やっぱりいない…よね…?
(わずかな希望を託し窓から室内をのぞき見て目的の人物の不在を知ると)
(仕方ないかと愛車から荷物を取り出して部屋へ入り、荷をおろす)

(花屋で生花とにらめっこし、店主を長時間拘束して選んだ)
(薔薇を中心に深紅や白などクラシックな色あいの季節の花を籠にまとめ)
(周囲を彼の瞳に似た紫の紙で包装したフラワーアレンジメント)

(リボンをかけた四角い箱の中には)
(古くからある革製品専門店の定番商品で、使うほど柔らかく手に馴染むと評判のブックカバー)

(用意したメッセージカードには既に Tanti auguri di Buon compleanno!と印刷してあり )
(頭にローデリヒさんへ、最下部にフェリシアーノ・ロヴィーノと書き添え)
(カードの真ん中にぽっかりあいた空間へとペン先を運んで)
えぇっと……「ローデリヒさんもローデリヒさんのピアノも大好きです。
本当は会ってお祝いしたかったけど、サプライズってことでゆるしてください。
兄ちゃんは直接カード書くのは恥ずかしいみたいだから、俺から二人分のおめでとうを送るね!
あっ、プレゼントは俺たち二人からってことで。
イ.タ.リ.アの革製品は最高だから使ってね!」
……これでいいのかな。そうっ、大事なのは気持ちだよね!
(ぶつぶつと呟きながら思いつく端から書いたため)
(きれいとは言い難い字で、脈絡のない文章、途中から口語になってしまい)
(彼の好きな上品さとは噛み合わない気がしてもう一度文章を読み返すが)
(ちいさなカードに端的に自分の気持ちを書けていると開きなおり)

(入り口からでもローデリヒにきづいてもらえるよう)
(プレゼントをテーブルの中央に置き、メッセージカードを添え帰宅した)

【なんとか今日中に来れたー!】
【ローデリヒさん誕生日おめでとう!】
【一言落ち!】