>>297
【遅くなりました。すいません】

(リセナの言っている意味が、半分も分からなかったのも無理はない)
(王族であるローザは、市井の公開処刑見物になぞ行ったことは一度もない)
(将軍として、処刑に立ち会ったことはあるが、彼女の前で執行されるのは全て『お上品』な斬首刑であった)
(絞首刑やらガロットやらといった、下賎の者の悪趣味な処刑などは、見たことがなかったのだ)
(そういうわけで、自らのつい先の未来に関しては今のところ、恐怖はともかく、恥辱や屈辱は感じてはいなかった……それは無知なるが故なのだが)
(そして、そんなことよりも、彼女がリセナの言葉で聞き流せなかったのは……)

私の側仕え……ま、まさか、エルティナ?エルティナに何かしたのですかっ!?
(その詰問の声を無視するかのようにして、悪趣味な名前をつけた機械椅子に拘束されようとする)

私の誇りを搾り取る『ワイン絞り…』ですって?くだらない趣向ですわね
(リセナの言葉に、胸底に沸き起こる動揺は完璧に隠して、処刑椅子を睨み付けるように見て、毅然とした口調で言い放つ)
こんな悪趣味な玩具にわたくしの、このヴリュメールの姫将軍・ローザラインの誇りが搾り取れるとお思い?

(そして、兵士達に抵抗することもなく、おとなしく拘束されていく)
(『観念して抵抗を諦めた女囚』という態度ではなく、『従者に全てを任せきって傲然としている女帝』という風ですらあった)
(長い豪華だが清楚な形状のスカートが、椅子を包み込むようになっている。何故こんなことをするのか、意味は分からぬが……)
(手首を留められる。王家伝来の胸甲は剥ぎ取られたうえで、乳房の上下に革ベルトが巻きつけられると、その柔らかな塊は押し出されるように、形を歪に変えた)

んんッ……
(やや苦しいのか、さすがに小さなうめきを漏らすが、王族としてのプライドからか悲鳴はあげなかった)