鋼鉄のフランクフルト……のようなものを見て、背筋をゾクリと震わせて、顔をしかめる。
使い方は分からないが、リセナの表情や口ぶり……そして何よりあの禍々しく冷たい鉄の塊そのものから、不吉なモノを感じ取ったのだ。
一体これから自分の身にどのような運命が待っているのか……おそらくそれを説明してくれるであろう、彼女の言葉を待っていたローザラインの耳に入ってきたのは、予想だにしていなかったとんでもないモノだった。
『その前に、古からのしきたりに従うなら貴女の純潔を破る手順が残っています』
「……え?純潔、を……破る?」
一瞬、意味が分からずに、凛とした顔に似つかわしくない、呆然とした表情を見せる。
「お、お待ちなさい!私の純潔を破るなどと、意味が分かりません。なぜそのような破廉恥なマネをする必要が……」
茫然自失から立ち直った彼女を襲ったのは、驚愕と怒りと羞恥、そして言い知れぬ不安であった。それを振り払うかのように、猛然と征服者に抗議するローザラインに、礼儀正しさを装った、冷然とした声が投げかけられる。
「プリンセス・ローズには申し訳ありませんが、これもグラゼイアの統治下における古からのしきたりです。それに貴女もこの地に災厄をもたらす存在となるのは望まない、でしょう?」
リセナのでまかせの言葉だが、その真偽などはローザラインには分からない。さらに『貴女も望まないでしょう』という言葉で、まるで『処女を破る=王国の為』という図式を皆に提示して、ローザの拒否と反論を封じ込んでしまう。
「くっ……」
『まさか、公女様がバージンを既に捨てている、などということはないでしょう?なら、この棒が貴女の契る最初で最後の相手ということになるのでしょう』
リセナの言うとおり、結婚するまでは処女でいるハズ……だった。だが、それがまさか、冷たい無機質なフランクフルトに初めてを貫かれるとは、想像だにしていなかった
「わ、分かりました。我が純潔、祖国の為に捧げましょう」
威厳と静謐さをもって、納得の意を示す王女。だが、如何に高貴で勇敢な姫将軍であろうとも、現実として、まだ若い娘である。
その内心は、その態度ほどには、平静を保ってはおられなかった。
これまでは、王女としての誇りと責任感で、何とか心の平静を保っていたのだが、鉄塊に純潔を散らされるとあっては、心は乱れる。
(い、嫌ッ……26年間守ってきた、この純潔が、あんな……あんなおぞましく、冷たくて馬鹿げた器具に散らされてしまうなんて)
だがそれでも、その悲痛な叫びを心の中だけに留め、表面上は平静を保てる精神力はさすがと言えた。
ただ、その心の叫びが、まさか死刑執行者に筒抜けになっているなどとは、夢にも思っていない(リセナが何やら普通でないことは察してはいるが)。
心の中で、悲痛な声を叫びながらも、その顔は平静を保ち、その口調は凛として、その台詞は威厳に満ちていた。
「私は王族としての義務を 私の純潔を代償として、我が民草と国土が安寧を保てるというのなら、良いでしょう。存分に我が処女を奪うが良い!」
(いやっ、何故……なぜ、私の純潔なの?!いや、こんなの絶対嫌なににっ!!そもそも、なぜ私が、このような公開処刑にされねばならないのっ!?ああ、怖い……)
【大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。ちょっといろいろと忙しくて…】
【もしまだ見ておられたら、続きをお願いします】