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(耀も準備ができたらしく、いつでも出発できそうだ)
うん、じゃあ行こう!
(元気よく返事をして、少女は耀の後に続いた)
(旅館を出てそのまま山道へと入っていく)
(雪は深いが、今度は注意して歩みを進め、転ぶ事はなかった)
(先を行く耀の向こうに、やがて湯気のようなものが立っているのが見えてきた)
あっ、ねぇお兄ちゃんお兄ちゃんっ!
湯気みたいなの出てる!
(興奮した声で話しながら、その湯気を目指して尚も歩いていく)

(時間にすると、旅館を出てから10分程度だっただろう)
(狭い山道を登っていくと、少し視界が広がってきた)
(目の前で質素な脱衣所が現れ、そこが温泉である事を教えてくれる)
わ…ねぇおに…
(話しかけようとした少女に、耀が静かに話しながら指を差してくる)
…ふ、ぇ…!?
(示された先にいたのは、木々の間に佇む鹿の姿)
…わ…わ…!
(思わず大声を上げそうになるのをこらえ、少女は感動の眼差しで鹿を見つめる)
(まるで時間が止まったかのような静寂)
(やがて耀が1歩踏み出すと、鹿は振り向いてゆっくりと去っていった)
……はぁぁっ…!!
(止めていた息を吐いて耀を見る少女)
お、お兄ちゃん、鹿、いたね…!
(耀に続いて歩き出す少女は、鹿の去って言った方向をじっと見つめる)
あーあ…鹿と一緒に温泉入りたかったなぁ
(嬉しさと残念さが入り混じった表情で笑う少女だった)

【もうすぐ23時なので、次のレスで凍結でしょうか】