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しかしわたしが向かった先はバイト先のファミレスではなく、近くのコンビニだった。
わたしはコンビニに併設されている公衆電話からバイト先へと連絡を入れた。
体調が悪いので休む、という事を伝えると店長は優しい口調でこっちは大丈夫だから身体気をつけて、お大事に、と言ってくれた。
少しだけ胸が痛んだ。というのも、別に体調が悪かったわけじゃない。
あの光景を見た後から、身体が疼いて仕方なかったのだ。
このままでは仕事にならないと思ったわたしはバイトを休むことにした。

バイトを休んだことにより、少し時間が出来た。
わたしはコンビニで冷たい飲み物を買うと、お店の外で座りながら顔を埋めてしばらく風に当たることにした。
早めに村に帰るのもいいが、火照ったままではツライ。
こんな時に優しい彼氏でもいてくれたら、わたしもあの二人みたいに……。
そんな事を考えながら、時間は過ぎていった。

それから何分経っただろう、しばらくすると男性がわたしに話しかけてきた。
「ねえ、君カナちゃん?」
「……はい?」
「ほら、ぼく約束してたアキラ」
「……?」
そこに居たのは50代くらいの中年男性。あまりかっこいいとは言えない、少しお近づきにはなりたくないような人だった。
男性はわたしの事をじろじろと見ていた。
「へぇ、聞いてたよりスタイルいいね、その耳としっぽはコスプレって奴?いいね、可愛いよ」
なんなの…? わたしは未だに何が起こっているのかわからなかった。
「それじゃあ、そろそろ行こうか、時間ももったいないし」
そういうと男性はわたしの手を取り、歩き出した。
「え、えっ? あ、あのっ!」
男性は早足でわたしをどこかへ連れて行こうとする。
コンビニの駐車場に止まっていた一台の車の側まで連れてこられて、わたしは怖くなって口日をひらく。
「やっ、やめてください!おじさん一体誰なんですか!?」
「え?だからアキラってさっき言ったじゃないか、君カナちゃんでしょ? 掲示板で話してた」
「カナ…? ち、違います!わたしカナって子じゃありません!人違いです、放してっ!」
「カナちゃんじゃないの!?やばい、違う子だった・・・」
それから男性は少しだけ考えてからまた口を開いた。
「ごめん、待ち合わせしてたんだけど、人違いだったみたい、だから大きな声とか出さないで、怪しまれるから」
もう思いっきり怪しい人だったが、わたしは何をされるかわからなかったので男のいう事に従い、大人しく話を聞くことにした。
男が言うには、わたしと同い年くらいのカナっていう子とここであって、一緒に出かける予定だったみたいだ。
行き先は……ラブホテル。つまり、援助交際っていう奴だったらしい。
わたしはその子に間違われて、危うくホテルに連れて行かれるところだった。
事情がわかったので、間違いだったわたしはここでもう役目はないと思った。
しかし、男は意外な事を口にした。
「ねえ、君さ、お金欲しくない?」
「…えっ?」
「少しだけでいいから気持ちよくしてくれたらお金いっぱいあげるよ」
わたしは硬直していた。
「多分カナちゃんとはもう会えないだろうし、ぼく今日の為に結構我慢してたんだよ、君よく見たらすごい可愛いし、どう?」
男は財布から万札を何枚も取り出す。
「お金欲しいでしょ?これだけあれば何でも好きなもの買えるよ?」
正直困惑していた。
まさかこんな事を言われるとは思っていなかった。
いつものわたしなら、こんな話すぐに蹴って立ち去っていた。
しかし、今日のわたしは放課後からずっと身体が疼いてしかたなかった。
いけない事を想像してしまう。
この男と一緒にホテルで淫らな行為をする自分。
男性に抱かれるっていうのはどれだけ気持ちいいのか。
教室での女生徒の快感に震える顔が脳裏に過ぎっていた。
「君が望むなら、好きなだけ気持ちよくしてあげる事もできるよ?ぼくこう見えて結構テクニシャンなんだ」
男がいやらしく笑った。
お金は別にどうでもよかったが、身体が気持ちよくなりたいと悲鳴を上げている。
正直男の容姿は好みでもないし、あまりいいイメージもなかったのだが、身体はそれでも男性を欲しているようだった。
わたしは黙ってしまった。