事務所に戻った俺は、次の作業にとりかかった。
店のホームページを作るんだ。
デリヘルだから、店に看板を掲げるわけには行かないし、風俗案内所も無い。
ホームページでの集客が命だった。

届け出を出す際に、書類に電話番号とHPのURLを記載する必要があったので、
URLはあらかじめ取得済みだった。

ゴローに届け出が受理されたことと、ホームページを作ってることを報告すると、
ゴローは、「HPなんかより公衆電話にビラを貼ったほうが効果あるんじゃないですか」と言ってきた。

公衆電話自体が今の時代には珍しいものになってしまったが、当時は電話ボックスがあちこちにあって、ホテトルの名刺サイズのビラがべたべた貼ってあるものだった。

当然それは違法行為だったけど、なるほど、ゴローはそれをやるつもりで、届け出は必要ないって言ってたんだ。
たしかに最初から違法行為をやること前提だったら、届け出は出さないほうが無難だ。

だけどもう俺の計画はスタートしてしまっている。後戻りはできない。
結果さえ出せばゴローも文句は言わなくなるだろう。

誰もいない事務所の畳の上にあぐらをかいて、もくもくとPCに向かった。
静かすぎて逆に集中が難しい。固定電話は引いてあるが、当然電話なんか鳴らない。

でも、飛んできた歌舞伎町の店に居たときから、HTMLの勉強をしていたから、今回もホームページの土台は、割とすぐ完成した。

基礎はホームページビルダーと言うソフトを使ったが、ほとんどは直接俺がコーディングをした。
もちろん、ネット全盛の2017年現在から見たら、恥ずかしくなるレベルのものだけど、当時としては決して他に見劣りはしないものを作ったつもりだ。

なんとか土台は出来たものの、風俗店のHPとしては一番肝心なものが欠けている。

女がいないんだ。