「…ふう。やはり此処は私の知っている土地じゃないみたいですね。
困りました…よもや妖魔を追っている際に異世界に迷い込んでしまうなんて…」

それは妖魔を討滅した際に起きた不可思議な現象だった。退魔巫女である肇は
人に仇なす妖魔を討伐すべく、一人山奥へと入り込んでいた。そして無事に討伐できたのだが
その際妖魔が不気味な魔素を放ったのだ。一瞬訝し気に思った肇だったが特に何も起きず。一応の警戒だけはして下山を試みる。
しかし道中で不可思議な事に気づいたのだ。迷わない様にと目印をつけていたにも関わらずそれらが見当たらない。
それどころかいつの間にか見知らぬ風景・植物が自生していて。コンパスさえも狂い始めて。
いよいよ途方にくれていた際だった。運よく開けた街道に行き着き、遠くに見える街を確認した肇は自分が怪しい恰好をしていると理解しつつも
変わりの衣服を失ってしまった為致し方なく歩いていたのだった。その時背後から馬の嘶きを聞き、溜まらず振り返ると瞬く間に西洋風の甲冑に身を纏った女性達に武器を突きつけられて

「…………」
一瞬逡巡する肇。抵抗すべきか、大人しくすべきか。抵抗すればおそらくは逃げれるだろう。伊達に退魔士をして居らず身体能力には自身がある。
少なくとも騎士に負けるとはこの時点で思わなかったが、肇は無抵抗の意思を見せるべく両手を上にあげる事とした。まずは情報を得る事からだと

「あの……すいません。私の言葉が通じるでしょうか…?
もし通じるのであれば、大変恐縮なのですがここが何処なのか、貴方たちは何者かを教えて欲しいのです。」
「あなた方が何者か?という問いをしていて私自身が答えないのは不躾ですね。私は各務原 肇と申します。退魔巫女…という職業をしていまして
こんな妙な恰好ですが決して怪しいものではありませんので…」

丁寧な応答を、馬車から顔を覗かせた女性につげる。

【はい、有難うございます】