(パジャマ……?それに、この家……)
そう、足を踏み入れなくても分かる。玄関から伝わってくるホコリの匂い、この家の異様な雰囲気。
カーテンに閉ざされた窓を見て生活感がない、と考えたのは誤りかもしれない。
正しくは『正常な営みが行われていない』というべきか。
まったく、家族の人たちはどうしているのだろう。目の前の少年は健康的な生活を送っているようには見えない。

そんなことを考えながら改めて壮のほうをじっと見つめてみる。
『さ、さぁ、上がってよ...』
普段の桜なら男子の家に上がるようなことはしない。
だが、彼は……白井壮は普通の男子とはあまりにも雰囲気が違っていた。
まるで同性の友人のような、見ようによっては美少女と言ってもいいような顔立ち。

「う、うん……お邪魔します。」
優しく取られた手に誘われるように、無意識のうちに桜は玄関に足を踏み入れた。
大丈夫、アップデートはまだ数時間はかかる。少しぐらい件のクラスメイトの情報を仕入れておくのも今後のためにはいいだろう。
そう考えて。