(恐る恐る、と言った風に一歩一歩覚束ない足取りでルシィールがゆっくりと近づいてくる。)
(そしてイリーナの正面で立ち尽くす…身に纏ったガウンが唯一の頼みの綱であるかのように、襟元を掴む指先に力がこもっているのが分かる。)
(スン、と鼻を鳴らせば、微かに届いてくる香水の香り…イリーナの好むこの香りは、勿論ばあやが選んだものであろうが、目の前の「獲物」をより魅力的に味付けしているようで)
(無意識に唇を湿らせるように舌なめずりしてしまう。その様子がルシィールにとってますます「捕食者」の印象を深く刻みつけていく。)

どうしました?ただ立っているだけで私を楽しませているつもりなのですか?違いますよね?
(横柄な態度で、焦り、困惑、羞恥、屈辱…様々な感情を混ぜこぜにした表情を浮かべるルシィールの顔を見つめながら、ソファの脇に置いておいた乗馬用のムチを取り出し)
(柄を握る手とは反対の手の平を極々軽く叩けば、短い風切り音の後、パシッと小さいがハッキリとした音がルシィールの耳にも届く。)
(今はイリーナの手の平を叩いているムチの先端が、次に叩きつけられるのはどこか…よく考えなくても答えは明確であろう。)

(焦りか恐怖か、血の気の引いた顔で浅く短い呼吸を繰り返してその身を震わせるルシィールは、イリーナから見れば嗜虐心を激しく刺激する哀れな小動物にも見え、)
(一層に機嫌良さそうに口角が持ち上がり、欲情し頬が紅潮していく。)
(ルシィールに襲い掛かりたくなる衝動を必死に押さえつけながら、手の平をムチで叩くリズムを速めてイラついている素振りを見みせつける。)

今宵の衣装、着心地はいかがですか?貴女の為に私が直々に選んだのですが…
(動けないままのルシィールに恩情とも言えるようなヒントを与える。主人から与えられた衣装をいつまで隠しているつもりなのかと、)
(ある意味一糸まとわない全裸よりも恥ずかしい、娼婦以下の下品に彩られたルシィールの裸体を見せろと、ルシィールに遠回しに命令する。)


【こちらこそ、改めてよろしくお願いいたします。】