ううん、もうちょっと……。
(司令官がこちらを盗み見ては視線を戻し、また横目を向けてと繰り返し)
(さらにズボンまで膨らませているのを見つけると、思わず笑いそうになり)
(堪えるのに苦労しながら、高い段にある本を取るべく爪先立ちをする)
(伸び上ってから踵を急に下ろすと、一際大きくスカートが浮き上がって)
(もしかしたら、ほんの一瞬だけは下着も見えてしまったかもしれない)
見つかった。司令官、一緒に覗いてくれませんか?
あとはレポートを書く前に、航路を確かめたいの。
(そして視覚に関する言葉を散りばめながら台からも降りて)
(何も知らない振りをしながら司令官の隣へ立つと、海図を広げ)
(同じ本を二人で見たいから、と理由を付けてぴたりと密着した)
(机の下にある物を隠さなければいけない彼が立てないのを良い事に)
(そのままもたれかかって、艶自慢の長い髪を流し甘い匂いを嗅がせる)
まず南東に向かってから、奥に。
そう奥へ奥へ進んで行ったのだけれど――。
(そしてページを白い手で捲り、細い人差し指で航路を再現する時も)
(わざとくすぐるような手付きを意識して、つーいつーいと紙をなぞり)
(同時に、司令官の耳へ甘ったるい声をたっぷり流し込んで挑発した)
(腰かけたままの相手の真横で、中腰になりながら説明をしているので)
(彼がその気になれば、すぐ近くで曲がった腰の先にあるお尻にも)
(腋の下から見え隠れする胸にも、手が届く位置を長く長くキープし)
(既に苦しそうだった下半身を散々焦らしてから、急に顔を上げて)
司令官、どうしたの。顔がとっても赤い。
お熱でも出しちゃいました……?
(初めて気付いた、なんて表情を作りながらひょいと距離を詰めた)
(そのまま額と額を合わせると、目を瞑ったまま熱を測る演技をして)
(心配する素振りを見せつつ耐える時間をさらにさらに長引かせ)
……それとも。大好きな駆逐艦にくっつかれて、照れてます?
(動揺させて言い訳する余裕を削ると、不意を突いて横へずれ)
(耳元をふう、と一吹きすると意味深な笑い声を聞かせる)
(同時に海図をなぞっていたのと同じ手付きで、頬を撫で)
(するり、と広げた掌で首筋を攻めるとにまりと目を細めた)
さっきからずっと、気付いてましたよ。
如月の体と破れかけの服を見ていたコ・ト♪
(寡黙で通していた司令官がどんな誤魔化し方をするのか期待しつつ)
(無視だけはさせないように、そのまま細腕を首に絡めて動きを封じる)
(そっぽを向けないようにするとちう、と頬を短く吸って笑ってみせた)
【ふぅん……くす、くす】