(深く眠ったのか、浅く眠ったのか
人の気配と僅かな物音に、弾かれるように意識が覚醒する。
白く極上に柔らかいムートンから頬を離すと、体を起こそうとするが)

…っつ…

(身体のあちこちに筋肉痛のような痛みが走る)
(ようやく、手で床を押しながら上体だけを起こすと、ガラステーブルに瀬戸を見つける)
(その男はワイングラスをたゆたわせながら、ただ無言でこちらを見下ろしている
その表情からは、やはり何の感情も読み取る事が、出来ない)

…シャワー、浴びてきます

(そう言って、あの路地裏から帰ったままの姿。コートに下着とボロボロのストッキングのままでいる事に気づき、ゆっくりと起き上がる)