>>801
(時を埋めるように、一筋の隙間も無くすように。ただひたすら、縋り付くように抱きしめ合っていた)
(体温や感触、そして存在。相手の全てを求め続けていた事を、吐息で、腕で、頬で、全身で告げるような抱擁)
…………はい。もう、…………決して、…………離しませんからね。
(背を抱く腕にぐ、と一際力を込めると、低い声で一言一句確かめるようにゆっくりと口にする)
(一度は解放されたはずの小鳥は、再び鳥かごへと舞い戻り――――甘い束縛の錠が今、再び下ろされた)

分かっていますよ。貴女の事は…………貴女の思いはちゃんと、分かっていますよ。
はっきりと明言はされなくても、ちゃんと――――分かっているんですよ。
手紙ではいつも明るく振る舞ってくださっていても…………実際は心細い思いをしていた事だって、分かっているんです。
…………終わらせた方がいいのだろうかと思った日もありました。
でも――――出来なかった。結局、俺が貴女との繋がりを絶てなかった。貴女の手紙が…………いつも、嬉しかったから。
…………たくさん、たくさん我慢させてしまいましたね。
(そんな人が零した小さな一言。恋しさゆえに泣いてしまいそうだ、と――――その一文に、俺は心を掴まれたのだ)
主の涙を拭うのは俺の役目です。この俺に…………いくらでも、貴女の心を見せてください。
(泣き止もうとしているのだろう。時折引き付けるように動く少女を抱き留めたまま、静かにその背を撫で続けていると)

っ、……………………。
(不意に与えられた熱い感触。控えめに、くすぐるように柔らかく――――彼女の唇が頬に触れている)
(嗚咽混じりの声が聞こえれば、眉根を寄せて頷いて。距離は開けないままに顔の角度をずらし、額同士が触れた)
…………俺も、貴女が好きです。
好きです。大好きです、主。この世界で、貴女の事が…………誰よりも、何よりも大切です。
(もう決して一人にはしないと、言葉だけでなく行動で告げるように。きつく、きつくその身体をかき抱いたまま)
――――滴。俺は…………貴女だけを…………愛しています。
(少女の瞳を真っ直ぐに射抜きながら低い声で囁いて。桜の色を灯して震える唇を、己の唇でそっと、塞いだ――――……)


【…………大変、お待たせいたしました…………!】
【言いたい事を言えて(もっと言いますが)俺は安堵しておりますが、お待たせして申し訳ございません】
【この後【】に軽くお返事をしてから落ちますので、主は気にせず一言で眠ってくださって大丈夫ですよ】
【延長してまで一緒にいてくださって、本当にありがとうございました】