>>436
(なおも抵抗するだろうかと考えていたが、思いの外早くノエラは頷いた)
(毎回のように拒む態度を見せつつも最後は応じるのだが、今日はいつもより早いかも知れない)
(その理由が自分の言葉にあるのか、単に諦めただけなのかは分からない男だったが)

「わかったのなら良い。部屋に行くぞ、付いて来い」

(拒否されないのなら理由は何でも良いと考え、身を翻すと反対方向に歩み出す)
(階段とは反対側の壁にある扉の前まで行くとノブを回して扉を開けた)
(奥には暗がりが広がっていたが、天井から吊り下がるランプに男が触れると火が灯る)
(橙色の輝きが照らしたのは、大き目のベッドが置かれた寝室のような空間だ)
(ベッドの他には木製の棚が置かれているだけの簡素で殺風景な部屋にも見えるが)
(ここで魔力供給、と言う名の性交が行われていることを当事者であるノエラはよく知っている)

(男は先に中に入ると、ローブをさっさと脱いで棚の上に放り投げた)
(ローブの下はシャツとズボンだけのこれまた簡素な装いである)
(若々しい姿を取ってはいるが、根っからの魔術師のため筋肉質ではない)
(それでも当然ノエラよりは確りとした体つきではあるが)

「ノエラ、服を」

(視線を棚の方に向けたままノエラの方に手を差し出した)
(ノエラのローブも棚に仕舞うから、脱いで渡せという意味である)
(ローブだけでなく部屋に入ったら服は全て脱げと最初の頃は指示していた男であったが)
(いつしかローブ以外は流れで、という指示に変わっていた)
(表向きの説明としては)
「魔力供給を行う前の段階でグズグズされたくはない。先に脱いでも後に脱いでも変わりはないから、好きにしろ」
(と伝えてあり、ノエラが恥ずかしがったことを理由としている)
(だがそんなノエラ向きの理由とは別の事情があって、男の方から意識するにつれて)
(最初から裸を見ると感情が昂ぶり、冷静さを失ってしまうからその対策として、だったりする)
(ローブを脱ぐ間はノエラの方に視線を向けていないのも似たような理由だ)

(いつも通りローブを受け取れば棚の中に放り、男はベッドに腰掛ける事になるだろう)
(ノエラにはその隣に座るように促すことになる筈だ)