>>361
その男はエリカが乗り込むよりも前に電車に乗っていた。
ゲームショップの手提げ袋を片手に持ち、横長のシートの中央に腰掛けて反対の手でスマホで弄って。
特に目立つ風貌ではなく、電気街帰りのよくいる男性といった容姿である。

電車に乗り込んできた少女が車中の人々の視線を集めた時には、同じように顔を上げ視線を向けていた。
エリカが普段のテリトリーとは違う場所を訪れたことは無論知らない。
名前も年齢も知らないまま、その姿を見て、一目で惹かれた。
少女が自分の方へと歩いてきた時には自然と鼓動が早くなるのを感じる。
そして少女がシートの中央、つまりは自分の真向かいに腰掛けた時には、信じてもいない神に感謝を捧げたくなった。
男の両隣には誰も座っておらず、シートの両端に座る人までの間はガラ空き状態。
ある程度人のいる電車で信じ難いが、少女を前から鑑賞できるポジションは男一人の独占状態と言えた。
車中の他の位置にいる人々から羨望と恨みの混じった視線を向けられるほど絶好の環境である。
男は遊んでいたゲームアプリを迷わず終了し、スマホを弄っているフリだけしながら。
早速、少女を盗み見るようにして鑑賞し始めた。

(コートの上からでも大きいのはわかる。金髪碧眼に白い肌……やっぱ外国人か?
ゲームなんかで見る外人より……リアルの方がよっぽど綺麗だな。圧倒されるというか。
脚もスラっとしてて綺麗だし。……というか、長過ぎないか?)

少女の顔からコート、そして脚まで見ていくに連れ次第に夢中になっていき。
見ているのがハッキリとバレてしまいそうな程、熱の籠もった視線を送り付けてしまう。
そして、ふと男の脳裏にはある疑問が浮かび上がってきた。
コートから伸びる剥き出しの脚の長さが、どうにも気になるのだ。
防寒装備を身に纏っている割に、脚部に関してはあまりにも無防備過ぎる気がして。
それがお洒落な服を着ているからなのだとすれば納得だし、同時にその服を見てみたくもある。
或いは他の可能性、何か特別な服装というパターンもあるだろうか。
未だ男の想像は始まったばかりだが、徐々にこの可能性に関する思考が脳裏に広がっていく。
同時に、その視線には『コートの下を見てみたい』という少女に対する訴えに近い欲求が混じり始めていた。

【少しオタクなお兄様パターンで絡ませて貰うよ】
【待機レスのシチュに惹かれたから打ち合わせも無しにそのまま絡んだけど】
【打ち合わせしてからの方がよければ、改めてという形にするから、そう言ってくれれば】