(水をもってきてしばらく考えている間に、けっこうな時間が経っていた)
(さすがにそろそろ雪菜に声を掛けねば、と立ち上がり部屋を出ていこうとするところで、声を掛けられて)
ん?ああ……香奈、起きたか。
何だかのぼせたみたいだから、あんまり無理するなよ。
別に謝ることなんてないし、感謝されるようなこともしてないぞ?
(本当は全くの血縁関係もないのだが、さりとて全く情がないわけでもない)
(ただ、今回のことはこちらの采配のミスであって、次は上手にせねばならない)
(…なんてことはおくびにも出さず、「兄」として当然のこと、と香奈には言う)
お、おいおい、あんまり急に立ち上がると…!
(しかし香奈が立ち上がろうとするのはさすがに驚いたし、止めに入ろうとしたが)
(彼女の身体から適当に巻いていたタオルが落ちて、また一糸まとわぬ姿が露になったときは、驚きで声が詰まった)
(それだけでなく、そのタオルも拾わずに…まるでこちらの視線を受け止めるかのような仕草には息を呑んでしまって)
…そうだな、次は洗ってくれよな、香奈。
(香奈の宣言を聞いて、口にできたのはそれだけだった。香奈がここまで積極的になるとは)
(どうやらこの短時間で、だいぶ暗示が浸透しているようであるし、「見せること」に対して積極的になっているようだ)
(ただ布団をかぶってしまったあたり、今のは勢いで言ったのはよくわかる)
(勢いとはつまり感情の発露であって…理性以上の行為なのだから、歓迎すべきことだ)
(やはりやり方を考えねばならない…これだけ適応してくれれば、次もきっと楽しくなる…と、香奈の部屋を後にしながら思う)
(それから数日が経った。今日までは特にアクションは起こしていない)
(香奈については今のところ新たな展開はなかったが…心なしか、以前以上に懐かれている気がしている)
(そして雪菜の方は……あれからこちらが与えた「宿題」をきちんとこなしているのだろうか)
(そろそろ、そちらも確認せねばならない、と考えたのが、ある金曜日のことである)
さて、洗いものもしたし…香奈、今日は先に風呂入っといてくれるか?今日は雪菜の宿題を見る約束をしててな。
ちょっと集中したいから、香奈、「兄さんが声を掛けるまで、二階には上がってこないでくれ」
(香奈と洗い物を終わらせてから、先に香奈に風呂に入るように言って、自分は二階の雪菜の部屋に向かう)
(香奈に言ったことは半分以上が嘘である。実際、雪菜の部屋には行くつもりだが、そのことを本人には言っていない)
(さらには「宿題」というのは、こちらが彼女に与えたもののことである。学校の宿題は、本人が望めば見てやらないこともないが)
(こういう抜き打ちもいいだろう、などと考えながら雪菜の部屋の扉をノックする。わざとらしい言葉を付け加えながら)
雪菜、ちょっといいか?今日確か「宿題を見る」って話、してた気がするんだけども…してなかったっけ?
【いえいえ、どう転ぶかがわからないのがロールですから。実際楽しいですよ】
【次の雪菜パートですが、(何となく)抜き打ちテストにしてみました】
【最後の声かけですが、雪菜にも特に言わずにとぼけています…悪しからず】