼らの血はけっして卑しいものではない。
かつてエルフ族からも『最も美しい小人』と称された流浪のドワーフ(シールドドワーフ)の
血を受け継ぐ一族の末裔だ。山を追われた砂漠のドワーフは、体躯は大柄な者が
多いが、ドワーフとしては非常に体毛が薄く、特に女は、純粋なシールドドワーフと
違い、年長者ですら髭を蓄える文化がなく、贅肉も極端に少ない。この地方出身の
Dwarf女に共通して言えることだが、彼女たちはDwarf族であるにもかかわらず、
しばしばHuman族の男の目を数十秒ほど留めさせることができた。
世慣れしていないこの司教の少女は、それよりもより長い間、凝固の呪術を
かけることができるようだ。
「リーダー、あの」
司教の少女は、彼女にしてみれば精一杯の大きな声で話しかけ、エルフの袖を
軽く引いた。端麗な顔の女性は、頬に手を当てたまま、カーチフからはみ出した
銀髪を揺らして振り向いた。 少女の隣に座るエルフの女性は、冒険者とはとても思えないような、まるで街娘の
ような質素な服を身に着けていた。ひとつなぎのカートルからは刺繍こそほどこされ
ているもののカフスの付いていない袖が伸び、頭に袖と同じく赤と薄い緑の糸で
刺繍されたリンネルのカーチフを被っている。そんな質素な身なりにも関わらず、
エルフは司教同様人目をひいていた。元来、エルフ族は非常に繊細な顔立ちを
している。その中においても、一際目立った容姿のこの女性は、白磁の肌に
輝く生糸のような銀髪を持ち、渓谷の伝承の中にある小神族の末裔のように
神々しい美しさを放っていた。しかし、注意深い人ならば、一見高潔で、貞淑そう
な彼女の藍玉色(緑柱石の色、青緑)の瞳に、悪名高い“沼地のエルフ”のような
死ぬまで男を躍らせることができる魔力が宿っていることに気がついただろう。
「え、なに?」
「これ、なんだと思いますか?聖遺物であることは間違いないんですけど…」
司教は、聖別された絹布に包まれた色の悪い腸詰の切れ端のような物を
エルフに差し出した。
「あら、どこでこんなの拾ったの?」
「赤い服の方々が落として行ったものなんですけど」
「赤服?」
「さっきカウンター席の人を安楽椅子に縛りつけたまま連れ去ったあの……」
「ああ、SPANISH INQU…… あの連中ね。ごめんなさい、全然気が付かなかったわ」
「あんなに大騒ぎだったのに、気付かなかったんですか?」
「ええ」
驚く司教に、気のない返事をしたエルフの女性は、再び火時計に見入った。
もう随分と長い時間、彼女は心ここにあらずといった具合で、酒場の入り口と、
目盛りのついた銅板の上でほの暗い店内をちらちらと照らす火時計とを
交互に見つめ、不安げに顔を曇らせていた。僅かな沈黙の後、司教が
決まり悪そうに声をかけようとしたとき、突然エルフの女性が振り向いた。
「遅すぎるわ。宿屋から往復で一時間もかかるわけないのに」
ほとんど独り言のように呟くと、エルフは椅子に手をかけて立ち上がり、
ストールを羽織った。彼女は、ポカンとしている司教の頭にミトラを乗せ、
まるで男のように顎をしゃくって合図をした。
「いらっしゃいフラウド。あの子たちに、何かあったらしいわ」
* * * 最高のバカ面で、俺は天井を仰いでいた。
たまに意識を失いそうになって、数秒で目が覚める。いつの間にか口の端から
涎が垂れている。腰をくねらせて俺の下半身を愛撫していたフローレンスさんが、
俺の首に手を回し、よだれを舐め取った。俺は横を向いて、彼女の顔を見た。
こうして間近で見ると、やはり似てるだけで彼女とくノ一は違うな。色気は
たっぷりだが、フローレンスさんの方が無邪気で子供っぽく見える。
俺の頬を舐め回していた彼女は俺の口に吸い付いた。
あっ、もうこのまま、ここで生涯を終えても良いんじゃないか。いいだろ。
いや、ちょっとまて、このままで良い訳が無い。そうだろ。おそらくこのままでは
くノ一に八つ裂きにされる。
猛烈に勃起してるが、頭はもう賢者の心得を習得する状況まで来たと断言してもいい。
あっ、フローレンスさん、それはちょっと、あっ、はげしすぎぃ、あっ、あっ、あっ、ううぅっ!
……すまん、何の話だったっけか。とにかくだ、なんとかしてここを出ないと。
自分で蒔いた種だが、俺がどうにかして終わりにするんだ。とにかく考えろ。
シャイアやチビが先に寝ちまった理由は、あの媚薬には時間差で作用する
強力な睡眠作用があるということだ。あの二人が特別寝付きが良いってわけじゃ
ないだろう。お楽しみのあとは、時間差で眠らせるなんてまさにレイプ用の
薬ってわけだな! ちくしょう、もう薬なんてやらない。本当だ。
フローレンスさんが眠ってない理由は、あの二人より明らかに摂取量が
少なすぎるからだ。エルフに薬物耐性があると言ったって、個人差程度に
強いってだけだ。
「ふふっ」
耳元に息が吹きかかった。俺の右腕を枕に寝転んだフローレンスさんが、
うっとりとした眠たげな目で俺の頬を撫で回している。間違いない、彼女はもう意識が
なくなりかけている。
素のままじゃ俺のKATINOは効きゃしないだろうが、今ならなんとかなるかもしれない。
幸い両腕のシーツはとっくにほどけてる。やるしかねえ。
俺の首に腕を回して頬を舐め回し始めた彼女に、小声でKATINOを詠唱した。
閉じかけていた彼女の瞳が開き始めた。あれ、やべえ、やらかした、聞かれたか?
とろりとしたフローレンスさんと目があった。効いてる。大丈夫だ。
俺は死に物狂いで、もう一度KATINOを唱えた。
「くふっ」という短い風が俺の耳をくすぐった。 俺の右腕に頭を預けて、彼女は眠った。俺は左手を彼女の顔の前にかざした。
規則的な柔らかいリズムが伝わる。大丈夫、ちゃんと寝てる。
いよっしゃあ、逃げるぞ。うん逃げるぞ。逃げるんだ俺。
いやでも、あと五秒後……いや三十秒……いや二分後には必ず。
駄目だ彼女の寝顔の可愛さが破壊力ありすぎる。
こうなったら訓練場時代のとっときの起床方法を使うしか無い。
俺は心の中で十秒をカウントダウンした。
じゅーう、きゅーう、はーち、なーな、ろーく
「五秒前、四、三、二、いぃいち」
フンッと勢いをつけて俺は左半身を起こした。起きれた。良かったあぁ……。
これ駄目だったら冒険者廃業だよ、鑑定士も名乗れねえ。
俺はそっとフローレンスさんの頭をどかした。彼女に覆いかぶさるように、
両手で頭を持って静かに枕に、そーっと、そーっと……
なあ、あと一回くらいヤっちゃ駄目か?
バカ、バカ、俺のばあかヤロ! 駄目だっての!
フローレンスさんは薬でこうなってるだけなんだ。正気に戻ったら
素手で俺を解体できるんだぞ。無駄な希望は捨てろ。悲しいけど。
ああぁぁ、ここにいたい。こっから離れたくねえ。
俺には勿体ないレベルの美人なんだ。可憐で、清楚で、おっぱいも大きくて、
柔らかくて、セックスも情熱的で。
彼女は今日が初めてなんだ。
そんな彼女の初めてを俺は……このさい責任取って一緒に……
いや、だめだ。俺じゃ駄目なんだ。俺は鑑定士だ。彼女には全然釣り合わない。
俺はただの生きる計算機で、最底辺のゴミクズなんだ……
うっ……ううっ、うっ……くそぉ。
正直猛烈に後ろ髪を引かれてたが、根性と気合で俺は枕元から離れた。
腰から下の両脇をフローレンスさんとチビどもに固められてるせいで、
ベッドから転がり降りれない。しょうがなく、俺はなるべく振動を与えないように
ケツをゆっくりすべらせて足元に移動した。 シャイアとチビは寝てるな。俺は試しに、シャイアの顔に右手をかざした。
よしよし。よく寝てる。しかしこいつも寝顔だけなら可愛いな。
見てくれだけは本当に良いんだよあコイツ。がきっぽい身なりのくせに色気もあるし。
いかん、寝顔を確認したら、変な気分になってきた。
こいつの性格を思い出せ。そうそう。クソみたいに性悪で、口うるさくて
無駄におせっかいだ。
仕事持ってくるときもやたらと挑発するし、仕事中も喧しく話しかけてくるし、
勝手に俺の部屋のテーブルの下の空き瓶片付けに行くし、対人恐怖症と躁鬱で
誰とも会いたくなかった時期だって無理やり押し入って飯置いくし――
あれ、こいつ俺のこと好きなんじゃね?
――んなわけないだろ。何考えてんだ俺。ありえない。
そもそも俺がこうなったのはこいつのせいだし。
こいつは寝覚めが悪いから俺に世話焼いてるだけの小心者だ。
変な気が起きないうちにさっさと行こう。一応チビの方も確認しとくか。
……やばいなこいつ。フローレンスさんやシャイアとは可愛さのベクトルが違う。
これに手を出したら本当のやベえ奴じゃないか。寝息を確認するのはやめだ。
頭撫でたくなりそう。いやいや、うん、その、あれだ。
道端で日向ぼっこして寝ている子猫みたいなもんだ。
可愛いと思っても当たり前だ。
そうだ、ただの子猫、ただの子猫……寝てる子猫に欲情するとか、
余計やばい奴じゃねえか。なんか死にたくなってきた。
こいつにまた変な気を起こすようなことがあったら、俺はもう自室で首を吊るしか無い。
俺はやっとの思いでベッドから滑り降りた。
名残惜しさで、いっぱいの気持ちになり、俺はベッドを振り向いた。
ああああぁベッドに戻りたいよぉ……枕元に飛び込みたいぃ……。
このまま四人で一緒に寝てるほうが幸せなんじゃないか。
頭の中で、俺の理性が“死にてえのかお前”とどすの利いた怒号をきかせた。
そうだ。取り返しつかないことしたが、まだ死にたくない。
なんとか逃げ出して姿を消すんだ。荷物をまとめて故郷に帰ろう。
俺は冒険者に向いてなかったんだ。 俺は急いで身支度をした。俺の一張羅はベッドの下に丸めて押し込まれてた。
ローブを引っ張り出したときに、ベッドの下にまだなにかあることに俺は気がついた。
浅い籠の中に服が入っている。
こ、これは、まさか、くノ一の黒装束ではないか?!
ちょっとくらい、匂いを嗅いでもいいかな?
俺は無意識に籠を引っ張り出して、籠ごと鼻面を突っ込んだ。
ああ、いい、すごい、とっても、いてっ、なんか固いもんに当たった――
籠の中には黒装束の他に、なにか錆びた短刀のような物が抜き身で入っていた。
錆びきっているせいで、何も切れなさそうな短刀だ。こいつは……
「“がらくた”だ」
そうだ。大抵の鑑定士ならそこで鑑定をやめるだろう。だが俺の頭は
この短刀の元の名前を言い当てようとしていた。こいつの本当の名前は、
「“Dagger of Thieves(盗賊の短刀)”」
よし、答え合わせはできないが多分合ってる。手応えありだ。
……いや、何やってんだ俺。一刻も早く逃げるんだよバカが!
着替えるのは至難の業だった。視界が思ったよりぐらついていることに
今気がついた。まともに歩けるかな俺。下履きの薄いズボンを履くところで
俺はようやく気がついた。勃起しすぎてズボンが入らない。ローブの結び目から
立派な息子が元気に飛び出している。これで表を歩いたら目立ちすぎる。
どう見ても変態にしか見えない。ズボンを履くのは諦めて腰に巻いたら
どうだろうか? それはそれで目立つし変だろ。ああくそっ、早くここを
出ないといけないのに……
たしか、くノ一の黒装束、着物状だったよな、腹も下帯で締めるタイプで
胴も広がってるし、これならなんとか下も隠せるんじゃないか?
ちょっとキツイがなんとか入りそうだ。流石に着物なら女物でもなんとかなるな。
袖はあとから絞れるようになってるし。よし、着れた。やはり着物は良い。
これならズボンを腰に巻いても腰袋にしか見えないし。お、頭巾もついてる。
顔も隠せるしついでに着けとこう。ローブの上から着たからだいぶ着ぶくれしたが
これはいいな。股間も何とか隠せる。歩く時ちょっと痛いけどこれなら良し。
ああ、まるでくノ一に包まれているような気分だ。
……いや、何やってんだ俺! これじゃ変態じゃねえか!
いや、だがこれは不可抗力なんだ。何としても目立たないようにしないといけ
ないだけなんだ。俺は断じて変態じゃない。うん。……うん。
突然、俺は外の扉の異変に気がついた。誰かがドアの眼の前にいる。
着替えに夢中で気が付かなかった。まずい。
* * * 「姉さん、開けて」
くノ一は肩で息をしながら部屋をノックした。道中ずっと悪い予感がしていた。
いつもなら、彼女の同僚は、彼女がドアの前まで来ると、ノックする寸前で
扉を開けて驚かすのが常だった。
「姉さん」
くノ一はもう一度、今度は強めにノックをした。返事なし。彼女の中で、心臓の
鼓動が素早くなっていった。なにかがおかしい。鍵は彼女の同僚に預けてある。
中から開けてもらわなければ部屋には入れない。
「姉さん!」
くノ一はドアのノブを何度も動かしながら、激しくノックした。相変わらず返事なし。
ノックをやめて、くノ一は耳をドアに当てて、神経を集中させた。微かだが、
なにか物音が聞こえる。中に誰かがいる。衣擦れの音、引きずるような足音、
聞き覚えのあるような気がするが、彼女の仲間の出す音ではない。
「ねえ、開けて」
くノ一は再びノックをし始めた。そのうち、壊すのではないかという勢いで
ドアを叩き出した。
「姉さん、ムー、フロー、誰かいるの? ねえ!」
くノ一には確信があった。部屋の中に三人以外の人物がいる。くノ一は
カーチフを外し、内側に隠してあるピックの束を抜き出した。
彼女は神経を集中させ、錠前を覗き込んだ。
『ピンが上下にある。それに多層の再施錠機構ね』
くノ一は絶望的な気持ちになった。
『ディスクの向きが不規則。何枚あるかわからない。こんなの無理よ』
それでも彼女は二本のピックを選び出し、残りは口に加えた。
錠前に跪き、右手で一本のピックを差し込んだ。ピックで錠前のほぞの
位置を丁寧に探る。耳と違って、指先の感覚は鈍い。くノ一は、昔の
感覚を思い出そうと必死になった。鈍い手応えがある。祈るように、
左手に握ったピックを差し入れた。
『お願い、開いて、神様、お願い。開いてちょうだい、お願いです。
あの子は無しにして、あの子だけは無しよ!』
左のピックの先が溝を捉えたと思ったが、つるりと滑るような感覚がして、
錠がおりた。この鍵は開けられない。今の自分の腕では何もできない。
視界がぼやけて見える。知らない間に涙が溢れ出していた。
五大施設の錠前は、ニンジャの彼女には荷が重すぎた。
彼女がシーフだったときですら、開けられたかわからない。
くノ一はピックを引き抜き、カーチフにくるんで放り投げるとドアから離れた。
昔のやり方が無理なら、今の自分のやり方で試すしかない。
宿屋のドアは、巨人や悪魔が徒党を組んで体当りしても壊れないと
評判だった。自分より何倍もレベルの高い冒険者たちですら、
ロイヤルスイートの鍵付きドアを壊せた者の話など聞いたことがない。
それでもくノ一は錠前に挑むときよりもずっと落ち着いた気持ちだった。
体をそらしてはずみをつけると、彼女は思いっきりドアにぶつかった。
* * * 宿屋の入口までくると、リーダーはわたしを置いてけぼりにして、あっという
間に駆けて行きました。道中、わたしが走れる限りの速さで歩いてくれましたが、
わたしはすっかり息を切らしてしまいました。
階段を登る途中から、リーダーの声が聞こえていました。
わたしがやっと三階につくと、リーダーは部屋のドアに、凄い速さで何度も
体当たりをしていました。
「リーダー!」
びっくりして、わたしはとっさに止めに入りました。わたしがリーダーの腰に
しがみついたときは、リーダーは恐ろしい力で扉に向かっているところでした。
ドアに押しつぶされて、死ぬかもしれない。わたしはとっさに思いました。
リーダーはしがみついたわたしにすぐ気がついてくれました。
ドアに肩をぶつけるのを、リーダーはすぐに辞めました。
リーダーの頬には涙が流れていました。人がこんなに取り乱したのを、
わたしは生まれて初めて見ました。息を切らしながら、わたしはリーダーに
言いました。
「フロント、鍵、取ってきます」
「私が行くわ」
リーダーは駆け出そうとして、一瞬わたしと目を合わせました。
わたしを一人でここに残すことが不安だったのだろうと思います。
怖さはあったけど、すぐにわたしは「大丈夫、待ってます」と答えました。
リーダーは風のように走り出しました。
* * * くノ一の声が聞こえる。まずい。もうドアから出られん。俺のバカ。遅すぎた。
なんとかして、なんとかしてドア以外の場所からでないと。
いっそ部屋の中に隠れるか? いや絶対見つかる。トイレに篭って籠城する
ぐらいしか対抗手段が思い浮かばん。そんなことしたら詰みだ。
俺は部屋の中を駆け回った。トイレは二回見た。ベッドルームの窓も、リビングの
窓も全部調べた。入口以外の出口が見当たらない。そして恐ろしいことに、この部屋の
窓はすべてはめ殺しだった。たとえ出られたとしても、この高さから飛び降りたんじゃ
助からない。
突然入口のドアから爆音が聞こえ始めた。なにかがドアを蹴破ろうとしている。
やばい。どうする、どうする俺?
もうどうしようもない。窓から飛び降りるしか無い。だがはめ殺しだぞ。
こうなったらもう窓をぶち破って飛び降りるしかない。宿屋の物品を壊すのは
重犯罪だが、もうこの際仕方がない。
ベッドの下の浅籠にがらくたの短刀があったはずだ。あれを使おう。
俺は錆びた短刀をベッドからひっぱりだし、目星をつけた窓に思いきり叩きつけた。
窓は割れなかった。不思議なことに、手応えがない。それに音もしなかった。
なにかの間違いかもしれない。俺は今度は思い切りよく、短刀をぶつけた。
窓はびくともしない。こんなに思いきりぶつけたのに何の音もしない。
俺は絶望した。窓に近づいて、薄暗くなりかけた太陽の光を透かして見た。
「まずいぞ」
光の反射のしかたがおかしい。ただの屈折じゃない。
この窓、なんらかの魔術が込められている。訓練場の窓と同じ技法だ。
力を込めてぶつかっても、魔力に衝撃が殺されてしまう。
俺は必死に錆びた短刀で窓の四隅やら真ん中やら、あちこちを叩いてみた。
窓枠を叩いたところで、初めて「ゴン」という大きな音がした。
わかったぞ、これならいける。
窓は強いが、窓を支えている窓枠は何の魔力も込められていない。ただの木製だ。
木枠には四隅の金具で硝子窓が取り付けられている。隙間は木材とただの漆喰だ。
宿屋の親父、ケチったな。金具はでかくて頑丈そうだが、まだなんとかなりそうだ。
これなら、木枠を壊すか、金具を壊すだけでいい。いやもっと良いものがある。
なにか魔力の込められたアイテムを使うんだ。それなら、魔法の硝子が逆に
力を増幅して反射する。楽に窓枠の金具を壊せるはずだ。
この元盗賊の短刀じゃ無理だ。魔力が何も残ってない。なんかないか、
この部屋になんか、マジックアイテム。俺は急いでベッドルームを探した。
ドアからフラウドの声が聞こえた。やばい、急げ。 連投規制からのプチ規制発動されたようなので時間置いて出直してきます ベッドの下を覗き込んで、俺はぎょっとした。得体のしれない白いものが動き
回っている。動物の鳴き声のような奇妙なくぐもった声が聞こえた。そいつは
跳ねるような動きでベッドの下から飛び出してきた。俺は思い切ってそいつを
掴み上げた。白い袋だ。端を掴んで引っ張ると、中からゴロンと大きな何かが
転がり出てきた。赤と青のケープを身にまとった、カエルの彫像だ。全身が
金属でできているくせに、生きているように這い回った。
これだ。まさに僥倖。俺は素早くカエルを捕まえた。こういうとき、地元で
培ったスキルが活かされるってもんだ。
俺はリビングに駆け出した。なるべく入口から遠い窓のほうがいい。
ちょうどよく、カエルの口には猿轡が噛まされていた。これはいい、このカエル、
うるさくてかなわんからな。俺は暴れるカエルの足を引っ掴んで思いきり振り回し、
全力で窓にぶつけた。派手な衝撃があった。金属音とともに窓枠が軋んだ。
いいぞ、これならやれる。
俺はめちゃくちゃに窓にカエルを叩きつけた。最初に窓枠の右上の金具が飛んだ。
続いて右下と左上の金具が外れた。もうちょっとだ。窓はもうぐらついている。
猿轡が外れてカエルが騒ぎ出した。俺は構わず窓にカエルをぶつけた。
最後の金具が外れた。同時にカエルが俺の手からすっぽ抜けて窓の外に落ちて
いった。「のーぉぉぉぉ……」という間の抜けた悲鳴がリビングに木霊した。
俺はすぐに部屋のテーブルを椅子ごと窓に近づけて、よじ登って身を乗り出した。
寒い。思ったより、高い。相変わらず勃起が収まらないのに、金玉だけが縮み上がった。
下には雪が積もっている。これなら行けるか? いや、多分無理だ。カチカチに
押し固められて、氷みたいになってるだろう。
明日酒場の掲示板には『速報! 破壊行為を行ったレイプ魔 勃起したまま転落死!』
のニュースが貼られるかもしれない。
バカなこと考えてる場合じゃない。俺はここから生きて帰るんだ。
ああ、すっかり忘れていたが俺はBISHOPだった。
俺は使える限りの呪文を唱えた。PORFICやSOPIC、MOGREFにMATU。
準備は万端だ。地面についたから必ず転がれ。両足で着地したら歩けなくなる。
着地して横に転がる、着地して横に転がる。よし、シミュレーションはオーケー。
あとは飛ぶだけ、あとは飛ぶだけだぞ、おい。
……早く飛べよ俺、呪文切れちまうぞ。落ち着いて、呼吸を整えて―――
突然、入口のドアがガチャリと音を立てて開いた。
俺は振り返った。ドアから宿屋の主人が飛び込んできた。あとに続いて、
くノ一の姿も。
俺は意を決して飛び降りた。
* * * 部屋に飛び込んだくノ一の目に、ベッドの上の仲間たちと肉親の姿が映った。
視界の端の隅で、なにか黒い影がふっと動いたのが見えた気がした。
くノ一は凝固の呪文をかけられたように静止した。悲鳴を上げる前に、
宿屋の主人が奇声をあげた。
「いいいいいいいいぃぃ!」
主人は、壊された窓枠に駆け寄った。テーブルと椅子を押しのけて、
窓枠の破片で手を切るのも構わず、主人は身を乗り出した。
窓の真下には死骸はない。主人は素早く見回した。黒装束の男が建屋の角を
曲がるのが見えた。
「ぎいいいいいいいいぃぃ!」
主人は再び奇声をあげた。
くノ一は悲鳴をあげなかった。代わりに、ドアの外にいるフラウドの所まで行き、
声をかけた。
「入っちゃだめよ」
そう言って、くノ一は廊下にぺたりと座り込んでしまった。くノ一は両手で口を押さえて
嗚咽した。泣きながら、なんとかフラウドに「そこにいて」とだけ言うと、彼女はベッドの
肉親のところに行こうとした。腰が抜けてしまったようで四つ足で歩み寄った。
ベッドの上には仲間たちが酷い有様で転がされている。枕元でうつ伏せになっている
裸の妹の所まで這い寄ると、彼女は妹の頭を抱きしめた。
「ああ、生きてる」
くノ一は、妹の頭を撫でながら呟いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
顔は綺麗だったが、体は酷い有様だ。
「おい、あんた!」
鋭い声がくノ一の背中からかけられた。彼女は妹の頭を抱えて泣き腫らしたまま、
ゆっくり振り向いた。宿屋の主人が恐ろしい剣幕で言った。
「あいつは誰だ?」
くノ一は泣きながら首を振った。
「わからない。私が知りたいわ。絶対に殺してやる」 宿屋の主人は小さく両腕を放り投げる仕草をしてぐるりと視界を回した。
「ホォオル!」
宿屋の主人は、副支配人の名前を大音声で叫んだ。駆け足でやってきた
副支配人のホールに、主人は命令した。
「このレディたちに別室を用意しろ。彼女たちを介抱してやれ。それと修理屋を
呼べ。部屋を片付けろ。今すぐだ」
「はい、総支配人」
ホールは緊張した顔で、すぐに仕事に取り掛かった。
「お嬢さん、申し訳ないが話がある」
宿屋の主人は先ほどとは打って変わって紳士らしい柔らかな声で、くノ一に話しかけた。
「あいつを殺したいんだろ」
「もちろん」
くノ一はえづきながら答えた。
「あなたの力が必要だ。一緒に犯人を探そうじゃないか。
知ってることを教えてくれ」
「ええ、ええ、何でも協力するわ。お願い、あのくそ野郎を捕まえて」
「ようし、ギブアンドテイクだ。犯人は黒装束の男。詳しくは別室で話そう」
ホールが主人に駆け寄った。
「右隣が空きました」
「左は?」
「夜の九時にチェックイン予定です」
「二時間だけ使う。間に合わなかったときに備えてひと部屋用意しとけ」
「はい」
ホールは引き下がった。
「あなたのご友人たちは我々に任せてくれ。お嬢さん、立てるかい?
隣に移動しよう。外で待っている司教の娘さんも一緒に来ると良い」
くノ一は泣きじゃくりながら素直な子どものように頷いた。 もう見てないだろうけど11スレ目の323氏への回答です
とりあえず今回はここまで
色々不手際があって申し訳ない トリップないけど ◆RDYlohdf2Qです
保管庫管理人氏へ
フォームから送った2件の要望は黙殺してください
鯖落ち直らなくてテンパって書いたものですので… >>99◆RDYlohdf2Q 様
メールフォーム&直へメの返信が遅くてスイマセン。
依頼の件、添付して頂いたtxt終端までの内容がこのスレッドにて確認できましたので、
鑑定士本編の6話として近日中に保管させて頂きます。
保管庫管理人もちょっと焦りました、BBSPINKのPC用サーバーは未だに復帰してないようですね。
携帯(スマホ)でのアクセス問題ナシ…あと、専ブラでの読み込み・投稿も大丈夫なようです。 ゴブリンの臭いがする姉さんと石鹸エルフのファンです。ダフネパロ欲しいです。 失礼します
また容量つぶしの投下をさせていただきます
NGワードはトリップまたは鑑定士で回避をお願いします 雪は思った通り硬かった。着地の衝撃が伝わり、体中の骨が軋んだ。
ワンテンポ遅れて、俺は地面を転がった。
「ああああっ!」
痛っえ、ちくしょう、痛え! くっそ、痛くても走れこのやろう!
まだ呪文がきいてる今なら動けるはず。俺は四つん這いになりながら何歩か歩いた。
足のことは今考えるな。足の様子を見たらもう動けなくなる。頭上から宿屋の親父の
奇声が聞こえた。
恐怖で頭がいっぱいになり、俺は両足で立って夢中で駆け出した。
痛いのかどうなのかすらもうわからなくなっていた。幸い人はいなかった。ごみ箱の上に
いつも陣取っている乞食共もいない。サボり魔の見張りの姿もない。神に感謝だ。
俺は何も考えず宿屋の裏口に飛び込んだ。
俺はポコチンおっ勃てたままA Cotの廊下を全力疾走した。目を剥いて短い悲鳴を
上げる同業者共をかき分け、最奥の自室に飛び込んだ。その時になって俺はくノ一の
部屋から錆びた短刀を持ち出していたことに気がついた。投げ捨てるように短刀を
ベッドの下に滑り込ませ、俺はすぐさま忍び装束を脱ぎ捨ててローブの紐を緩め、
大急ぎでマスをかいた。体の痛みよりも、こんな体たらくになりながら
まだ勃起し続けている俺の一物に心底恐怖していたからだ。
猛烈な勢いでしごいてるのに、びくともしない。全然収まらん。性欲なんてとっくに皆無だ。
鈍い感覚だけで俺のブツはおっ勃ったまま一向に収まる気配がない。ああ思いついたぞ。
俺はすぐベッドの下に手を伸ばした。ケース買いした解毒剤の在庫が二箱ある。
俺はすぐに二本分を一気飲みした。足の激痛と吐き気に耐えながら、飛んだりはねたりして
体に解毒剤がまわるようにしたが、何も変わらない。
俺はすぐに汚物用の桶を探した。机の下においてあった汚物桶に急いでかがみ、
指を喉の奥に突っ込んで胃を裏返すようにして咳き込んだ。薬草の悪臭が喉に
せり上がってきた。俺は勢いよく吐いた。胃が空っぽになるまで、なんとか中身を
すべて絞り出した。追加の解毒剤をもう二本飲んだ。一物にも解毒剤を擦り込んでみた。
症状は変わらない。
どうする、俺どうする、いやもう考えてる時間はない。俺は転送屋のベランの部屋に
向かった。俺が依頼できる一番腕のいい治療師はこいつしか居ない。一物おっ立てて
ぎくしゃく歩く俺を、同業者共がやばいやつを見る目で見つめてきたが無視だ無視。
ドワーフの部屋の前ではベランと同室の、呪われた得物を片手に吸い付かせた
“左右コンビ”が薬もビールもやらずにめずらしく廊下でくっちゃべっていた。
ホビットのマイクと、ノームのダーだ。
ダーは俺が近づいてくるのを見ると「おう、ういぃ?」という素っ頓狂な声を上げた。
俺が部屋に入ろうとすると、二人は慌てて俺を止めに入った。
「あ、あんた、今はちょっと、あー取り込み中だぜ」
「うるせえ今それどころじゃない」
「ああ! 旦那だめ、今入っちゃだめ」
血相変えて止めるマイクの静止を振り切って、俺は無理やり転送屋のベランの
部屋に駆け込んだ。
「誰だ!」
すぐさまドワーフの怒号が飛んだ。俺は飛び込んだ部屋の中で固まった。
ベランは裸でベッドの中にいた。それで、その、相手もベッドの中にいた。
二人は真っ最中だった。一瞬たじろいだが、もう破れかぶれになっていた俺は裸で
シーツに包まっている二人の前で身を投げ出しながら叫んだ。
「頼む、たすけてくれ!」
* * * 「あんたふざけないでくれ、時と場合をわきまえろ」
はい。もう仰るとおりです。ベッドの中に二人がいる状態で、俺はローブを
はだけさせ、一物をおっ勃たせたまま顔から出せる汁を全部出しながら、
一方的に症状を訴えた。話していくうちにだんだん冷静になってきた。
やっと全部伝え終えた俺はベソかいたまま床に頭をぶつけて丸まった。
「後ろ向いてくれないか。サーシーに服を着させてやりたい」
顔面鼻水まみれの俺は床に座ったまま後ろを向いた。
転送屋のベランには協力者がいるっていうのはなんとなくわかっていた。
そりゃあそうだ。LOKTOFEITを使った外法解呪をするには金を預かる金庫番と
組まなきゃいけない。相方が誰かなんて、ベランは決して口外にしたことがない。
考えてみりゃサーシーなら金庫番に適任だ。近づいてくる奴はあまりいない
だろうな。二目と見れない御面相だし、昼も夜も延々唱え続ける詠唱は
A Cotにおける環境音楽として悪い意味で評判で、おまけに気が触れている。
あくまで噂だけだったようだが、こういう“噂”はサーシーにとって良い隠れ蓑に
なったんだろう。金を守るにはうってつけの立場だ。
「もういいですよ。着替えました」
俺は二人に向かって振り向いた。規制も発さず、目の焦点も合っている
サーシーを見たのは二年ぶりだった。顎がぶっ壊れて舌がずるりと垂れだして
いるはずのサーシーの顔はすっかり治っていた。
「え、あえ、え」
馬鹿面さらしている俺に、ベランが言いにくそうな声で説明した。
「サーシーはおれのビジネスパートナーなんだ」
なるほどビジネスだけじゃなくて、あっちのほうでもパートナーなんだな。
ベラン、朴念仁だと思ってたのに……仲間だって信じてたのにこの野郎。
「この前の仕事でやっとまとまった金ができた。良い機会だから、腕利きで
評判の医者になんとかしてもらえたんだ」
「まだ舌がここにあるのが慣れてなくて」
サーシーは舌をペロッと出してはにかみながら答えた。
いかん。性欲は枯れ果てたはずだが、このサーシーの声と顔は良くない。
おかしいなひょっとしてまだいけるのか俺。今はまずいって。ちょっと舌っ足らずに
なっているのもまた余計まずい。ゆるくウェーブしたブルネット、小作りで形の良い
目鼻立ち、琥珀色の瞳に優しそうな声。
ああまずい、なんか出そうになったらどうしよう。
……というかお前らいつの間にそういう中になってんだよ。
「まずは怪我の治療をしよう。あんた体中おかしいぞ」
言われた途端に、足の感覚がまともじゃないことを思い出した。それどころか
全身が痛いことに気がついた。腰から下は普段の倍に膨れ上がっている。
後でわかったが、背骨と骨盤にもヒビが入っていた。耳は遠くなっている。
割れるように頭が痛い。俺は情けない声を出して床に転がった。 俺は自室のベッドに運ばれた。同業者が何人も手を貸してくれた。気がつけば俺の部屋は、
俺の同業者やらご近所やらで信じられないほどすし詰めになっていた。
ベランの呪文の連唱で、俺は一命をとりとめた。もうベッドに一人で座ることもできる。
さすがDIALMAの一本槍だけでなんとか凌いできた元冒険者だけある。
いつだって頼りになるやつだ。
ベランはすぐに解毒の作業を始めた。俺はもう祈るような気持ちだった。
何度LATUMOFISを唱えても一向に変化のない俺の一物をみたベランは険しい顔で俺に言った。
「おい、あんたこれ普通の強壮剤じゃないな? 何に手を出した?」
おねがい。俺の犯した犯罪を聞き出そうとしないで。
「人払いをしてくれないかベラン。あんただけに話すよ」
「人に言えないような話なのか?」
ベランは凄んだ。めちゃくちゃ怒ってる。そりゃお楽しみを邪魔したのは悪かったよ。
でも俺にだって尊厳てものがあるだろ! 鼻くそみたいなもんだけど!
「せめてサーシーだけは部屋から出してくれ」
「サーシーに聞かせられないようなことなのか?」
ドワーフの鼻息は荒くなった。俺は泣きそうな顔で口をすぼめた。
「話してください。今、ここで」
サーシーが膝を屈めて、俺の目を真っ直ぐ見ていった。俺はもう逃げられなくなった。
俺は萎縮したまま、多くの同業者に囲まれて、これまでの経緯と悪事を洗いざらい話した。
俺の話を聞くにつれ、ベランの表情はだんだん厳しくなっていった。
「あんたはせこい手で、自分の雇用主を手籠めにしようとしたんだな?」
「はい」
「それで、得体のしれない怪しい売人から買った薬を使って、あげく無関係な女を
三人も“当てた”んだな?」
「はい」
「しかもロイヤルスイートの窓をぶっ壊して逃げ出した?」
「はい……」
俺は叱られたガキのように頷いた。
「最悪の選択肢を丁寧に選んでいったみたいね」
飲んだくれのエルフのトビーが、毒消し瓶を飲みながら、ヤツにしては珍しく真面目な
口調で言った。わかってるよ、このカマ野郎。俺の人生いつも選択を間違えてるよ。
トビーは「おかわり」と言いながら、自然な手つきで俺のベッド下から毒消し瓶を取り出した。
おい、なに堂々とパクってんだお前。さっきのも俺の毒消しかよ。なんか最近減るの
早いなとか思ってたら、てんめえこの野郎。
ベランが神妙な顔で口を開いた。
「いまの話が本当なら、おれたちはあんたを宿屋の親父に突き出さなきゃいけない」
俺は震え上がった。周囲は急に静まり返った。ベランはあたりを見渡した。
「仮にここで“どん詰まりの畜生野郎”を庇ったとしよう。もし後で宿屋の主人が事実を
知ったらどうなると思う? おれたちは連座制でしょっぴかれる。ここにいる誰か一人でも、
一言だって漏らさない自信はあるのか?」
やめて、ベラン、正論で殴ってくるのはやめて。 トビーが科(しな)を作りながら隣に座ってきて俺の手を握った。
「あたしはあんたの味方よ。レイプぐらいで何よ。尺八で三年間生き抜いてみなさいよ」
トビーは無くなった前歯の隙間からバカでかいゲップを吐き出した。汚えなこのコノヤロ。
でもちょっとだけ救われた。もうさっさとツケ払えアル中金玉エルフとか言わねえよ。
だから早く手を離せ。気色悪いわ。
「あんたいなくなったら、あたしの月々のジュース代どうなるのよ」
こんちくしょう、ちょっとでも感動した俺がバカだ。あとてめえが常飲してんのは
ウイスキーの蒸留酒割りだろうが。
「あんたを助けよう」
俺にいつも鑑定代理を頼んでくるジョブスが気取った声で言った。
ジョブス、お前……良いやつだな。いつも危険物を一律50ゴールドで丸投げしてくるけど。
「その通り」
ボラスがここぞとばかりに叫んだ。
「あんたがいなけりゃオレは次の仕事をどうすりゃいいんだ」
大男のモリスが答えるように言った。
それに続けと、いつも俺に仕事の代理を頼んでくる連中たちが口々に俺の必要性を訴えた。
みんなありがとう……いつも鑑定料金値切ってくるくせに、泣かせてくれるじゃねえか。
ジョブスは気をよくしたように爽やかな声で「我々には君が必要なんだ」と言った。
感激した。今だけはこいつらが格安で危険物処理させてくるクズだってことは忘れといてやろう。
トビーは腕を広げてボケ面で眺めているドワーフに向かっていった。
「みんなもああ言ってるし。あなただって困るわよねぇ、ホリー」
顎の下に兜を引っ付けた痩せこけたドワーフのホリーがボソボソと答えた。
「困る」
「あんたは俺たち鑑定屋一の尊敬すべき稼ぎ頭だ。困った時はお互い様だ。当然だろ」
土気色の顔をしたヒューマンのマズルが、胸に引っ付けたブレストプレートを叩いてみせた。
いつも情けない面で金の無心にくるお前の面が、今日は輝いて見えるぜ。
身体のどこかしらに呪物をひっつけた同業者たちからも、大きく頷いたり賛同を唱える
やつらが現れ、がやがやと話しだしたりした。だいたい俺にツケのある連中ばかりだ。
まぁ、二束三文で俺に鑑定丸投げしてくる連中よりはまだマシだ。こんなナリだが、
まだ、トビーやホリーやマズルは、金が入ったら返しに来る。いつもちょっと足りねえけど。
他の連中も、実入りがあれば返済に来る真面目な奴らだ。だいたい半分くらい返ってこねえけど。
……よく考えたら俺の知り合い碌でもないやつらばっかりじゃねえか。
まあいい。この状況だ。しょうもねえクズどもだが味方は一人でも多いほうがいい。
むしろこいつらクズでよかった。
「これでおれたちは一蓮托生の兄弟姉妹ということになるんだが、良いのか?」
ベランは苦虫を噛み潰したような顔で一同を見渡し、宣言した。モリスが口笛を吹いた。
歓声と拍手が一気に湧き上がった。あれ、なんか泣きそう。普段容赦なくたかって来る
クズどもに感動させられるなんて。 「あのねえ」
拍手が鳴り止まないうちにトビーが言った。
「宿屋の外にでたほうがよくなあい? ここじゃドラゴンの腹の中にいるようなもんよ」
「いや、まだここのほうが安全だ。旅籠ギルドの長を敵に回したんだ。歓楽街は危険だ。
乞食の目もある。今は下手に動かない方が良い。宿屋の親父も情報を集めているところだろう。
それに薬を抜くための治療をするにはここよりまともな設備がある施設がない」
ベランは首を振って、俺に向かって言った。
「あんたには残念だが、一月分の宿賃を残して、有り金全部貰うことになる。
高額なオイルを使うんだ。あんたの冒険は高くついたな。これは呪われた薬だ。
最近出回り始めた薬で、おれのところにも銀行が一人か二人来た。
運良く治療方法は知ってる。調べるのは大変だったんだ。あれには、あんたがよく扱う
指輪や鎧みたいなのと同じ成分が入ってる。こいつは時間との戦いだ。なんとか力は尽くすが、
急がなけりゃならん。前に来た銀行は手遅れになった。間に合えばいいが、
下手すりゃあんたは一生不能になる」
俺は青ざめた。そういうことか。
副作用がないどころか、劇薬中の劇薬じゃねえか。つまり俺はあの禿げにとって
実験用のゴブリンみたいなものだったわけか。あの三人にも、禿げチビの薬を使っち
まったじゃんか!……俺のバカ、クソッタレ!
「サーシー、便所の戸棚の二段目にエネマが隠してあったろ」
ずっと殺気立った目をしてたサーシーは頷いてすぐに部屋を出ていった。
はい? えっ、なに、浣腸器? なんで?
ぽかんとした俺にベランが呆れたように言った。
「あんたは一応司教だろ。上からも下からも入れなきゃこいつはだめなやつだよ。申し訳ないが、
覚悟をしてもらうぞ。大変な治療だ。なあ、ロディ、ハーマス、他の連中みんなも、見てないで
手伝ってくれ」
俺はぎょっとして周りを見渡した。
えっ、ちょっとまって、どういうこと、上からと……下から?
いやちょっとまってよ、いやベラン、なんとか一人でできるだろ。
「勘弁して下さい、すいません、せめてあんただけで」
「あんたは浣腸器見ただけでパニックになって暴れるだろ。前に便所で大騒ぎに
なったじゃないか。アレのせいで便秘患者には悪いが戸棚に隠すことになったんだ」
当たり前だろ! 俺のトラウマだぞ!
まってよ何でみんな協力的なんだよ。
お前らみんな畜生野郎の垂れ流しとか見たくねえだろ、馬鹿野郎お前ら離せやめろたすけて
* * *
* おおっと! *
* * * あれから二時間がたった。俺はやっと自力でゲロ桶を抱えられるレベルまで生気を取り戻す
ことができた。詳細を語ることは、勘弁してくれ。後生だ。後ろだけじゃなくて、尿道にも注入管で
無理やりオイルを流し込まれた。死ぬかと思った。ケツからは見たことのない量と色のやばい
水便が出た。
何回か血混じりの茶色いゲロを嘔吐したあとで、俺はやっと水を飲むことを許された。
ケツ穴と尿道に詰められた栓も外された。地獄みたいな痛みだった。俺はバカほど水を飲んで、
死ぬほど吐いた。
今は常時吐き気と下痢に襲われているぐらいだ。それから割れるように頭が痛い。
これまでの治療の痛みにくらべりゃなんてことはない。
心置きなく自室でゲロまみれになれるってもんだ。
「レイやラヴィがだったら、もっと楽に始末してもらえたんだろうな」
マイクが右手の剣の先に雑巾を引っ掛けて器用に床を拭きながら言った。
俺と目が合うと、マイクは哀れみを込めた目つきで左手で自分の股間を覆ってみせた。
「縮んじまったよ、おれ」
「レイチェルやラヴァーンがいたら、この人殺されてますよ。夜の仕事の人たちがみんな
出払っていて良かった」
ベッドでゲロ桶を抱える俺に、サーシーが背中を擦りながらため息混じりに言った。
サーシーには本当に申し訳ない。尿道へのクレンジングオイルの注入をやってくれたのは
彼女だ。
最初はマズルとホリーがやろうとした。俺が暴れることは想定済みで、猿轡を噛まされ、
股間と首から上だけさらした状態で、シーツとロープで身動き取れないほど固定された。
俺のブツは薬の副作用で徐々に感覚がなくなりかけていたが、地獄の苦しみを味わった。
困ったことに、勃起しすぎて管が全く通らなかったのだ。
当たり前だが、誰もこんな汚れ仕事をやりたがらなかった。そのくせ、ベランは部屋に
集まった連中に指示だけだして、全身ゲロとクソまみれの体で俺の汚物桶を抱えて
行ってしまった。誰も手を挙げない中、陰気なホリーが自分から治療の手伝いを志願した。
せめてもっと器用なやつが名乗り出てくれりゃよかったのに。
ホリーの野郎は無遠慮にガシガシと管を突っ込もうとした。俺の股間は血だらけになった。
あまりの惨状に俺の体を押さえつけていたマズルは目を背けていた。そうじゃないだろお前?
周りの連中も笑ってねえで誰かホリーを止めろよ! 後で覚えとけ!
見るに見かねて、サーシーが代わりを申し出てくれた。呪文こそ使えなかったが、
彼女は訓練場で正規の治療師の講義を受けていたからだ。それに、なんというか、
サーシーにはアレがついていないから、容赦なくできた。
ベランが離席している間で良かった。
サーシーには治療師の才能があったのかも知れない。彼女の施術は手際が良かった。
死ぬほど痛かったが、なんとか管が通った。こんな悲惨な思い出なのに、謝りながら
一生懸命に俺の一物に取り掛かるサーシの姿に何かに目覚めそうとか一瞬思って
しまった……俺はアホだ。これも劇薬の効能のせいだ。そう信じさせてくれ。 俺の背中を擦るサーシーにホリーが、伸びきった小さな声で「申し訳ない」と言った。
「ホリー、あなたがわたしに謝る必要はないんですよ」
そうだよ。まず俺に謝ってくれ、ホリー。
「心ひゃいすんなぁ、おれたひゃあんたの味方だ」
歯抜けで甲高いキーキー声で話すダーが臭い息吹きかけながら俺の横でまくし立てた。
格安ソフトドラッグで常時ラリっている標準的な底辺所得者のノームだ。そうだな、ダー。
お前にいくらタカられたか、もう覚えてねえよ。左手は手袋で隠しているが、こいつの手には
指輪が四つ吸い付いてる。ヤクをキメ続けなきゃやってられないんだろう。俺に金を無心しに
くるリストのナンバーワンだ。しかも一度も金返さねえし。せめてこの前の50ゴールドだけで
いいから今返せ。
「あんちゃんみひゃいな素敵な金蔓がなくなるなんてみへられねぇ。おれに任せろ」
堂々とふざけた宣言してんじゃねえ。これはお前がなにか頑張ってどうにかなる問題じゃないの。
「下らないやらかししたって自覚してるなら、悔い改めなさい」
俺の背中を擦りながらサーシーが言った。子供に向かっていうような口調だ。
すいません。ほんとすいません。生きててごめんなさい。
「まあ素直な感想を言ってもいいなら、『舗装道路』しか歩いたことのないお嬢ちゃんには良い
お灸だったんじゃないですか。その程度で済んだんだし。守ってくれるお姉さんもいて、
強い仲間もいて、恵まれすぎてたんですよ。あなたの女主人の同僚たちなら何とも
思ってないですよ。あなたの女主人のほうは存じ上げませんけど」
彼女なりに気を使って言っているのだろうが、情けなさすぎて俺はサーシーと目が
合わせられなかった。ゲロ桶に突っ伏して、俺は言った。
『ずみばぜん』
口から出た声がひど過ぎて自分でびっくりした。
「謝らないで下さい。みんなあなたに感謝してるんですよ。無関心にゆっくり締め殺される
気持ちは当事者にしかわからないんです。どん底にいたときに、手を差し伸べてくれたのは
あなたぐらいだったんです」
『おでは金をがしただけ――』
「そういうところですよ」
サーシーは微笑んだ。俺はなんとかヘロヘロの笑いを返した。彼女は知らない。
やつらの借金の催促は恐怖だ。ホリーは何時間も俺の部屋のドアの前でひたすら何か
呟き続けるんだぞ、異国の言葉で。トビーはもっと遠慮ない。素面の時は危険だ。
“おれは何のために生まれてきたんだ?”って泣きゲロで騒ぎ続けるんだ。
俺の部屋の中で。おかげでこんなでかい汚物桶が俺の部屋の常備品になった。
ほかの連中も大なり小なりだ。露骨な脅迫はないが、実際脅迫みたいな泣き言ばっかりだ。
なんだか笑えてきたな、くそ。
俺は桶の縁にぐったり顔をつけて言った。
『あなだは命がげの懇願の怖ざがわがっでない、知ってまず?
ドビーは金を借りるどぎだげは男声になるんでずよ』
「そうなんです? 確かにあの人、睾丸も四つありますしね」
『え゛っ』
「二つは“指輪”ですけど。いつも枕をかぶせられてますけど、始める前には見えるんです」
待ってくれ、何の話だ。
『見だっで、どごで?』
「ベッドの上で」
混乱してきた。ベッド? トビーが? タマ吸いが生計の何割かを占めるあいつが?
あいつカマじゃなかったの! 俺の様子を見て、サーシーが付け加えた。 「彼が酷いわけじゃないですよ、仕方ありませんもの。他の人たちも大抵そうします。
ポーやモリスだって。クーポーは気にしてないみたいですね。あの人は顎にシーツも
被させないですよ。終わったら食べ物をくれます。時々金貨も。わたしはルースや
レイチェルみたいにお店に入れないですもの。だからわたしは生きていけたんです。
女が冒険家業をやるというのは、そういうことなんです」
俺は桶にまた吐いた。サーシーはあいかわらず背中をさすり続けてくれている。
彼女は慰めてくれるつもりで言ったのだろうが、俺はショックを受けていた。
「だからそんなに落ち込まないでくださいね。反省はしてほしいですけど」
サーシーは皆に細かい指示をとばすベランをみて目を細めた。
「あの人にはずっと避妊処置をお願いしてました。彼は全部ツケにしてくれてたんです。
ある日計算してみたら、払いきれないと分かって、わたしは謝罪をしました。よっぽど
ひどい嘆き方だったんでしょうね。ベランはわたしに金庫番の仕事をくれたんです。
仕事中は必死になってDIOSを唱えてました。日に日に金貨が増えていって、仕事を
始めたばかりのころは怯えてました。今だって慣れないですよ。ベランがこんな
サプライズしてくれるなんて思ってなかったんです。ダーもマイクも一緒にお祝い
してくれました。二人はわたしの同僚なんですよ。わたしのせいで稼ぎが減ったのに、
二人はワインをプレゼントしてくれたんです。二年ぶりに、何もこぼさずに飲めました。
お酒は苦手ですけど、あんなにおいしいワインを飲んだのは生まれて初めて」
粋なことすんなあいつら。まてよ、この前の50ゴールドはそれか。
用途を言えよあの野郎。あいつに金返せって言えなくなっちまったじゃんか。
ベランが俺の傍に戻ってきた。サーシーは席を離れた。
「諦めるなよ」
ベランが俺の肩をぶっ叩きながら言った。痛え、ショック死するかと思った。
やっぱこいつ怒ってんだろ。
「お前のやったことはどうしようもないことだが、サーシーの身体を治す金の
出どころがあんただったのはわかってる」
ロッティングコープスもどきの鑑定屋が痙攣してるみたいにがくがく頷いた。
何でまだいんのお前。指輪無事に剥がれたんならさっさと故郷に帰れよ、馬鹿野郎。
「サーシーには悪いけど、僕はこの人を助けます」
「だってよ、なあサーシー」
「しょうがないですね」
「最初からそのつもりだろ?」
「ええそうですよベラン、悪いですか?」
ベランはサーシーに微笑み、周りに低い声で号令をかけた。
「さあみんな、手筈はいいな。さっき話した通り、酒をありったけ集めるんだ。
中身があろうがなかろうがいい。とにかく簡易寝台中の酒瓶を残らずだ。
瓶なら何でも良い。水入りだろうが薬瓶だろうが何でもだ」
簡易寝台の住民どもが一斉に部屋をとび出した。
『さがびん?』
俺は言った。
「いいか、お前はなんにも喋るな。この際はっきりいうが、お前さんはクズのくせに誤魔化しが
下手すぎる。誰に何を聞かれてもこの部屋から一歩も出ずにおれたちと飲んだくれてたって
答えるんだ。いいな?」
『わがっだよ』
俺は桶を抱え直してまた吐いた。
* * * 俺が便所と自室を往復している間に、俺の部屋は空瓶でいっぱいになった。
「追加はもう無いのか?」
ベランが部屋を見渡しながらいうと、マイクが首を振った。
「駄目だ。宿屋の出口が封鎖されている。もう出られないし入れない」
下痢と嘔吐が止まらない俺に回復をかけながらベランは首を振った。
「クソ。新しい桶が必要だな」
「捨ててくるわ」
「おれが行く」
マイクが名乗り出ると、ダーが黙って立ち上がり、右手の使えないマイクの
補助をした。俺の吐瀉物でいっぱいの桶を、二人は持ち上げようとしたが、
すぐに床に置いた。
「げえっ、こりゃロープがいるな」
「しゃがしてくる」
ベランが俺の背中を擦りながら言った。
「マズルとホリーはどうした?」
「おれはここにいる」
マズルが手を上げた。
「出口が封鎖されたのはさっきだ。おれとトビーで外の足跡を消しに行った。
見張りのガースがいつも通りサボってくれてよかったよ。うまく誤魔化せたと思う。
ホリーとは少し前にすれ違いになった。裏口からはもう帰ってこられない」
マイクが忙しない口調で会話に入った。
「ホリーなら酒場の友だちの銀行のところに行ったよ。クレンジングオイルの追加が
必要なんだ。金がいる」
ベランが渋い顔で首を振った。
「口の軽いやつに言いふらさんでほしいな」
ダーが代わりに答えた。
「口はかひゃいよ。ホリーのおともひゃひは同期だ」
「ホリーに同期の銀行?」
マズルはそう言いながらしゃがんでゲロ桶の固定を手伝った。
「だったらあいつはもっと羽振りがいいだろ」
「ホリーのごしゅじんしゃまはドワーフだ。桁一つだっちぇ見落としゃない。
しょれでホリーはこうなった」
マズルに向かって、ダーは顎のしたに拳を押し付けて見せた。
「そんなら、あいつは何しに行ったんだ」
「力になりちゃかったんだ、ホリーは必死だよ」
ダーは俺をちらりと横目で見た。
マイクは、成人のホビット特有の酒焼けしたガキの声音で俺に囁いた。
「こいつは大事になってるよ先生」
わかってる。最初に言ったじゃん俺。
小人二人はせかせかと俺の汚物でいっぱいの桶を捨てに部屋を出た。同業者たちはみんな
忙しなく偽造工作に勤しんでいる。廊下の床は拭き直された。俺がくノ一の部屋から持ち帰った
黒装束や短刀は仲間が別々に自分の寝台に預かった。
本当に泣けてきた。生前贈与でこの場の全員になにか奢らなきゃいけないな。
新しい桶を大量に携えた小人二人が、血相変えて帰ってきた。
「まずい、あんたの女主人が来ちまったぜ」
マイクが叫んだ。ダーが神妙に言った。
「しゅうんごい怒ってる」
首を振ったベランは俺の背中を叩いて言った。
「思ったより早く来たな。手筈はできてる。腹くくろうや鑑定屋」
オーケー、わかった、ハハッ、覚悟はできた。
ベランが声を張り周囲に目配せをした。
「よし、さあみんな騒げ! 大芝居の始まりだ」
* * * 私は道中ずっと自分の直感が正しいのか考え続けていた。あの部屋で
ドア越しに聞こえた音。気配。どこかで感じた覚えがある。一人の男の可能性が
突然頭にふっと思い浮かんだ。最初はありえないと思い直したが、
時間が立つほどに絶対にあの男だと強意見する頭の何処かの声が、無視できない
ほど大きくなっていった。
彼にそんな力がないことは理解している。でも私は自分の勘を信じてみることにした。
この第六の感覚には今まで何度も助けられてきた。こういう一大事で外れたことがない。
A Cotと書かれた看板が見える所まで来ると、遠目に、手の妙なところに剣が
吸い付いた小人とその介添が、二人で大きな桶をいくつも重ねて歩いている姿が見えた。
二人のうちの一人と目が合った。小人たちは自分を見ると、不自然なほど焦りながら姿を
消したように見えた。それは何の根拠もなかったが、自分の中で予感が確信に変わるのを
感じられた。
怒りに震える感覚は久しぶりだ。それでも頭の中は驚くほど冷静だった。
神経を集中させて、A Cotの看板が掲げられた突き当たりの通路を曲がった。
いつもの廊下は、不思議なほど静かだった。ドアはどこも開けっ放しで、簡易寝台の
どの部屋もベッドは空だった。奥の部屋に近づくにつれて騒がしい音が聞こえてきた。
鑑定屋の男の部屋は、彼の友人たちと思しき人々が集まっていた。こちらの姿を見た
人混みから歓声が上がった。廊下でいつもすれ違う飲んだくれのエルフが、酒瓶片手に
手を振って、艶めかしく手招きした。
「いらっしゃあい、素敵なお嬢さん。パーティへようこそ」
面食らってしまった。彼らの反応は思っていたものとは全く異なる。部屋の奥を見ると、
桶を抱えて体を小刻みに震わせている男の周りを、簡易寝台の住人たちが賑やかに
取り囲んでいる。床には沢山の酒瓶や何某かの薬瓶が散らばっていた。木桶を抱えた
男の背中を、ドワーフの僧侶がずっとさすっていた。
「やあ、どうしたんだ女主人様」
ドワーフは苦笑いをしながら、こちらを見上げた。
「すまないね。こいつに用があるんだろ。こいつがこうなっちまったのは
おれたちのせいなんだ」
右手に呪われたショートソードを握りしめたホビットが、棒きれのように剣ごと手を
振り回しながらお辞儀をして進み出た。
「貧民の祝賀会へようこそ、女王陛下! 悪いな。おれたちが飲ませすぎて旦那は
当分使い物にならんよ」
「天上のいひゃいなるご主人ひゃま、おれらになにか用? ねえ!」
歯のないノームが目を合わせないように、だがはっきりと自分に向けて言った。
ノームはお辞儀をするホビットの頭を叩いてげらげらと笑い出した。自分は場違いな
ところに来てしまったのではないかと後悔し始めた。
桶を抱え込んで俯いていた司教が、手を上げて、周囲に合図した。部屋にいた人々は
一斉に男を見た。男は青ざめた顔でこちらを向いた。男は割れたしゃがれ声で『はい』と
挨拶をした。戸惑いながら、私は男に話しかけた。
* * * 普段見慣れない町娘のような格好で、くノ一は俺を見下ろしていた。妹さんとお揃いの服だ。
顔を直視できない。抑えていても、気配から凄まじい怒りを感じる。
「どうして私がここに来たのか、ご存知かしら?」
はい。俺を殺すためですね。わかります。
「今しがた宿屋の警備が厳しくなったのは知ってるかしら。私の部屋に怪しい男が入ったせいよ」
なんて答えたらいいんだよ……程々に元気よく、しかし不審になりすぎない程度の絶妙な
音量によるシンプルな回答が一番だな。
『ばい』
ヤクの過剰摂取とゲロ吐きたての喉で声が出ねえ。
「宿屋の主人が発表した罪状はロイヤルスイートの窓ガラスの破損。彼に言わせれば大事件だそうよ」
『……ばい?』
……はい? 何言ってんのあの親父。馬鹿じゃないの。婦女暴行事件のほうがオオゴトだろがあ?!
「それで」
言葉の途中で、くノ一は両手を組み合わせたまま腕を下ろした。俺の様子をずっと見ている。
どうする俺。どうする俺? どうすんだ俺! またゲロ吐きそう。もう胃の中何も残ってないのに
内臓まで全部吐きそう。薬なんて使うんじゃなかった。
ごめんなさい。なんてことしでかしたんだ俺。どうしよう、俺何回死んだら許される?
だめだ、もう持たん。もう自白するしかない。
* * *
「何かあったのですか?」
ドワーフの横で控えていたヒューマンの女僧侶が、怪訝な顔で尋ねてきた。
声に聞き覚えがあったが、すぐに誰だったのか思い出せなかった。
しばらく相手の顔を見つめて、やっと思い出した。三つ隣の部屋でひたすらDIOSを
唱え続けていた女の声だ。顎が曲がっていたと聞いていたが、見た目が綺麗だ。
顔に少し麻痺が残っているようで、隠そうとしているが発音が舌足らずに聞こえる。
「ごめんなさい、ベランとわたしがお祝いしようってみんなに声をかけたんです。
彼、今誰と話しているのかもわかってないですよ。彼が仕事から帰って来て
ずっと飲ませていました。思ったより人が集まったのもだから」
「彼には世話になったからな」
痩せこけた青白いヒューマンの司教が相槌を打った。
「同業者の転職祝いですよ旦那様。あなたのお陰でおれの恩人が司教に戻れそうなんですよね」
桶を抱えていた男がうめいた。かすれた声で『よしてくれ』と言ったのだとわかった。
肩に入っていた力が急に抜けた。恥ずかしい。ここぞというところで自分の勘が外れるなんて。
もう自分が信じられなくなった。どうして最初にこの男を疑ったのだろう?
この男は、最も尊敬するシーフの元同業者なのだ。彼女に言わせれば、彼女の元いた
頭のいかれたパーティの中で、最もまともな男のはずだ。彼はずっとこの部屋で古馴染み
たちと飲み明かしていたのだろう。
「ええ、お祝いを言いに来たのよ。おめでとうって彼に伝えて」
桶を抱えた司教はまだ呻いていた。代わりに女僧侶が、怪訝そうに聞いてきた。
「その、なにか大事があったのですか?」
「ええ」
もう声に力が入らなくなっていた。
「にゃぁひぃ盗まれひゃんで?」
甲高い声でノームが尋ねた。
「私の宝物、それと、色々。でも、犯人の目星はついてるわ」
女僧侶は息を呑んだ。騒がしくしていた簡易寝台の住民たちも、静まり返った。
私は壁に向かって言った。
「宿の主人が言っていたの。犯人はニンジャよ。腹が立つほどタフな男みたい」
集まった人々がざわめいた。私は振り向いて、もう一度、犯人と目星をつけた男を見た。
タフとは程遠い、くたびれた人間だ。集まった住民たちに
「彼に伝えておいてくれない。一週間後にここで会いましょうって。今はまだ心の整理がついてないの」
とだけ告げると、私は逃げるように男の部屋を去った。 ざわめきが遠のき、頭は呆然としていて足だけが動いていた。
無力感に押しつぶされそうだった。もう自分の勘は頼りにならない。
指はとっくの昔にガラクタだ。自分にはなにもない。
腕っぷしはある方だと思っていたのに、何の役にもたたなかった。
親友も仲間も肉親も、誰も守れなかった。
A Cotの看板を曲がると、そこには宿屋の主人が立っていた。
「やあ、お嬢さん」
主人は口を緩めて言った。笑顔だが、目には殺気がこもっている。
「収穫はあったかい?」
私は小さく首を振った。
「あてが外れちゃった」
言葉と同時に、自分の中から何か大切なものまで抜け落ちるような気がした。
「どいつだ?」
ぎらついた目で主人は言った。
「一番奥の部屋の人」
「へえ」
初老の男は口元をすこしだけ緩めた。
「失礼だが、あなたがあの男を疑った根拠を伺いたいものですな」
「根拠もなにもないわ。でも……あの時、ドアの向こうから音が聞こえたの。
間延びして引きずっているみたいな足音だった。いつも聞いてた音とはちがうけど、
なんとなくあの人の顔が思い浮かんだの」
緩んでいた宿の主人の顔が険しくなった。
「それなら、十二分に謹聴に値する意見だ」
「でも彼、違ったわ。友達みんなでずっとここで飲んでたんだって」
「あれがそう言っているだけだろ?」
「彼が一人でそう言ってただけなら、私は笑顔で彼の首をぶら下げて来ているでしょうね。
この辺りの宿泊者全員に聞いてちょうだい。みんな彼の部屋にいたわ」
「そいつは妙だね」
「お祝いをしていたのよ。彼、随分慕われているみたい。あの人、私のパーティに入ることになったの」
「ほおう」
宿の主人は、意外そうに軽く開いたこぶしを唇の下に当てた。
「あのS.O.B(畜生野郎)をあなたのパーティにか?」
「レベルは低いけど、腕のたつ司教よ。怒鳴らないし、腹のたつ嫌味な言葉も使わないわ。
ちょうど、ものを教えられそうないい人を探していたの」
「あれはもう冒険者としては盛の過ぎた男だよ。あいつがあなたのパーティに
今更何を教えられるんだ?」
「妹のためだったの。だけどもう彼は必要ないわ。一週間後に、彼との契約は打ち切るつもり」
喉からは掠れた音しか出なかった。宿屋の主人は手を打ちならした。
「わかった。あなたがそう言うのなら、きっとそうなんだろう。ビラを刷らないといかんな。
犯人は、また一から探し直しだ」
それだけ言うと、主人は首を振り、踵を返して立ち去った。
* * * くノ一がもう安全だという距離まで離れるのを確認する間、俺の共謀者たちは
ヤケクソでお祭りの演技を続けていた。彼女が本当に立ち去ったことを斥候役の
マイクが宣言すると、演技じゃない本当の歓声が湧き上がった。
それからなし崩し的に飲めや騒げやの突発的な祝賀会に発展し、やっと静かに
なったのは夜も更けきる頃になってだった。なんやかんや世話を焼こうとする
ご近所をなんとか丁重に追い返して、俺はベッドの上で意識朦朧としながら
相変わらずゲロ桶を抱えてぐったりとしていた。ベランの話では毒が抜けるまで、
とにかくどこからでも良いから出し続けることが治療だそうだ。
部屋には同業者連中の手によって大量の水瓶が届けられた。
深夜に差し掛かる頃に、俺の部屋をノックする音が聞こえた。
もうお見舞いはいいよ……頭痛がひどすぎて眠れない。頼む一人にしてくれ。
二回目のノックで、俺は目をかっぴろげた。A Cotの住民がやるようなノックじゃない。
くノ一でもない。なんとか体を起こして、俺はジジイのような足取りでドアに向かった。
ドアを開けると、そこにいたのは宿屋の主人だった。
俺の思考は完全に停止した。
やばい。ばれてた。今死ぬのか俺。
「ブック」
『ぐえぇあ? ぁばい』
「呪文書を用意しろと言ったんだ。あんた、久しぶりの授業の時間だ。
冒険に行ったんだろ、なあ坊や」
忘れてた。そうだったわ。俺、迷宮に潜ったんだったわ。
『ずいまぜん、ばい、ずぐにごびょういじまず』
「声でないのか?」
『ずびばぜん、飲みずぎで』
「困るねえ、あんた。まあいい。簡易寝台の“お客様”だ」
初老の男は『お客様』という言葉をことさら強調した。
「一週間以内なら構わん。講義の場所は覚えてるか?」
『ぐえぇ、ばい』
「賭けてもいい。あんたはきっと二日酔いじゃ済まされないだろう。
木曜のこの時間に講義堂に来い。いいな」
意外なことに初老の男は笑顔を浮かべていた。
『ばい』
宿屋の主人は扉を閉めた。俺はしばらく扉の前で呆然としていた。
俺は夢遊病患者みたいにベッドに戻った。ゲロ桶をベッドの下にそっと蹴りこみ、
俺はベッドに転がった。今日は眠れるはずがないと思っていたのに、目をつぶった
途端に意識がなくなった。
* * * それから数日間、俺のまともな記憶は無い。吐いたり下痢したり、
なんだかわからないスープのようなものを飲まされたり、それだけだ。
あの薬が完全に抜けるには、それだけかかった。ベランに言わせれば、
すぐにクレンジングオイルを使わなきゃこんなものじゃ済まなかったそうだ。
頭と金玉と財布がすっからかんになって、俺はようやく本当の正気になる
ことができた。
食事は同業者たちが代わる代わる運んできた。ありがたいより情けない
気持ちでいっぱいだ。二日目になって、俺は運んでくる連中の変化に気がついた。
「マイク?」
俺は一人でスープの盆を運んできたマイクに声をかけた。マイクの手には、
もはや体の一部と化していたあのショートソードがなかった。俺は右手を持ち上げて、
左手の人差しで何度も叩いて見せた。
「おや、今頃気づいたかい旦那」
マイクは自慢げに、指を広げて振ってみせた。掌は一面青黒い痣になっているが、
マイクの右手には何も付いていない。
「あんたのゲロを始末し続けたおかげさ」
マイクは肩に斜めがけに吊るした聖布の包を指さした。間違いない。
布に包まれているがマイクの手に吸い付いていたショートソードだ。
そうか、クレンジングオイルは本来そういう使い方をするもんだった。
「ホリーは感謝していたぜ。トビーやマズルもだ。A Cot中の鑑定士がみんなが
あんたのゲロでじゃぶじゃぶ洗う姿は、変わり種の地獄みたいな絵面だったけど」
俺はその図を想像しようとしたが、脳みそが働かない。むしろ働かなくて良かった。
「ダーは心底喜んでいた。最初に気づいたのはあいつだ。ゲロまみれの手袋をはずしたらずるんって」
マイクは右手で左手の掌をつかんで勢いよく滑らせた。
「気がおかしくなったんじゃないかって心配しちまったぐらいだ。みんなあんたに感謝している」
「俺のおかげじゃない」
「そうだな。あんたは勝手にそう思ってるだけでいい」
「ぐぅ」
急に吐き気が込み上げてきた。すっかり慣れた動きで、俺はベッドの下のゲロ桶を蹴り出して、
かがんだ。マイクは去り際に「返しきれない借りができちまったよ」という言葉を残して、
部屋を出ていった。
スープが冷めきるまで、俺はゲロ桶の前に膝をついて呆然とし続けた。
* * * 彼女との再開日の前夜は眠ることができなかった。
わかっている。おそらく、あの三人のうちの誰かは確実に俺を殺すためにくノ一には
真実を知らせるはずだ。あるいは本人が自らの手で俺にとどめを刺すつもりだろう。
眠れないまま、俺は横にもならずベットに腰掛けていた。
ここ数日間で体中の水分と栄養はほとんどケツとゲロから流れ出た。身体は重だるく、
脳みそは完全にガラクタに成り下がっている。俺は明け方前にうつらうつらしだした。
よりによって今眠気が来やがった。なんとか朝まで粘るために、俺は椅子に座り、
ぼんやりテーブルを眺めていた。
体を揺すられて、俺は目を覚ました。いつの間にか朝だった。
机に突っ伏したまま寝ていたらしい。横を見るとフラウドがいた。
「大丈夫ですか、先生?」
「起きなさい、お寝坊さん。朝食の時間よ」
正面にはくノ一がいる。二人とも笑顔だ。
あれ、なんだこれ、夢?
走馬灯って実際に起ったことだけじゃなくて都合の良い妄想も見ることができんの?
ガシャンという音とともに俺を乗せたまま椅子が引かれた。のけぞった俺の両肩に
ずっしりした何かが乗った。
恐怖にかられて横目で見る。
Gloves of Silver、売値30000ゴールド、オーケイ。
「おはよう」
頭上から柔らかい声が振ってきた。あーそうですよねぇ、世の中そんな都合の良いこと
あるわけ無いっすよね、振り向きたくないがもう仕方がない。三人はくノ一の手を汚させず
自分の手で始末するつもりだ。
両手をなにやらちっこい手とシャイアらしき手に引っ張られ俺は椅子から引き剥がされた。
つんのめりながら、俺はテーブルに突っ伏しそうになりうっかり後ろを振り向いた。
三人ともそこにいた。
シャイアとフローレンスさんは笑顔だった。チビだけは前回見たような迷宮と同じ装備で、
フードを目深に被っているせいでわからんが。シャイアは探索用の服じゃなかったし、
妹さんも小手だけで、街を歩くような服装だ。
「ちゃんとベッドで寝ろよ。体に悪いぞ」
「外、天気いい。空気吸うの、体にとてもいい」
二人がテーブルまで来て俺に言った。にこやかで明るい声だ。
あれ? どういうこと? 俺殺されるんじゃなかったの? ひょっとして、ひょっとしてだが、
もしかすると、あの三人に飲ませた媚薬だけは効果が永続的だったのか?
え、うそぉ?! いいの? 俺生きてて良いの?!
ふと正面をみるとくノ一が俺に笑いかけている。いや、違った。妹さんの顔をみて笑っていた。
つまり、これが最終審判だったってことか。なるほど、三人を俺のところにつれてきて確かめたのか。
ハハッ、まじで今日生き延びて良いのか?
「それじゃあ酒場に行きましょう」
くノ一と妹さんが、二人がかりでテーブルに腹ばいになってる俺を起こしてくれた。
ああ、いい。ずっとこうしていたい。いやしかし、本当に大丈夫なのか?
幸せすぎてだんだん不安になってきた。
「ありがとうございます。その、着替えたいので、少しだけ一人にさせてもらえますか」
頭の整理がつかない。これよりマシな服などないが、とにかく一瞬でも一人にしてもらいたくて、
俺は言った。
「酒場でドレスコードなんて気にしちゃいないよ」
シャイアが俺の手を掴んだ。初めてのことだ。シャイアは手袋をしていなかった。
チビが俺の反対の手を握り、妹さんが俺の肩に手を優しく置いた。シャイアは鼻歌すら歌っている。
後ろからは妹さんのハミングまで聞こえてきた。まさか、本当に、信じられないことだが、
あの媚薬はやはり永続効果があるのか。 くノ一がフラウドと先に俺の部屋から出たタイミングで、俺は自分の浅はかさを思い知った。
俺は歩き出そうとしたが一歩も動けなかった。三人は俺をその場に押さえつけるために
取り囲んでいただけだった。
俺が全てを理解する前に、シャイアは俺の手の甲の肉が千切れんばかりにつねり上げ、
フローレンスさんが銀の小手で肩甲骨に穴が空きそうなぐらい肩を締め上げ、足の甲を貫通する
勢いでグリーブの鋭い踵が降ってきた。
激痛が走った。立っていられない。俺は力のかぎり叫んだ。が、音が出ない。
痛みでしゃがみたいのに妹さんが肩を引き寄せてしゃがませてくれない。
妹さんに支えられた肩から下は、壊れた操り人形みたいにぶら下がっているだけだ。
しまった、シャイアの鼻歌はブラフだ。妹さんがハミングに偽装したMONTINOを唱えていた。
「心配ない。傷あと、のこさない」
悶絶しそうな痛みがいきなり引いた。チビが入口に向かってスタスタ歩きながら
俺の方を見ずに言った。妹さんは素早く俺の肩を持ち、俺の耳に唇がふれんばかりにところで、
息を吹きかけるように呟いた。
「行くぞ。リーダーを待たせるな」
胃が溶け落ちたかもしれん。もうこの部屋から出たくない。
シャイアは俺に向かって指を立て、シーと音を出した。
「殺しゃしないよ。話があるんだ。逃げるなよ」
両脇をシャイアとフローレンスさんにがっちりと捕まえられて、俺はA Cotの廊下を歩いた。
いつも通りの陰気な雑踏が聞こえる。みんな視線を合わせないように俺を見ていた。
すれ違いざま、そっと様子をうかがった。音が出ないように拍手をしてるやつもいる。
笑って見せたたり、親指を立てるやつもいる。
そうじゃない、そうじゃないんだお前ら……助けて。 SS投下する人は16レスを超えるとスレッドに書き込めなくなります
こんな長文だからかもしれんけど気を付けて
>>101
ダフネ未履修なんで力になれなくてすんません
ところで石鹸エルフについてもう少しくわしく 鑑定士の人来てたああああ!!!
ちょっと最初から読み直してくる→→→