>>23
(幼馴染み……というよりはまるで弟のような存在だった彼が、あの再会の日以来、どんどん華澄の中でその比重を大きくしていた。)
(私と彼は教師と生徒、公私の区別はつけなければと何度自分に言い聞かせても燃え上がった情念に歯止めはきかなかった。)
(夏の終わりに遂に肌を重ね、綺麗な体を捧げた。)
(その後はもう転がるように情愛に落ち、幾度となく体の付き合いを重ねていた。)

(しかし季節はもうすぐ卒業間近……。)
(長く人目を忍んできたこの恋も、ようやく後ろめたさから解放される。)
(幸い今のところ誰にも気付かれている様子はない。)
(浮ついた気持ちになりそうなところをきっと引き締め、大雪の中を帰宅準備に入る華澄だが、悪夢のような手紙、そして写真が
その全てを粉々に砕こうとしていた……。)

こ、これ……。
(秀麗な美貌がにわかに青ざめ、唇がわなわなと震える。)
(あまりのショックに写真を落としそうになり、慌てて隠すように胸元に抱え込む。)

(嘘……こんなこと……。)
(嘘だと思いたくてもその写真の被写体の女性が華澄であることは明らかだった。)
(視界がグラグラと揺れ、膝がガクガクと震え始める。)
(華澄に選択肢はない。)
(さっと手紙と写真を鞄に忍ばせ、周りの目を憚るように指定された教室へと向かう。)

…………。
(冗談か何かであってほしい、一縷の望みをかけて震える手で扉を開ける。)
(そこには同僚の教師が生け贄の女教師を待ちかまえていた……。)

小野……寺先生……。