>>119
えっと……やっぱり何か落ち着かないな。
(紗枝に言われて、紗枝の着替え終わった後に自分も試着室で着替えることを同意して)
(次は自分の番と言われて試着室に入ったまでは良いが、周りがほぼ女の子だけってと言う状況を意識すればどこか落ち着かなくて)
何度着てもボタンが逆だと嵌めにくい……かな。
(渡された三つのトップスを交互に試してみて、襟元や裾にレースの装飾があるリネンのボタンシャツを最初に身に付けてみるが)
(ボタンが逆に付いているのは男の娘モデルをしていて、他の男子よりは女の子の服に慣れていても)
(いつもではないので少し苦戦して、愚痴を呟きながら着替え終わると)
(似合っていなくはないが女の子っぽ過ぎて気恥ずかしく脱ぎ、シフォンブラウスも試してみたが女の子らしさが強調され過ぎて脱いで)
(一番紗枝の服とも合いそうでバフスリーブのカットソーにしてカーテンを開いて)
(紗枝の感想を聞くまでは、どこか恥ずかしそうにもじもじしていたが、似合っていると言われて安堵の表情を浮かべて)
良かった……けど……可愛いかな?
(女の子の服でも自分らしさが出てると言われて少し困惑の表情を見せるが、以前なら可愛いと言われれば不快を感じたが)
(紗枝といるせいなのか、別の理由かは本人にも分からないままに「可愛い」と言われても嫌ではなく)
(それどころか嬉しささえ覚えていることに顔には出さないが内心驚いていた)
うん、胸もゆったりしてるし、肌触りも紗枝ちゃんが言うみたいに柔らかくて心地いいよ。
(身体の女性化が進むほど、彩文の肌の敏感さも徐々に増してきており)
(以前は気にならなかった男子用の服の裏地のゴワゴワした感じが気になり始めていて)
(柔らかでサラッとしたカットソーの肌触りに笑みを浮かべて、振り返りながら鏡で後姿も確認して)
ありがとう、紗枝ちゃん。こっちの方がウエストが余るようなこともないし、お尻の締め付けられるような感じもなくてとっても良い。
……女の子用って言うのが……何だけど……。
(紗枝の耳打ちに声のトーンを抑えて囁くように答えて、まだ女の子になり切っていない心が)
(女の子用のスキニーがピッタリなことに少し抵抗感を抱きつつも、ウエストを締めてできた生地の襞もなく)
(パンパンに張っていたヒップも上手く収まっていて、母親のジーンズがちょうど良かったことの追体験をしつつ)
(身体の女性化がかなり進んできてしまっていることを紗枝には言わずに、はっきりと自覚していた)

もう一着? えっ……ボク……そんな顔してた?
(店員が持って来て紗枝が受け取って差し出された籠を見れば、紗枝と同じデザインの色とサイズが違うワンピースが入っていて)
(手渡されて、自分が身に着けたそうな顔をしていたと言われても、確かに僅かでも自分も似合うかなと思ったことは否定できず)
(驚きの表情を浮かべつつも、紗枝に渡した淡いピンクではなくラベンダー色であることも相俟って)
(着替えることを拒否する心のハードルを下げていて、ワンピースからは視線を逸らせずになっていて)
(男の子とバレていないこともあり、気持ちは少しづつ着る方向へと傾きつつあった)
あ、うん、紗枝ちゃんが……そう言うなら……。
(スキニージーンズとシフォンブラウスを持って試着室へ入った紗枝を見送り、着てくれると嬉しいと言われて)
(それが理由付けにもなって、紗枝が喜んでくれるならと彩文自身も試着室に入り)
(それまで着ていたカットソーとスキニーを綺麗に畳んで、ワンピースへと着替えていく)
(「紗枝ちゃんと違って胸が無いし、髪が短いし……あんまり似合って無いんじゃないかな……」)
(着替え終わると仕事以外で女装することにに対する嫌悪より、胸がペッタンで髪が長くない事の方が気になって)
紗枝ちゃん居る? もし良かったら、カーテンを開ける前に見てくれないないかな。
(少し大きな声を上げて、試着室にまだ居るかもしれない紗枝に向って店員さんや他の客に見られる前にチェックして欲しいとお願いする)