トップページフェチ
37コメント48KB
無敵無敗の格闘女王のまさかの惨敗に萌えるRound10
0001テイク2024/04/22(月) 17:47:13.24ID:npRvXF190
絶対に負けるはずないのに…!
格下相手に最強女子格闘家がまさかの大苦戦
屈辱的敗北を喫し惨めな姿を衆人に晒し
気高いプライドをズタズタにされるSSが大好きな人集まれ
強い美女がいたぶられるのが好きなリョナ趣味の方もどうぞ。

過去スレ
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1548739219/
0002テイク2024/04/22(月) 17:55:52.66ID:npRvXF190
「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」
主人公(格闘女王):蘭奈まゆみ(らんな まゆみ)

細々と投稿させていただきます。
0003テイク2024/04/22(月) 20:31:21.46ID:npRvXF190
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」001
「ふぅ。」
深いため息をつきながら黒川は、PCモニタに映しだされた配信チケット予約数のカウンター表示を見ていた。
会場チケットはファンクラブ枠、一般枠ともに、完売と表示されている。
一般枠の完売は開始1分程度で完売になり、そこからは配信チケット予約数も飛躍的にどんどんと上がっている。
ファンクラブ枠は恐ろしいほどの倍率で、当選者は一生に一度の奇跡とまでSNS等で騒がれた。

「受付開始5分で過去最高更新か・・・ふぅ。」
どんどん上がるカウンターを見て黒川は再度ため息をつくと、PCモニタを閉じて電話を掛けた。

「なぁ、何とか会場枠を増やせないか。追加特別枠として5倍の値段で出しても売れるんじゃないか。」
電話の相手は弱々しく歯切れの悪い回答をした。
「そ、そんなことを今さら言われましても……いくら黒川さんの頼みでもこれ以上は……今でも会場規約スレスレの目一杯なんです……グレーゾーンに近い形で、座席配置と立見エリアを用意してますので……」
チッ、と黒川は相手の回答を聞いて舌打ちすると、その後は何も言わずに電話を切った。

”まぁいい。たんまり稼がせてもらうからな。そしてあの生意気な女の鼻っ柱をへし折って、生き恥を晒してやる。俺に恥を欠かせたことを一生後悔させてやるからな”
そうつぶやくと黒川は、小太りな身体を重たそうにして立ち上がり、事務所を後にしていった。
0005テイク2024/04/28(日) 15:54:27.17ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」002
 乱立する女子プロレス団体の中で一強とも言える存在となった「マーメイドリーム」
 今や他団体もその知名度にあやかり、ブレイクさせたい所属レスラーを無償でマーメイドリームに出場させてもらい、認知を得ると言うPR活動を依頼されるくらいにまで大きな存在感となっている。

 その象徴的な存在――蘭奈まゆみ(らんな まゆみ)、25歳。
 100人いようが1,000人いようが全員がその名を真っ先に挙げるであろう女子プロレスラーである。
 
 空手道場の一人娘として育ち、小さなころから将来を有望視されたが、中学のときに両親が事故で亡くなり、その後も親族が詐欺まがいの方法で、道場や土地を奪われ、空手をやめている。
 その後は高身長を活かしたバレーボールを部活動で続けながら公立の進学校を卒業した。
 進学校のため、バレーボール部は少人数、試合に出場する場合はバレーボール経験者の助っ人に入ってもらう程で大きな大会には出れなかった。
 だが、その才能はプロリーグのスカウトには知れ渡っており、複数のスカウトから卒業後の進路としてプロにならないかと熱心に口説かれていた。
 しかし首を縦に振る事は一切なく、スカウトは全て断り国立大学の法学部へと進学した。

 ――運命の出逢いをしたのは大学2年のときだった。
0006テイク2024/04/28(日) 15:55:13.19ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」003
 設立間もないマーメイドリームの興行、空席もまばらにある小さな会場の観客席の中に、蘭奈は座っていた。
 最初から最後まで冷ややかな視線で試合を見つつ、興行が終わって他の観客が帰った後も蘭奈はその場から動かなかった。
 「すみません、試合は終わりましたので……」
 試合に出場していない団体Tシャツを着た練習生が声をかけた。
 「……」
 蘭奈の反応がないので、困ってもう一度同じ言葉をかけると、今度は返事があった。
 「プロレスはやった事がないんですが、マーメイドリームに入れますか」
 練習生は驚きのあまり今後は逆に自分が反応ができなくなってしまったようだ。
 「マーメイドリームに入れますか」
 蘭奈がもう一度同じ言葉をかけると、練習生は「……き、聞いてきますので、お、お待ちください。」と駆け足でその場を離れていった。
0007テイク2024/04/28(日) 16:49:18.71ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」004
 ”蘭奈まゆみ、無敵対決を制して真の格闘女王へ!”
 インターネットに特化したマスメディアで、特に格闘界隈で有名なスポーツマグネット社の見出し記事である。
 1年半前、蘭奈まゆみをプロレス界だけでなく、全国区の知名度、人気にした対戦結果であり、同時にマーメイドリームが完全な一強状態となるきっけとなった試合でもある。
 
 蘭奈まゆみはデビュー戦から連戦連勝、圧倒的な攻守のプロレス技術、ポテンシャルだけでなく、ビジュアルにも注目が集まった。
 艶やかな黒髪のショートカット、綺麗な雪白肌に加えて、高身長でバランスのついた筋肉質な肉体、情熱的ながらどこか冷めたような雰囲気のあるキリっとした大きな瞳。
 試合中はまるで背後にブルーの炎が燃えているかのようなミステリアスでもあり、幻想的でもあった。
 そしてなりよりも魅力的なものはクールな美貌である。
 ナチュラルな細長く綺麗な眉、試合中等に時折見せる白い歯、何もかもが見ているだけでひきこまれる魅力があった。

 しかし蘭奈は、ビジュアルのいいレスラーはメディアを最大限に利用してPRをはかるマーメイドリームの広報戦略には一切協力をしなかった。
 そのあまりの拒否姿勢に当初は難色を示していた上層部ではあったが、蘭奈人気が上昇すると、ミステリアスなところを売りに出来ると、方針を切り替えたようだった。
 「グッズ類の制作はお好きにしてください。ただ私はファンサービスするつもりは、ありませんので」
 デビュー時から蘭奈の主張は一貫していた。
0008テイク2024/04/28(日) 17:18:45.00ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」005
 そのような中、総合格闘技界で美女格闘家としてメディアを賑わせていた「伊織(いおり)」が蘭奈を小馬鹿にする発言をし始めた。

 伊織はビジュアル的な人気もあったが、総合格闘家としての強さも持ち合わせており、デビュー後10連勝と女子格闘技界のトップに君臨していた。
 蘭奈と異なりメディア露出には積極的で、TV出演やイベントも行うほか、写真集等も発売していた。
 ただし、自信過剰かつ相手を見下すキャラとして認知されており、当初は作られたキャラではないか?と疑う声もあったが、今では全くその声は聞こえない。
 「蘭奈さんですか?そりゃ意識しますよ。プロレスとはいえ無敵って言葉を私以外に使われるのは、あまり面白くないですからね」
 「私がプロレスをやっていたら蘭奈さんに勝ってると思いますよ。けど総合とプロレスじゃそもそもの強さのラインが違いますから。どっちが上?そりゃ総合ですよ」
 「ちょっと練習したら、プロレスでやっても勝てると思いますよ、蘭奈さんに」

 周囲はヒートアップを続け、ついには「伊織 VS 蘭奈まゆみ」が実現することになった。そしてまさかの総合格闘技ルールでの試合。
 総合格闘技ルールでのみ試合を受けるとした伊織側の主張に対し、蘭奈まゆみはあっさりと契約に署名したのが真実だが、この事実は伊織側が金で隠匿させた。
 世間的な認知は圧倒的に伊織であり、ましてや総合格闘技ルールとなれば、伊織の圧勝だろうと世間一般には思われていた。
0009テイク2024/04/28(日) 17:19:31.49ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」006
 珍しくキー局のTV放送も入る事となった注目を集める一戦、女子プロレス・女子格闘技ファンは生唾ものの一戦となったが結果は1分も経たずに呆気なく終了した。

 スポーツマグネット速報
 ”蘭奈まゆみ、無敵対決を制して真の格闘女王へ!”
 
  メインイベント:総合格闘技ルール夢のSP対決
 
   勝:蘭奈まゆみ ( 48秒、腕ひしぎ十字固め ) 負:伊織

   ※経過
    試合開始とともに蘭奈を睨みつけながら間合いを詰めてタックルを仕掛ける伊織だったが、蘭奈になんなくかわされ以降は防戦一方に。
    一瞬の隙を見逃さなかった蘭奈は、腕ひしぎ十字固めを完璧に決めて秒殺試合となった。

 この試合後、伊織はショックから休業扱いとなり、後にひっそりと引退した。
 蘭奈まゆみの総合格闘技本格参戦も期待されたが、試合後に蘭奈は「今回一度だけの約束で試合をしました。総合格闘技には興味がないです」とこれを否定した。
0010テイク2024/04/28(日) 18:22:29.00ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」007
 伊織との試合後、蘭奈まゆみはその強さと美しさ、そしてクールかつミステリアスさもあいまって全国的な人気を得る事になった。
 マーメイドリームの勢いも凄まじく、団体としても大きな黒字決算をたたき出し、メディアでは海外進出の噂の記事も出始めていた。

 そのような破竹の勢いで拡大を続けるマーメイドリームに半年前、大きな出来事が発生した。
 設立時の個人支援者であり長らくタニマチ的存在だった木戸が、昔の詐欺容疑で逮捕されたのだ。警察に密告があったようだった。
 現在の木戸は数年前から認知症をわずらっており、マーメイドリームとの縁も切れていた。
 捜査の手はマーメイドリームにも入ったが、詐欺容疑に加担したものはおらず、逮捕者は結局一人も出なかった。

 だが無害だった訳ではない。
 木戸は認知症の症状もあり供述は得られなかったが、数十枚の写真データが警察にわたっていた。
 それは木戸と、マーメイドリームの当時広報部長だった黒川、現役人気選手でもある「シルバーすみか」の練習生時代の3人が飲酒・喫煙していると思わしき内容だった。
 「シルバーすみか」は当時未成年であり、まるで水商売のような露出の高いドレスを着用しており木戸と嬉しそうに密着している写真もあった。
0011テイク2024/04/28(日) 18:24:08.82ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」008
 飲酒・喫煙はしていないとシルバーすみかが完全否定して、結局は嫌疑不十分のままで終わったが、役員にまで上り詰め、次期社長を狙っていた黒川はこの件で失墜した。
 役員は自主的退任扱いとさせられ、広報担当として、歩合制の業務委託契約となってしまったのだ。
 以前より強引なところもあったが、団体を拡大させた手腕だけは評価されていることもあり、マーメイドリームとしては黒川を完全に切る事ができなかった。

 シルバーすみかについては、無期限の出場停止処分となった。外部には体調不良によるものと発表した。
 ビジュアル面で劣る自負のあったすみかは、黒川の誘いに応じて木戸への接待行為をしていた。
 露出の高い服装を着て、せいぜい身体を触らせる程度までであったが、そこで興味本位に飲酒・喫煙をしたことから未成年ながら飲酒・喫煙にはまってしまっていた。
0012テイク2024/04/28(日) 18:25:47.15ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」009 
 ”あのじじい……くそっ”
 すみかは写真を撮ったことを酷く後悔した。記念に写真を撮りたいと言ったのは、すみか本人の申し出だった。
 木戸も黒川も相当に酔っていて、判断能力に欠けているから応じてくれると思った。
 
 木戸と懇意しておけば万が一にも切られることはない。いざとなればこの写真を使ってでも……そのような思いが、すみかにはあったのだ。
 撮影したデータは木戸や黒川にも渡さず、自宅にデータとして保管していた。
 しかし、いつの間にか紛失していた。紛失当時、思い当たるふしはなかった。自分の誤りだろうと確信していた。
 
 成人してからも、清純派イメージを守る為、飲酒・喫煙がバレないように、自宅には友人すら呼んでいない。
 ――自宅に呼び入れたのは、そうだ。練習生時代、自分が入団の接点を持てた事が嬉しくて、親しくなろうとした蘭奈まゆみくらいだ。
0013テイク2024/04/28(日) 19:08:03.08ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」010
 練習生として入団した、蘭奈まゆみの練習初日の動きを見た時の事をはっきりと覚えている。
 同じ練習生の自分から見ても溢れたぎる才能を感じた。おそらくこの子は自分の手の届く存在でなくなる、そう思った。
 そして女の自分から見ても、美しく綺麗だと思った。そして――

 「シルバーすみれ」と名付けられ、デビューが決まった時、思わず蘭奈に声をかけた。
 当時から特別な雰囲気をかもしだしていた蘭奈は、仲良くしていた選手は他にいないようだった。
 どうして蘭奈に声をかけたかはわからないが、上昇志向の強い自分と真逆にいるような蘭奈を見ていると不思議と一緒の時間を過ごしてみたいと感じていた。

 断られるかと思ったが、蘭奈は練習休日に自宅に来てくれた。休日に呼んだのは、練習後だと飲酒・喫煙がやめられないので自宅には招けなかったからだ。
 蘭奈が来る前夜は自宅を片付けて、酒と煙草は見つからないように隠した。
0014テイク2024/04/28(日) 19:24:58.93ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」011
 蘭奈とのテンションの違いは明らかだったが、すみれは何故か居心地が良かった。
 プロレス関係での友人はいない。周りも自分と同じく上昇志向の塊のように思えて、プライベートでは近づきたくもなかった。
 だが蘭奈は練習熱心かつ異次元の成長もしていたが、上昇志向は感じなかった。
 無言の時間が流れる事も多かったが、蘭奈と過ごした数時間は、デビューが決まり不安と緊張が増していたすみれによっては心休まる時間でもあった。

 正直、自分の事ばかり殆ど一方的に話して、次はないな、そう思っていた。
 少しでも興味を引いて欲しいと、接待の時とは隠したものの、うっかり木戸のスケベオヤジっぷりのエピソードも話してしまった。
 蘭奈は表情一つ変えずに聞いていたが、話した後に少しヒヤヒヤした。
 蘭奈といえども、自分が清純派としてデビューする以上、真逆のキャラを見せると揚げ足取りの材料に使われてしまいかねないと危惧したからだ。
0015テイク2024/04/28(日) 19:27:00.22ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」012
 意外な事に、蘭奈との他人以上、友人未満のような関係は続いた。蘭奈から誘われる事はなかったが、大きな一戦前に誘うと蘭奈は応じてくれた。
 相変わらず自分が一方的に話しているだけの関係は変わらなかったが。
 やがて少し気を許してしまい、煙草は隠したがお酒を飲んでいる事は告げて、蘭奈は飲まないが、自分はお酒を飲みながら話すようになった。
 滞在時間は毎回長くないので、多量飲酒しているとは思われないはずだ。
 
 そんな関係が何度か続いたが突然、蘭奈が誘いを断るようになった。特別、不思議な事ではなかった。
 いつそうなってもおかしくはない、最初からそう思っていたからだ。何度か断られた後、その理由を聞くこともなく、蘭奈を誘う事はなくなっていた。
 蘭奈との関係はそこで終わっていたと思っていた。
0016テイク2024/04/28(日) 19:44:57.62ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」013
 無期限の出場停止中、選手との接触は禁止された。
 おとなしくしていれば数ヶ月後には合同練習に復帰させ、半年先には復帰させてやる、そう言われた。
 
 やがて練習復帰が近付いたある日、突然その事実は団体内に知らされた。
 「蘭奈まゆみからの申し出により、年内を以て契約満了で退団、彼女はプロレスを引退する。明日、公式に発表するから、それまでは黙っておくように」
 しかし、その後に驚きの言葉が付け加えられた。
 「ただし、彼女の引退理由に心当たりがある者、または引き留められる自信のある者がいたら教えてくれ」
 どうやら独占所属的な1年契約を締結しており、契約満了を以て引退するようだが理由は把握できていないようだった。
 その場に蘭奈はいなかったが、周囲全員が驚きの表情を浮かべていた。
 蘭奈に憧れて入団してきた選手もおり、その衝撃は計り知れない。

 帰宅すると、思わず蘭奈に連絡をした。久しぶりの連絡だ。出ないだろう、そう思って何度かコールをすると、意外なことに蘭奈は通話に出た。
0017テイク2024/04/28(日) 20:35:48.70ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」014
 「……あっ、その……引退するって聞いて」
 自分で電話を掛けながら受電されると思わなかった為、言葉に詰まった。
 「……だから何」
 「え……いや……驚いたから」
 「正直、迷惑なの。もう電話しないでくれる。他に用事がないならこれで」
 地位は上ながら、年下のあまりの冷たい返答に、すみれの堪忍袋の緒が切れたかのように応戦した。
 「ちょ、ちょっと!何なのその口の利き方!こっちは心配して連絡したのわかんない?あぁ、前からわかんないよね、こういうの!」
 「……」
 「何とか言いなさいよ!」
 しばらくすると、蘭奈のクスクスとするような笑い声が聞こえた。
 「何がおかしいのよッ!蘭奈!」
 感情を抑えきれずそう叫んでいた。
 「ふふ、哀れな女」
 信じられないような言葉が蘭奈から出た。そしてまた蘭奈のクスクスとした笑い声が聞こえた。
0018テイク2024/04/28(日) 20:56:11.90ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」015
 「詐欺師に媚び売った挙句、酒と煙草に溺れて出場停止、言いザマね」
 「な!蘭奈、なんでその事を知って………………まさか!!」
 「フフッ、そう。多分想像してる通りの事を私はしたの。ありがとう、ってお礼を言わないといけないかもしれないわね」
 蘭奈はそう言うと、自分の事を話し始めた。
 
 ――復讐をしたのだと。
 金の事しか考えていなかった親族が騙された事に対しては何の感情もないが、そのせいで両親が守ってきた道場が潰された事は許しておけなかった。
 大学2年の時、通学路の途中にあったマーメイドリームの事務所から木戸が出てくるのを見かけ、親族を騙した男の顔にそっくりであり調べ始めたこと。
 やがて確信に変わり、弁護士になるつもりだったが大学を退学して迷いなくマーメイドリームに入団したこと。

 木戸、黒川、すみれの3人で会っている事に感づき、すみれに探りを入れるタイミングを見計らっていたら、すみれ側からのこのこと接触があったこと。
 そして、警察に密告したこと。
0019テイク2024/04/28(日) 21:12:00.52ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」016
 すみれは発狂して自分でも何を言っていたかは覚えていない。
 だが、データを持ち出した事については何度問いただしても、はぐらかされたのは覚えている。
 冷静に考えれば窃盗罪を自白する馬鹿はいないのだが、そこだけはどうして認めないのか電話中すみれは不思議で仕方なかった。

 「社長は引退理由は何も知らないって言ってた、ここまで私に話をしても言いわけ?全部ばらしてやる!」
 「そうね、話せば全部明るみに出るわね。お酒も煙草も、あッ、当時の事もね。ふふッ。私が何も計算せずに話しているとでも思ったの」
 「ぐぐ…………」
 「言っておくけど私はいつ明るみに出ても痛くも痒くもないわ。私の行動は正義そのもの。ふふッ、もっと人気が出てしまうかも。興味ないけど」
 もはや一方的な勝者の立場となった蘭奈の勝ち名乗りは続く。
 「私はもう一度、大学に入って弁護士になるわ。プロレスなんてお遊び、もうこりごりなの、引退の日が待ち遠しい」
 「…………」
 すみれは何も言えない。
 「もういいわよね、言いたければいつでもどうぞ。受けて立つわ。言った通り、私は正義、悪はあなた……ふふッ。最後にもう一度言うわ、本当哀れな女ね」
 蘭奈のクスクス笑いが聞こえる中、一方的にすみれは電話を切られた。怒りと惨めさが全身に駆け巡る中、すみれはその場で耐えるしかなかった。
0020テイク2024/04/28(日) 21:27:06.83ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」017
 蘭奈の突然の引退ニュースは衝撃を与えた。同時に、蘭奈関連のグッズの売上は急増し、蘭奈が出場する試合の会場チケットは一層入手困難となっていた。
 もちろん連戦連勝で無敗記録も継続。圧倒的な強さだった。

 一方、合同練習に復帰したすみれだったが、完全に精彩を欠いており、復帰日の目途が立たない状態となっていた。
 年内復帰を目指していただけに焦りは相当なものが周囲からも見て取れた。
 
 そして、注目を集めていた蘭奈の大晦日引退興行マッチメイクが、マーメイドリームの生配信で発表されていった。
 「えー、まず第一試合ですが、ボンバー馬子VS……蘭奈まゆみ。もう一度言いますね、ボンバー馬子VS蘭奈まゆみ、です」
 第一試合からの蘭奈登場に、視聴者は衝撃を受けた。
0021テイク2024/04/28(日) 21:51:59.42ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」018
 「この日が引退の蘭奈まゆみですが、第一試合が最後の試合になるかは当日までわかりません。4選手によるトーナメント形式での試合になります」
 生配信で説明があったのは、マーメイドリーム最強シングル王者である蘭奈のベルトを争うトーナメントを行うという。
 優勝者が新王者となるが、蘭奈が優勝した場合は防衛成功、かつその場で返上となり、準優勝者が暫定王者になるというもの。
 第一試合はその1回戦にあたる為、蘭奈が勝てばメインイベントで決勝戦に出るが、負けるようなことがあれば、その試合が引退試合となる。

 「続いて第二試合ですが、こちらもトーナメント1回戦でして、この日が復帰戦となる、シルバーすみれVS……」
 すみれはその瞬間、全身が固まった。大晦日で復帰は聞かされていたが、試合ができそうもなければ代替できるようにすると言われていたからだ。
 トーナメント、ましてや引退日の蘭奈が参加するものとなれば安易に出場を取りやめる事は出来ない。
 「対戦相手は、先月デビュー致しました、ブルドッグ松尾です……まだ勝利がなく、色々とご意見はあるかと思いますが、会場を笑いの渦にすると意気込んでおります」
0022テイク2024/04/28(日) 22:01:50.26ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」019
 ――ブルドッグ松尾、名前の通りブルドッグ顔の遅咲きレスラー。年齢不詳ながら30代後半と思える風貌のお笑い系おばさんレスラーだ。
 体格だけはいいが動きは鈍く、毎回お笑い試合を繰り広げる。相手の得意技をしようとして失敗、自爆してスリーカウント負けを喫するのがお馴染みとなっていた。
 いまだに勝利したことはなく、シングル、タッグともに出場した試合は全てブルドッグ松尾がスリーカウント負けを取られていた。
 ここまでお笑いに徹した所属レスラーはいなかった為、好感度はそこそこ高く「ブル松」の愛称で親しまれていた。
 ただし目当ては他の選手でおまけ程度の人気である為、それを証明するかのようにグッズ類は全くと言っていいほど売れていなかった。
 
 トーナメント参加者の難航は続いた。本当はメイン1戦としたかったものの、相応しい相手が見つからなかったのだ。
 当初、海外進出で提携寸前まで話が進んでいるWGP(海外大手のワールドガールズプロレス)から紹介された2名が出場予定だった。
 第二試合では両者を戦わせる事で、WGPの魅力をPRする狙いもあった。
 だが、蘭奈の試合ビデオを視聴した途端、2名ともに出場拒否の申し出があり、正式な契約を結んでいなかった事もあり、WGP側からも正式な断りが入ってしまったのだ。
0023テイク2024/04/28(日) 22:09:09.20ID:j+p1EOWQ0
失礼しました。
「シルバーすみか」ではなく、「シルバーすみれ」です。
0024テイク2024/04/28(日) 22:23:14.18ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」020
 今後の海外進出の事を考えるとマーメイドリーム側としても引き下がらざるを得ず、マッチメイク発表日も公表した以上、急ぎで模索するしかなかった。
 団体看板の蘭奈が引退する以上、このタイミングでライバル団体にベルト流出は絶対に避けなければならず、所属レスラーから選別となった。

 だが、殆どの選手は試合決定を通知、契約を行っており蘭奈と戦う選手はいなかった。
 蘭奈に憧れていた選手は”戦いたい”よりも”見ていたい”であり、実力選手に限っては、あっけなく敗れて咬ませ犬程度の扱いになる事がわかっていたからだ。
 
 蘭奈の足元にも及ばないながら、実力ナンバー2のヒールレスラー、ボンバー馬子は、最後は絶対に倒すと息巻いており、第一試合から動かせない。
 となると第一試合に勝った蘭奈の決勝の相手は、それ以下の選手にならざるを得ない。

 広報の黒川を頼らざるを得なくなり、思い切った決断をした。
 と言うよりも、黒川の提案に反対して、万が一の責任を負う覚悟のある経営陣が誰もいなかった。
 「思い切り笑いに走る選手と、話題づくりの復帰選手を戦わせて、勝った方と最後にやらせればいい」

 シルバーすみれが万全の状態であれば勝利確実なものの、戦える状態に戻らず惨敗しても、それはそれでブルドッグ松尾の初勝利で話題になる。
 勝者をとても決勝に出せない酷い試合をした場合は、棄権扱いで代わりにボンバー馬子をもう一度決勝に出せばいい、と自信満々だった。
0025テイク2024/04/28(日) 22:34:58.20ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」021
 マッチメークの発表は続き、いよいよ最後となった。
 「えー、続いてメインですが、先程説明しました通り、トーナメント1回戦の勝者同士の決勝戦となります」
 その後は引退グッズの販売等も含めた当日詳細の説明があったが、最後は歯切れが悪かった。
 「……蘭奈まゆみの引退セレモニーについてはですね、そのぉ……予定はございません……本日発表した詳細につきましてはHPをご覧ください」
 ご清聴ありがとうございましたと頭を下げて、生配信は終了した。質問等で埋め尽くされた視聴者からのコメントには一切回答する事はなかった。

 すみれにトーナメントでの復帰戦が通達されたのは、翌日の事だった。怒りで震えが止まらなかったが、弱みを握られた身としは反論する余地はなかった。
 木戸は団体との縁はなく今や犯罪者、黒川も団体と繋がりがあるとは言え、役員から既に失脚している。どうにもならないと思った。
 だが、まさか自分のトーナメント参加を黒川が提案していたとは、この時すみれは思ってもみなかった。
0026テイク2024/04/28(日) 22:51:23.03ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」022
 蘭奈まゆみから引退の申し出があった後、経営陣は必須に説得をした。
 あまりにも予兆のない事であり、経営陣は皆、どんな条件でもいいから撤回してもらい、せめて1年でもいいから引き延ばすよう頼み込んだ。
 しかし蘭奈の態度は、それまでのクールさ、ミステリアスさがどこに行ってしまったのかと思う程、そこから急変した。
 「もうこの件で時間を取られるのはごめんです。時間の無駄なので。私は契約を厳守した上で、正当な手続きに沿って引退を申し出ています」
 いくら頼んでも理由は言わず、契約条件の大幅上積み、最後は白紙に好きな条件を書いて欲しいとまで言ったが、拒否をされた。
 「私にはもう、プロレスを続ける意味がありません。意味のない事を今年一杯は続けようとしているんです。この心苦労を察してくれませんか」
 簡単には引き下がれず、挙句には経営陣が揃って土下座するまでして粘っていたが、最後は留めの一撃が待っていた。

 「じゃあ、今ここで私とプロレスをしましょうか。全員束になってどうぞ。私がギブアップしたら1年だろうと2年だろうと契約してもいいわよ」
 蘭奈が本気で言っているのはわかったが、下げた頭を誰も上げようとしなかった。
 結局、蘭奈が要した合意満了の書類にその場で署名させられ、引退が決定した。
0027テイク2024/04/28(日) 23:06:21.04ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」023
 合意満了の署名をさせられた後、せめて引退後の後継者指名を考えて欲しいと、経営陣の一人が蘭奈に問いかけた。
 「私で散々稼いだんでしょ。引退した後のことなんて、どうでもいいの。本当はもうどうでもよくなってるけど、契約期間中はちゃんとプロレスラーでいてあげます」

 その後、経営陣は引退興行について検討が繰り返された。
 突然の申し出であり、大晦日に大きな会場を抑える事はできなかった。それでも何とか配信可能な中規模会場を巨額の資金で抑えた。
 だが、その後は停滞した。広報担当とは言え経営陣からの信用は薄い黒川への相談は、反対者多数により詳細が決まるまで内密にする事にした。
 しかしWGPから選手出場を断りの連絡を受けると経営陣全員が弱腰となり、黒川を頼らざる得なくなった。

 待っていたと言わんばかり、一報を受けた黒川は経営会議に乗り込み、プランを発表した。
 そして、全責任を負う覚悟で挑むだの、絶対に成功させてみせるだのと、経営陣が避けた用語を連発して、引退興行だけの特別契約を締結する事に至った。
0028テイク2024/04/28(日) 23:22:45.62ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」024
 黒川との特別契約は、責任を負うことを恐れた経営陣にとって渡りに船のような条件だった。
 マッチメークへの最終決定は経営陣としながらも、全試合の提案を出せる。
 万が一にも引退興行単独での損失が発生した場合、その損失全額を黒川の個人事務所が負う。
 そして配信チケットは何故か3種類販売するとした。
 一つは当日の生配信。ただしこれには見逃し配信は付帯しない。
 もう一つは生配信を録画した再配信。最後は蘭奈まゆみにフォーカスしたカメラで撮った試合を後日、特別編集した特別配信。
 同様のDVD、ブルーレイの発売も行うとした。

 黒川は固定報酬や、引退興行単独の採算で出た利益は一切いらないとして、「再配信、特別配信、DVD,ブルーレイ」の販売数のみ高い歩合をつける契約をした。
 また、当日の会場チケットが売れ残った場合は全て個人事務所で買い取る旨の契約もした。

 (引退とは、神様の贈り物だな。俺の実力を見せつけて莫大な利益をもたらせてやるぜマーメイドリームさん。もちろん俺にもな。そうすれば……)
 自分の存在感を見せつける事で、もう一度役員に返り咲き、トップに立とうと目論んでいた。

 黒川が立てた悪しき引退興行計画の終着点――それは勿論、無敵無敗の女王、蘭奈まゆみの人生を棒に振らせるような屈辱的大惨敗である。
0029テイク2024/04/28(日) 23:47:08.40ID:j+p1EOWQ0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」025
 ――12月31日、大晦日。
 結局、連戦連勝を続けた蘭奈まゆみは無敗のまま引退当日を迎える事になった。

 立見席エリアも含めて全席指定とした為、入場列の大きな混乱はない。
 だが会場外に設置したグッズ売場には会場チケット落選も含めたファンが朝から大勢押し寄せて絶え間ない行列が続いている。
 蘭奈まゆみ関連については限定グッズ中心に高額設定したグッズでも、どんどん完売していった。

 会場内は独特の雰囲気にのまれていた。
 これまでの興行は男性ファンが中心だったが、今回の中堅規模の会場にはとりわけ女性が多く、全体比率も4割は女性だった。
 全体的に若い男女が多く、ペアチケットは会場の関係で用意しなかった事もあり、周囲と会話している感じもない。
 蘭奈まゆみに憧れる女性ファンは多数いたが、ここまで女性比率が高くなる女子プロレス会場は珍しい。

 もちろん、抽選は表向きで、黒川が当選者を操作したのは言うまでもない。女性当選者を多くした事も、若年層を多くした事も、計画の一つだ。
 だが、当選して会場に足を運べたファンたちは、そこに違和感を感じる様子もなく、試合開始をひたすらに待ち続けている。
0030テイク2024/04/28(日) 23:49:58.46ID:j+p1EOWQ0
ナンバリングが000の3桁になっていますが当方のミスで、当然ながら2桁で完結致します。
0031テイク2024/04/29(月) 18:05:23.45ID:ewJ42MHn0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」026
 第一試合を控えた蘭奈がトイレから控室に戻る途中、練習生になったばかりの若手とすれ違った。
 「あ、あの、蘭奈先輩、いつものお水を控室に置いておきました」
 蘭奈は試合直前、取寄限定で販売しているミネラルウォーターを飲むのが日課となっている。
 デビュー時代は自分で用意していたが、脚光を浴びてからは団体側でまとめて発注して、試合直前に控室に若手が持ってくるようになった。
 「私、蘭奈先輩に憧れて入門したんです。引退は残念ですが、今日は絶対に優勝してくださいッ、応援しています」
 「ありがとう。それじゃあね」
 蘭奈は練習生の方向を見ずに声だけ掛けると、スタスタと控室の方に歩いて行ってしまった。
 (はぁ、憧れとかバカみたいね。プロレスなんてとっとと辞めて、もっとまっとうな世界で働いたらって言いたいわ)
 気だるく控室に歩いていくと、今度はシルバーすみれとすれ違った。第二試合で出場するすみれは入場口が同じ為、控室が同じ側だった。
 蘭奈は無視して、と言うかすみれの存在すらないかの如く平然とすれ違った。
 「引退する日だってのに随分余裕ね」
 すれ違ったすみれが振り返って蘭奈に声を掛けた。蘭奈は立ち止まる気配なくスタスタと歩いて行く。
 「第一試合で引退しない事を祈ってるわ」
 すみれは蘭奈の背中を見ながらそう言うと、薄気味悪く口元をゆるませ微笑んだ。
0032テイク2024/04/29(月) 18:36:34.05ID:ewJ42MHn0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」027
 控室に戻った蘭奈は時計を見てから、テーブルに置いてあるミネラルウォーターを開けてゴクゴクと半分程一気に飲んだ。
 (最後くらい、本気を出して2試合とも秒殺で終わらせるのも面白いかもしれないわね。今まで我慢していたけど)
 蘭奈のあまりの強さに、マーメイドリーム側から秒殺試合はストップを掛けられていた。いわゆる、数分は見せるプロレスをしろとの指示だった。
 従う気など当初なかったが、情報を得るために経営陣と露骨に対立する事は避けたいと割り切ってその点は受け入れていた。
 目的を果たした後、受け入れる理由はなくなったはずだが、必至になって向かってくる対戦相手に手を抜いても圧勝できる環境に、快悦を少し感じるようになった。
 無論、プロレスなどつまらないし興味すらなく続けていたものだが、自分より格下の対戦相手をおもちゃのように扱えると感じると、いい気晴らしにもなった。
 ”今日は2分くらいやろうからしら”、”今日は5分くらい相手してあげてもいいかも”、”だるいから2分ね”
 自分の気分で試合時間をコントロールしていた。ただ、むきになって向かってくる相手や、生意気な態度を自分に取って来る相手は短時間で終わらせた。
 特にプライドが許さなかった相手は伊織である。 挑発の連続に我慢の限界となり、プライドが許さなかった。
 総合格闘技ルールではあったが、秒殺で終わらせた。
 ギブアップを奪っても折れるまで続けるか、ボコボコにしてやりたかったが、そこは押さえた。
 「次はプロレスでやりましょ。ふふッ」
 技を解いた直後、周囲に聞かれないようにそっと伊織に耳打ちした。
 聞こえていたかはわからないが、伊織の表情が恐怖で怯えていたのを見ると、楽しくて仕方なかった。
0033テイク2024/04/29(月) 19:14:20.09ID:ewJ42MHn0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」028
 並々ならぬ闘志を燃やすボンバー馬子は、控室でヒール軍団メンバーに作戦を告げていた。
 「いいか、合図するまで絶対乱入はするなよ!場外でも手出しは一切無用だ!」
 あくまでも最初は真剣勝負で蘭奈と戦うと言う。
 「けど合図したら試合中でも一気にリングに上がって奴をボコボコにしろ!絶対に決勝にはいかすな!最後の相手はこのボンバー馬子にするんだ!」
 「わ、わかりました!けど、反則負けでもいいんですか」
 「構わねぇ、その代わり奴が決勝に出れないようにボコボコにしろ!」

 そんな会話を、馬子側の控室にいた黒川は聞いていたが、控室を出ると今度は別の控室へと入っていった。
0034テイク2024/04/29(月) 19:15:57.42ID:ewJ42MHn0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」029
 ――試合時間が近付くにつれ、待ちきれないように会場内は割れんばかりの蘭奈コールが起こっていた。
 誰かが「蘭奈!!」と叫ぶとまた誰かが「蘭奈!!」と叫び、それはやがて自然にコールとなって鳴り響いては次第にコールが止まる。
 このような状況が繰り返されていた。

 一方、第二試合に出場するシルバーすみれは、控室で極度の緊張で震えていた。
 結局、万全の状態には戻らず実戦は久々、どこまで出来るか自分でもわからなかった。
 ましてやブルドッグ松尾に真剣勝負のような試合をして、万が一にも負けるとなれば、レスラー人生の終わりにもなりかねない。
 勝機の隙を見せたらお笑いキャラのブルドッグ松尾とは言え、必至になって初勝利を狙いにくるのではないか。
 それに対して自分は反撃できるのか、そのような不安が渦巻く。

 トントン、とドアがノックされ、扉を開けると黒川がいた。
 「よう、久しぶりだな。その様子じゃ不安で仕方ないみたいだな」
 「か、関係ないでしょ。今は一人にして」
 「おいおい、試合から逃げたいお前さんに助け舟を出してやろうと言うんだ」
 「助け舟?棄権なんてもうできる訳ないでしょ」
 「棄権?何を言ってるんだ。まぁ俺の話を聞け。乗るかどうかはお前に任せる。まぁ、乗らない選択肢がお前にできると思わないが、な」
 そう笑みを浮かべると、小太りな身体を重たそうにして黒川は控室の中に入っていった。
0035テイク2024/04/29(月) 19:37:03.84ID:ewJ42MHn0
★「無敵無敗の格闘女王は雨のリングにいる」030
 すみれの控室を出ようとした黒川が、思い出したように最後に聞いた。
 「そうだ、お前、余計なことはしてないよな」
 「……………………」
 「おい、何をした!」
 黒川の表情に焦りの色が浮かんだ。
 「実は………………」
 すみれは意を決したように、自分がした事を黒川に伝えた。

 ――会場内は割れんばかりの蘭奈コールが鳴り響いている。今度は止まる事のないコールだ。
 いよいよ第一試合の開始時間となり、選手入場が始まる。
 最初に入場するのはヒール軍団のボス、ボンバー馬子だ。軍団を引き連れて、いつもの黒のコスチュームで花道を歩く。

 ほんの一部だが、馬子コールは上がっているものの完全に蘭奈コールにかき消されていた。
 馬子がリングに上がると、ついに無敵無敗の女王、マーメイドリーム最強シングル王者、蘭奈まゆみの入場が始まった。
0036名無しさん@ピンキー2024/04/30(火) 22:33:10.93ID:qejheGo90
需要なしw
0037テイク2024/05/04(土) 17:19:59.48ID:KOfWh57o0
己の無力を猛省しております。
レスを投稿する


ニューススポーツなんでも実況